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献血と骨髄バンク(新型コロナワクチンとの関係)

皆さん、献血をしたことがありますか?
ときどき、赤十字や若者たちが街で「献血をお願いします」と呼びかけているのを見たことがあると思います。また、ひょっとしたら大きな怪我や手術で、輸血を受けられたことがあるかもしれません。この献血について、また水泳選手が急性白血病を発症したことで注目を浴びている「骨髄バンク」について、またそれらに関連した活動、問題点について少し説明したいと思います。
※新型コロナウイルス用ワクチン接種の場合の注意点を追加しました。


厚生労働省の献血キャラクター「けんけつちゃん」

1.献血とは?
献血とは、病気や怪我で輸血を必要としている人のために、「自発的」に「無償」で血液を提供することを言います。日本での献血の受入れは、国(厚生労働省)から唯一、採血事業者として許可を受けている日本赤十字社が行っています。
この「自発的に」「無償で」という点、実は国際的な定義があります。
1991年の国際赤十字・赤新月社決議によると、「自発的な無償供血とは、供血者が血液、血しょう、その他の血液成分を自らの意思で提供し、かつそれに対して、金銭又は金銭の代替とみなされる物の支払いを受けないことをいう」と決められています。
かつては「売血」「血液銀行」といって、有償で人々から仕入れた血液を輸血用に売る商売がありました。このような事業者に血液を売る人々の多くはいわゆる低所得者で、生活の糧を得るために血液を売らざるを得ない人々でした。そうなると、本来間隔を置かなければならない売血が頻繁になり、健康を害するようになってしまいました。このような人からの血液は、輸血に適さない上に肝炎などの副作用を起こすリスクも増大します。
このような問題を受け、政府は昭和39年8月21日、献血に関する体制整備(日本赤十字社または地方公共団体によるもの)を閣議決定しました。その後売血はほぼなくなり、現在のような体制が続いています。

2.献血を受けるには
会場を探す
まず、各所に設けられている献血ルームや、イベント会場などにやってくる献血バスを探しましょう。日本赤十字のWEBページから、各地での献血会場を検索することができます。どの会場でも、後述の献血カードがあれば献血者の情報は記録されていますし、安全・衛生面において全く問題がありません。便利な場所、時間で気軽に行ける場所を選んでください。

申し込む
献血カードをお持ちでない方は、会場の窓口で作ってもらいましょう。献血は前回との間隔や年齢等さまざまな制約があり、個人ごと個別に管理する必要があるので、このカードがなければ献血できません。この申請の際には氏名、生年月日、原則として写真付きの身分証明の提示が必要です。
なお残念ながら、年齢制限や特定の薬の服用、予防接種を受けた場合、海外から帰国後4週間以内の場合や特定期間内に特定国(イギリスなど)に滞在していた場合など、「献血ができない」一定の制約があります。献血カードを提示後いくつか質問を受けますので、これらには正直に答えましょう。

献血する
カードが作成できたら、献血ルームに入ります。しかし、ここでいきなり献血するのではなく、医師の問診、血圧、血液検査、シーフテスト(肩・腕・手の状態が悪くないか自己検査)などの簡単なチェックを受ける必要があります。
これらの検査が終わった後は、ようやく献血開始です。
少し背中を起こしたようなベッドにリラックスして横になり、献血用の針を腕に刺して血液を提供します。
血管の太さや体の大きさなどによって異なりますが、400mlの献血で10~15分程度、成分献血と呼ばれる、血液から必要な成分だけを抽出して元に戻す献血の場合には40~1時間半程度かかります。私の場合は適しているのか、10分かからないことが多いです。
その間、担当するスタッフや看護師さんからは、しつこいくらい「大丈夫ですか」「水分採って下さい」と言われます。これは、血液の減少による体調不良を防止するためです。実際、献血後くらくらして倒れる方もおられるようです。これに対し、献血を始める前から何本かの飲料を持っておき(会場には大量に飲料が置いてあるのでいくらでももらえます)、献血中から少し多い目なくらい飲んでおくと、このような体調不良をほとんどなくすことが可能です。

④新型コロナなど、ワクチンを接種した場合
ワクチンは、人間が持つ「免疫」の仕組みを人為的に利用し、ウイルスや細菌などの病原体に対する抵抗力を作り出します(ワクチンの仕組みや種類については、「コロナワクチンとリスクマネジメント」を参照)。
この過程で、弱らせた病原体やウイルス、mRNAと呼ばれる遺伝子を体、すなわち血液に注入するので、これがそのまま献血で取り出されてしまっては、献血血液にそういった物質が紛れ込むことになりリスクがあります。

このため、日本赤十字は元々、以下のワクチンに応じて献血が不可となる時間を決めていました。

  • インフルエンザ、日本脳炎、コレラ、A型肝炎、肺炎球菌、百日ぜき、破傷風等の不活化ワクチンおよびトキソイドの接種を受けた場合…接種後24時間
  • B型肝炎ワクチンの接種を受けた場合…接種後2週間
  • 抗HBs人免疫グロブリンを単独または併用した場合…投与後6カ月間
  • 狂犬病ワクチン(動物にかまれた後)を接種した場合…接種後1年間
  • おたふくかぜ、風疹、BCG等の弱毒生ワクチンの接種を受けた場合…接種後4週間
  • 天然痘ワクチンの接種を受けた場合…2カ月間
  • 破傷風、蛇毒、ガスえそ、ボツリヌスの抗血清の投与を受けた場合…投与後3カ月

これに加えて、新型コロナウイルスのRNAワクチン(mRNAワクチンを含む)を接種した場合には、1回目、2回目いずれの場合も、接種後48時間を経過するまで献血が不可となりました。
なお、現在公費接種の対象となっているRNAワクチンは、ファイザー社と武田/モデルナ社となります(2021/8/21現在)。 また、その他の種類のワクチンを接種された方は、現時点では献血不可とのことです。
加えて言うと、予防接種「前」の献血については基本的に制限していないとのことです。

【令和3年5月14日から適用開始】 新型コロナウイルスワクチンを接種された方の献血受入れについて(日本赤十字)

2.骨髄バンクについて
骨髄バンクとは
人間の血液は、白血球や赤血球、血小板などの血液細胞から構成されていますが、これらの細胞は全てが「骨髄」(骨の中心部にある組織)の「造血幹細胞」という一種類の細胞から作り出されています。この骨髄において異常な造血細胞が無秩序に増加し、正常な血液細胞の増加を妨げる状態が白血病です。白血病になると、赤血球の減少による貧血や、白血球の減少による抵抗力減、そして血小板減少によって出血しやすいなどの症状が現れます。

この白血病は血液のがんと言われていますが、今のところ抗がん剤・放射線と骨髄移植によるものが代表的な治療法です。
骨髄移植とは、抗がん剤や放射線によって白血病幹細胞などの病原を死滅させ、その後正常な骨髄を移植することで、正常な造血力を再生させる治療法です。
この骨髄移植は、患者のみならず移植細胞の提供者にも大きな負担がかかることや、拒否反応が発生しないよう「型」の合う提供者を探さなければならないことから、効果は大きいものの容易な方法ではありません。
骨髄バンクは、このような患者さんを救うため、善意による骨髄提供の仲介を行うために設立されました。提供者となるドナーを多く集め、移植を必要とする患者さんとのマッチングを迅速かつ公平に行うことをその使命としています。
ドナー登録については様々な場所で受け付けが行われており、もちろん献血会場にも受付窓口があります。

骨髄バンクの抱える問題
トップ水泳選手の急性白血病が取り上げられた関係で、ドナー登録を希望する人々が急に増えたそうです。ドナーとなれるのは20歳以上55歳以下(登録自体は18歳以上54歳以下)の方だけで、しかも多様な型が必要だったり、献血以上に様々な制約がありますので、慢性的に不足している状態が多少改善されるかもしれません。
しかし、実際には「キャンセル」という深刻な問題も起きているそうです。
実際にあった話として看護師さんから伺ったのは、こんな話です。
小さなお子さんが白血病となり、せっかく待ちに待った「型」の合うドナーが見つかったのに、移植直前になって「キャンセル」された(制度上キャンセルを制限することはできず、理由も聞けない)ことがあったそうです。ご両親のお気持ちを思うと胸が痛みます。
実際登録はしたものの、提供する場合には数日入院しなければならないこと、提供側にも副作用の出る可能性があることなどから、このようにキャンセルする場合が出てくるそうです。

3.ロータリークラブ・ローターアクトクラブの活動
私が所属するロータリークラブ(世界200以上の国と地域、120万人を超えるメンバーで構成された奉仕団体)においては、献血や骨髄バンクの活動を長きにわたり支援しています。
ロータリークラブとともに活動する、30歳までの若者で構成された「ローターアクトクラブ」とともに、各地の献血会場でPRや誘導、骨髄バンク説明員などのボランティア活動に汗を流しています。
会場で見かけたら、是非激励してあげて下さい。

4.宗教と輸血
時折、宗教上の理由から、本人や家族により「輸血を拒否」した場合がニュースになります。
我が国は信教の自由(憲法20条)、自己決定権・幸福追求権(同13条)が認められていますが、他方医療機関としては治療上、献血しなければ患者の生命が危険な状況を放置するわけにはいきません。実際、宗教上輸血を拒否する患者に同意なく輸血した医療機関が賠償請求された場合もありました。
このため、現在はほとんどの医療機関が「宗教上の理由により輸血を拒否する患者さんへの基本方針」といったポリシーを定めて公開し、そのような患者さんの理解を得るようにしています。
基本的には「相対的無輸血(患者さんの意思を尊重して可能な限り無輸血治療に努力するが、輸血以外に救命手段がない場合には輸血する)」の立場を採り、「絶対的無輸血(いかなる事態になっても輸血をしない)」は否定する、という内容となっています。

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宗教上の理由により輸血を拒否する患者さんへの基本方針の例(神戸赤十字病院)

みんな知らない「役員」の怖い話

1.はじめに
税理士法人耕夢 代表社員の塩尻明夫です。
私は今「公認会計士・税理士・公認不正検査士・認定登録医業経営コンサルタント」として仕事していますが、元々は大学院まで機械工学を勉強していました。
物心ついた時から機械いじりが好きで、ガラクタとドライバーと半田ごて(電気回路を接続するために使う、一種の溶接器)がオモチャがわりという生粋の理系少年でしたから、そういった理系の道に進むのは当然のことでした。

さて理系というと「研究者」や「開発者」といった役割が多いイメージで、「経営者」とは対極の存在と思われがちです。

しかし、実際には理系出身で取締役に就任したり、経営者になったりという例もたくさんあります。これは立場や巡り合わせだけではなく、「会社経営に必要なのが営業や経理財務だけではない」ことが理由です。少なくとも我が国の産業で根幹を支える製造業においては、理系の能力も経営上必須なのです。

そんな理系の皆さんが取締役になったら「ぞっとする」話を今日は書いてみます。

社長イス・ハイバックチェアのイラスト

2.あなたは執行役員 or 取締役?
一般に「役員」と呼ばれる会社の役職にはいろいろあります。
「代表取締役CEO」といったら、なんだか偉そうですよね。
しかし、こういった呼び名の意味、皆さんどれくらいご存知でしょうか。
昔とある役員会で質問したら、誰も答えられなかったことがありました…
ということで、おそらく世の中で最も短い決定版の説明を作りました。

①法律(会社法)で定めたもの
「代表取締役」、「取締役」、「監査役」といった割と堅めの名前は、株式会社などの会社に関するルールを定めた「会社法」に定められています。
会社の経営に携わるのが「取締役」、その中で会社の顔として代表するのが「代表取締役」、取締役の仕事を監督するのが監査役です。
また取締役の会議を「取締役会」、監査役の会議を「監査役会」と呼びます。

この仕組みは日本やドイツ的で、アメリカの場合は「取締役」はどっちかというと日本の監査役のように業務を執行するトップの仕事を「取り締まる」役目になっています(この形は日本でも少し取り入れられつつあります)。
これらの役職には任期があり、1年~10年という任期が終わると一旦退任し、続けたければ就任時同様株主総会で選任される必要があります。

②組織の形に応じた呼び名
皆さんに最も馴染みのあるのは「社長」、「会長」、「常務」、「専務」、「相談役」といった役職名です。「執行役員」、「兼務」や「顧問」などもあるかもしれません。
社長が会社のトップであることはなんとなくわかりますが、会長はその上?また常務と専務がどう違う?

こういった説明は本やWEBなどで一生懸命なされていますが、実は「どれにも法的根拠は一切ない」のです。
これらは、日本的な会社組織を作る上で、組織図上従業員の上に位置する役職として扱われていることが多いようです。
実際の所、専務や常務がその位置に応じた意思決定を、明確な責任を伴って行っているかというと疑問を持たざるを得ない場合も多いです。

③機能に応じたもの
「CEO(最高経営責任者)」、「CFO(最高財務責任者)」、「COO(最高執行責任者)」という名前はよく目にします。「CTO(最高技術責任者)」も最近増えてきたようです。
これらも社長や専務同様、法律に基づく名称ではありません。
それぞれの機能に応じた経営判断や執行を、それぞれの責任を負って行う者のことを言います。
これらは主にアメリカでの企業経営形態、すなわち「トップダウン的な経営組織」を動かすために生み出されたものであると言われています。

3.取締役の責任
①会社法の規定
ここからは「会社法」に定める取締役について、本題である「ちょっと怖い話」をします。
まず、取締役と会社との関係は「委任」関係とされています(会社法330条)。
この委任関係がある場合、委任された側である取締役は「善管注意義務(ぜんかんちゅういぎむ、善良なる管理者としての注意義務)」という割と幅広い義務を負うことになります(民法644条)。
また法令、定款、総会決議を守り、職務を忠実に遂行する義務も負います(会社法355条)。会社との競業に関する規制や利益が相反する取引に関する規制もあります。
そして、会社法第423条には「その任務を怠ったときは損害を賠償する責任を負う」と定められています。
これらの責任は、会社に対するものや外部の債権者に対するものの両方があります。
単なる従業員と違い、取締役の場合は直接的に責任を負わされる場合があるのです。

②どんな場合に責任が?
取締役が自分や関係者を利する目的で会社に損害を与えた場合は、①以前に「最大懲役10年」という「特別背任(会社法960条)」という罪になります。

しかし、自分がやっていない行為、例えば代表取締役など他の取締役が明らかに違法だったり放漫な経営をしているのに、取締役会で「反対しなかった取締役」も責任を負うこととされているのです。ここ非常に重いところで、「反対する」だけではなく、「反対したことを議事録に書く」必要があります。
会計不正で粉飾し、会社が責任を負うべき場合もこの対象です。

③専門外の取締役は責任を負わなくてよい?
以前、不正会計や粉飾が問題となったとある会社で、技術系の取締役が週刊誌のインタビューで「そんな会計のことなんて技術系の自分には関係ないしわからないから」と答えていたケースがありました。

これは大きな間違いなのです。

会社法は、取締役の責任追及に際して、その専門性を条件としていません。
つまり、会計上の責任であっても理系の取締役は会計担当の取締役と同じ重さの責任を負うことに(法律上は)なっているのです。また逆も然りで、技術的な不正(検査不正など)の場合は、文系業務の取締役も同じ重さの責任を負うことになります。

実際の所は、「その専門性によって問題を知りえたかどうかが変わる」ため、裁判上責任を問われると判断されることがまだ少なく助かっている方が多いようです。
要するに、責任を負わされるかどうかの可能性は少し低いが、もし負わされたら責任の重さは同じ、ということになります。

しかし、会社法で責任を負うことになっている以上、なんらかの事情で問題を知っていたと裁判上判断される場合には同じ責任を問われてしまいます。取締役になった以上は、自分の専門以外のことも勉強し、口を出したり反対したり、また差し止めたりといった行動が必要になっていると言えます。

④執行役員は?
「取締役」のつかない「執行役員」はどうでしょうか。
執行役員制度は、日本においては1997年にソニーが最初に導入したと言われています。
取締役ではありませんので、前述のような取締役の法的な責任はなく、部長や課長といった従業員としての責任が課されることになります。

もし自分の専門外の法律や責任を勉強する気が全くない方が役員就任の打診を受けたら、取締役にならず執行役員で止めておくことをお勧めしたいところです。

⑤破産した場合は?
会社が破産した場合はどうでしょうか。
取締役はその債務を押し付けられるでしょうか?
ここについては、「負わなくてよい」が正解です。
会社の債務については、個人保証などをしていない限り、取締役が責任を負う必要はありません。
(代表取締役などトップは保証をしている場合が多いと思いますが)
しかしこれで安心してはいけません。
破綻に至った原因がその経営方針であった場合、③で述べたように保証をしていない取締役にも経営責任があるということで、会社法上の責任が問われる可能性があります。

4.取締役になるか?と言われたら
長年頑張ってきて、オーナーなどから「そろそろ取締役になるか?」と問われたら…
ほとんどの場合、それは純粋にねぎらいからの言葉だと思います。また皆さん今回のようなことをあまり知らないので、全くの善意で出世させると思っただけと思います。
このため、普通「評価された」と喜ぶ人が多いでしょうね。

しかし、今回説明したように会社法を深く知ると、手放しで喜ぶわけにはいきません。

私がそんなシチュエーションでお勧めしたい返事は

「ありがとうございます。でも、私には取締役はもったいないので、執行役員程度にして頂けますか」

といったところです。

 

それでも「いやいや、絶対君がならないと」とか「断って俺の顔に泥を塗るのか!」などと言われ出したら、「裏に何かある」と思った方がよさそうです(笑

ランサムウェアなど迷惑メール、どう防ぐ?

メールを使うと必ず問題になるのが、望まない広告やいかがわしい内容が書かれた迷惑メールや、コンピュータウイルスが添付された危険メールです。
特に最近、「ランサム(身代金)ウェア」と呼ばれる手法が話題になっています。
本物と紛らわしいアドレスなどをクリックすると、使用しているファイルなどが全て暗号化されてしまい、身代金を払うまで解除されない、という犯罪行為です。
この手法で、アメリカにでインフラの天然ガス施設がストップしてしまう、といった大きな被害も出ています。

電子メールは現代のビジネスに無くてはならないものですが、他方このような迷惑な代物も呼び込んでしまいます。

この記事は、私の事務所を例に、どのような方法で防ぐことが出来るかをご紹介します。

1.電子メールのリスク
アメリカ民主党の大統領候補だったヒラリー・クリントン氏は、国務長官時代に、機密情報を含む可能性のある電子メールの送受信に私用電子メールアドレスを使用していた事実で批判の的になっています。この問題は、2016年米大統領選でドナルド・トランプ氏に敗れた原因の一つともいわれています。
​​​​​​​こういう概念自体が、いわゆる冷戦時代には考えられなかったことですね。

一般ビジネスの世界においても同じです。現在「会社の業務に電子メールを使用していない」という会社は、余程の理由がない限りもうほとんどないと思います。

ただこの電子メール、実はその成り立ちを原因として、元々あまり機密性が高くない仕組みを持っています。

例えば、特にセキュリティ上の配慮をしない場合、一定の知識を持った者が途中で傍受することが可能です。また、他人に成りすましてメールを送受信することもさほど難しい技術を要しません。

このような問題は非常に大きいものの、技術的専門性が高く「添付ファイルへのパスワード付加」などで対処も可能ですから今回は触れません。

普通のユーザーには、「迷惑メール」や「ウイルスメール」、「ランサムウェア」といった被害がもっと実務的に問題となるのではないかと思いますので、以下ご説明したいと思います。

 

2.迷惑メール
迷惑メールは、古いコメディ「モンティ・パイソン」の一コントから転じて俗に「スパム」と呼ばれています。

その概念は広く、単なる広告メールから、詐欺やアダルト目的などいかがわしい情報を送信するもの、またデマを次々に転送してばらまかせるものまで、多岐にわたります。

仮にメールアドレスを変更しても、どこからか不正に収集した個人情報を使って次々送信してくる、文字通り迷惑なメールです。

3.危険メール
危険メールは迷惑メールに含まれる概念です。
ただ、迷惑メールが単に不必要な情報を送りつけてくるのに対し、危険メールは受信した者やその周囲に明確な悪影響を与えます。以下のようなものがあります。

  • ウイルス添付メール…メールにコンピュータウイルス(悪意をもって動作するプログラム)が添付されており、添付ファイルを閲覧などするとコンピュータが感染してしまいます。
  • フィッシングメール…綴りは「Phishing」です。電子メールを介して偽のページなどに相手を誘導し、クレジットカード番号等の個人情報を聞き出す詐欺です。
  • ランサムウェア…パソコンのデータファイルを勝手に暗号化し、「解除して欲しくば金を払え」と脅迫する、一種のウイルスです。ランサム(身代金)の意味通りの目的で送られます。

大阪府警WEBより ランサムウェア「Wannacry」
大阪府警ページより ランサムウェア「ワナクライ」画面

4.日本の法律における規制
迷惑メールの規制に関する日本の法律としては「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」と「特定商取引に関する法律」がありますが、正直大きな効果を上げているとは言い難い状況です。

5.迷惑メール、危険メールへの対処
何もしない?
対処方法として「何もしない」方法もあり得ますが、ウイルス等のターゲットとなるパソコンで受信し、感染した場合には顧客企業へのウイルス送信元になったり、社内の機密文書が流出したりといった大きな被害が出かねません。
また、ランサムウェアにより重要なファイルが暗号化されると、全ての業務が止まってしまう可能性もあります。解除しようと身代金を支払うことは、犯罪者集団を助ける(金銭だけではなく、「どこどこも支払ったよ」という実績となる)ことにもなり大きな問題があります。

何らかの被害が出た場合には、対策を取っていなかった企業はその賠償などの責任を免れない可能性が高くなります。

ウイルス対策ソフトをパソコンにインストールして頻繁に更新している場合にはこのようなリスクは大きく減りますが、それでもランサムウェアや不要な広告などの「迷惑メール」は完全に防げません。

メールソフトで対策
この方法は、メールソフトにウイルス対策ソフトの機能を追加して、受信時に対策を取るものです。

メールソフトがメールサーバーに接続した際、受信するメール一つ一つを検査し、危険メールや迷惑メールと判断されたものは受信フォルダとは違う場所に「隔離」するか削除し、受信してしまうのを防ぐものです。

また、危険メールや迷惑メールと判断されたメール送信元を登録し、次回からはその相手からの受信自体を拒否するという方法も採ります。

ただ、この方法はそれぞれのパソコンに適切な設定を行っておく必要がありますし、ユーザーが別のメールソフトを使っていたり、機能を無効にしていた場合には動作しません。また、誤って拒否すべきメールを受信してしまう場合も多くあります。

メールサーバーで対策
この方法は、メールサーバーそれ自体が危険メールや、迷惑メール隔離機能を持っているものです。

メールサーバーが危険メールや迷惑メールの特徴を記録した膨大なデータベースを持っており、人工知能等も利用して、サーバー側で迷惑・危険メールをブロックします。

現在、大手インターネットプロバイダはおおよそこの機能を備えたメールサーバーを提供しています(OCNの例 https://support.ntt.com/ocn/support/pid2900000s5y)。

OCNの場合、危険メールや迷惑メールのブロック率はほぼ100%で、また誤ってブロックしたケースもほとんどありません。加えて、1週間に1回、どのようなメールがブロックされたかのリストを送ってきますので、誤って重要な連絡をブロックされてしまうことはほとんどありません。

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「迷惑メール自動判定(無料)」と「迷惑メールブロックサービス」(OCN)

コストや使い勝手を考えると、③に②を組み合わせる方法が最も効果的なのではないかと考えます。

④メールを使わない(ビジネスチャットツールの利用)
前述の通り、メールはそもそもインターネットの黎明期に学術的な発想で生まれた手法です。
メールはインターネットを構成する回線やサーバ中を転送され、多くが暗号化されずにのぞき見が可能な状態となっています。
また、メールを多く使われる方はお分かりと思いますが、多数の同報送信、「cc:」や「Bcc:」といった補助送信先が含まれたメールのやり取りが多く繰り返されると、議論がどうなっているかわからないことも多くあります。そのようなメールに、共同作業のファイルが添付されていたらどのファイルが正しいバージョンかもわからなくなります。

このような状況を解決するため、多くの企業でメールの使用をやめる意思決定がなされ、その代わりに「チャットツール」と呼ばれるコミュニケーションツールが台頭しています。

現在多く使われているチャットツールは、下記のようなものです。

  • Slack(スラック)
  • Chatwork(チャットワーク)
  • Microsoft Teams(マイクロソフトチームス)
  • LINE Works(ラインワークス)

これら以外にもチャットツールがありますが、ビジネスに利用する場合にはできるだけ利用者の多いものにすることや、無料であるからといってセキュリティレベルの不明なものなどを使わない、といった一定の配慮は必要です。

弊所は、耕夢システムの一部である「Chatter(チャター)」を利用しています。
このChatter、セールスフォース社が提供しているのですが最近上記のSlackを買収したとのニュースが流れ、これらの勢力図がどうなるのか興味ぶかい所です。

 

「生産性」とは言うけれど(耕夢システムのご紹介)

1.日本の生産性が低い?
日本の企業はよく「先進国中で生産性が低い」と言われます。
この生産性、一般的な定義は

「労働時間当たりで生み出した付加価値」

とされています。

付加価値というのは、企業活動で世の中に生み出された新しい価値のことで、企業の利益や給料、賃借料や金利、税金などを合計したものです。
要するに、その企業活動が無かった時に比べて世の中がどれくらい(金銭的に)良くなったかを示す指標と言えます。

ということは、「生産性の低さ」は、要するに

「世の中を(金銭的に)に良くしたければ、他の国より長く働かなければならない」

ということを意味します。

「だから日本は長時間労働から脱却できないのだ」ともいわれることがあります。

国レベルの労働生産性については、国が生み出した付加価値(GDP)を総労働時間で割って計算する場合が多いので、その統計における経済構造や計算基礎で結果が割とばらつくため、国どうしの比較(マクロ経済レベル)において単純に断じるのは議論があるようです。

日本の労働生産性
OECD加盟国の時間当たり労働生産性比較(2017年 総務省)

2.それでもやはり生産性は低い
しかし、やはり日本の一般的なビジネス環境においては、生産性を低くする要因が結構あるように思います。

分かりやすい例で書いてみます。
同じ場所から出発し、同じ目的地に向かう2台のタクシーがあるとします。

  • ある運転手は、豊富な知識をもとに、裏道も上手に使った効率的なルートで、信号や渋滞にもつかまりにくい適切で上手な運転により、早く到着しました。
  • もう一人の運転手は、何も工夫しない、信号や渋滞にはまりまくるルートを走り、希望の時間よりずいぶん遅れて到着しました。

さて、今のタクシー料金ルールで、運転手の売上が高いのはどちらでしょうか?
前者の運転手は持てるスキルを最大限使ってお客様に良いサービスをしたにも関わらず、ぼんくらな後者よりずっと低い売上しか上げられないのです。

なんだタクシーの例だから我々の会社とは関係ないじゃないか、と思うかもしれませんが、違います。
皆さんがお勤めの、または経営される会社の中にこういうおかしな評価が存在しませんか?
きちんとした成果測定がないため、このタクシーのような、本質とは逆の評価結果になっているケースはありませんか?
きちんとした成果測定のない職場においては、同じ問題が発生するのです。

よくあるのが、「日中タバコ休憩などでサボっていて残業の多い労働者は残業代が増えて給与が高く、一生懸命業務効率やコミュニケーション、スケジュールを工夫して時間内に仕事を終えている労働者には残業代がつかず、給与が低くなってしまう」という例です。
もっと厄介なのは、仕事の内容を評価するための測定がなされておらず、上司は残業している社員を「頑張っている」、していない社員を「仕事しておらず暇」と評価してしまう可能性があることです。

そうなると、企業全体の生産性が悪化するばかりか、「本当に良い仕事をしている良い社員」が評価されない現実に幻滅して離職してしまうという、最悪の事態を招きかねません。

3.成果測定の重要性
このように、測定手法がないか、それ自体に欠陥があると、生産性の低下だけではなく組織上も大きな軋轢を生む恐れがあります。
「生産性の低さ」という問題のあるところには必ず「正しい成果測定がない」という背景が存在します。
しかしこの成果測定、戦後の高度成長期、言い換えればアナログな世界においては大変難しいものでした。
何しろ表計算すら使えない環境ですから、給与の計算に使う労働時間の集計すらそろばんや電卓で行う必要があったのです。
そんなわけで、社員の個別の仕事内容やその所要時間を集計するなど極めて大きな手間、コストのかかる作業が必要で事実上不可能でした。
でも、「昨日より今日、今日より明日はもっと良くなる」という希望を持たせる著しい経済成長が、それを見ずに済む環境を与えてくれていたのです。

しかし、現在のようにITの普及した環境においては、大きな手間をかけずに「社員のアクティビティに基づいた詳細な成果の測定」が可能となっています。
成果測定が可能になれば、先に挙げたような「頑張っているように見える」社員のフェイクも見破れますし、本当に頑張る社員への評価も正しいものになるはずです。
何より、昭和期のような「みんな一斉に成長する」という経済が全く望めない現在、この問題を「見ぬふりする」ことは、企業だけではなく社会や国自体の衰退をさらに加速してしまうでしょう。

4.税理士業界の問題
実は、私たちが属する税理士事務所の業界は、この「成果測定」についてかなり遅れた環境にあると言わざるを得ません。
労働時間については法律の規制もありタイムカード等で把握しているのですが、職員が一日どのような仕事をどれだけしたか、という記録については、顧問先ごとに何をしたか、という程度の記録がほとんどです(実際にはこの記録すら作成していない事務所もあります)。

これに加えて成果の判断は「担当する顧問先の報酬」「残業時間」等「単純な数字」に応じて行われることが多いため、入力スタッフを独り占めして売上を増やしたり、新人への指導を嫌がる、産休・育休社員を疎んじる(他人のサポートをすると自分の時間が減って担当する仕事が進まないため)といった問題や、多く残業している人間を「頑張っている」、効率よく仕事した人間を「仕事していないと判断する」、といった誤解が多く発生します。

よく言われるように、税理士業界は過当競争の真っただ中にあります。
多くの事務所が価格競争に晒され、無理なコストダウンや人件費の高騰(経験者を最優先することが多く、人材不足も深刻です)によってどんどん収益性が下がっているのに、生産性の低下原因がどこにあるのかを把握できずにいるのです。

5.耕夢システム
こういった問題に対処するため、弊所が開発・運用している「耕夢システム」には、顧問先ごとよりさらに詳細な「プロジェクト(会計、税務、相続、コンサルなど)単位」の時間管理を詳細に記録する機能が盛り込まれています。自分の担当業務だけではなく、他人のサポートも正確に記録され、自身の業務時間と同等以上に評価される仕組みとなっているのです。
このことは「未経験者でも手厚い周囲のサポートで業務がこなせる」という副次的効果も生み、人材難への解決策になっています。

また、年間のどのようなタイミングでどのような時間発生があったかをグラフで確認する機能もあり、生産性の改善や顧客に対する価格変更の説明にも大きな効果を生んでいます。

発生時間推移
時間発生実績グラフの例(耕夢システム)

プロジェクトの売上予算に対して時間の発生が想定より過大となっている場合には「採算アラート」が発出され、異常な時間発生について分析、対処を促す機能も装備されています。異常な時間発生には様々な原因があり、担当者の単なる不効率だけではなく、イレギュラーな事象の発生、顧客要求の増大など、原因によって対処のまったく異なる場合があるためです。

この結果、弊所の生産性は大きく向上しています。
業務時間を変えずに1~2割増の新規業務をこなしたり、コロナ禍においてテレワークや短時間勤務を織り込んでも仕事の成果が変わらないなど、耕夢導入後良い傾向が続いています。

今後はさらに精緻な評価制度を社会保険労務士等専門家とともに開発し、より良い事務所運営を目指します。

 

新規事業を探すには(天才ではないあなたの為に)

1.ポストコロナ・ウィズコロナと事業再構築補助金
現在、業種業態の転換や新しい事業に取り組む企業が増えています。
これは、コロナ禍の中、またポストコロナ・ウィズコロナを見据えた場合、戦後から連綿と続く昭和的な価値観や経済社会が大きく変化し、それにビジネスを適応させる必要があるからです。

そういった状況に合わせ、国は「中小企業等事業再構築促進事業」という制度を創設しました。
この制度は、下記①~③に該当する中小企業等に対し、最大1億円の補助金を出して新事業や事業再構築を支援するというものです。

①直近6か月間のうち任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前の同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少
②事業計画を認定経営革新等支援機関や金融機関と策定し、一体となって事業再構築に取り組む
③3~5年で付加価値額の年率平均3.0%(一部5.0%)以上増加又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0%(一部5.0%)以上増加の達成

事業再構築補助金については、弊所岐阜事務所(しのだ会計)のブログにてご紹介しており、今後新しい情報が出たら随時お知らせ致します。

2.新規事業の探し方
この制度の適用を受けるためには、新しい事業について事業計画を策定し、そして付加価値の増加につなげる必要があります。

では、新規事業を探すにはどうしたら良いのでしょうか。
安藤百福さん(日清)のチキンラーメン、またスティーブジョブス(アップル)のiPhoneといった、革新的というより世界を変えるほどの革命的新事業が思い浮かんだら素晴らしいですよね。
しかし、普通の皆さんがそんな発想を得るのは至難の業です。
(実際、上の両製品とも、一つ間違えば大失敗になっていたかもしれません)
では、そういった「天才ではない」普通のあなたが新事業を思いつくためにはどうしたら良いでしょうか。
それにはちゃんと定石があります。
今回は、私たち税理士が普段お客様にお話ししている内容を、少しだけご紹介したいと思います。

①基本的な考え方
どんな事業でも、収益をあげなければ意味がありません。
正確に言うと、世の中に付加価値を生むような事業でなければ、そこから収益は取れませんし、持続しないのです。
100円で仕入れたものを80円で売るのは事業でしょうか?
ひょっとしたら安いものだけを好む人には大人気かもしれませんが、すぐ資金が立ち行かなくなるでしょう。
これは単に損をしているだけではなく、折角100円という価値のついているものを80円に落とすことで、経済的観点からは付加価値を下げる(世の中の価値を下げている)「悪」なのです。
また、いくら収益を上げても他の参入などによって継続できなければ意味がありません。
継続して安定した収益を継続するには、何らかの参入障壁が必要なのです。
では、安定した収益を継続するために必要な要素は何でしょうか。
要約すると以下の3つになります。
・ゼロから始めない
・2つ以上を組み合わせる
・嫌なことから探す
これを以下説明していきます。

②ゼロから始めない
「新規事業」というと全く新しい何かを見つけるものと思われていますが、実際には(そして普通であるあなたにとっては)そうではありません。
必ず、自身がもともと持っている人、モノといった資源を活用することから考えるべきです。
人としては従業員だけではなく、友人・取引先だけではなく、ひょっとしたらライバルのような自分を取り囲む全ての者が含まれます。
また、モノについても同じで、所有する資産だけではなく、使えるものすべてを見逃さずに使うべきです。
あなたが既に活用している資源を使うのですから、他の人たちよりも一歩も二歩も先んじていることになります。これが大きな参入障壁になりうるのです。

例:ホンダオデッセイ
1990年代、車の需要がミニバンやSUVに移る中、ブームに乗り遅れたホンダは売上が低迷していました。
ここで、起死回生の企画として作り出されたのが「オデッセイ(初代)」です。
実は、それまでのホンダは「車高が低くてカッコいい車こそ善」というスタンスで、ミニバンやSUVのような背の高い車を作る設備が無かったのです。しかし、業績も悪化している会社に全くの新工場を作る余裕はありません。
なんと、ここでホンダがとった判断は「背の低いセダン用工場で作れる限度の車高で設計する」という「あるものを使う」方針でした。
この意外な戦略が大ヒットを生みます。
背が低い代わりに、様々な設計上の工夫をして車内を広くしたことで、「使い勝手はいいけど見た目や走行性能は悪い」というミニバンの常識を覆す、スタイリッシュなデザインと高い走行性能を得たのです。
この結果、一時は目標の30倍を超える販売実績を達成するに至りました。

オデッセイ
(写真:ホンダ オデッセイ)

③2つ以上を組み合わせる
何かとネガティブな印象を持たれることもある「ホリエモン(堀江貴文氏)」ですが、非常に良いこともたくさん述べています。
その中の一つが「100万分の1の人材になる方法」です。
100万分の1とはオリンピックで金メダルを取るような確率で、とても普通の人が目指せる水準ではない、と思われがちですが、彼は書籍の中で下記のように述べています。

「まず、対象や分野は何でもいいということを念頭に置いてください。そこで『100人の中で1番になる』ことを考えるとどうでしょう。頑張れば何とかなれるものが見つかるのではないでしょうか。その『100分の1』の要素を自分の中で3つ見つければいいんです。そして、3つを掛け合わせれば『100万分の1』になれます。

希少なほど付加価値は上がり、参入障壁が大きくなるのは当然ですが、このような考え方は「普通の人」を勇気づけてくれます。
彼が言うように100万分の1でなくても、100分の1を2つだけでも1万分の1になります。
企業経営としては十分な水準です。

例:機能性チョコレート
元々チョコレートは完全な嗜好品で、甘くておいしいといった魅力以外は、虫歯や肥満などネガティブなイメージが付きまとう食品でした。
しかし、最近は機能性表示食品制度開始が追い風となり、「ポリフェノールの強化」や「脂肪や糖の吸収を抑える」「乳酸菌入り」などといった健康への配慮を組み合わせたチョコレートがヒットしています。

チョコレート効果
(写真:明治 チョコレート効果)

④嫌なことから探す
昔から「好きなことで仕事はできない」と言われますが、別に「自分が」好きなことを仕事にするのは悪いことではないと思います。
しかし新規事業を探す場合、「好きなこと」を追っても何も出てきません。
そこには「満足」しかないからです。
世の中のビジネスのほとんどは、「嫌なこと」「困ること」を解決するために生み出されたと言っても過言ではありません。そういう人間の困ったことを解決するから付加価値を高く出来るのです。
自身が嫌なことや困ることを探すのも良いですが、やはりいろいろな人にそれを聞き出すことは大変有効です。普段のビジネスや人付き合い、インターネットやその他メディアなどにおいて、「人が何を嫌がり、困っているか」という観点のアンテナを張っておくことはとても重要です。

3.情報収集する・相談する
ここまで読んで「なんだそんなことか」と思った方もおられるかもしれません。
そういう方は既に事業で成功している方だと思います。
しかしこれから新しい事業で成功を目指す人は、この3条件を中心に据えてひたすら考えてみて下さい。
とはいうものの、一人で単に考えているだけではなかなか良いものは生まれません。
また、いくら良い事業アイデアがあっても、資金の手当てが無ければ実現できませんし、法律や税金をはじめとした我が国の制度も知らなければなりません。
公的な機関や団体としては中小機構、商工会議所などが起業や新事業のサポートをしていますし、法律の面では弁護士、お金や税金の面は公認会計士や税理士が、また社会保険労務士(雇用など)、中小企業診断士(経営)、司法書士(登記)、弁理士(特許など知財)といった様々な専門家の中にもこのような新事業をサポートしてくれる方たちが多くいます。また、冒頭に説明しました補助金などのサポートには「認定支援機関」という存在も役に立ちます。

様々に整備された制度やサポーターを活用して、新しい時代の新しい事業を創り上げる方が一人でも多く生まれるよう、我々も頑張りたいと思います。

令和3年税制改正の大綱~産業競争力強化に係る措置

今回から、令和3年税制改正の大綱に記載された改正項目をご紹介していきます。
なお、ご紹介はこちらのブログと、耕夢グループ しのだ会計事務所のブログ にて分担して執筆します。

1.産業競争力強化に係る措置(全体像)
ポストコロナに向けた経済構造の転換・好循環の実現を図るため、企業のDX(デジタル技術を背景にした企業経営やビジネスの変革。デジタルトランスフォーメーション)及びカーボンニュートラル(温室効果ガスの吸収・排出バランスを目指す)に向けた投資を促進する措置を創設するとともに、こうした投資等を行う企業に対する繰越欠損金の控除上限の特例を設けることとされました。
これらの税制は「産業競争力強化法」(日本経済の再興のための産業競争力の強化を目的として、平成26年1月20日に施行された法律)の改正を前提としており(施行予定は2021年6~7月頃)、適用には同法の計画認定が必要となる予定です。

2.DX投資促進税制の創設
「つながる」デジタル環境の構築(クラウド化等)による事業変革を行う場合に、税額控除(5%又は3%)又は特別償却(30%)ができる措置を創設されます。
この制度は、従来型のソフトウェア(無形固定資産)だけではなく、クラウドシステムへの移行に係る初期費用(繰延資産)も対象となります。
DX投資促進税制の適用については、事業適応計画の認定要件を満たした上で、デジタル(D)要件と企業変革(X)要件について主務大臣から確認を受ける必要があります。
税額控除については、原則取得価額の3%、親子会社(会社法に基づくもの)間グループ「外」の事業者とデータ連携する場合は5%となります。
また、3.カーボンニュートラル投資促進税制の税額控除額と合わせ法人税額の20%が限度となります。

3.カーボンニュートラルに向けた投資促進税制の創設
カーボンニュートラルに向け、生産プロセスの脱炭素化に寄与する設備、又は脱炭素化を加速する製品を早期に市場投入することでわが国事業者による新たな需要の開拓に寄与することが見込まれる製品を生産する設備に対する投資について、税額控除(10%・5%)又は特別償却(50%)ができる措置た創設されます。
税額控除については、原則取得価額の5%、温室効果ガスの削減に著しく資するものは10%となります。また、2.DX投資促進税制の税額控除額と合わせ法人税額の20%が限度となります。

カーボンニュートラル

4.活発な研究開発を維持するための研究開発税制の見直し
売上高が減少するなど厳しい経営環境にあっても研究開発投資を増加させる企業について、従来からある税額控除の上限を引き上げます(現行:25%→30%)
同時に、インセンティブを高めるための控除率カーブの見直し(適用される計算式が変更されます)及び控除率の下限の引下げ(現行:6%→2%)を行います。

5.コロナ禍を踏まえた賃上げ及び投資の促進に係る税制の見直し
雇用環境の悪化に対応するため、新規雇用拡大に着目した形に見直しが行われます。
具体的には、従来の「継続雇用者への賃上げ」を前提とした計算方式から、「新規雇用者」を対象とする方式に変更されます。
この結果、この税制の適用を受けるためには、既に雇用している従業員の給与等を増加させるだけではなく、新たに雇用する従業員の給与等を増加させることが必要となります。
この「給与等」の計算については、元々「雇用調整助成金等」は控除することとされていましたが、今回の改正で「控除しない(対象額が増える)」ことが明らかとされました。

6.繰越欠損金の控除上限の特例
コロナ禍の厳しい経営環境の中、赤字であっても果敢に前向きな投資(カーボンニュートラル、DX、事業再構築・再編等に関するもの)を行う企業に対し、その投資額の範囲内で、最大5年間、繰越欠損金の控除限度額を最大 100%(現行:所得の金額の 50%)とする特例が創設されます。

 

社畜が異世界に飛ばされたと思ったらホワイト企業だった

面白い本を見つけました。
「社畜が異世界に飛ばされたと思ったらホワイト企業だった」という、一見何のことやらわからないタイトルの漫画です。

カワイイ女性キャラが多くてちょっと気が引けるかもしれませんが、そこに騙されてはいけません。
レビューを見ると、働く側から見て「ホワイト企業って素晴らしい」といったとらえられ方をしていることもちろん多いものの、実は経営者にとっても非常に奥の深い論点がたくさん取り上げられています。

普段漫画を読まない経営者の方でも、是非読んで頂ければと思いご紹介することにしました。
私の事務所でも参考にしています。

121089627_3582035601836346_7943856894229396879_n[1]現在、第4巻まで発売されています。
この本のご紹介や画像はこちらをご覧ください。
社畜が異世界に飛ばされたと思ったらホワイト企業だった

1.はじまり
ブラック中のブラック会社「ブラックシステム」で30連勤の深夜残業中だったヒロイン、粕森美日月(かすもりみかづき)は、突然流れ星に打たれて気を失います。
気づいた時には、ホワイト中のホワイト会社「ホワイト製作所」ぐんま支店に中途入社した社員(自分)紹介の場でした。
ここから、かすみ(新しい職場でのニックネーム。前職の時は「ゴミカス」)の驚きの日々がスタートします。

2.エピソード1~残業・休出ゼロ
この職場、皆出てくるのは始業5分前で、定時にはピタッと仕事を終えて帰ってしまいます。
また有給休暇も積極的に取得し、出張のある営業職でさえ「多かった先月でも残業は5,6時間くらいかなぁ」といった具合。
始業2時間出社して深夜まで残業し、休日出勤や深夜残業は当たりまえ、時には会社に泊まっていた前職とはまさに「異世界」。かすみは最初そんな雰囲気に全くなじめず、「有給取れって首ってことですか???有給取ったら怒られるんじゃ…」なんて言い出す始末。

働く側からすると、残業がゼロで早く帰れるし、有給休暇がとれるのは物凄く楽な反面、残業たっぷり、有給なし、といった会社にとっては「労働時間が短くて損している」ように思えますよね。
年間休日120日、有給20日100%取得、一日7時間労働の場合、年間労働時間は1,575時間となります。これに対し、土日や年末年始、夏休みを出勤にし(+60日)、有給を全くとらない(+20日)、残業を一日3時間(10時間労働)とすると、年間労働時間は3,050時間となり、ほぼ倍働く時間が増えるように見えます。

しかし、経営管理の側面からみると、実際にはこれが全く逆なのです。
時間増を残業に換算すると、月120時間以上の超過になります。これは確実に過労死レベル。
超過時間のほとんどにおいて心身の疲労から生産性は落ち、ミスや体調不良も目立ち始めます。
サービス残業させるなんて言うのは論外ですから残業代は増加し、過酷な状況が原因の離職者も増え、採用費もかさむことから結局コスト増になってしまうのです。
最初から「所定時間しかない」ことを認識して、効率的に仕事をコントロールすれば結果としてトータルコストは下がります。
その仕組みは、現在様々に公開されているITやその他のノウハウを活用することで、どんな業種でも必ず実現することが可能です。

3.エピソード2~電車の遅れ
2時間前に出勤すると「早すぎて会社開いていない」と注意されたので15分前に出社しようとしたら、電車が故障で遅れてしまいました。慌てたかすみは会社に電話し、「走れば1時間くらいで行けます」と伝えます。会社は当然「動いてからでいいので遅延証明(ネットで可)もらって下さい」とそれを止めます。また、熱が出ていても、大雪が降りそうでもなんとか出勤して仕事を続けようとしてしまいます。

会社は雇用者として従業員の安全や健康を守る義務がある(労働契約法第5条)のですが、これは別に親が子を守るような愛情を基礎としたものではありません。そういった義務を守らないと、結局生産性の高い仕事時間を従業員から会社が安定して受け取ることができない、すなわち会社が健全な利益を上げられないからなのです。
実際、昨年地震や大雨といった災害が頻発した時、社員が無理して出社して結局帰宅難民になる、という光景が私たちの周りでも繰り返されました。こういう場合、まずは従業員の身を守ることを最優先とし、その場合でも業務が継続できる手段(BCP・事業継続計画)を普段から準備しておくことが、結果として収益性の向上につながるのです。

4.エピソード3~セクハラ、パワハラ
配属された部署に男性が数人いたので、かすみは先輩のいずみにこっそり「セクハラとかパワハラとか大変そうですね」と聞きますが、いずみは「全くないし、もしあったら部課長クラスでも飛ばされる」と答えます。
それに驚いたかすみは、「セクハラくらいで飛ばされていたら男の人は誰もいなくなっちゃいますよ」と食い下がっていずみを呆れさせます。
他の話でも、朝礼が通常無いと知って「業績が悪かった人の発表と懺悔の謝罪はいつやるんですか?」と問いかけています。
前職で如何に過酷なセクハラ、パワハラを受けていたかと心配になりますね(本書には描かれていますのでここには書きませんが、本当にひどいもんです)。

こちらも当たり前の話で、セクハラやパワハラが法律上禁止されているだけではなく、従業員の生産性を破壊的に下げ、機会損失など隠れたものも含め、コストを大幅に増やす影響があることは既にはっきりしています。
ここで経営者にとって重要なのは、様々な事例として紹介されているような「対症療法」ではなく、「トータルコストを下げる」ため、あらゆるハラスメントを根こそぎ絶つ努力を自らしなければならない、という姿勢なのです。

5.終わりに~内部統制との関係
余談ですが、私の専門分野の一つである「内部統制」の視点からも、この漫画は興味深いです。
この「ホワイト製作所」、社員はこれだけホワイトにできる理由を「うちはトップシェアだからね」と軽く断じていますが、これは恐らく原因と結果が逆です。
内部統制の重要な目的の一つである「業務の有効性及び効率性」という観点からみた場合、「ホワイト製作所」の経営者は相当高度な観点をもって経営を行っており、その結果が、結局トップシェア(やその維持)にもつながっているのではないかと勝手に理解しています。

本書には上記以外にもたくさんの面白いエピソードが書かれていますし、第2~4巻も同様にとても良い内容となっています。
また、以前メルマガで公開しました小規模企業の働き方改革~「見える」と全てが上手くいくという記事も、こういった「ホワイト化」の参考になると思います。
是非お読みください。

 

小規模企業の働き方改革~「見える」と全てが上手くいく

昨年「士業事務所の働き方改革」というテーマで講演をさせて頂く機会がありました。
この講演においては、弊所が「働き方」をどのようにとらえているのか、またどのようなツールを用いて実現しているのかについてご説明し、一定の評価を頂戴しました。この講演内容について、ブログ化し、また新たな情報も織り込んで皆さまにもお知らせいたします。
キーワードは、「予定が見える」「仕事が見える」「人が見える」「数字が見える」の4つです。

1.予定が見える
会計事務所の業務は、基本的に「申告期限」に代表されるように月次や年次で期限のあるものですから、これがそのまま仕事のスケジュールになることが一般的です。
このため、それぞれのスタッフは「当面」自分が何をやるか把握しているはずです(これがなければ大問題です)。

しかし、これが事務所内で共有されている訳ではありません。
また個人個人の思うスケジュールが全体最適とは限らないのです。

弊所は現在、スタッフに対しては少なくとも2週間の予定を設定、事務所での共有カレンダーに入力させるよう指示しています。この「予定」を入力する際には、自分の経験だけではなく、あとで述べる業務チェックリストによって表示される情報を参考に、必要な事項を漏れなく挙げるようにしています。
また、有給休暇や総務的業務、研修の時間もお客様に関する業務と同様に「年間プロジェクトの一つ」として管理し、内部売上を設定した上で予定を入れる対象として取り扱っています。schedule画面

これらの予定情報を全員で「共有」することで、お子さんの急な熱でも在宅に切り替えたり、他のスタッフへの振替も可能となっているのです。
またコロナ禍のように在宅やシフト勤務が急に必要となった場合でも、業務内容が共有化されているため協力して漏れなく実施することが容易にできます。sns画面5

私はよく講演会で「皆さんが雇用するスタッフの標準的な年間稼働時間を把握していますか?」と問いますが、正確に把握している人はまだあまりいないようです。
管理者の仕事は、スタッフの負担感を認識し、分担の指示やスポット業務への担当配分などを調整することで、最も限られた資源である「稼働時間」を如何に効率よく高収益な業務に割り当てていくか、に尽きるのです。

2.仕事が見える
小規模会計事務所の業務で、特に顕著な特徴が「人的依存」です。つまり、実施すべき業務の内容が「引継ぎ」や「前年度の書類」によって伝えられることが多いのです。
また、仕事を実施する者によって業務品質に大きな差が出るのも特徴です。大きな幅のある担当個々人の経験や能力に依存し、誤りや漏れが発生しやすくなってしまいます。
しかし、その大きな差は管理者側から容易に見出すことができず、業務品質の良否が待遇に連動しない、という事態が発生しますので、できるスタッフに大きな不公平感が残ってしまうのです。

弊所においては、会計事務所用に導入したクラウド管理システム「耕夢」上に「業務チェックリスト」を整備し、これを参照して決算等業務を行うことにしています。このチェックリストには、一般的な会計税務のみならず、相続税や一般管理業務、営業プロセス、研修に至るまで、内容や実施期限などが設定されています。このため、原則としてこのチェックリストの内容を指定された期限までに全て実施すれば、どの分野でも一定品質の業務が実現できるようになっています。

また実施された業務の概要や資料の受け渡し、月次完了、試算表、受信FAX、お客様の質問・回答、専門誌が全て所内SNSに自動掲載されますので、この内容をブラウズするだけで、管理者である私は一日に事務所で行われた全業務を把握、コメントすることすら可能となっています。

3.人が見える
弊所のスタッフが、他人の担当業務をヘルプした場合(相談や検算など)すると「〇〇さん担当業務を△△さんが実施」とSNSに自動表示されます。
このような表示は本人(△△さん)やヘルプを受けた人(○○さん)に通知されるので、コメントには「お礼」や「気づき」をそれぞれが記載することにしています。thanks
このような仕組みを利用することで、それぞれが気楽に聞き、教えあえる雰囲気が醸成されるのです。
もちろん、後述の通り「ヘルプした時間がヘルプとして実績記録され、評価される」という機能がなければ「単に自分の仕事が進まない」と見えるだけですから評価されることにならず、こんな雰囲気は作れません。

4.数字が見える
前述の通り、お客様の会計・税務業務だけではなく、総務や研修、雑誌読みといった自己研修にもプロジェクトを設定しています。
これらを正しく運用することで、自分が担当する業務の時間はもちろん、他の担当をヘルプしたり検算した時間や、病気等で休んだ担当の業務を休み中代行したり、代わりに質問に答えた時間なども正確に記録されます。

また、それぞれのプロジェクトには売上予定額と必要標準時間を設定していますので、グラフで担当割の偏りも直ぐにわかるようになっています。もちろん、間接業務や有休の取得にすら内部売上が設定されていますから、これらを多く行う役割をもったスタッフの評価が低くなることもありません。逆に、生産性が悪いのに残業だけしている人間が「あいつは遅くまで頑張っている」と評価されることも絶対にありません。

このように、事務所内の業務実施状況を詳細な把握は、公平感や安定した業務の実施、残業抑制に大きな効果を持ちます。例えば、弊所は子育て中で短時間勤務の正社員であっても、一定の条件を満たせばフルタイムと同じ給与を支払っていますが、これも成果が全員で確認できるから不公平感なく可能になるのです。sf画面

上記は、各担当で業務が偏っていないかを確認するためのグラフです。

数字というのは非常に大事です。

  • 数字が見えないから不安になる→残業減や有給取得、産休育休への抵抗
  • 数字が見えないから不満が出る→他担当の手伝い、総務時間、業務の偏り、「遅くまで居るだけの人」などがあぶりだされます。
  • 数字が見えないから価格が下がる→業務内容とそれに対する経営努力を説明、理解して頂きやすくなります

5.まとめ
働き方改革の目的を単に「残業減」ととらえる考え方は非常に危険だと思います。
業務の本質やあるべきプロセス、また使える人的リソース(稼働時間)を把握せず単純に残業減を上から強いた場合、恐らく強烈な不公平感が組織に蔓延することになります。この不公平感は間違いなく「良い人を萎えさせる」危険をはらんでいます。
私がこの業界に入った頃はまだ道具が少なく、相当な工夫をしないと「見える」化は難しかったのですが、最近はICT(情報通信技術)の発達でいろいろな良い道具が手に入るようになってきました。
またこういった方向性は、コロナ禍で否応なく進めざるを得ない環境になってきたようです。
ピンチはチャンスです。
是非「見える」化を進め、本当の意味での「働き方改革」とその結果である「収益性向上」を目指しましょう。

税理士法人耕夢は「競争しません」(1周年記念)

本日11月1日、税理士法人耕夢は昨年の設立からちょうど1年となりました。
お客様、職員の皆さん、そして全てのお世話になった皆様に、心より感謝申し上げます。

1.耕夢システムと法人化
会計事務所業界は転機を迎えています。劇的なIT化の進展や税務の複雑化のみならず、競争の激化、そして人材獲得の難しさは、重要な経営課題となりつつあります。これに加え、新型コロナ感染症の影響は、主要なお客様である中小企業に破壊的な影響を与えています。
このような激変する環境に適応するには、やはり組織の力が必要です。
飛び抜けた力が無くても、適切な知識・経験・常識を持ち、他を思いやる心を持った人間が協力し合うことで大きな力を発揮できる、そういった仕組みが大事です。
法人としての耕夢、またシステムとしての耕夢は、このような仕組み作りの為に生まれました。
(耕夢システムは、Salesforce社さんの「Sales Cloud」をプラットフォームとしています)

2.この1年間を振り返って
今年6月から6名が新たに参加、3拠点(本町、堺、岐阜)合計で17名となっています。
耕夢の理念を共有し、それぞれ協力し合う環境がこの1年で少しずつ出来上がりつつあります。
例えば、新たなお客様にご契約頂くありがたい場面でも、担当だけではなく全員がお客様の為に協力するということが当たり前のようになっています。
拠点間のネットワークを配備し、これを利用して全員がテレワークを行うことも可能となりました。このシステムは元々コロナ禍を想定せず準備していたものですが、運よく助けられることとなりました。
耕夢システムが持つ顧客管理、チェックリスト、日報、職員間のコミュニケーションといった機能は、品質管理や情報共有といった機能を通じて事務所運営に大きな良い効果を与えてくれています。
1年間を振り返ると、ありがたいことにある程度考えていたことが実現できたように思います。

3.これからの話~競争しません
これを踏まえ、今後の方針として「競争しない」を掲げたいと思います。
ITのない昭和の時代、成果の測定が極めて難しかった環境においては「競争」は良いツールでした。人の原始的な本能を刺激して成果を上げる方法だからです。
しかし、社内における競争は人間関係の軋轢を通じてイジメや抑圧、良い人材の流出など様々な問題を発生させる原動力となるのです。
「では競争しないでどうやって成長するのか」と思われるかもしれません。
しかし実はこの「競争が成長を生む」という考え方も昭和そのものと思います。
成果を(ITで)測定し、それを見せ、意味を理解させ、フィードバックさせるという仕組みを作れば、まともな人は必ず良い成果を自分で出します。また、競争とは逆に平和と相互理解、尊重すら生むのです。

また、対外的にも競争はしません。
他の事務所との報酬での単純な比較や、顧客数の多寡など、「ライバルに負けない」姿勢は社内の競争と同じく軋轢や疲弊を生みます。
私たちは、まずは自分たちが品質の高い業務をできる体制を作り、これを、実績とともにお客様に見て頂くこと、その正当な対価を頂くこと、といったシンプルですが非常に大事な姿勢を明確にします。

4.耕夢の役割
これら「競争しない」ためのツールが耕夢です。
耕夢は社内の成果を明確にし、業務の品質を高め、お客様に実績を見て頂き、価値を納得頂けるための機能が備えられています。
※下記はお客様ごとの発生時間推移と、各職員が担当する業務量のグラフ)

発生時間グラフ

税理士法人耕夢は、このような考え方を基礎に、今後もよい仕事ができるように努力致します。
皆様今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

セカンドオピニオン歓迎

セカンドオピニオンとは

「セカンドオピニオン」とは、元々医療の世界の言葉です。具体的には、「治療や手術などの方針について現在かかっている医師とは別の医師の意見を聞き、参考にすること」を言います。
医師とて全てにパーフェクトではありませんし、注意を尽くしていても見逃しや診断の誤りはあり得ます。このため、別の医師の意見を聞くことも時には必要なのです。
但し、その場合でも「ファーストオピニオン」、要するに担当医の意見はまず大事にすべきです。医療を受ける側は、症状などが悪いほど自分の願望に応じて都合の良い意見を求める(「オピニオンショッピング」と言います)ことがあるからです。

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※医療におけるセカンドオピニオンについては、例えば東京都福祉局のWEBページにわかりやすい説明があります。

税理士事務所のセカンドオピニオン
税理士事務所のWEBページ等で「あなたは今の税理士で大丈夫ですか?」や、「こんな税理士は要注意」といった説明を展開し(そこだけなら弊所ブログ「にせ税理士について」と似ています)、さらに他の税理士の業務に対する「セカンドオピニオン」を営業トークにしている事務所を時折見かけます。

セカンドオピニオンとは前述の通り元々医療の世界の言葉ですが、公認会計士や税理士などの専門家業務においても使われることが増えてきました。
要するに「現在依頼している専門家の業務について、他の専門家に依頼して評価、検討する」ことを言います。

このような営業姿勢は、特に若くパワフルな税理士が経営する事務所に多いようです。
しかし通常、元々契約している税理士はこのようなセカンドオピニオンを好まないものです。自分たちの間違い探しをされるような気がしてプライドが傷つけられるからかもしれません。

もう一つ注意すべき点があります。
私も時々関与している金融機関を通じてセカンドオピニオンを求められるのですが、「今の税理士がこんなにダメだから見て欲しい」といった論調が時々見受けられます。
ところが、良く聞くとその税理士が実際にはきちんとしたプロとしての判断や仕事をしておられるのに、依頼主とのコミュニケーション不足で理解されていないだけ、ということが多々あります。そのようなケースにおいては、今の税理士が如何に真っ当な仕事をしておられるかを説明し、もう少しコミュニケーションをとってみてはどうか、とアドバイスしています。

私達のスタンス
さて、私達の事務所は、私達のお客様が他の税理士などのセカンドオピニオンを受けることも「歓迎」しています。
私達の事務所内には、「耕夢」システムを中心として職員教育や業務チェックリスト、相互チェック、トリプルチェック、税務調査対策など品質管理に関する枠組みが設けられています。また最後の砦として、税理士賠償責任保険(税理士が判断を誤って税務上の損失が出た場合に補填する保険)にも加入しています。

しかし、どんなことにも100%の無誤謬はあり得ません。万一そのような場合には、顧客にご迷惑をお掛けすることになりますし、セカンドオピニオンの結果お客様が損失を回避できれば、それは結果としてお客様のためになる良い事なのです。
もちろんそのようなケースがあれば私達は大変恥ずかしい限りなのですが、逆にそのような緊張感の元に自らを置くことで、さらなる業務品質の向上を目指すエネルギーが生まれてきます。