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テクノロジーガバナンスのすすめ(三菱電機・神戸製鋼の不正について)

1.終わらない検査不正
三菱電機が35年もの長期間に渡って数多くの検査不正を行っていた事件は、社長が引責辞任する事態にまで広がっています。

しかしこのずいぶん前に、日産やスバルの検査不正、また大手鉄鋼メーカー神戸製鋼所が製品の検査データの改ざんを繰り返していた問題は「技術日本の危機」として非常に大きな問題となっていました。それにも関わらず連綿と不正を続けていたということは、企業としての姿勢やガバナンスに大きな問題があると言わざるを得ません。

今回は、三菱電機と神戸製鋼の事例を取り上げ、このような問題が技術という分野で起こった原因や、企業がとるべき姿勢について、代表の塩尻明夫が「公認不正検査士=経営・不正防止」「技術系工学修士=技術倫理」という両方の側面から述べたいと思います。

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2.三菱電機検査不正

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①不正の発覚
2021年6月30日、同社の長崎製作所(長崎県時津町)が製造する鉄道車両向け空調装置で、仕様書の記載と異なる検査手法を行った上、検査成績書に不正記載を行っていたことが明らかとなりました。 「社内調査で6月14日に発覚した」そうです。同時に、6月28日には鉄道車両用空気圧縮機に関しても同様の不正検査を行っていたことが判明しています。

②不正の手口
行われていた不正の手法は、以下の通りです。

・冷房や暖房の能力を検査する際、仕様と異なる温度や湿度などの環境条件で検査を実施
・必要な防水検査で、製造段階の検査結果を流用して完成品の検査を省略
・空調機器の過負荷、振動、絶縁抵抗、耐電圧などの耐性試験を低い水準で実施、結果を計算式で補正して検査結果に偽装
・寸法検査を実施せず、図面などから部品の寸法を足し合わせる等の計算により偽装
・モデルチェンジ機種について、前モデルの検査結果を流用
・これらについて検査成績書偽装された結果を記載

③不正の連鎖
同社グループにおいては、2018年に子会社(トーカン)で製造する新幹線車両にも使われるゴム製品や、2020年に本社パワーデバイス製作所で製造するパワー半導体製品で顧客と取り決めた新しい検査規格を使わなかった等の検査不正が相次いで発覚していたところです。
この2事件も、数年~十数年発覚せずに不正検査が続けられてきました。

これらの不正は「内部調査で発覚した」とのことですが、発覚している不正は全て明らかに手順を省いて工数を減らしたり、製造不良を見逃すために行われている単純な方法であり、一般的な定期内部監査があれば容易にわかることばかりです。

今回に限って発覚したのではなく、組織としてこのような不正を長年容認してきたグループとしての姿勢が問題ではないかと推察します。
本事件については、今後調査結果などが明らかになっていくと思いますので、注視しておきたいと思います。

3.神戸製鋼検査不正

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①事件の概要(調査報告書より)
2016年6月にグループ会社神鋼鋼線ステンレス株式会社で検査データの改ざん事件が発覚、2017年8月末にもアルミ・銅事業部門において不正な試験値の取り扱いが発覚、同部門で不適合品の出荷を停止しています。

②発生していた不正行為のあらまし(調査報告書より)
同社においても、寸法検査、耐性試験など機械的性質等の検査、一部の外観検査など、顧客との間で取り交わした必要な検査項目が実施されておらず、条件の異なる他のデータでの代替やねつ造などが行われていました。

また、顧客との間で取り交わした製品仕様(強度、伸び、耐力等の機械的性質や寸法公差等)に適合していない一部の製品につき、検査証明書のデータの書き換え等を行うことにより、当該仕様に適合するものとして出荷しています。

彼らはこれを「トクサイ」と呼んでいましたが、本来の「トクサイ(特別採用)」とは通常なら不合格品になるものを、取引先の了解を得て引き取ってもらう制度です。基準には元々余裕があるので「採用側が知っていれば」問題なく使用できるし、納期も守られ安く購入できるメリットがあるのですが、これを全く知らせることなく勝手に行っていました。

③原因とされている事情
この不正の原因とされているのは、調査報告書や新聞記事を参考にすると以下の通りと言われています。

・過度な業績主義と、収益評価に偏った経営と閉鎖的な組織風土
・バランスを欠いた工場運営(生産・納期優先の風土、人事が固定化された閉鎖的組織)
・不適切行為を招く不十分な品質管理手続(改ざん、ねつ造を可能とする検査プロセス、厳格な社内規格の形骸化と勝手トクサイを許す風土)
・契約に定められた仕様の遵守に対する意識の低下(品質に対する誤った自信に基づく仕様遵守意識の欠如、不適切行為の継続)
・不十分な組織体制(監査機能の欠如、本社による品質ガバナンス機能の弱さ、事業部ごとの縦割風土)
・鉄鋼業界統合による寡占化
・品質管理担当が製造部門長の下に置かれており、独立した品質管理体制が取れなかった

④神戸製鋼の不祥事歴と企業風土
残念ながら、神戸製鋼は今回の事件だけではなく、過去にも以下のような不祥事を起こしており、良い企業風土の醸成に努力しているかどうか、という側面において疑問が残ります。
(1)総会屋への利益供与(1999年)→亀高元吉相談役が引責辞任
(2)神戸・加古川製鉄所でのばい煙データ改ざん(2006年)
(3)日本高周波鋼業(グループ会社)による鋼材強度試験データ不正(2008年)→同社のJIS認証取り消し
(4)政治資金規正法違反(2009年)→会長、社長が引責辞任
(5)神鋼鋼線ステンレス(グループ会社)が検査データ改ざん(2016年)→同社のJIS認証取り消し、今回の事件の発端となった

4.テクノロジー面のガバナンスについて
昨今の上場会社は、会社法や内部統制評価・監査制度(いわゆるJSOX)などの制度及び運用強化によって経営管理や財務報告におけるガバナンスについては一定の改善が見られます。
しかしながら、テクノロジーの側面においては上記のような制度がある訳ではなく、旧態依然とした「技術者の論理」が残されているといってよいと思います。
この技術者の論理、基本的には極めてシンプルな「納期・品質・安全を守る、科学的事実は嘘をつかない(嘘をつくのは人間である)」といった考え方に尽きます。

これに対し、今後は技術系分野において「テクノロジーガバナンス」が必須であると考えます。
このテクノロジーガバナンスとは、技術面に係る倫理、統制、開示、保全を統合的に管理する考え方で、コーポレートガバナンス・CSRの一環として構築する必要があります。特に今後IoT、AIの急速な普及に伴い、この分野が極めて重要になると言えます。
このテクノロジーガバナンスを構成するのは、例えば下記のような概念です。

・技術者倫理
例えば、一般社団法人日本鉄鋼連盟が公表している「品質保証体制強化に向けたガイドライン」には「倫理」という用語がありません。また、神戸製鋼の企業倫理綱領にも、もっと大きい範囲だと日本機械学会の会員向け倫理規定にもテクノロジーガバナンスに関連した記載はありません。
今後は、テクノロジーの分野においても、広い意味での倫理概念を整備し、職業倫理として定着させていかなければ、技術分野でわずかに残ったアドバンテージすら我が国から奪ってしまうことになりかねません。

・技術系取締役への企業ガバナンス教育やMOT人材の採用
現在、技術系取締役は、「技術系プロパーの上がり役職」といった性格を持つことが多く、ガバナンスに関する教育はほとんど受けていません。
技術系取締役に、会社法を含む企業ガバナンスに関する教育を行うことや、MOT(Management of Technology、技術経営)に関する専門的素養を持つ人材を経営層(取締役、監査役)や内部監査部門に加えることが重要となります。

・内部統制の重要性
人材がそろっても、その目的に合致した内部統制の整備運用がなければガバナンスを強化することはできません。
どんな分野においても、組織における不正を防止するには内部統制が最も重要です。
技術面関する場合でもあっても、内部統制に必要な考え方は同一で、整備運用に関しては統制環境・リスクの評価と対応・統制活動・情報と伝達・モニタリングといった構成要素を意識しなければなりません。
例えば、統制環境の場合は正しい技術倫理観に基づくテクノロジーガバナンスの強化と、トップから末端までに至る構成員(技術系以外も含む)の技術倫理に関する姿勢となりますし、モニタリングに関しては技術系内部監査機能の充実等がこれに当たります。

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日本機械学会倫理規定 (抜粋)
前文
本会会員は,真理の探究と技術の革新に挑戦し,新しい価値を創造することによって,文明と文化の発展および人類の安全,健康,福祉に貢献することを使命とする.また,科学技術が地球環境と人類社会に重大な影響を与えることを認識し,技術専門職として職務を遂行するにあたって,自らの良心と良識に従う自律ある行動が,科学技術の発展と人類の福祉にとって不可欠であることを自覚し,社会からの信頼と尊敬を得るために,以下に定める倫理綱領を遵守することを誓う.

(綱領)12項目から抜粋
1.技術者としての社会的責任
会員は,技術者としての専門職が,技術的能力と良識に対する社会の信頼と負託の上に成り立つことを認識し,社会が真に必要とする技術の実用化と研究に努めると共に,製品,技術および知的生産物に関して,その品質,信頼性,安全性,および環境保全に対する責任を有する.また,職務遂行においては常に公衆の安全,健康,福祉を最優先させる.

3.公正な活動
会員は,立案,計画,申請,実施,報告などの過程において,真実に基づき,公正であることを重視し,誠実に行動する.研究・調査データの記録保存や厳正な取扱いを徹底し,ねつ造,改ざん,盗用などの不正行為をなさず,加担しない.また科学技術に関わる問題に対して,特定の権威・組織・利益によらない中立的・客観的な立場から討議し,責任をもって結論を導き,実行する.

4.法令の遵守
会員は,職務の遂行に際して,社会規範,法令および関係規則を遵守する.

5.契約の遵守
会員は,専門職務上の雇用者または依頼者の受託者,あるいは代理人として契約を遵守し,職務上知りえた情報の機密保持の義務を負う.

ガーナゴールド詐欺と「尾崎豊の妻」~ポンジ・スキーム

1.ガーナゴールド詐欺
5年近く前、週刊誌等で取り上げられた「ガーナゴールド詐欺」をご存知ですか?
カカオ豆の産地として有名で、チョコレートの商品名にもなっている「ガーナ」で、金採掘が大ブームだとして投資を集め、途中から分配金を支払わずに逃げる、という典型的な詐欺事件です。

ガーナ

こういった「投資資金として集めた金を配当と偽って支払、さらに人を集める」手法を「ポンジ・スキーム」と呼びます。
この事件は、「架空の投資話」「新規投資資金を配当に流用した見かけの高利回り」「国会議員、有名経営者、タレント等との関係を強調」といった「ポンジ・スキーム」の特徴をすべからく備えているのですが、その特徴の一つである「紹介者」に、とても有名な方の名前が挙がってしまいました。
それは、26歳という若さでこの世を去った伝説のシンガー「尾崎豊」の妻、尾崎繁美さんです。

2.紹介者とは
詐欺の被害に気付いた人間が、その詐欺師を友人や知人、親族など大事な関係者に紹介することは絶対にあり得ません。しかし多くの投資詐欺の場合は「騙されている」ことに気づかされないまま、拠出した資金が高利で運用されている、自分は利益を得ていると「思い込まされている」ことがほとんどです。

そうなると、その良いパフォーマンスを身近な人たちにも教えて儲けさせてあげたいという親切心(または「自分がこれだけ儲けている」ことを示したい、若干の自己顕示欲かも知れません)から、詐欺被害を拡大させる手助けをしてしまうのです。また、有名人との(見せかけの)関係や大言壮語からくるカリスマ性などから首謀者に心酔してしまい、宗教的に他人を勧誘してしまうケースも多くあります。

例えば「こんな良い話はない。私も多額の配当を受け取っており、経営者も信頼できる素晴らしい人だ」などと初対面の人間に言われても警戒心ばかりが募ってしまいますが、もし同じことを信頼している知人や尊敬している先輩から言われた場合、人間の心理として警戒心の水準が大きく下がってしまう傾向があります。つまり、「この投資話は大丈夫かどうか」を自分で判断するのではなく「この人が持ってきた話なら大丈夫だろう」と、投資話の内容より普段から付き合いのある、信用できる紹介者の人間性で信じてしまうのです。

3.この事件での役割
当時の雑誌記事によると、出資者の一人は「『良い資産運用があるの』と尾崎繁美さんに誘われ、ガーナでの金採掘事業に投資をしました。本当に大丈夫なのかなと思いましたが、あの尾崎豊さんの奥様が言うなら、と信用したんです。しかし結局、分配金は途中からパッタリと止まり、現在は投資した企業の経営者ともまったく連絡がつかない状況です……」と述べています。当該詐欺の関係者によると、少なくとも数人が、繁美さんの勧誘で投資しているとのことです。

4.ポンジ・スキームについて
巧妙に仕組まれたポンジ・スキームは、時に巨大なコミュニティを構成してしまうほど大きな影響力を持ち、何の備えもない者(人や会社)にとって抗うことが大変難しい誘いとなり得ます。
だからこそ、これまで多くのポンジ・スキームが生まれ、また多くの人が騙されてしまったと言えると思います。
ポンジ・スキームの手口や防止に関する専門家として、下記のような記事を書いています。
他人事と思わず、是非参考にして自己防衛を図ってください。

中小企業の不正会計と監査役(3/3)

前回、前々回は、

  • 公認会計士の監査を受けない中小企業でどのような会計不正が発生するか、また唯一対応できると言ってよい監査役がどのようにそのような不正に対応すべきか
  • 上場会社でもよく行われて問題となる「循環取引(架空循環取引)」について説明し、どのように監査役が対応すべきか

についてご説明しました。

今回(最終回)は、在庫の過大・過少計上、架空人件費の計上、横領といった、中小企業でも頻繁に発生する不正について詳しく説明し、監査役がどのように対処すべきか検討します。

3)在庫過大、過少計上
この不正は、在庫を過大計上・過少計上することで利益を実際より多く、あるいは少なく見せかける手法です。

会社の営業利益は「売上高-売上原価-営業費」で計算されますが、この中の売上原価は「期首棚卸高+当期仕入(製造)高-期末棚卸高」で計算されます。
このため、在庫(期末棚卸高)を不正に調整すると、以下の通り利益が連動して調整できることになります。

  • 在庫の過大計上→売上原価の過少計上→利益の過大計上(粉飾)
  • 在庫の過少計上→売上原価の過大計上→利益の過少計上(逆粉飾、脱税)

在庫を調整することによる不正は、先にご説明しました売上を使った不正と比べ、自社(部門)が持つ在庫の有高を上下させるだけで済みますので、会社単独での実行が容易です。このため、入金の遅れなど外部からの情報や影響で発覚することがほぼありません。会社内部の管理体制で防止、発見するしかない不正であると言えます。

(事例)
E社は今期大きく売上を伸ばし、期末の時点で多額の法人税発生が見込まれていました。このため、E社は実地棚卸の結果算定された在庫金額を(書類上)大きく削ることで売上原価を不正に増やし、利益を圧縮することで法人税額を減額しました。業績が好調で例年と比較して利益率も高かったため、不正に増やした売上原価でも昨年度までと比べて大きく利益率が変動する訳ではなく、不正は発覚しにくいと考えていました。
ところが、決算期から半年後税務調査を受けた際、期末日後2週間程度の間に計上された売上伝票と在庫計上額、期末日直前直後の仕入額などを突き合わせた結果、期末日現在に存在しなければ売上が計上できない在庫が多数発見されました。この結果、期末の在庫残高が不正に減額されていることが発覚、追徴課税を受けました。

(発見・防止手法)
在庫に関する不正も、その実行の容易さに比べ発見はさほど簡単ではありません。例えば棚卸の際に現場を確認しに行く時間的余裕があったとしても、卸売業のように多量の在庫が多数存在する場合、過大計上や過少計上はもちろん、架空在庫や帳簿外の在庫を何のテクニックもなく探すことは至難の業です。ましてや期末日から何日も経過した状況で、何の資料もなくこのような不正を発見することは不可能と言っても良いと思います。

前述したような税務調査の担当官や公認会計士はこの手の発見手法をいくつか知っていますので、そのうちの一部をご紹介します。

  • 前年度との比較
    在庫の残高を前年度やその前と比較します。事例でご紹介したように、売上高や生産高が大きく変わっていれば前年度と変化がなくても異常のある場合もあり得ます。そのような場合は、売上高や仕入高などとの比率(回転期間や回転率と呼びます)で比較するのも有効です。
  •  棚卸日直前の売上、仕入、製造
    通常棚卸時には正確を期すため販売や仕入、製造をいったん止めますので、直前に販売されたものは在庫がなくなっているはずですし、仕入や製造されたものは在庫として存在するはずです。このチェックは販売や仕入、製造の会計データと棚卸集計表を突き合わせることで実施可能です。税務調査の場合はこの手法が良く採られます。
    同様の手法として、棚卸日後1か月程度の在庫を自ら検数し、期末日からの売上、仕入、製造などの記録と突き合わせて期末日の棚卸高を推定し、棚卸集計表と合致するかどうかを検討する方法もあります。
  • 滞留在庫や預け在庫、預かり在庫の有無
    架空循環取引でも登場しましたが、長期間動きのない在庫や、仕入先などに預けていてここにはない、と担当者が主張する在庫などはそれぞれ架空在庫の可能性があります。もちろん架空在庫ではなくても、滞留していたり預けられているのは相当に異常な取引ですので、監査役としては取締役に状況の把握や承認の有無を聴取し、適切な対応を取るよう意見を述べる必要があります。
    また逆に、棚卸表に上がっていないのに倉庫や工場に置かれている在庫についても、在庫の過少計上の可能性があります。得意先からの預かりであるなどと説明をされた場合でも、その事実を確認するのみならず、預かり自体が適切であるかを判断する必要があります。
  • テストカウント法
    棚卸の当日、現場を見て回りながらいくつかの在庫を自分でも数えてみます。その結果と現場の検数担当者の結果を照合して正しくカウントされているかを確認するとともに、後で作成される棚卸集計表において正しく集計されているかについても確認します。現場の担当者と集計担当者や経営層との共謀を防ぐため、それと告げずに検数する場合もあります。

4)架空人件費
この不正は、文字通り架空の人件費を計上する方法です。人件費は製造原価や販売費管理費の一部を構成しますので、架空計上をすることで、利益は実際より少なくなります。この目的は、直接的には法人税の課税所得を減らす、すなわち脱税に使用することにありますが、経営者が自由に使える資金(いわゆる裏金)をねん出するために使うことも少なくありません。

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ただ、通常は会社の場合社会保険の手続がありますので、雇用した従業員などの氏名、住所、給与額などは届け出る必要があります。このあたり全く架空の人間を届出するとすぐにばれてしまいますので、非正規雇用、つまりアルバイトなど社会保険の加入義務のない方を対象とするケースが多いようです。

類似の不正として、全くの架空ではないものの、実際の給与計上額より少ない額を本人に渡し、差額を経営者が裏金として取得するというケースもあります。このような不正の場合、社会保険などの手続も適法になされていますし、また本人も手取りがある程度確保されていれば文句を言わない可能性がありますので、発見は比較的難しくなります。

また、結婚相手や親などの扶養になっている場合、その相手の所得税が増えるのを嫌って扶養の範囲内(例えば給与の場合は年間103万円)を超えないように、経営者に給与の調整を依頼する場合もあります。

私は架空人件費の事例に当たることはそこそこあったのですが、あまり面白いものはありませんので事例そのものは省略し、発見・防止手法に進みます。

(発見・防止手法)
架空人件費は架空の従業員を設定することから始めますので、最も有効な手段は「給与の一覧表に載っている従業員が実在するかどうか」を確認することです。

 例えば給与台帳から何人かの従業員をピックアップし、現場に赴くか電話などで呼び出してみるというのは最も簡単な方法です。

 実際の支払額が給与計算額より少ないという不正の場合は発見が若干難しくなります。振込支払が原則であれば本人の口座に正しい金額が振り込まれているかどうか総合振込依頼書の控などで確認すれば良いのですが、現金支払の場合は、給与を受け取っている本人からの供述がない限り証拠資料をつかむことがほぼ不可能と言って良いかもしれません。

5)横領(現金横領、架空仕入れなど)
会社の不正と言った場合、誰もが思い浮かべるのがこの「横領」です。横領は雇用者である会社の金品を不正に取得等することですので、それ自体が不正そのものです。しかし、例えば売掛金の回収横領、架空経費の支払、現金預金勘定の改ざんなど期末処理を中心とした不正会計を通じて、必ず決算書に問題を発生させることになります。このことから、会計監査の観点からも対処が必要となります。このセミナーにおいては、昨年発覚して注目された「仮病キャバクラ嬢への献身横領事件」を事例として取り上げたいと思います。

 (逮捕)
務先だった工業用ゴム資材の卸商社『シバタ』の資金を自分の口座に振り込ませ、だまし取ったとして、警視庁中央署は2012年4月11日、電子計算機使用詐欺の疑いで、栗田守紀(もりとし)容疑者(当時33)を逮捕しました。直接の容疑は、2009年4月から翌年の7月まで、同社のパソコンを操作し、55回にわたって自分の給与とは別に計23000万円を自分の口座に振り込んだというものです。
栗田容疑者は同社が2005年に開設したインターネット・バンキングの法人口座の責任者に命じられると、すぐに不正に手を染め、以来約200回、計約6億円を詐取したと見られています。

(横領の目的)
栗田容疑者は同社の元経理係長。横領した金額のうち総額5億円以上を、なんとお気に入りのキャバクラ嬢に貢いでいました。
当キャバクラ嬢は、2004年ごろから、東京都葛飾区のJR亀有駅付近の店にて働き始めました。栗田容疑者は彼女と次第に親密になり、栗田容疑者はアフターも含めると月に数回は一晩あたり4~5万円使っていたそうです
 その後ほどなくして、彼女は栗田容疑者に『胃がんを患っていて入院費や手術費が必要だ』と金を振り込ませるようになります。当初は数万や数十万だったその要請はエスカレートし、様々な病気にかかったと理由を付けた上で、多いときは一度に1500万円という場合もあったそうです。
その間彼女は「無菌室に入っているから」などとメールで連絡を取るだけで栗田容疑者に一度も顔を見せることはなく、見舞いに行くなどと言われると「信じてもらえないなら死ぬ」などと拒否していました。しかし実の所は、栗田容疑者から振り込まれた金をブランド品の購入やホスト遊びなどにつぎ込んでいたそうです。

 (横領の手口、発覚)
同社は工業用ゴムやプラスチック資材などを卸す商社です。当時全国に40カ所の拠点を持つ中堅の同族企業で、業界内においては「堅実な経営」で知られていました。
これに対し栗田容疑者の不正手口は稚拙なもので、銀行から発行される口座の入出金記録や残高証明を破棄、自ら虚偽の記録を作成していたそうです。
結局、2010年7月に税務署の調査が入り、容疑者の不正が発覚しました。しかし時すでに遅しで、それまでに同社が余裕資金として持っていた数億の資金が失われたことになります。

(発見・防止手法)
このようなケースは、金額の多寡はあれ決して珍しいものではありません。共通しているのは、以下のような点です。

  • 経営者に信頼される、堅実で文句も言わず休みなく働く経理担当者
  •  人材に乏しく、担当者が十数年交代していない
  •  担当者以外にはITに堪能な者がいない
  •  老舗で、資金繰りに比較的余裕がある

 このような横領を防ぐには担当者の交代(ローテーション)や強制的な休暇によって一時的に他人に業務をさせる手法が最適ですが、人材の限られる会社の場合にはどうしても躊躇してしまうと思います。しかし、厳しいようですがそのような方法を採らず一人の担当者が長期間経理業務を行っている場合、少なくない確率で、というより確実に不正が発生すると認識頂いた方が良いと思います。

なおこれらに合わせ、銀行からの残高証明や取引記録などについて、社内で別に作成したものやコピーを信用せず、必ず原本を確認する必要があります。残高証明などは社長等に直接届くなど、改ざんの隙を与えないという点をみせておくことで防止の一助にはなり得ます。

3.まとめ
1)監査役は不正にどのように対峙すべきか
これまで会計を中心に、会社で起こりうる不正のいくつかと、またその事例や対処についてご説明してきました。
不正リスクはどのような会社にもあり、完全にゼロにすることはできません。また、不正の手口それぞれに発見・防止手法も異なり、簡単に対応することができないものです。

公認会計士は、監査する際2013年4月から「不正対応基準」に従って監査しなければなりませんが、この基準を導入する際も相当な議論が交わされました。つまり、公認会計士にとっても不正への対応は難しい事なのです。
そうであれば、非上場会社の、しかも会計監査人がいない会社で、例えば経理や法務経験の乏しい監査役一人が不正に対して完全に対応することは困難を極めると言っても良いかもしれません。監査役は現場に多く立ち入ることも少ないですから、その点でも不正への対応は難しいと思います。

最後の項目は、このコラムのまとめとして、これまで説明した対応策などの他、監査役がどのような心構えで不正に対峙すべきかをご説明します。

2)変化の利用
横領や架空循環取引などに代表されるように、不正は担当者や商慣行が変わらないために発覚が遅れることが多くあります。

組織におけるの不正にとって、一種の「天敵」と言っていいのが「変化」です。この「変化」は、組織の変更、業務内容の変化、取り引き先の変動、そして監査役の交代や税務調査など、あらゆる概念を含みます。

 監査役自らが変化を発生させるわけにはいきませんが、そのような変化がある場合には必ず不正が明るみに出るチャンスがあるという認識を持っておく、いわばアンテナを張っておくような気構えが必要です。

また、新たに監査役に就任した際も注意が必要です。不正はそれが根深いほど過去から連綿と受け継がれている場合が多く、昨年との比較だけで判断できない場合も多いのです。例えば、就任する期の貸借対照表における資産、負債の内訳をチェックし、不明な残高について担当に裏付けとともに詳細な説明を求めるという手法は、過去から受け継がれた不正を発見する基礎となるだけではなく、今後担当者が監査役を警戒して不正を行いにくくなるという抑止効果にもなり得ます。

 3)不正リスクマネジメント
不正リスクマネジメントとは、会社において発生しうる、潜在的な不正の可能性と重要性を把握し(固有の不正リスク検討)、識別された不正リスクに対処すべき措置を決定、実行して、それでも発見できないリスク(残存リスク)を最小化するというリスクマネジメント手法の一つです。

このような不正リスクマネジメントは不正の防止、発見にきわめて有効ですが、これを十分に運用するためにはコーポレートガバナンスや内部統制がある程度整備されていることが必要です。このため、会計監査人非設置会社にとっては少し難しいかもしれません。

ただ、就任している会社の不正リスクにどのようなものがあるかについて今回のようなカテゴリーを参考にして検討し、それらへの対応を検討する、またその結果に基づいて来期の計画を行うといったPDCAサイクルを、簡単なものであっても実施することや、またその実施していることを経営陣や従業員に認識させることで、不正に対する抑止効果には十分なりうると考えます。

4)不正を許さない社風
これまで説明しました内容は、いくら監査役が頑張っても、全て経営者がその気になれば容易に妨害できることばかりです。オーナー経営者なら、監査役を事実上解任することも可能かもしれません。会社法上監査役は一定の地位を保護されていますが、実際には上手くいかない場合も多くあります。

また、経営者自身にコンプライアンス意識が希薄な場合、また過去から不正を嫌わないような社風がある場合、経営者本人はもちろん従業員も不正に手を染める可能性が非常に高くなります。

このように、経営者の「経営姿勢」は不正リスクに大きく影響します。内部統制の考え方に置いては、これを「内部経営環境」と呼ぶことがあります。

この内部経営環境を適切なものにしていくことは、即効性がなく非常に難しく時間がかかるものの、不正の防止には非常に効果があります。監査役としては、経営陣と対峙する場合でも、自らをも律することで「不正を許さない社風」の醸成を目指してほしいと考えています。

以上(完)

中小企業の不正会計と監査役(2/3)

前回は、公認会計士の監査を受けない中小企業でどのような会計不正が発生するか、また唯一対応できると言ってよい監査役がどのようにそのような不正に対応すべきかを説明しました。

今回は、上場会社でもよく行われて問題となる「循環取引(架空循環取引)」について説明し、どのように監査役が対応すべきか検討してみたいと思います。

2)循環取引
①循環取引とは
循環取引は、複数の企業(通常は同業)・当事者が互いに通謀・共謀し、商品の売買や役務の提供等の相互発注を繰り返すことで、売上高をかさ上げして計上する取引手法です。

商社や卸売業者間において、一般に商品在庫の多寡を調整するため、業界内で保有在庫を転売し、在庫と資金の保有比率を適正に維持するという商慣行が行われることがあります。

一般にこのような商品の転売行為そのものは違法行為として認識されているわけではなく、行為自体を取締まる法的根拠も特にありません。

しかしながら、このような循環取引を悪用し、売上高の計上を意図的に操作することで、売上高を実態より大きくかさ上げして企業の成長性が高いように見せるために行う場合や、経営者から過度の売上達成のノルマを課せられて、営業担当者や営業管理職が当該取引を行うケースがあります。また、後でご紹介するように、特定あるいは複数の取引先に対し不正に利益を提供するために行われる場合もあります。

いずれにしても取引実態を伴わない売上高を過大に計上しているため、売上計上額に関する不正であると言えます。

②循環取引と類似の不正

  •  スルー取引
    スルー取引とは、自分の注文をそのまま他社に回す取引であり、一般的に複数の企業間で売上の増額を目的として実施されます。また、当該取引は、仕入先又は販売先との他の取引に対する利益補填や、仲介企業を介在させて納入までの時間差を利用した押込販売を目的とする場合もあります。
  • Uターン取引・まわし取引
    当該取引は、最終的に最初の販売元に戻る取引です。例えば、自社が取引の起点となり、商社を通じて販売取引が実施され、最終的には自社が販売した製品等が複数の企業を経由して自社に戻り、その間の利幅を上乗せした在庫等として保有されるものです。
  • クロス取引、バーター取引
    当該取引は、例えば、自社の製品等を市場での実際の価格水準より高い水準で相手方に売却し、相手方または転売先から別の製品等を同様に割高で購入する取引です。相手方への自社の製品等の売却が実需に基づいていないため、売却した製品等の上乗せ分を購入する別の製品等の価格水準に上乗せして調整する訳です。この結果、当該取引に参加している企業は割高な在庫をお互いに抱え続けることになります。

③循環取引の発見の困難性と対応策
循環取引の概要は上記の通りですが、この循環取引、取引に関わっていない者が不正を発見するのは非常に難しい特性を持っています。

ず、前述の通り循環取引それ自体は即違法ではありません。このため、循環取引による不正行為を発見するためには、慎重に取引の全体像の実態を把握する必要があります。

これに加え、循環取引は通常受注から納品まで、社内外の資料(証憑)は完全に準備されている場合が多く、これらの不整合をターゲットにした調査にそぐわないことも、この不正を発見しにくい一つの原因となっています。

循環取引における不正行為は、通常、行き過ぎた売上至上主義が原因となっている場合が多いでしょう。経営者や市場が売上高を重視するあまり、その期待にあやまった形で応えてしまうのです。経営者は決算書を作成するにあたり再度、売上計上の妥当性を検証するとともに、過度な売上至上主義に陥り、内部牽制や社員の集団的意識が機能不全を起こしていないかに注意する必要があります。

また、長年の古い業界慣行も循環取引を生みやすい土壌となります。業界が古く、歴史がある場合もリスクが高いと認識する必要があります。

④メルシャンの架空循環取引
れまでの事例は私が実際に経験したり、近い位置で見聞したりしたものでしたが、この架空循環取引については有名な事例がいくつもありますので、今回はその中の一つ「メルシャン」の架空循環取引をご紹介します。

メルシャンというと酒、特にワインのイメージが強いですが、この取引の舞台となったのは「水産飼料事業部」すなわち「養殖魚用の飼料」を販売する部門です。

2005年ごろ、当部門の顧客である養殖業者が経営不振に陥っていました。この養殖業者には、事業本部長の独断で社内規定より長いサイトの売上債権が滞留していました。また、そもそもメルシャンの水産飼料事業部自体が、キリンホールディングスと資本・業務提携を締結した後の社内で「お荷物」的扱いを受け、事業譲渡などリストラの対象となる可能性がありました。

この事業部はそういった動きに危機感を持っていました。このため、当該滞留している売掛金や、事業部の業績不振にどのように対処するか検討した結果、以下のようなスキームで養殖業者に資金を提供し、事業部利益を確保するとともに売掛金を回収することとしました。

  • メルシャンは製造委託先の飼料工場に架空発注し、架空飼料を入荷処理するとともに工場へ代金を支払
  •  飼料工場は養殖業者から架空の魚を仕入れ、これに対する代金を支払う
  •  養殖業者はメルシャンから架空の飼料を仕入れ、メルシャンに対して代金を支払う
  • これら一連の取引で養殖業者は架空の利益(とこれに基づく資金)を留保でき、その資金から滞留売掛金を支払う
  • メルシャンも架空の利益を積み上げ、事業部業績をかさ上げする

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取引図(メルシャン広報資料より)

当然ながら、メルシャンは架空の飼料をどんどん仕入れますが、利益をねん出するための架空取引ですので、架空在庫がどんどんたまってきます。また、養殖業者にも利益は確かに上がりますが、そもそも架空の取引を循環させているだけで実際にキャッシュが生まれているわけではありませんので、売掛金の滞留も解決はできません。

結局、不正な取引が隠し通せないほど積み上がったところでこの架空循環取引は発覚、公表されるところとなりました。

(発見・防止手法)

水産飼料事業部の工場は本社から離れた八代(熊本県)や宇和島(愛媛県)にあったため、そもそも目の届きにくい状態ではありました。とはいうものの、監査役と内部監査部長は、在庫の増加に疑念を持って工場を訪問しています

かしその際、結局は時間稼ぎや偽装によって確実な証拠をつかむまでには至っていません。しかも、それ以上追及することはなく、社長への報告もされていませんでした。
この点は本事例において大変残念な所です。

実はこの架空循環取引は、非常に発見が難しい不正であると言えます。在庫の増加に疑念を持っていた監査役や内部監査部長も、その原因である架空循環取引そのものに疑いを持っていたわけではありません。発覚して初めて、売掛金や在庫の異常な増加が不正な取引としてつながったわけです。

このような不正取引が発生する可能性があること、またそのような取引を許さない社風を社長以下醸成してもらうこと、また経理担当などから異常な財務数値などについて報告を受け、それを実地に調査する体制を整えること、など様々な方法を組み合わせて対処していく必要があります。

 

中小企業の不正会計と監査役(1/3)

1.中小企業と会計不正

1)小規模会社の会計不正について
上場会社の場合、会計不正のほとんどは上場会社における有価証券報告書などの虚偽記載、すなわち金融商品取引法上のディスクロージャーに関する不正であると言っても過言ではありません。ディスクロージャーの内容は、株価など資金調達や採用など、経営環境に大きな影響を与えるため、不正会計に手を染めてでも会社の状況をよく見せたい、という動機が極めて多いです。

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また非上場の会社であっても、会計監査人(監査法人や公認会計士が専門的監査を行う)設置会社の場合、会社法上の財務情報について株主を中心に適法に開示する要請があります。このような会社であっても会計不正は広い意味でディスクロージャーに関する不正であると言えます。

それでは、今回のテーマのように小規模な会社(会計監査人非設置会社)、すなわちディスクロージャーに関する要請が高くない会社の場合はどうでしょうか。
結論から言うと、このような会社でも会計不正は起こりえます。そのような不正をカテゴリー分けすると、以下のようなものが主となります。

  •  法人税計算に係る会計不正
    法人税の課税ベースとなる所得は、基本的に企業会計の利益計算に基づいて計算されます。
    法人税は会社にとって大きな負担となるため、課税所得を少なく見せようとする動機は十分にあります。
    この結果、法人税を減らすため、課税所得、すなわち会計上の利益を少なく見せかけようとする不正の発生する可能性があります。
  •  会社法制に係る会計不正
    会社の利益配当は、会社が安定して経営できる財源を確保するため、会社法によって一定の制限がかけられています。この制限は企業会計の計算に基づいて算定されるため、配当を多く出したい場合には会計上の利益を多く見せかけようとする不正の発生する可能性があります。
  •  金融機関に対する会計不正
    会社が金融機関から融資を受けている場合、金融機関における貸出金の「自己査定」において悪い評価を受けると、担保追加、金利上昇などの融資条件悪化や、場合によっては借り換えの拒否など資金繰りに大きな影響が懸念されます。自己査定における判断材料の一つは会計データなので、これをよりよく見せる、すなわち売上が増加していたり利益が出ていたり、また債務超過(資産より負債が大きい)に陥っていないように見せる会計不正の可能性が大きくなります。
  •  上場準備を目的とした会計不正
    上場基準には時価総額や利益など一定の基準があります。また、上場基準そのものではなくても、売上高の伸びなど成長性をはかる基準として、会社の財務数値は極めて重視される指標となります。このようなことから、上場を準備している会社の場合、会計不正を志向する可能性は極めて高くなります。但し、このような会社の場合、会社法上の正式なものではありませんが監査法人が会計監査を行う場合がほとんどですので、監査にて発見される場合も多くあります。

2)会計監査人非設置会社の会計不正と監査役
会計監査人非設置会社の場合、前述のような会計不正を発見、是正できる法的権限のある者は監査役しかないと言っても過言ではありません。ということで、会計不正と監査役の関係を以下確認しておきたいと思います。

まず、会社法が定める監査役監査には、業務監査と会計監査とが含まれます。業務監査は、取締役の職務の執行が法令・定款を遵守して行われているかどうかを監査することで、一般に適法性監査と呼ばれています。これに対し会計監査は、定時株主総会に計算書類が提出される前に行われ、株主総会の招集通知時に、会計監査と業務監査の結果が記載される監査役会の監査報告が提供されます。会計監査人設置会社の場合は会計監査を会計監査人が行ってくれるため、監査役としてはこれを相当と認めるだけで良いのですが、そうでない場合は自分で行わなければなりません。

さて、では会計不正の対応は会計監査なのか業務監査なのか、どちらに当たるでしょうか。

結論を先に言いますと、これはどちらにも当るというのが正解だと思います。
「会計」不正ですから、その対応が会計監査にあたるということは間違いがないと思います。これに加え、これらの不正を行うためには取締役(またはその使用人)が不正行為を行う必要のある場合がほとんどだからです。

3)税務調査と会計不正
とはいえ、会社規模の大小にかかわらず、不正は税務調査で見つかる場合が圧倒的に多いと言われています。

税務調査は、申告納税が基本である日本の法人税、消費税などの制度において、納税者が故意や過失の有無にかかわらず間違った申告、納税を行うことを発見、防止する行政側の手続です。これとは別に「査察」という犯罪調査と同様の強制的な調査もありますが、今回は調査を受ける会社側も同意して行う「任意調査」だけを取り上げます。

このような任意調査の場合、会社規模や業務内容によって異なりますが、1名~5名程度の調査官が税務署からやってきます。彼らは一定期間会社を訪問し、役職員への質問や資料収集により、申告内容が妥当であるかを調査します。調査官には「質問調査権」がありますので、この調査官の質問には回答しなければなりません。

調査官は申告内容の誤りを発見するための教育を受けていますし、十分な経験もありますので、結局の所その調査の過程で不正の発見される可能性が高くなるわけです。

さて、監査役はどれくらいこのような税務調査現場に立ち会っているでしょうか?弁護士や税理士など特殊な資格をお持ちの場合を除き、通常、経理担当者や税理士事務所の担当税理士が対応することが多いと思います。

確かに、経理や税務の業務に精通していない方の場合は、調査の過程で繰り広げられる理屈についていくのは非常に難しいかもしれません。しかし、税務調査は時に監査役監査で目の届かなかった、会社の細かい点にも職人的に踏み込みますので、横で聞いておくくらいのことをしても全く損にはなりません。

また、調査官は申告内容の誤りに直接関係する問題以外は積極的に摘発する義務はありませんので、対応する経理担当者や社長の不正については、それが申告内容に影響を与えない軽微なものであれば、「これから気を付けてください」で終わってしまう場合も否定できません。

これらのことから、監査役が不正に対応する観点からは、可能なら税務調査にオブザーバーとして立会い、それが難しければ、できるだけ調査終了時の講評を調査官から直接聞く、という対応をおすすめしたいと思います。

2.事例と対策
それでは、以下いくつかの代表的な会計不正の例を挙げ、そのあらましと、会計監査人非設置会社の監査役が採れる対策についてご説明します。

1)架空販売、押込販売、計上時期ずらし、売上除外
会社の状況を良く見せたり、また逆に税金を減らすため利益を押さえて見せたりする方法はたくさんありますが、やはり「売上を調整する」ことが一番ストレートな方法であると言えます。
また、例えばサービス業の会社には大きな在庫はなく、後述の「在庫を調整する方法」での不正会計は行えませんが、売上なら全ての会社で業績の調整を行うことが可能となります。その意味で、売上の調整は不正会計の中でも最も一般的なものと言うことができます。

ただ、売上というものは商品やサービスの内容や価格、支払条件等々について顧客との合意が必要ですから、全くの架空売り上げを含め必ずどこかに問題が出てきます。
以下、売上調整による不正会計の主な手法とその事例について説明します。

①架空販売
さて売上を調整するためにはいくつかの方法があります。
最も簡単なのは、実際に売り上げていないものを売上として扱う「架空販売」です。この架空販売の場合、売上自体は実際には発生していませんので、当然ながらまともな入金もありませんし、出荷記録なども発生しません。このため、調査の対象にいったんなれば、比較的発見の容易な不正であると言えます。

(事例)
卸売業A社はここ数年業績が振るわず、多額の銀行借入金が負担となっていました。このため、あまり業績不振が続くと銀行から追加の借入はおろか、借り換えすら拒否される可能性があります。この状態に危機感を持った経営者は、経理担当者に指示して架空の売掛金口座を設定、目標とする売上に届くように架空売上を積み上げました。
2,3年の間はごまかすことができましたが、結局税務調査時に多額の滞留売掛金について説明を求められ、不正が発覚してしまいました。

(発見・防止手法)
決算書の内訳明細書には「売掛金」のリストがあります。このリストの昨年版と今年度版を比較し、残高が異常に増えているような得意先がないかどうかを調べると、このような取引が含まれている場合があります。また、不正ではなくても、売掛金の焦げ付きが発見される場合もあります。

(後日談)
不正は発覚したものの税務調査官は利益を過大計上する不正であることから見逃し、口頭で是正を指示して調査を終えています。結局この会社は、架空売り上げやその他の不正で資金が回らなくなり、数年後に自己破産するに至りました。

②押込販売
前述の架空販売は、計上する側(経営者や従業員)が勝手に売上を形だけ計上してしまう方法ですが、「押込販売(おしこみはんばい)」は実際の販売と一見似た外見を持っています。

(事例)
営業担当Bは、自らの販売ノルマがもう少しの所で達成できず焦っていました。このため、懇意にしている取引先の購買担当者に依頼し、ノルマ達成に至る売上を計上してもらうことにしました。当然購買側の予算は変更されていませんので、販売物はBの会社の倉庫に置き、支払も通常の条件より数か月伸ばしてもらうか、適当な時期に返品処理をすることにしました。会社で棚卸を行う際には、その品目については隠すか自分がカウントしてつじつまを合わせていました。

毎年このような形で乗り切っていましたが、結局押し込み部分が大きくなり、会社の棚卸責任者が交代となった際、棚卸表に乗っていない大量の在庫が発見されることとなり、不正が発覚しました。

(発見・防止方法)
事例の通り、在庫棚卸を正確に行うことが一番の防止方法です。後で述べる通り棚卸に関する不正を発見することは専門家にとっても難しい事ですが、できるだけの手続きを駆使して確認する必要があります。また、月末に売り上げた代金が、所定の条件通り入金されているか、また年度初めに多額の返品がないかを確認することも有効です。

③計上時期ずらし
売上の計上時期をずらす方法は、当期に計上するべき売上を来期に回す(決算期末より後にずらす)場合と来期計上すべき売上を当期計上する(決算期末より前にずらす)場合の2種類があります。

前者は当年度の利益を減らしますので、当然ながら脱税目的で利用されます。また後者は利益を増やしますから、粉飾目的で利用されることが多くあります。これ以外にも、営業担当者が自らの営業成績を調整するために計上時期をずらすことも少なくありません。

売上の計上基準が出荷基準(当社倉庫を出たら売上)であるか検収基準(顧客に対して引き渡しを完了した時点で売上)であるかという差はありますが、いずれにしても顧客と共謀して検収書類などが改ざんされる場合は発見が非常に難しい方法です。

(事例)
営業担当Cは、既に今期の売上ノルマを達成していたため、期末日近い時点での売上が予定されている顧客に対し「製品到着は今月だが、来月頭の検収書を作成、送付して欲しい。ついては支払もひと月伸ばして頂いて結構です」という旨をメールにて依頼しました。担当Cをかわいがっている顧客は、二つ返事で来月頭日付の検収書を作成し、当社に送付しました。

(発見・防止手法)
粉飾や脱税目的の計上時期ずらしを発見するには、厳しい予算(ノルマ)がある場合、強気すぎるものや、予算の未達可能性が高くなっている部署がないかを期中で確認しておく必要があります。

営業担当が自らのノルマを調整するために計上時期をずらす方法を採った場合は、このようなリスクを想定した内部監査や部署内の相互チェックをおこなわない限り非常に発見が難しいと思います。そのような考え方は、自らのみならず会社にも顧客にも迷惑をかけるという営業モラルに関する教育を強化する必要があります。

④売上除外
売上除外とは、文字通り本来あるべき売上から、一部又は全部を所得税課税対象から除外する方法です。この方法は、基本的に裏金作りや脱税行為を目的としたものとなりますので、税務調査等で発見された場合は重加算税の課される可能性が極めて高くなります。

(事例)
飲食店Dは、過去から適当な数売上伝票を破棄し(つまみ売上)売上高を過少申告していました。税務署の調査官は調査前にこの飲食店へ覆面調査に数回訪れ、飲食した事実を記録し、その後正式な調査を行った際、記録した売上が一部含まれていないことから売上除外が発覚しました。ただこの不正を行っていたのはこの店舗の店長であり、除外された売上分の資金は当該店長に横領されていました。

(発見・防止手法)
飲食店などのような現金商売でない場合、可能な限り現金売上を廃止、入金口座を限定することが有効です。また現金商売とせざるを得ない場合、日々の現金管理や残高照合、レジデータのチェックを徹底させる、抜き打ち監査を行うなどというプロセスを強化する必要があります。

(補足)このような場合、不正を行っていたのが店長であっても、経営者が過少申告で重加算税を課される場合があります。

 

「クラウドファンディング」に騙される

最近よく聞かれるようになってきた「クラウドファンディング」。
インターネットのなかった時代には考えつかなかった素晴らしい発想ではあるのですが、我々のような不正検査士からみると、実は不正の温床になる場合があるのです。
ほとんどの真っ当な善意が踏みにじられることがないよう、警鐘を鳴らす意味も込めて書いてみました。

1.クラウドファンディングとは
クラウドファンディングとは、群衆(crowd)と資金調達(funding)を組み合わせた造語で、不特定多数の人が通常インターネット経由で他の人々や組織に財源の提供や協力などを行うことを意味します(WikiPediaより)。
昔からこのような形で資金を集める方法は用いられていましたが、2000年代後半になってインターネットを活用する形が定着し、「クラウドファンディング(以下「クラファン」とします)」と呼ばれるようになったあたりからは世間でもごく一般的になってきました。

具体的な流れとしては、必要な目的や資金をWEB上でプレゼンテーションし、クレジットカードで寄付、そして寄付者には金額などに応じて謝礼するなどといった形が一般的です。
現在では、慈善目的の寄付などにとどまらず、飛び抜けた発想をもった製品開発やゲームなどの開発、果ては結婚式の資金集めにまで(!)使われるようになってきました。

crowdfunding
(出典:朝日新聞社A-port)

しかしこのクラファン、素晴らしい目的をもった用途の中に、大きな不正の問題を抱えているのです。

2.不正な目的のクラファン
クラファンは、会社が上場するときのような厳格な審査や監査を受けているわけではありません。
また、サービスが充実してきたため、どんな者でも簡単に、ほとんどの場合無料でクラファンサイトを開くことができます。

このため、たとえば嘘の目的で寄付を集め、持ち逃げしてしまうことも比較的簡単に可能となります。

また、マネーロンダリング(資金洗浄。違法薬物や脱税、横領といった犯罪資金などを合法な資金として見せかける犯罪行為)にも利用が可能です。
たくさんのクラファンプロジェクトを作り、少しずつ多数の寄付を出したように見せて再度集めると、表向きはその集めた資金は合法な資金に見えてしまいます。

その他、薬物などの違法取引を返戻品に偽装して行ったり、様々な不正・犯罪の手口に利用される可能性があります。

クラファンの運営会社もこれらの不正に手をこまねいている訳ではなく、たとえば下記のようにチェックにかかったプロジェクトを停止するような措置は行っていますが、根絶するには至っていないようです。

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C
ampfireの不正対処例

なお、事実と異なるなど不正なプロジェクトで資金を集めた場合 詐欺罪として処罰の対象となります(刑法246条 人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する)。

3.クラファンサイトのオーソリ不正
まだあまり知られていませんが、「クラファンサイト自体が悪事に利用される」場合もあります。それは、クレジットカード不正との組み合わせによるものです。

クラファンの寄付の支払いは、ほとんどの場合クレジットカードで行われます。
この支払~決済に至る流れは、通常のネット通販と全く同じです。
ただ少し違うのは、「すぐに物品を発送せず(後ほどお礼は送られたりします)、支払い金額が少額な場合も多いので、申込者のチェックが甘い場合がある」という点です。

通販などでクレジットカード決済を行う場合は「オーソリゼーション」と呼ばれる信用チェック手続きを必ず利用します。この手続きは、カードそのものが有効か、また限度額を超過していないかなど、カードの利用可能性をチェックする必須の手続きです。

オーソリ
三井住友カード のサイトより

しかし、不正実行者はここを悪用します。

情報流出などによって不正に取得したカード番号などを使い、自動的に多数の申込手続(実際の決済までは進ませない)を行って、そのカードが有効かどうかをチェックし、不正利用するのです。

このチェック手続きは通常ボットと呼ばれる自動プログラムで行われます。また、最近はカード会社の番号法則に基づきランダムに作成した番号が有効かどうかをチェック(ランダムアタック)するためにも使われているそうです。

一般の物販サイトは、通常多数の人間から多くの注文があり、キャンセルされるなどの異常な取引があればすぐにわかりますが、クラファンの場合は少額でたくさんの取引が発生しやすく、チェックがかからない場合があると言われています。

こうなると、「データ漏洩で不正に取得されたカード番号」だけではなく、「全くどこにも提示すらしていないあなたのカード番号」すら、場合によっては不正利用される可能性もあるのです。

4.不正を防止するには

クラファン運営会社やカード会社は不正対策を進めていますが、まさに「いたちごっこ」であり完全に防ぐことは難しいと思います。また不正を野放しにしておくと、クラファンというせっかくの良い仕組みが悪いものとみられ、衰退してしまうかもしれません。
このため、利用者である我々としても、できるだけ不正を防止する努力をする必要があると思います。

たとえば以下のような防止策が考えられます。

①利用者側
まず、運営者が適切な目的でクラファンを立ち上げているか見抜く必要があります。SNS上の書き込みであっても、不正が見抜かれないよう良い評判を書き込ませることが可能ですので、クラファンの内容や目的自体が適切・合法なものかを複数の情報源で確認しておく必要があります。
また通常のカード不正利用防止の注意(カードを自分が見ていない所で切らせない、預けないなど)だけであれば、前述のランダムアタックには対処不可となってしまいます。
このため、自らのカード明細は頻繁にチェックし、細かい金額でも不明な支出は確認しておくことが必要です。

②クラファン運営側
運営側となる場合、すなわちクラファンを立ち上げる場合には、上記のような悪用を防ぐ対策(モニタリングやCAPTCHA認証といった、ロボットによる自動操作を発見・防止する手法)が適切になされたサイトを利用しましょう。これらも完璧なものはなく、不正実行者は様々な新しい手法を生み出してきますが、皆が少しずつでも対策をしていれば数を減らすことができます。

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CAPCHA認証の例

あなたは必ず騙される(続編)~ワンコインとポンジ・スキーム

1.はじめに
まずはこちらの動画をご覧ください(大きな音が出ます)

The biggest event in OneCoin History – the CoinRush 2016

この派手な動画の最後に出てくる女性、それが「ワンコイン」詐欺の首謀者です。

2.ワンコイン
①創始者 Dr.Ruja Ignatova(ルジャ・イグナトバ)
Ruja
彼女は1980年5月にブルガリアで生まれ、10歳でドイツに移り住みました。
貧しい生まれでしたが、周囲の支えと才と努力で、独コンスタンツ大学、英オックスフォード大学で法学博士号を取得しています。
その後、有名なコンサルティング会社「マッキンゼー」にて当時最年少の「アソシエイトパートナー」に就任、大型投資プロジェクトへの従事や仮想通貨のアドバイザーとしても活躍していました。
その活躍により「フォーブス」誌の表紙を飾るなど、華々しい活躍の中2014年に仮想通貨である「ワンコイン(Onecoin)」を創設します。

しかし、2017年、彼女は忽然と姿を消してしまいます。

②ワンコインの実態
OneCoinLogo
ワンコインは、ビットコインなどと同様、ブロックチェーン技術(参考:「仮想通貨技術を支える「ブロックチェーン」について」)を使った暗号通貨(仮想通貨)と称して誕生しました。
このワンコインは、100ユーロ(12,000円)程度の少額から30,000ユーロ(360万円)などの高額に至るプランによる「パッケージ販売」を特徴としています。実際に仮想通貨を受け渡すのではなく、「仮想通貨と交換する権利」が受け渡されるのです。
例えば、5000ユーロのパッケージを購入すれば、3900ユーロ分のワンコインが受け渡され、分割が起こると8500ユーロのワンコインとなるといった具合で、投資商品としての性格を備えていました。

しかし実際には、いわゆるブロックチェーンによる暗号通貨は実在していなかったのです。
実在しない「暗号通貨」を販売し、その収入を配当に見せかけて支払い、それを餌にしてまた新しいカモを集める、という正に「ポンジ・スキーム」の際たるものだったのです。

③ワンコインとイスラム金融
このワンコイン詐欺の被害は、なぜかイスラム教徒に多く広がりました。
イスラム教徒は、シャリーア(イスラム法)において利子のあるお金の貸付を禁止されているのですが、ヒヤル(合法的な抜け道)により、シャリーアを回避しつつ実質的に利子を取ることを目的とした金融技術が様々に編み出されています。今「イスラム金融」と呼ばれている概念の多くはこのヒヤルに関するものです。
ワンコインは利子ではなく、投資した通貨自身が分割により増加するため、ヒヤルの一つとして認識され、大人気となった訳です。

④破綻
ワンコインのコアメンバーであるコンスタンティン・イグナトフ(ルジャ・イグナトバの弟)は、数十億ドル規模の詐欺に関与した罪状を認めました。この結果、最大90年間の禁固刑が科せられる可能性があります(BBC 2019/11/14)。
この辺りまでにワンコインは44億ドルを集めていましたが、昨年12月1日にはウェブサイトが閉鎖されました。

しかし、現時点でもまだ首謀者ルジャ・イグナトバは見つかっていません。

3.仮想通貨とブロックチェーンについて
①ブロックチェーン(詳細解説はこちら
従来のデータ保存はサーバなどによって一元管理されているので、保存箇所を攻撃(ハッキングなど)したり、その通路(ネットワーク経路)を支配してしまえば改ざんや遮断を容易に行うことができました。
これに対し、ブロックチェーンは「利用者が使う全ての端末に、分散して全てのデータが保存されている」という点がポイントとなっています。
この「分散」についても、単にデータをバラバラに保存しているのではなく、それぞれの端末(ノード)が冗長性(無駄な部分)を持ち、一部が壊されたり改ざんされたりしても、生き残った他の部分から全体像が再構成できるように考えられているのです。
新しい取引が発生すると、そのデータが一定の規則によって次々と追加され、あたかもデータの塊(ブロック)が鎖(チェーン)のようにつながっていくことから、このような名前で呼ばれるようになりました。

②仮想通貨(暗号通貨)の問題点
ブロックチェーンによる仮想通貨を作る時には「マイニング」というプロセスが必須です。
マイニングはその名前から「鉱脈を探す」=「仮想通貨を発行する」と思われていますが、ブロックチェーン技術上のイメージとしては「新たな帳簿のページを作る」ことに過ぎません。つまり新たな通貨の記録を作る帳簿作成がその本質で、通貨そのものを作る訳ではないのです。

しかし、マイニングにはコストがかかります。具体的にはコンピュータ投資や電気代が増え続け、技術的な発行数の限界があります。
また個々のブロックチェーンの伝播には時間がかかり、大規模なパブリック型と呼ばれる方式だと遅延が累積して決済スピードに著しい問題の出る場合があります。

ワンコインは実際にはブロックチェーンを使っていなかったため、このような制約は全くなかったと言われています。そもそも実体が見えにくく、技術的にも高度に見える(すなわち素人を騙しやすい)ため、ワンコインのような詐欺には最も利用されやすい概念だったように思います。

4.ポンジ(ポンツィ)・スキーム(詳細解説はこちら
①ポンジ・スキームの誕生
「チャールズ(カルロ)・ポンツィ」はイタリア生まれ。
若いころアメリカに移住、職を転々とした後、ボストンにて「返信用切手交換クーポン付き国際郵便切手」の鞘取り(返信用切手と交換できるクーポンの国際的価格差を利用した利益獲得手段)ビジネスを始めます。

彼は1919年12月、ボストンに会社を立ち上げ「たったの数十日で50%の利益が出る」という触れ込みで数千人から数百万ドルもの大金を集めました。
ただ実際には「先に投資した人に対し、後から投資した人の資金を使って配当」しているにすぎませんでした。
この「自転車操業的」配当こそが、ポンジ・スキームの本質なのです。

しかし結局、新聞のスクープや新規投資資金の落ち込み(すなわち偽配当の資金繰り悪化)により敢え無く破綻、詐欺罪で有罪となってしまいました。

②ポンジ・スキームの特徴(ねずみ講との違い)
ねずみ講は、一人の上位会員に対して二人以上増加する下位会員から金銭を徴収、その金銭をさらに上位会員に分配するため、ピラミッド型の組織を構築する詐欺の手法です。
このため上位の会員が利益を得るためには「下位の会員数>上位の会員数」が必要となり、組織構造上級数的に増加する下位の会員はすぐ獲得できなくなるので、途中で必ず破綻します。
このねずみ講、我が国においては「無限連鎖講の防止に関する法律」で禁止されています。

これに対してポンジ・スキームの特徴は、詐欺の首謀者が広く多数から資金を集め、集めた資金の大半または全てを配当に見せかけて支払うことで、虚偽の運用実績を提示することにあります。
このためピラミッド型の組織は必要とされず、首謀者が集まる資金を比較的自由に使えることも特徴の一つです。
このため、冒頭に掲げたような派手なイベントを行うことも容易なのです。
信用を得るため一部の者への配当として多額の資金が流出するため、発覚、摘発されても損害の額に対して十分な賠償を得られない場合がほとんどです。

5.仮想通貨とポンジ・スキームの親和性
ポンジ・スキームを動かすためには、現出資者に配当する金額以上の資金を新たな出資者から集めることが必須ですが、偽の仮想通貨はにはその裏付けとなる資金が不要なため、手持ちの現金を超える偽装配当が可能となるのです。

これを私はポンジ・スキーム配当の「レバレッジ」と呼んでいます。

ワンコインはこの点をうまく活用し、「分割」によって仮想的な配当を行うことで、ポンジ・スキームでいずれ必ず訪れる破綻を遅らせることに成功したのです。

驚くべきことに、ワンコインより相当前、20世紀も終わるかどうかという頃に、全く同様の概念を用いたポンジ・スキーム詐欺が我が国で発生していました。それが「円天」事件です。

2000年ごろ創設された疑似通貨「円天」は電子マネーとして使用可能と公表されていました。
10万円以上を預け、上位会員になると「1年ごとに預けた金額と同額の円天を受け取ることができる」「年利100%の金利が払われる」とされ、受け取った円天は、円天市場で利用することが可能とされていました。
会員の募集や会社の信用を高めるため、演歌歌手・タレントを広告塔として招き、関連団体を介しホテルや国技館などで無料コンサートを月10回にわたり行っています。
このイベントには、伍代夏子、小林旭、坂本冬美、島倉千代子、瀬川瑛子、千昌夫、藤あや子、細川たかし、松方弘樹、松崎しげる、美川憲一、八代亜紀などそうそうたる有名人が協力していました。

(ニュース動画)「円天」巨額詐欺事件 元会長の懲役18年確定へ(12/01/12)ANNnewsCH

6.騙されないために

※詳しくは「あなたは必ず騙される ~ ポンジ・スキーム研究(5/5)最終回」を参照

1)成功するポンジ・スキームの特徴
ポンジ・スキームを研究していると、通常の詐欺のように「騙す側と騙される側」という単純な構図ではなく、成功するためには一定の特徴を持つべきことがわかります。それは以下のようなものです。

  • 騙す側に一定の特徴を持った①首謀者、②協力者、③紹介者 が必要
  • 騙される側にも①プレッシャー・機会、②ガバナンスの弱さ、③情報・知識の欠如 といった、一見「不正のトライアングル」にも似た要因が必要

これらを詳しく知ることで、ポンジ・スキームの兆候に気づき、騙されないための対策を採ることが可能となります。

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ポンジ・スキームの構成要素

2)だます側の特徴
①首謀者

  • 首謀者のキーワード:雄弁、大胆不敵、カリスマ、名声、人脈、目立つ社会貢献(しかしその裏には虚栄心、狡猾、金銭欲、虚飾などの裏がある)
  • 良い身なり、一等地の事務所、居宅と現代的な調度品、高級ホテル
  • 進める投資への自信と裏付けとなる華麗な経歴と実績(但し虚偽や誇張が多い)
  • 断定的で力強い説明、ビジュアルに優れた資料(内容は薄く、虚偽も多い)
  • 大物政治家、官僚OBなど、政財界キーパーソンとの親密な関係(但し金や接待に基づくものや、一方的なものが多い)

②協力者

  • 首謀者の右腕となり、忠実に詐欺行為やその管理行為を実行
  • 首謀者とは最も長い付き合い
  • 首謀者に対しては服従に近い関係(悪いこととはわかっていても絶対に裏切らない)
  • 身内や愛人であることも多い
  • 口は堅く、信頼できる。堅実な仕事ぶり
  • 実務を行っているため、首謀者よりも実情を理解している。違法性も認識している場合が多い

③紹介者

  • 投資詐欺の場合、良いパフォーマンスを身近な人たちにも教えてあげたいという親切心や自慢により、友人などに紹介して詐欺被害を拡大させる手助けをしてしまう
  • カリスマ性などから首謀者に心酔してしまい、宗教的に他人を勧誘してしまうケースも多い
  • 有名人や社会的地位の高い紹介者は、スーパー・スプレッダーになりうる

3)騙される側の特徴
①プレッシャー・機会

  • 金のない人間がギャンブルにのめり込むのと似た状況
  • 困窮→金銭欲、あせり、射幸心
  • 長期的には絶対的に資金が足りないが、短期的には少し使える資金がある、もしくは調達できる→この資金を狙われる

②ガバナンスの弱さ

  • 個人の場合…意思(決定力)の弱さ、相談者・指導者の不在
  • 法人の場合…健全なガバナンスの欠如、専門家の不採用、事務作業権限の集中

③情報・知識の欠如

  • 権威者やその華麗な人脈、虚偽データに対する無駄な信頼
  • 新聞や雑誌、業界紙といった記事などに十分な注意を払っておらず、最新情報に疎い。また逆にデマや誇張なども安易に信じてしまう
  • 前任者まで連綿と受け継がれた古い情報や前例にのみ基づいて意思決定し、前例のない動きは極力しない→いわゆる天下り人材に多くみられる特徴

医療機関の不正防止・調査

私達が病気や怪我の治療の際お世話になる、病院や診療所等の医療機関。
これらは地域にとって非常に大事な存在です。
また医療機関は一種「聖域」として、一般的な営利企業とは異なる組織体制や文化を持っていることがほとんどです。
しかし、医療機関とて診療報酬というお金を扱い、資産を持つという意味において、不正のリスクにさらされている点で他の企業体と何ら変わる事はありません。このような医療機関において、不正対策をどのように行うべきかについて書いてみました。

1.医療機関の不正について
資金を扱うあらゆる組織において不正リスクは存在しますが、一般の営利企業と収益構造や法令、管理体制の異なる病院・診療所等の医療機関においては、一般的な営利企業とは不正リスクの質や頻度が異なると考えられています。しかしながら、不正リスクに関する理論、管理手法の本質的な所には共通点があります。

2.不正のトライアングル
不正リスクを考える際には、「不正のトライアングル」という概念が非常に役に立ちます。
「不正のトライアングル」とは、アメリカのドナルド・R・クレッシー教授が提唱した不正の仕組みに関する理論です。
具体的には、不正に手を染めるファクターは以下の3点であるとされています。triangle

 (1)不正を行うための「動機・プレッシャー」
 (2)不正を行うことができる「機会」
 (3)不正を行うことが本人にとって「正当化」

これらの条件が一つでも増加すれば、それだけ不正の発生する可能性が高くなっていることを意味します。

 

3.内部統制について
内部統制とは、(1)業務の効率性・有効性 (2)財務報告の信頼性 (3)法令の遵守 (4)資産の保全を目的として法人内で構築される管理体制を指し、「全社的な内部統制」と「業務プロセスに関する内部統制」に区分されます。
昨今、内部統制は上場企業が財務報告の適正性を保証するための開示対象として注目されていますが、本来内部統制は「組織がその目的に従って適切かつ効率的に活動し」「法令を順守し」「資産を保全する」と同時に「適切な情報開示を実施する」ことを可能とするための組織管理であるとされています。
この内部統制は適切な情報開示にはもちろん役立ちますが、不正リスクの低減や、事務部門、医療現場における事故、誤りの低減にも有効です。
但し、内部統制は経営者によって無効化することが可能であるため、経営者が主導する不正には役に立ちません。

4.医療機関における不正の例
①横領・不正請求窓口収入、保管現金、機器、消耗品、互助会資金等の管理を長年同一のベテラン職員に任せていることによる横領とその発覚遅れ自動販売機等売上金の横領医薬品の横流し社会保険診療報酬の不正請求

②キックバック医薬品、医療消耗品の購買担当者が、仕入業者からキックバック等の利益供与を受ける
③不正経理横領等を発覚させないため、帳簿や証拠書類を偽装する架空人件費

5.防止対策
不正のトライアングルの把握
職員における不正のトライアングルがどのような状態にあるかを把握し、不正リスクの発生を未然に抑えます。

病院向け内部統制の整備
病院には病院向きの内部統制があります。病院の特色を理解しつつ、不正が起こりにくい組織体制を整備、維持します。

内偵調査、尋問
残念ながら不正の発生が疑われる場合、疑いのある部署、者に対して内偵調査を行い、必要に応じて不正調査手法を用いて尋問します。

税務調査の利用
税務調査を不正調査に利用します(参考コラムはこちら)。この手法は、内部統制が無効化されやすい経営者の不正にも効果があります。

 

個人診療所レベルなら、院長が末端の職員にまで気を配ることが可能ですから、院長の管理レベル次第でこのようなリスクは防止することが比較的楽です。しかし、病院においては一般的に組織規模が大きく、院長や事務長がいくら気を配っていても末端まで注意を行き届かせることは不可能です。この為、不正リスクを低減する組織的な管理体制は必要です。

第 11 回 ACFE JAPAN カンファレンスのお知らせ

一般社団法人 日本公認不正検査士協会(ACFEジャパン)は、「第11回 ACFE JAPANカンファレンス」を10月9日に開催します。
今年は新型コロナ感染症対策として全面的にオンラインでの開催となり、後日録画内容の配信も行われる予定です。

公認不正検査士(CFE)は、公認会計士でFBIの財務捜査官だったジョセフ・T・ウェルズが1988年に創設した資格です。
この公認不正検査士たちの団体が公認不正検査士協会(ACFE)で、米国を中心に世界180か国、85000人を超える会員が所属し、資格認定試験を経て不正調査や防止などの専門家として活躍しています。

このような職業的専門家資格においては、高度な専門的能力を維持・発展させるために継続的な教育体制が欠かせません。
実際、私たち公認不正検査士は、年間20時間(内倫理を2時間)の研修履行義務が貸されており、これを満たさなければ資格の更新ができないことになっています。

研修の方法は一般的に座学のセミナーですが、時々「カンファレンス」と呼ばれる大きなイベントが開催される場合もあります。
例えば、米国のACFE本部は毎年「グローバルカンファレンス」という全世界の会員を対象にしたカンファレンスを開催しており、ここには数千人の会員が集結します。

以前私がグローバルカンファレンスに参加した際の報告記事がこちら

さて少し規模は小さいですが、同様にACFEジャパンが毎年行っているのが「ACFEジャパンカンファレンス」です。このカンファレンスは、通常大きな会場に会員を集め、8時間~10時間程度の研修を受けるという形式を採っているのですが、今回は新型コロナ感染症対策を考慮し、全面的にオンライン開催を行うこととなりました。

ACFEカンファレンス

毎年、その時々に合ったカンファレンスのテーマが掲げられますが、今年は「Light the way ~ New Normal時代の企業が取り組むべきリスク対策 ~」となっています。

中身としては、New Normal時代新たに認識すべき概念や、DX(デジタルトランスフォーメーション)による新たなリスクについて、内容の濃い講演やパネルディスカッションが行われる予定です。また、昨年大きな話題となった関西電力金品受領問題や、形骸化・悪用が指摘されている第三者委員会の問題点などについても取り上げます。

このカンファレンスは会員以外でも参加することが可能です。
公認会計士や弁護士といった職業だけではなく、企業の内部監査担当者などにも非常に有益なものとなっています。

会場開催の場合はいつも満席となりなかなか多くの方に出席頂くことができない場合もあるのですが、今回はバーチャル開催なので制約は基本的にありません。
是非ご視聴頂き、できればCFE資格の取得をご検討下さい!

カンファレンスの特設ページはこちらとなっております。

令和元年度 査察の概要

30年以上前の映画「マルサの女」で一躍有名になった「査察」。
この制度は、受忍義務はありながら事実上任意である「税務調査」とは違って、悪質な脱税者を強制的に取り調べ、脱税について刑事責任を追及する強力な手続です。
この「査察」について、昨年令和元年度の実績が国税庁から発表されました。

1.税務調査と査察
法人税、所得税、相続税など主要な税法は「申告」による課税制度を採っています。つまり納税者が自分で申告書を作成し、これに基づいて納税することになります。
この場合、納税者全員が正しい知識と納税意識に基づいて申告・納税をするなら良いのですが、間違いや不正などの可能性は否定できません。このため、何らかの形で申告された内容が正しいかどうかを確認する制度が必要となります。
この目的を達するために存在するのが税務調査という制度で、一般的には納税者の同意を得て行う、いわゆる任意調査が実施されます。

しかし不正等により故意に脱税をする者には、税額を正すだけではなく刑事責任を追及するため、犯罪捜査に準ずる方法で調査する場合があります。これが査察(ささつ)調査です。
この査察調査の結果いかんによっては、検察官に告発し、公訴されることがあります。
通常の税務調査がそれぞれの税目に応じた法律に基づいているのに対し、査察調査は「国税犯則取締法」という特別な法律に基づいて行われます。

2.令和元年度の概要
国税庁は、毎年この査察を行った実績や事例を公表しています。
これは、活動実績を納税者に報告すると同時に、犯罪行為となる脱税についてどのように発見し、刑罰を与えたかという事例を紹介することで、適正・公平な課税の実現と申告納税制度の維持に資することを目的としています。
公表された内容のあらましは以下の通りです。

  • 全国で116件(平成30年度は121件)を告発、発見された脱税総額は93億円(同112億円)
  • 消費税還付事案11件
  • 国際事案25件、海外に不正資金を隠した所得税ほ脱事案で、国外財産調書(国外財産が5000万円を超える場合に提出義務のある調書)の不提出犯を初適用
  • 無申告事案は、過去5年間で最も多い 27 件を告発。
  • (なぜか)相続税の脱税額がほぼゼロ
  • 告発の多かった業種上位3業種は建設業、不動産業、人材派遣でここ数年順位とともに変化はないが、第4位に下水道管調査業が登場

3.告発事例
①海外法人を利用して法人税を免れた情報商材関連会社
投資に関するノウハウを紹介する情報商材に関する取引などで得た多額の利益を、海外の法人を利用して不正に法人税を免れた事業者について、外国との間で締結した租税条約に基づく情報交換制度(詳しくは「CRS(共通報告基準)であなたの口座情報が筒抜け?」を参照)を活用するなどして、不正取引を解明し告発

②消費税還付コンサルにより多額の利益を得た税理士
不動産投資家に対して金地金売買を利用した消費税還付のコンサルティングを行うことにより、多額の利益を得ていた税理士本人の脱税を告発。

③芸能スタイリスト会社の無申告
芸能関係のスタイリスト事業により得た所得に係る法人税及び消費税の申告義務を認識していながら、確定申告を行わず故意に納税を免れていた単純無申告事案を告発しました。

4.資料
詳細は、国税庁発表の「令和元年度 査察の概要」に記載されています。