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シロアリ恐るべし!(2)

第3部 物件探しから契約まで ~買う前にどこを見るべきか~

前回までは、「ラボ」を襲ったシロアリ被害の経験と、そもそもシロアリとはどのような生き物なのかについて書きました。

今回はいよいよ実践編です。
これから中古住宅や別荘を買おうとする場合、どの段階で、何を確認すればよいのでしょうか。
もちろん、内見でシロアリが1匹も見つからなければ安心、というほど簡単な話ではありません。

ラボでも、最初に見つけたのは窓際に現れたわずか数匹でした。
しかし畳を上げると、その下にはちょっと写真に出せないほど大量のシロアリがいました。

つまり、シロアリについて大切なのは、

「いるか、いないか」

だけではなく、

「どこまで調べることができたか」

なのです。

1.物件を探す段階
シロアリのリスクは、現地を見る前からある程度見積もることができます。
まず確認したいのは、築年数と建物の構造。
ただし、古い木造住宅だから危険、新しい住宅だから安心、と単純に分けることはできません。
むしろ重要なのは、「その建物がどのように使われ、どのように修繕されてきたか」です。

例えば、

・何年間空き家だったか
・増改築したことがあるか
・雨漏りや床下浸水がなかったか
・浴室や台所などの水回りを改修したか
・過去に防蟻・駆除工事を行ったか
・修繕や防蟻工事の記録が残っているか
・床下や天井裏に点検口があるか

といった情報を確認します。

立地も無関係ではありません。山際、擁壁の近く、川や湿地の周辺、海辺などは、一般に湿気が多くなりやすい場所です。建物の周囲に大きな植栽、切り株、古い物置、枕木、ウッドデッキなどがある場合も注意します。

もちろん、こうした条件が一つあるだけで「買ってはいけない物件」になるわけではありません。
私の専門である「不正調査」である「不正のトライアングル」の判断と似ています。
動機・機会・正当化のどれか一つが高まることで不正が起こるのではなく、全体として高まった結果として不正が発生・顕在化する、というのと同様、前述の条件がどれくらい全体として高まっているか、と判断するのが重要です。

ハッキリ言える最もよくない状態は、「悪い条件がいくつも重なっているのに、床下に入れない、修繕記録もない、売主もよく知らない」という状態です。
このような状態の場合は、よほど他に良い条件や全面修理を覚悟できる場合でなければ、購入を断念したほうが良いかもしれません。

2.最初の内見で、自分でも確認できること
内見では、きれいに改装されたリビングや新しいキッチンに目が行きます。
しかしシロアリの観点から見ると、豪華な設備より、建物の隅や足元の方が重要です。
私なら、室内へ入る前に、まず建物の外周を一周して、下記のような点をチェックします。

・建物外周:蟻道、基礎のひび割れ、土と木部の接触
・玄関・勝手口:木枠の浮き、変色、傷み、空洞音
・浴室・洗面所:床の沈み、湿気、漏水跡
・和室:畳の沈み、敷居や柱の傷み
・床下:木材の変色や腐朽、蟻道、配管漏れ
・屋外:ウッドデッキ、物置、枕木、切り株(シロアリの入り口になりやすい)
・室内全般:羽アリ、落ちた翅、砂粒状の糞、小さな土塊

特に重要なのが床下です。
床下点検口があっても、ふたを開けて少しのぞいただけでは、建物全体を確認したことにはなりません。配管や基礎で奥へ進めない、増築部分には点検口がない、断熱材で木部が見えない、といったこともあります。
また、柱や敷居を軽くたたいたときに不自然な空洞音がする、床や畳が沈む、建具の動きが悪い、といった現象も手掛かりになります。

ただし、ここで最も注意したいのは、「異常が見えない=シロアリはいない」と同義ではないことです。
表面上きれいでも、壁や床の内部で食害が進んでいる場合があります。内見は診断ではなく、詳しい調査が必要かどうかを判断する入口と考えるべきです。

3.売主・仲介業者に何を尋ねるか
次に、売主や仲介業者へ確認します。
単に「シロアリは大丈夫ですか」と聞くだけでは、たいてい「聞いていません」「今のところ問題ありません」という答えになりますので、実際には次のように具体的に尋ねます。

・過去にシロアリ被害を受けたことがあるか
・防蟻・駆除工事をしたことがあるか
・施工年月日、施工範囲、使用薬剤、保証期間
・保証書や施工報告書が残っているか
・雨漏り、給排水漏れ、床下浸水の履歴
・修復時にどこまで木材を交換したか
・被害箇所や工事前後の写真が残っているか
・過去の不具合も告知書に記載されているか

これらについては口頭で済ますのではなく、施工報告書、保証書、請求書、写真、告知書など、後から確認できる資料を開示させる必要があります。
但し過去に被害があったこと自体は、必ずしも致命的ではありません。きちんと駆除され、傷んだ部材が交換され、侵入原因も改善されているなら、何も調べられていない家より判断しやすい場合もあります。

怖いのは「何もなかった家」ではなく、「何も分からない家」なのです。

4.インスペクションをどう使うか
中古住宅の購入では、「建物状況調査」「インスペクション」という言葉をよく見かけるようになりました。
宅地建物取引業法上の建物状況調査は、所定の講習を修了した建築士が、建物の構造耐力上主要な部分や、雨水の浸入を防止する部分について、劣化事象などの有無を調べるものです。

ただこれは大変有用な制度にも関わらず、万能ではありません。
建物状況調査は、基本的に目視や計測などの非破壊調査です。壁や床を壊して内部を確認するものではなく、「瑕疵がないこと」を保証する調査でもありません。

そこで、依頼前に次の点を確認します。
・床下へ実際に入るのか
・点検口から見える範囲だけなのか
・小屋裏まで確認するのか
・含水率を測定するのか
・調査できなかった場所を明記するのか
・写真付きの報告書が出るのか
・シロアリや腐朽について、どの範囲まで確認するのか

建築士は、建物全体の劣化や構造上の問題を判断する専門家です。一方、防蟻業者は、シロアリの種類、侵入経路、被害範囲、防除方法を判断する専門家であり、役割が少し違います。
雨漏り歴がある、床が沈む、蟻道らしきものがある、長期間空き家だった、床下を十分に確認できない・・・このような物件では、一般的な建物状況調査だけでなく、シロアリ専門調査を追加する方が良いと思います(日当+調査費用は掛かる可能性あり)。

なお売主側が既に調査している場合も、その調査を無意味と考える必要はありません。ただし、調査日、調査者、調査範囲、確認できなかった場所を自分でも確認します。報告書の表紙に「異常なし」と書かれているかより、どこまで見たのかの方が重要なのです。

5.契約前に整理すべきこと
調査が終われば、次はその結果を契約条件へ落とし込みます。
ここで整理すべきなのは、契約書や重要事項説明書において
・被害がないことを、どこまで確認できたか
・調査できなかった場所はどこか
・過去の被害は駆除済みなのか、構造補修まで済んでいるのか
・追加工事はいくらかかるのか
・その費用を売買価格に反映するのか
・引渡し前に売主が施工するのか
・購入後に買主が施工するのか
・契約不適合責任の範囲と期間
・シロアリ被害が免責事項になっていないか
・保険や仲介会社の保証の対象になるか
といった事項です。

なお、「もし見つかったら、保険で何とかなるでしょう」と考えるのは危険です。
一般的に「シロアリ被害に保険は効かない!」からです。
※少なくとも一般的な既存住宅売買瑕疵保険では、シロアリ被害や建物の経年劣化は支払い対象外

もちろん、防蟻業者の施工保証や、仲介会社独自のシロアリ保証などが付いている場合はあります。しかし、それも保証期間、対象箇所、再施工だけなのか、被害木材の修復費まで含むのかによって中身が違います。
また、売主の契約不適合責任と保険は別の話です。売主が責任を負う契約になっているからといって、保険会社が費用を出してくれるとは限りません。
「発見されたら誰かが直してくれる」と思い込まず、契約書、告知書、保険約款、保証書をそれぞれ確認する必要があります。

6.購入判断を三段階に分ける
最後に、調査結果を三段階に分けて考えます。

①購入してよい物件
侵入や被害の兆候がなく、床下など主要箇所を十分に点検でき、購入後の予防・点検計画も立てられる物件です。

②条件付きで購入できる物件
被害があったというだけで、直ちに購入を諦める必要はありません。価格と修復可能性が読めるなら、判断はできます。
被害はあるものの範囲が限定され、駆除費用と構造補修費を見積もることができ、その費用負担も契約上整理できる物件です。

③見送ったほうが良い物件
被害範囲を確認できない、主要構造部まで広がっている可能性がある、売主の説明と現況が食い違う、調査を拒まれる、といった物件です。
悪いところがある物件より、悪いところがあるかどうか分からず、しかも調べさせてもらえない物件の方が危険です。

7.今回の結論
中古住宅を買うとき、大切なのは「シロアリがいるか、いないか」だけではありません。
・調査できた範囲
・調査できなかった範囲
・駆除・修復に必要な費用
・契約上、誰がその費用を負担するのか

この四つをセットで判断する必要があります。

シロアリ被害が見つかった物件でも、範囲と費用が分かれば判断できます。反対に、「たぶん大丈夫です」という説明だけで調査できない物件は、判断そのものができません。

書くべきことが多くなりましたので、続きは次回にします。

次回、第4部は「購入後の駆除・修復・毎年のメンテナンス」についてです。

一度駆除すれば終わりなのか。どの部分を修復し、何を記録し、毎年どこを見ればよいのか。
次回の記事も、ラボで実際に行った対応も交えながらまとめます。

シロアリ恐るべし!(1)

第1部 体験談「シロアリ襲来!」

1.それは突然現れた

弊所は、和歌山の別荘地に「ラボ」と呼ぶ実験施設を所有しています。不動産の管理やリフォーム、運営といった研究のほか、ワーケーションの実験やお客様の招待にも使う施設です。

さて、久しぶりにラボへ出てくると、窓際に見慣れない汚れがありました。3~4センチ四方ほど、土のようなものが盛り上がっています。その近くの壁には小さな穴が開き、羽虫が数匹見え隠れしています。

ラボのお陰で少しは知識があったため、「あー、これはシロアリだ」とすぐに気づきました。

急ぎ管理会社さんに連絡すると、1時間とあけず防蟻業者さんを連れてきてくれました。ラボは急斜面に建っており、玄関やメインリビングが2階という変わった間取りです。業者さんは2階窓際を見るや否や、すぐ1階へ下り、和室の琉球畳を上げ始めました。

すると、まぁいるわいるわ……。

ちょっと写真には出せないほど「うぞうぞ」と蠢く虫たちが、床板から畳まで蝕んでいました。床下には、シロアリが土などで作る通路「蟻道」もあります。とても1、2週間でできたものには見えません。

リフォームしてからまだ1年少々なのになんで?と愕然とする私をよそに、業者さんはてきぱきと状況を確認し、応急処置をして帰られました。

2.防蟻(ぼうぎ)対策

本格対策まで1、2週間はかかるかなと覚悟していたところ、状況を見た業者さんが2日後に予定を組んでくれました。発見からわずか2日で、床下、基礎、柱、壁内など重要部分の処理が完了。この迅速な対応にはほんとに感謝です。防蟻代は8万円程度でした。

とは言え、その後が大変です。薬品で追いやられたシロアリは、何とか生き延びようと窓際や隙間に集まり、そこで命を落としていました。しばらくは、大量にたまる死骸や羽の掃除に追われました。

3.修復工事

改めて現場を見ると、発見時に目にしたのはわずか数匹で、それまで羽アリすら見ていなかったにもかかわらず、1階畳下の床板は広い範囲で食害を受けていました。特に被害が目立ったのは、リフォーム時に傷みが少ないため残した古い木材です。

(被害状況の写真)

どうやってこれを修復するんだ……と立ち尽くすばかりでしたが、リフォームを担当した工務店さんもすぐ現場を確認し、工事予定と見積りを出してくれました。そして発見から1か月半で工事も完了。元通りきれいになりました。

決して安い工事代金ではなく、リフォームから1年での出費は痛くないと言えばウソになります。しかし、得難い経験の勉強代として納得はしています。

私は大変幸運でした。構造が致命的な損傷を受ける前に発見でき、管理会社さん、防蟻業者さん、工務店さんがありえないほど迅速に動いてくださった。そのお陰で被害を最小限に抑えられたことは間違いありません。

この経験で得た知識を、中古住宅や別荘を買おうとする方にも役立つ形で残したい。そう思い、この長編コラムを書くことにしました。

第2部 シロアリってなんだ?

1.シロアリは「アリ」ではない

名前には「アリ」と付きますが、分類上はゴキブリに近い昆虫です。クロアリは腰がくびれ、触角が「く」の字、羽アリの前後の翅は大きさが違います。これに対してシロアリは寸胴で、触角は数珠状、4枚の翅がほぼ同じ大きさです。

女王・王、働きアリ、兵アリなどが役割を分担して集団生活をしています。地中性の種類は、光や乾燥を避けるため、土や排出物で「蟻道」を作り、地中から基礎、配管の貫通部、木材との接触部などを通って建物へ入ります。

厄介なのは、木材の表面を残したまま内部を食べ進むことです。室内で数匹を見つけた時には、見えない場所で被害が広がっていることがあります。羽アリも、単なる迷い虫とは限りません。建物やその近くからまとまって現れたなら、周辺に成熟した集団がある可能性を考える必要があります。

2.住宅で問題となる主なシロアリ

日本の建物で中心となるのは、ヤマトシロアリとイエシロアリです。ヤマトシロアリは北海道北部を除くほぼ全国に分布し、湿った木材や建物下部を加害する傾向があります。イエシロアリは主に温暖な沿岸部に分布し、大きな巣を作り、蟻道の中で水を運びながら乾いた木材にも被害を広げるため、加害範囲が大きくなりやすい種類です。

もう一つ注意したいのが、外来種のアメリカカンザイシロアリです。こちらは土中から蟻道を伸ばすのではなく、乾燥した木材の中に小集団で住み、砂粒状の糞を外へ出します。発見方法も対策も、地中性のシロアリとは同じではありません。

3.どのような家が狙われやすいか

特に注意したいのは、雨漏り、漏水、結露がある家、浴室・洗面・台所・トイレ周辺、床下が低く点検しにくい家、基礎のひび割れや配管貫通部がある家です。
増築部、ウッドデッキ、濡れ縁、建物際の木材や段ボール、切り株なども侵入の手掛かりになります。長く使われていない別荘や空き家、山林や海辺の温暖多湿な場所は、異変に気づく人がいないこともリスクを大きくします。

今回の物件は、購入前まで10年以上雨漏りのある状態で使われ、屋根や壁の材料が大きく傷んでいました。湿気も多く、一部の壁紙にはびっしりとカビが生えていたほどです。被害の大きい部分は除去・交換しましたが、健全に見える部材はコストとの兼ね合いで残しました。結果として、シロアリはその古い部材を中心に食害していました。

ただし、「新しい木材なら食べない」「古い木材なら必ず危険」と単純には言えません。樹種や部位、防蟻処理の有無、含水状態、侵入経路などが重なって被害になります。本物件では、長年の雨漏りや湿気、残した旧材、点検しにくい構造が複合した、と考えるのが正確でしょう。

4.新築なら安心とは限らない

新築時に防蟻処理をしていても、その効果は永続しません。建築後の漏水や結露、植栽や外構工事、配管工事などで環境や侵入経路が変わることもあります。また構造によっては、基礎や土台が見えにくく、侵入しても発見しにくい場合があります。

結局、シロアリ被害は「古くて汚い家だけの問題」ではありません。水分、侵入経路、そして点検の難しさ。この三つが重なって起こる建物リスクです。逆に言えば、この三つを購入前から意識すれば、発見の可能性を高め、被害を小さくすることもできます。

次回は、「第3部 物件探しから契約まで ~ 買う前にどこを見るか」をご紹介する予定です。

【ラボ】(速報)第二弾~ガレージハウス企画開始

「ラボ」の次なる企画がスタートしました。

今回は「古民家再生+賃貸ガレージハウス化」がテーマです。

手に入れた古民家(といっても50~60年程度)を使い、できる限りシンプルで機能的なガレージハウスに転用する、というプロジェクトです。

このプロジェクトの課題は以下の通り。
・地域相場にガレージハウスの付加価値を加えた賃料の確認
・その賃料で「回収+利益計上」可能な範囲のリフォーム総額
・物件取得~リフォームまでの資金調達
・建築基準法改正(特に「4号特例縮小※」)に対応しつつ、付加価値の高いリフォームプラン
・賃貸利用に特化しつつ、見た目も使い勝手も貸し手から見ても効率の高いパッケージ
・税効果が十分に取れる工事内容

※「4号特例縮小」:木造2階建て住宅などの建築確認申請において構造・省エネ図書の提出が必須化され、確認検査が厳格化されること。大規模なレイアウト変更など工事が事実上出来なくなり、リフォームの自由度が大幅に下がると言われています。

手に入れたドナー物件はこんな感じ。

これが、

こうなる予定です。

建築士さんとかなりの回数議論を重ね、この形に落ち着きました。
上にある課題を実現するため、いくつかの工夫を織り込んでいます。

・安いが安っぽくなく、実用的な部材を利用
・ガレージ部分は、断熱性を強化しつつ廊下、階段、奥の多目的スペースから全てスケルトンで車を眺められるガラス戸で囲まれる
・住居密集地のわずかな日光を効果的に取り入れる「光の井戸(吹き抜け)」
・換気や生活動線、収納などを最低限確保しながら、車好きの憩いの場など、限られたスペースに多くの楽しみを織り込む
・ガレージ後ろスペースは、バイクの駐車やスモールオフィスとしての利用が可能
・耐震強化・断熱性大幅向上

今年中には完成・募集を開始する目標で進めています。
進捗あれば改めてご報告します。

【ラボ】ホームオートメーションのすすめ

「ホームオートメーション(HA)」や「スマートホーム(SH)」という言葉を目にしたことがありますか?
身近には目にしなくても、ニュースやIT系を中心とした記事に出会うことはあるかも知れません。その名の通り「家の中をオートメーション化・スマート化する」という考え方は、昨今AIやIoTの進化によって着実に進歩しています。
とはいえ、まだ大多数の方が採用していないこともあり、「何がどう便利なのか」「本当に必要なのか」といった疑問ももちろん出てくると思います。
今回は、実際にこれらを実用してみた結果を元に、メリットやデメリットについてご説明します。

HA製品には多数ありますが、本記事においてはメジャーな製品のひとつである「スイッチボット(SwitchBot、SB)」シリーズを例に説明します。
SBシリーズの製品には、「家庭用ロボット(掃除機など)」と「スマートロボット(SH製品)」の2カテゴリーがありますが、スマートホームの説明に使いやすい後者を取り上げます。
スマートロボット製品を使うと、こんなことができます。
・玄関のスマートロック(暗証番号やICカード、指紋、顔認証での開錠)
・照明のオンオフ、明るさ、色の調整
・家電製品のオンオフ(赤外線リモコンやコンセント、物理スイッチを利用)
・カーテンやロールスクリーンの開閉

スイッチボットの動作確認画面

さらに、これらを温度や湿度、人感センサー、時間(その地域の日の出・日没など設定も可能)を使って制御したり、全てをスマホで外部から動かすことも可能です。
赤外線リモコンの学習による利用や、物理スイッチを「指で押す」ような操作や、既存カーテンの開け閉めをしてくれるロボット、WiFiでコントロールできるコンセントなど、いわゆるアナログな環境にもある程度適応できるのが大きなポイントです。
これらの機能は簡単なプログラミングも可能で、例えば「GPSによって利用者が家から一定距離まで帰ってきたら自動でエアコンを作動して帰り着くころには快適にしておく→開錠したらエアコン動作を抑え、省エネを考慮するとともに必要な照明をつける」といったちょっと複雑な動作も自動化できます。

空き家や別荘の悩みの一つである「カビ防止」にも有効です。
このカビ、空気が循環せず湿度や温度が一定以上になると繁殖し、一旦生えると大規模なプロの作業を入れないと除去できない上に、アレルギーの原因にもなる厄介な存在です。
しかしHAによって「湿度や温度が一定レベルを超えたら、エアコンの除湿機能やサーキュレータを動かし、許容範囲に抑えたら自動的に電源を切る」と言う形で、カビの発生原因となる湿度を抑えつつ省電力、ということも可能になります。

弊社ラボにおいては、湿度や温度によってエアコン、サーキュレータ、カライエ(ダイキン製の住宅除湿器。別の機会に記事にします)をコントロールし、海沿いや山中物件にありがちなカビ発生をトータルで押さえる実験を行っています。

一方で、当然ながらデメリットもあります。
・設定や接続にやや手間がかかる、知識が必要となる
・インターネット環境が必須で、通信費用もかかる
・無線接続に依存しているため、WiFiが不安定なときにはうまく動作しない
・提供メーカーのシステムダウンがあると使えない
・スマホを紛失・破損すると手も足も出ない
・遠隔地で使用している場合は、プログラミング不備による誤動作や火事のリスク
・防犯性もあるが、万全の信頼性がある訳ではなく警備会社との契約ほど安全ではない
・家電などを動かすことによる光熱費の発生

デメリットや費用の発生はもちろんありますが、「必要な時に必要な分だけ動かす」ことで、便利で快適な環境を得られることや、カビの発生がどれだけ建物の価値を下げるかなどを考えると、十分に価値のある機能ではないかと思います。
空家売却までの管理費用や、中古物件を買う際のリフォーム予算の一部に織り込んでみるのも一考に値すると思います。

【ラボ】「研究施設」開設のお知らせ


税理士法人耕夢は、今年夏に「研究施設」をオープンします。
メーカーでもない会計事務所が研究施設?と疑問に思われるかもしれません。
ですがこの施設、私たちが業務上直面する、様々な問題への解決手法を生み出し、お客様にアドバイスするための大変重要な場所なのです。

例えば、現在問題となっている「空き家」。
長年お一人で住んでおられた住人がお亡くなりになり、相続人がいなかったり、遠く離れて住んでいたりとその家を引き継げず、メンテナンスも収益化もできず放置して、雨漏りやカビなどでどんどん傷んでしまう。
「実家の相続対策」と言い換えても良いかもしれません。
このような事例は数多く発生しており、どのように対処すべきか早急に検討する必要があります。

また昨今、物価高や人材不足、円安といった複合要因で新築の戸建てやマンションが高騰しています。
こうなると、幾ら賃上げが進んでも若い世代に手が届かなくなってしまいます。
そういった方に、良い中古物件を魅力的なリフォーム・リノベーションで安価に提供できないでしょうか。
幸い?中古物件はまだ新築ほど高騰しておらず、特に前述の空家の問題もあって供給は比較的期待できます。

遠隔地にある実家を管理したり、中古物件を上手に使う場合、重要になるのがIoTによる「ホームオートメーション」化です。
例えば、電気代を節約しつつ家じゅうの湿度を一定以下に抑えたり、照明やエアコン、ドアロックなどをコントロールして安全で快適、低コストな生活を実現するなど、こういったことは今手に入る製品群で比較的安価に実現できます。

最後に、中古住宅の購入、リフォームやリノベーション、賃貸や売却、相続といった節目には必ず「税金」が関係してきます。どのようなシチュエーションでどのような税金が影響するか意識する必要があり、対処は大変重要な論点です。

この研究施設は、上記のような論点を研究しつつ、お客様に実証実験内容を見学頂いたり動画を配信することが可能です。また同時に、弊所の役職員がフルリモートで事務所と全く同じ業務を行えたり、またゲストハウスとしての活用も可能な立地・構成となる予定です。
今後各論点についてご紹介記事を配信致しますので、是非ご期待下さいませ。

写真1 ダメージ修理・リノベーション中

写真2 施設からの眺望

写真3 ホームオートメーションの例

「3代で財産がなくなる」相続税と効果的な対策(シミュレーション)

相続税がかかると、どんな資産家でも「3代で財産がなくなる」と言われています。
これは相続税の負担が非常に大きいことを示しているのですが、実際の所どうなっているのでしょうか?
今回は、この「3代で財産がなくなる」という表現の真偽と、そうならないための効果的な対策(考え方)を示したいと思います。
相続税額や贈与による対策金額が具体的に計算できるシミュレーション(いくら贈与すれば相続税を効果的に減らせるかを自動計算してくれます)も用意しておりますので、是非お試しください。

1.日本の相続税
かつての「最高税率75%」という時代(昭和63年頃まで)より下がったとは言え、日本の相続税は最高税率が55%と、非常に税負担の大きなものとなっています。
この税率、こちらの記事(相続税の計算は意外と複雑)の通り、全ての財産をいったん法定相続分で分けたと仮定してから税率をかけるのですが、それでもやはり大きな負担であることに変わりはありません。

税金は現金払いが原則ですので、相続税であっても税金を払うには、それに見合った現金がなければなりません。物納のように現物で納付することや、延納といって金利を付して分割払いすることも一応は可能なのですが、手続は煩雑ですし財産が減ることには変わりはありません。

2.その税率が意味するもの
実は、驚くべきことに日本の相続税は、「財産をフルに働かせても払えない」水準に設定されているのです。
計算例を作ってみました。

10億円程度の財産を平均利回り2%程度(税引後の利回り。自宅など収益を生まないものも含むので低くなる)で10年運用したとしても、トータルで20%→運用による増加2億円)となりますが、これに対し、相続人が子供のみ3人の場合、10+2億円に掛かる相続税はおよそ4.5億円で、財産に対する相続税の割合(実効税率)は37.5%となります。

souzokuzei
10年間頑張って増やした資産2億円どころか、その倍を超える相続税がかかってしまい、最終的には2.5億円(25%)の財産が減ってしまう訳です。
これを繰り返すと、確かに3代程度の期間で財産はなくなってしまうと言えます。
しかも、収益性財産の比率が低い場合(例えば、大きな敷地のお屋敷に居住しているだけの場合)には、この減るスピードはもっと速くなります。

3.採るべき対策
不動産、有価証券などの財産で「収益性の低い」ものはできるだけ収益性の高いものに組み替える
上記の通り、相続税は「非常に収益性の高い資産でも足りない」税率体系となっていますから、ましてや収益性の低い財産を多く抱えていると、あっという間になくなってしまいます。
もしそのような財産をお持ちであれば、できるだけ早い間に収益性の高い資産への組み換え(不動産なら買換えや交換などの手法が使えますし、金融商品も様々なものが選べます)を検討する必要があります。

現在の財産にかかる相続税の割合(=「実効税率」)を知り、それを下回る贈与税負担割合となる贈与を進める
こちらの記事(相続税の見積もり計算と有利な贈与)に書いた通り、計算のマジックで、税率の高い贈与税でも、全体の財産にかかる相続税の割合より低い贈与税割合で贈与できる金額が必ずあります。

例えば、年間一人当たり110万円の贈与には税金がかかりませんし、比較的相続財産が多くない方でも年間一人当たり300万円の贈与なら19万円の贈与税(資産に対して6.3%)となり、相続税の実効税率より多くの場合低くなります。

4.最後に
これらの計算は、弊所の「相続税の概算」シミュレーション ページにて試してみることができます。
これは相続財産から相続税額を見積もるだけではなく、「相続税に係る税金の割合より低い割合の税負担で贈与できる金額」を逆算してくれます。
具体的には、相続財産の見積額、相続人情報(配偶者と子供のみに限定)を入力すると、自動で「いくらまでの贈与なら相続税より安いか」が表示されます。

なお、相続に関して巷に流れている話は、多くのケースで誤っている場合があります。
複雑な制度を自身の状況だけで判断して他に伝えたり、場合によっては偽税理士(こちらに記事を書きました)に出会ったりというケースもあります。
相続対策は大変根気と努力のいる難しい課題ですが、良い専門家に相談し、正しい対策をきちんととれば資産防衛は図ることができます。
今後のご参考になれば幸いです。