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倒産したら事業年度に注意?

1.「倒産」とは?
「倒産」という言葉を聞かれた場合、皆さんはどのような印象を持ちますか?
一口に「倒産」と言っても、実は様々な種類があるのです。
倒産は大きく分けて「私的整理」と「法的整理」に分けることが出来ますが、この違いは「倒産手続に関して専門の法制度が用意され、裁判所が関与するか」にあります。
法的整理が、細かい手続きに至るまで専用の法令で定められて裁判所が関わるのに対し、私的整理は債権者・債務者間における取り決めを元に手続きを進めます。

またこれらをさらに細かく分けると、私的整理には、自主廃業、清算といった方法が、また法的整理には特別清算、民事再生、会社更生、破産といった方法があります。

上記に加えて、「手形の不渡り」(振り出した手形が資金化できなかった)が発生したことを倒産と呼ぶ場合もあります。実際この不渡りを2回出してしまうと銀行と取引ができなくなるため、事実上倒産と同じ状態になるためです。

さて、普段から企業再生に関わる皆様の場合はこれらの違いを理解されていると思いますが、一般の事業会社の場合、経理部の方でもその区別がついていない場合があります。ですので、「取引先がつぶれました」という表現での連絡を受け、「どんな手続きを使った倒産ですか?」と聞き返すことも多くあります。

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実はこの「倒産手続」、その後手続きを進めるにあたって必要となる「事業年度(会計年度)」の考え方がそれぞれ大きく異なるのです。
今後、ひょっとしたら倒産が増加するかもしれません。
前向きな事業再生を目指す手続きの場合には復活するまで正しく会計手続きも気を付けなければなりませんので、経営や会計、金融に携わる方は是非「倒産と事業年度」の考え方を知っておいて下さい。

2.法人税と事業年度
①基本
さて、「事業年度」とは何でしょうか。
簿記を勉強した方なら「会社などの会計をまとめる期間」で「通常1年間」であるということをご存知と思います。
このため、会社について多くを定めている「会社法」には「事業年度」という用語が多用されています。
しかし驚くべきことに、「会社法」には「事業年度」に関する定義が存在しないのです。

では事業年度とは一体何をよりどころにすればよいのか?
実は「事業年度」に関する定義は「法人税法」に定められているのです。

法人税法第十三条
この法律において「事業年度」とは、法人の財産及び損益の計算の単位となる期間(以下この章において「会計期間」という。)で、法令で定めるもの又は法人の定款、寄附行為、規則、規約その他これらに準ずるもの(以下この章において「定款等」という。)に定めるもの(略)

このことから、通常の会社はその会社の定款(ていかん。会社を運営していく上での基本的規則を定めたもの)に定めた事業年度が採用されます。

②清算&特別清算
清算とは、会社が本来の活動を停止(解散)した上で、資産や債務の精算・資本の払い戻しなどの為に行われる手続きを言います。この清算が完了(結了と言います)すると、会社は「清算結了」登記を行って消滅します。
この清算は、残余財産がなければ行うことが出来ません。もし債務の方が財産より多い場合、債権者の中には十分な弁済を受けることが出来ない者が出てきます。このため、その弁済手続きの公平を期すため「特別精算」という手続きを地方裁判所に申し立てることになります。

さて、現在会社に適用されている「会社法」は平成18年に定められましたが、その前は「商法」に会社に関する法令が含められていました。
その「商法」には、実は「解散」後の事業年度に関する規定が無かったのです。
このため、実務上は法人税法に規定されている「みなし事業年度(解散の日で一旦事業年度が終わり、その翌日から元の期末日までがもう一つの事業年度となる)」に関する規定が設けられていたのでこちらを適用していたのです。

(みなし事業年度)
法人税法第十四条
次の各号に規定する法人((略))が当該各号に掲げる場合に該当することとなつたときは、前条第一項の規定にかかわらず、当該各号に定める期間をそれぞれ当該法人の事業年度とみなす。
一  内国法人(連結子法人を除く。)が事業年度の中途において解散(合併による解散を除く。)をした場合 その事業年度開始の日から解散の日までの期間及び解散の日の翌日からその事業年度終了の日までの期間(略)

これに対し、平成18年の会社法施行後は、「清算事務年度」という1年にわたる期間が定義され、事業年度として適用されることとなりました(会社法494条)。これが①で説明した「法令で定めるもの」となり、解散の場合も①で説明した法人税法第13条が適用されることとなったのです。
この結果「解散時点で一旦区切り」までは以前と同様ですが、その後の事業年度は「解散の翌日から1年ごと」に変わりました。

(貸借対照表等の作成及び保存)
会社法第四百九十四条
清算株式会社は、法務省令で定めるところにより、各清算事務年度(第四百七十五条各号に掲げる場合に該当することとなった日の翌日又はその後毎年その日に応当する日(応当する日がない場合にあっては、その前日)から始まる各一年の期間をいう。)に係る貸借対照表及び事務報告並びにこれらの附属明細書を作成しなければならない。
(略)

③破産
会社の破産とは、債務超過で弁済ができなくなった会社について、裁判所の破産手続開始決定に従い、裁判所が選任した破産管財人の管理の下、財産を処分、税金や賃金等の優先的債務を返済した後の残余資産を債権者に配当することで、会社を清算する手続を言います。
倒産に関する法制で最も厳しい手続であると言えますが、その分迅速かつ確実・公平に整理を進めることが出来るため、著しく財務状況が悪化した会社にはよく使われる方法です。

さてこの破産に関する手続きを定めた「破産法」には事業年度の定めがありません。
このため、破産の場合には関係する法令を参考に事業年度をどうすべきかについて検討する必要があります。

まず、破産手続の決定により解散すると、その日をもって一旦事業年度を区切ります(法人税法基本通達1-2-9)。
ここまでは前述の「解散」と似ているのですが、「破産手続開始の決定により解散した場合」には、会社法上「清算すべき場合」から除外されているのです(会社法475条1号括弧書)。このため、破産手続の開始決定が会社は「清算株式会社」とはならないのです。
そうなると、会社法が改正される前の事業年度の考え方と同じで、事業年度開始日~破産開始日、及び破産開始日の翌日~事業年度終了日が事業年度となり、その後は破産手続が終結するまで定款に定められた事業年度が続くことになります。

(株式会社等が解散等をした場合における清算中の事業年度)
法人税法基本通達1-2-9 株式会社又は一般社団法人若しくは一般財団法人(以下1-2-9において「株式会社等」という。)が解散等(会社法第475条各号又は一般法人法第206条各号《清算の開始原因》に掲げる場合をいう。)をした場合における清算中の事業年度は、当該株式会社等が定款で定めた事業年度にかかわらず、会社法第494条第1項又は一般法人法第227条第1項《貸借対照表等の作成及び保存》に規定する清算事務年度になるのであるから留意する。(平19年課法2-3「三」により追加、平20年課法2-5「三」により改正)

(清算の開始原因)
会社法第四百七十五条
株式会社は、次に掲げる場合には、この章の定めるところにより、清算をしなければならない。
一  解散した場合(第四百七十一条第四号に掲げる事由[合併]によって解散した場合及び破産手続開始の決定により解散した場合であって当該破産手続が終了していない場合を除く。)(略) 

④会社更生法
会社更生法第1条には、「窮境にある株式会社について、更生計画の策定及びその遂行に関する手続を定めること等により、債権者、株主その他の利害関係人の利害を適切に調整し、もって当該株式会社の事業の維持更生を図ることを目的とする」と定義されています。
この会社更生法、破産のように会社を壊してしまうことはないのですが、それに近い強力な手段をもって債権債務の調整(減額など)を行います。

この会社更生法に基づく更生計画開始の決定がなされた時には、前述の清算と同様、その時点から更生計画認可の時までを1事業年度とします。
但しそれが1年を超える時は1年ごとに区切ることになります。

(法人税法等の特例)
会社更生法第二百三十二条
(略)
2  更生手続開始の決定があったときは、更生会社の事業年度は、その開始の時に終了し、これに続く事業年度は、更生計画認可の時(その時までに更生手続が終了したときは、その終了の日)に終了するものとする。ただし、法人税法第十三条第一項ただし書及び地方税法第七十二条の十三第四項の規定の適用を妨げない。

⑤民事再生法
民事再生法第1条には、「経済的に窮境にある債務者について、その債権者の多数の同意を得、かつ、裁判所の認可を受けた再生計画を定めること等により、当該債務者とその債権者との間の民事上の権利関係を適切に調整し、もって当該債務者の事業又は経済生活の再生を図ることを目的とする。」との記載があります。

なんとなく会社更生法と似ていますが、実際の手続は大きく異なります。
破産手続に近く、様々な手続きが厳格な印象のある会社更生法に比べ、民事再生は少しばかり柔軟んで、私的整理に近い印象です。
両社の違いを人間に例えると、会社更生法はICU入院(意識なしで生死をさまようレベル)、民事再生は通常の入院(治るまで通常の生活は出来ないが、意識もあり治療が可能な状態)、と言えるともいます。

さてこの民事再生手続ですが、認可決定されたとしても「会社法上解散していない(あくまで会社としては引き続き機能している)」状態になります。また民事再生法には事業年度の取り扱いがないため、事業年度が変化しないのです。

3.消費税と基準期間
①基本的な考え方
通常、会社の消費税は事業年度に合わせて計算されます。ところが、消費税の計算においてはその計算期間だけではなく「基準期間」という考え方が非常に重要となります。
この基準期間、一般的には事業年度の2期前のことを言いますが、この基準期間における課税売上高の多寡によって、今計算している年度の消費税の取り扱いが大きく変わってきます。

どのように変わるか、については、現在の制度が大変複雑なので別の機会に譲りますが、とりあえず「2期前の数字も大事」とご理解下さい。

また消費税法には事業年度の単独定義は存在せず、法人税法の定義を参照しています。

消費税法第2条
十三 事業年度 法人税法 (昭和四十年法律第三十四号)第十三条 及び第十四条 (事業年度)に規定する事業年度(国、地方公共団体その他これらの条の規定の適用を受けない法人については、政令で定める一定の期間)をいう。
十四 基準期間 個人事業者についてはその年の前々年をいい、法人についてはその事業年度の前々事業年((略))をいう

②1年に満たない事業年度がある場合(破産など)
さて、通常通り1年の事業年度が続いている場合には特に難しいことはないのですが、解散や破産などで「1年未満の事業年度」が発生した場合、基準期間の計算は少しややこしくなります。条文の規定は下記の通りです。

消費税法第2条
十四 基準期間 (略)法人についてはその事業年度の前々事業年度(当該前々事業年度が一年未満である法人については、その事業年度開始の日の二年前の日の前日から同日以後一年を経過する日までの間に開始した各事業年度を合わせた期間)をいう。

要するに、基準期間が1年以上になるよう、前の期間も合わせなさい、ということになる訳です。

3月決算の会社が2020年9月末に破産を申し立てた場合の例を書いてみます。

  • 当事業年度 :2021年4月1日~2022年3月31日(A)
  • 前事業年度 :2020年10月1日~2021年3月31日(B)
  • 前々事業年度:2020年4月1日~2020年9月30日(C)←1年未満
  • 前々々事業年度:2019年4月1日~2020年3月31日(D)
  • 当事業年度の2年前の日の前日:2019年3月31日
  • 上記以後1年を経過する日:2020年4月1日

→当事業年度の基準期間は、(C)+(D)、すなわち2019年4月1日~2020年9月30日となります。

以上

資本金・資本準備金・資本剰余金って何?

最近、最大手旅行会社のJTBが、資本金を23億400万円から1億円に減資することが明るみに出ました。
この資本金、一般的には会社の大きさを示すようなイメージでとらえられていることが多いですが、さて実際にはどのような意味を持つ存在なのでしょうか。
また、似た言葉で「資本準備金」や「資本剰余金」という概念との違いは何でしょうか。
今回は、これらの意味やその役割について、幅広くご説明します。

決算短信純資産の部
例:ある会社の純資産の部

1.会社には「カネ」が必要
言い古された言葉ですが、事業に必要なのは、「ヒト・モノ・カネ」です。
しかし、ヒトもモノも、カネ(資金)がなければ手に入れることは出来ませんね。

あなたには良い友達がいて、個人事業を起こす際には道具を貸してくれたり、またしばらくは無償で手伝ってもらえたり、というありがたい協力を得る事も出来るかもしれません。しかし出来たばかりの「会社」の場合そういうことは普通望めませんので、やはり「ヒト」や「モノ」を得るには資金が必要なのです。

このように、事業を始めるに当たって必要な資金のことを、経済学用語で「資本」と呼びます。別の言葉で言うと「元手(もとで)」ですね。この資本(元手)を手始めとして、会社は事業を拡げていくことになります。

2.「資本」は「資産」ではない
では、要するに資本とは「資産」のことじゃないか?と思ってしまいますが、そうではありません。会社の資産というのは、「会社が所有する財産」のことを言います。

資本(元手)を原資として資産を買い、人を雇い、そして事業に精を出して利益を上げたら、「資産」は少しずつ増えていきます。
つまり、資本は会社がその所有者(株主)から預かった元手の額すなわち「過去の金額」であり、資産は事業活動の結果会社が持つことになった財産の「今の金額」なのです。

3.「資産」「負債」「純資産」
以上の通り、資本は会社が株主から預かった元手であり、資産は会社が持つ財産の今の金額であると言えます。

ところで、会社がお金を調達する方法にはもう一つあります。それは「借入」です。
銀行等金融機関や、それ以外の個人や会社からの借入金は、資本と同じく会社にお金をもたらしますが、そのお金の「返し方」が資本と違います。

資本は、原則として会社が無くなるまで返してもらえませんが、借入金は、一定の期限や金利を定めて返済しなければなりません。
その他、仕入代金や税金の支払義務など、会社が負う債務をすべて合わせて「負債」と呼びます。

ここで、会社の良し悪しを示す、もっともシンプルな数字である「純資産」が出てきます。
純資産とは、「資産」から「負債」を差し引いた金額です。

言い換えれば、「返さなければならない負債を全て返した後、会社にどれくらいのお金が残るか」を示すのが「純資産」なのです。
この純資産は、会社に出資した株主がもともと出したお金から出来たものですから、原則として株主のものです。このため、純資産は「広義の株主資本」とも呼ばれます。

4.会社法
このように、「資本」とは、株主が出資したお金や資産、負債から定義されます。
ところが、どのような会社であるかを判断するため大変重要な数字である資本について、分かりやすい決まりを定めておかなければ、決算書を作る際や株主、銀行などが見る際に混乱が生じてしまいます。

このため、会社に関する様々な決まりを定めた「会社法」においては、資本について細かい規定が設けられています。

次の項目から、会社法における「資本金」「資本準備金」及び「資本剰余金」についてご説明します。会社の種類によってこれらの定義や制度は少しずつ異なりますので、このコラムにおいては全て「株式会社」を前提としています。

5.「資本金」は自分で決める
会社法において、株式会社の資本金は以下のように定義されています。

会社法第445条 株式会社の資本金の額は、この法律に別段の定めがある場合を除き、設立又は株式の発行に際して株主となる者が当該株式会社に対して払込み又は給付をした財産の額とする。2 前項の払込み又は給付に係る額の二分の一を超えない額は、資本金として計上しないことができる。

つまり資本金の額は、株式会社の設立や株式の発行をした際に、株主が払い込んだお金のうち、1/2以上、ということになります。

会社法が出来る前は、会社の財産が多い方が債権者を保護できるという考え方のもと、株式会社が1000万円、有限会社が300万円という「最低資本金」制度が設けられていました。

しかし、前の項目で説明した通り、「資本金」と「資産」すなわち会社の財産額は異なります。
このため、新規開業を促進することを目的として、最低資本金制度が廃止されることになり、「資本金1円」の会社を設立し、維持することも可能となりました。

現在も依然として資本金の額(会社の登記簿で確認できます)によって会社の規模を判断される場合もありますが、最近はこのこともあってあまり気にされなくなってきたようです。

6.「資本準備金」は自動的に決まる
次に、資本準備金は以下のように定められています。

会社法445条2 前項の払込み又は給付に係る額の二分の一を超えない額は、資本金として計上しないことができる。

3 前項の規定により資本金として計上しないこととした額は、資本準備金として計上しなければならない。

例えば、株主の払い込んだお金が100万円だったとすれば、そのうち50万円までは「資本金としない」ことができ、その「資本金としなかった」金額が資本準備金になる訳です。

会社法で定める準備金(法定準備金)は、会社法が出来る前(商法の時代)からありましたが、これは「会社の債権者を保護するため、一定額を溜めておきなさい」という意味合いの制度と言われており、資本準備金の他には利益準備金が定められています。

この法定準備金、減らすことができる目的には①資本金への組み入れ ②剰余金への組み入れ の2つがありますが、②の際には「債権者保護手続」が必要になります。この債権者保護手続は、資本金を減少する「減資」の際にも求められています。この点から見ると、法定準備金は、資本金に近い性格を持つと言えるかもしれません。

7.「資本剰余金」にはいろいろある
会社法上、資本剰余金は、資本準備金及び資本準備金以外の資本剰余金(その他資本剰余金)に区分されます。ここで説明する資本剰余金はその他資本剰余金を対象とします。

その他資本剰余金は、「資本としての性格を持った剰余金」として位置付けられます。

つまり、利益から発生する「利益剰余金」とは異なり、株主からの払込など、資本取引から発生する剰余金であるという意味です。

その他資本剰余金には、以下のようなものが含まれます。

  • 資本準備金の取り崩し額
  • 自己株式処分差額(自己株式を譲渡した際の差損益)
  • 組織再編における増加資本のうち、資本金や資本準備金に組み入れなかった金額

会社が配当する際、純資産のうち資本金や資本準備金は配当の原資にはできませんが、その他資本剰余金は配当原資とすることが認められています。この点が、資本準備金とその他資本剰余金の大きな違いです。

8.大会社
資本金が5億円以上になると、会社法上は「大会社」として取り扱われます。この場合、中小企業と違って以下のような義務が課されることになります。それぞれ大きな論点ですので、内容の詳しい説明は省略します。

  • 会計監査人の設置義務(公認会計士による監査)
  • 監査役会設置義務(委員会設置会社を除く)
  • 内部統制システムの決定義務
  • 損益計算書についての公告義務(基本は貸借対照表のみ)
  • 連結計算書類作成義務(有価証券報告書提出会社のみ)

9.その他の違い
ここまで資本金、資本準備金、及び資本剰余金について、会社法の定義を説明しました。

これらは、「利益」ではなく「株主の支出した資本」から生み出される点については共通しているのですが、法律の定めでそれぞれ違った取り扱いとなっています。

ところで、資本金、資本準備金、及び資本剰余金の違いはこれら以外にもありますので、以下簡単に説明します。

①その他の違い-法人税法(中小企業税制)
法人税法には中小企業に対する税率軽減の制度があります。この制度、「資本金」が1億円以下(大会社の子会社などは除かれます)の会社を中小企業と定め、このような会社に限っては年間800万円の所得まで、通常の税率より低い法人税率を適用するというものです。また、この他にも中小企業に関しては法人税法上の特典を受けることが出来る制度があります。
※ニュースとなったJTBは、主にここを狙っていたと考えられます。

さらに、中小企業の中でも資本金が3000万円以下の場合、中小企業支援の観点から多くの特典が用意されています。

②その他の違い-法人税法(資本と利益の違い)
現在の会社法は「資本」と「利益」については概念上区分しているだけで、実際には資本剰余金からの配当(本来利益から行われるもの)が認められているなど、相互の違いが事実上なくなっています。

ところが、法人税法上「資本」はあくまで「株主から払い込まれたもの」で、「利益」は「会社が獲得したもの」として、未だ明確に区分しています。このため、自己株式を売買した場合や、資本剰余金から配当を行った場合など、会社法に基づく会計と法人税法上の処理に違いの発生する場合があります。

③その他の違い-消費税法
新しく会社を設立する場合、「資本金」を1000万円未満にしておくと、設立以後2年間(売上高などが非常に多くなる場合は1年7か月程度が限度)は消費税の納税が原則として免除されます。

④その他の違い-地方税法(均等割)
地方税(都道府県民税や市町村民税)には、利益が出ていなくても一定の税金を会社に課す「均等割」という制度があります。この均等割の金額は、会社の規模が大きくなると高くなるよう定められています。

法人税の場合、会社の規模は前述の通り「資本金」で判断するのに対し、均等割の場合は「資本金等」で判断します。

この「資本金等」には、資本金と資本準備金が含まれるのですが、さらに「無償減資による減資差益」という金額も加えなければなりません。この減資差益は、資本金を減額して、株主にお金を払い戻さなかった時に発生するものです。つまり、税金を下げようとして資本金を減額したとしても、均等割は減らしてもらえない訳です(平成27年度の税制改正によってこの点は一部緩和されています)。

その他の違い-地方税法(外形標準課税)
外形標準課税は、規模の大きな企業に対して、均等割よりさらに積極的な課税を行う、地方税の一つです。具体的には、資本、所得、付加価値の3要素に課税をする制度となっています。

この制度の「資本」への課税は、前項で説明した「資本金等」が対象になるのですが、何故か大企業かどうかという判定は、「資本金が1億円を超えているかどうか」となっています。ですから、資本金と資本準備金を合わせた金額が1億円を超えていても、資本金が1億円以下であれば外形標準課税の対象にはなりません。このため、制度の導入時は、資本金を1億円以下に減らす減資手続が相次ぎました。

の他の違い-中小企業基本法(中小企業法)
中小企業基本法(中小企業法)は、我が国における企業の多数を占める中小企業を支援し、国民経済の健全な発展及び国民生活の向上を図ることを目的として制定されています。そのため、中小企業法には、中小企業施策に関する国及び地方公共団体の責務等が多数定められてきます。

この中小企業法における「中小企業」、会社法や税法とは少し異なり、業種や資本金、従業員などの多寡によって、個人も含めて判定することとなっています。

例えば、製造業で、資本金の額が3億円以下、又は常勤従業員が300人以下の会社の場合、中小企業法上の中小企業として扱われることになります。

10.まとめ
資本金、資本準備金、資本剰余金の違いについて、会社法を中心に、その他の制度も含めて説明しました。

最低資本金制度がなくなったことで、中小企業を起業や経営する場合「資本金の大小」を意識する場面は少なくなったように思います。ただ、後にIPO(上場)の準備を開始したり、他社をM&Aしたりといった場合には、この論点を意識して物事を進めなければならない場合が出てきます。

ただ、中小企業にとって一番大事なのは「資金繰り」です。確かに1円の資本金で会社の設立は可能ですが、開業当初の会社には1円しかない訳ですから、起業時の準備費用すら支出出来ないことになります。

起業時の資金調達は誰もが苦労するところですが、自己資金、借入金などをバランスよく組み合わせつつ、資金繰りに工夫をしながら、あなたのビジネスを成長させていきましょう。

以上

「会計専門家でない」監査役、監査等委員取締役は「会計上の見積り」にどう対応すべきか?

以前「監査等委員会設置会社へ移行した場合、ここに注意」 において、監査役会制度と監査等委員会制度(以下「監査役等」制度とします)における法律、実務上の違いとその対応について説明しました。
監査等委員会という制度自体への疑問や批判はありますが、今後の企業にとって「ガバナンス強化」という方向性が必要なことは明らかであり、監査役や監査等委員(この記事においては「監査役等」とまとめます)にとっては、これまで以上にその役割が重視される時代になっていると思います。

そうなると、「では監査役等はどのように監査すべきなのか」という論点が今まで以上に重要になってきます。

さらに法や会計に関する制度や実務が複雑化し、また様々な分野でコロナ対応やDX(デジタルトランスフォーメーション、デジタル化による変革)が生じている今、監査役等はどの論点においても非常に難しい判断や実務を迫られていると言えます。

会計分野はその中でも非常に重要かつ複雑な分野であると言えますが、その中でも特に専門的な分野である「会計上の見積り」という論点については、会計監査人たる監査法人や公認会計士に「任せきり」なのが実情で、リスクに比較して監査役等の理解、対応が十分とは言えないと感じています。

そこで今回は、この論点についてその概要とリスクの重要性、そして監査役等がどのような姿勢で、如何に対応すべきかについて、「会計の専門家でない」方でも理解、実践できるよう簡単に説明したいと思います。
かなり長くなりますが、是非ご一読ください。

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1.会計不正とは何か
最近特に注目を集めている会計不正。この会計不正はなぜ発生するのでしょうか。
投資家が株式に投資する際、最も重視する資料の一つが「決算書」です。
決算書は、会社が持つ現在・将来の「稼ぐ力」を見出すために必須のデータがふんだんに盛り込まれています。基本的に投資家は、このデータとその他の情報を組み合わせ、投資判断を行っているのです。

そうなると、この決算書を「実態より良く見せる」行為(古くから「粉飾」と呼ばれてきました)は、投資家を欺いて資金を得る、本質的には詐欺と同様の悪い行いであると言えます。
このような行為を、一般に「会計不正」と呼びます。

2.会計不正の類型
この会計不正、実は大きく分けて3つほどの類型があります。

①虚偽の事実に基づいて会計処理するもの
②子会社や関連会社、協力会社等を利用して損失を繰り延べるもの
③「会計上の見積り」を悪用するもの

このうち、①には、在庫の水増しや、架空売上などが当たります。実際に存在しない在庫や売上を計上することで、財産や利益を実際より増やして見せる、最も古典的な会計不正です。

売上から仕入や経費を差し引いたのが利益なのですが、仕入れた商品のうち決算期末に「在庫(まだ販売していない)」となっているものについては、「売上から差し引く仕入」に含まないことになっています。

このため、仕入は実際の金額を計算しておき、在庫を実際より不正に増やしておけば「売上から差し引く仕入」が少なくなり、結果として利益が水増しされるのです。

増やした在庫は実態のない資産として計上されますから、上の水増しされた利益と合わせて二重に会社の「稼ぐ力」を過大表示していることになります。

また、②には、損失の「飛ばし」や、循環取引(特定のグループ内で売上をぐるぐると回し、損失の発生などを先延ばししていくこと)が当たります。

これらは昔からよく行われる会計不正ですが、①は実地棚卸(棚卸資産を実際に数えて集計すること)や売掛金の確認(取引先に売掛金残高がどれくらいあるかを問い合わせること)で判明しますし、②に関しては子会社の監査や、通常と異なる条件の取引を調査することである程度見出すことが可能です。

これに対し、③に挙げた「会計上の見積り」の悪用が行われていることを監査によって発見するのは大変難しいのです。それは会計上の見積りが一般的に可視化できる事実とは離れた、「将来の予想」という重要な概念から作られているからです。

以下、もう少し詳しく説明します。

3.会計上の見積りとは
会計上の見積とは、一般に会計で取り扱う「売上」や「費用」といった個別の取引に関するものではなく、いくつかの特殊概念を含み、少し広い意味合いを持つ考え方です。

この会計上の見積について、日本公認会計士協会は、WEBページにある解説(「会計上の見積りの監査」)内で次のように説明しています。

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財務諸表に含まれる金額のうち、将来の見積や既に発生している事象であるがその金額を確定するための情報が不足している場合など、決算上、金額を見積もって計上しなければならない場合を「会計上の見積」という。
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この見積りには正しい情報が必要ですが、経営者が利用可能な情報やその信頼性には様々なものがあり、結果として会計上の見積りには不確実性が伴います。

単に不確実性が大きいだけではなく、経営者が利用する情報を偏って選択した場合、重要な虚偽表示(不正)が発生する可能性が高くなるのです(国際監査基準第540号より)。

会計上の見積りが関係する論点はいくつかありますが、以下、その例と想定される不正の可能性をいくつか挙げてみます。

①工事進行基準による収益計上
工事進行基準とは、工事やソフトウェアの開発等の売上を「完成した時に計上する」のではなく、その進捗に応じて計上する方法を言います。

総額100億円の工事を3年で進める場合、1年目の進捗が30%、2年目が45%、3年目が25%だったとすると、それぞれの年度における売上高(完成工事高)の計上額は30億円、45億円、25億円となります。

また、仮に工事が何らかの理由で赤字となることが分かった場合には、その赤字は進捗で分けずに全額が一度に計上されます。

この工事進行基準には、主に「収益総額」「原価総額」「進捗度」という3つの見積り要素が必要ですが、これらを操作することで、各年度の売上や利益を実際より大きくすることが可能になります。

②貸倒引当金
貸倒引当金とは、取引先や貸付先から将来どのくらい債権が回収できるかを見積り、あらかじめその債権を「仮に」減らしておく方法を言います。通常なら債権は全て回収できるものですが、相手の財務状況が悪くなるとこの減額を検討しなければならない場合が出てきます。この「仮に」減らしておく部分が「引当金」です(実際に貸し倒れが起きると、「貸倒損失」として処理します)。

例えば、10億円を貸し付けている先が経営不振で資金ショートを起こしそうな際、担保などを見積もっても3億円しか回収できない可能性がある場合、帳簿に計上した10億円はそのままで、負債の部に7億円の引当金を計上します。このネット額3億円が「回収見込み額」となり、引当金とした7億円部分は「費用(損失)」として利益を減らします。

この「回収可能性」は、「見積の見本市」とも言えるほどたくさんの論点があり、それぞれを操作すれば驚くほど大きな結果の差すなわち利益への影響となって現れます。

③税効果会計の繰延税金資産
税効果会計は相当難しい論点のようで、弁護士や企業経営者からもたまに「繰延税金資産って一体何?」なんていう質問を受けます。

この税効果、会計の理論としては非常に複雑なのですが、シンプルに要点を説明しますと、以下の通りになります。

  • 会計で計算される「利益」と、法人税率を掛ける「所得」とは違うものである
  • その違いは、主に費用計上が認められるタイミングのズレによって生じる(たいていは会計の方が早く費用計上される)
  • 会計で費用を計上しても、法人税で費用計上が認められないとなると、認められない部分については、とりあえず先に法人税を払っておかなければならない
  • この「先に払った」法人税(これを法人税の前払と言います)については、将来費用が認められるまで会計上は費用として計上できない

上記の「法人税の前払」部分が、「繰延税金資産」と呼ばれているものにあたります(逆に法人税の未払に当たる部分が「繰延税金負債」です)。

支払った法人税から、会計上費用にできなかった部分、すなわち繰延税金資産にあたるものを差し引いた結果がその時期の税金費用となりますので、差し引いた分だけ税金費用が減り、利益を押し上げる訳です。

もちろん、問題となった支払などが将来会計上の費用として認められれば、対応する繰延税金資産は会計上その時の税金として計上されることになります。

ところがこの「法人税の前払部分」は、いつでも利益を押し上げる効果があるとは限りません。

法人税において認められなかった費用の計上が将来認められる時点で、もし企業が赤字と予想されたらどうなるでしょうか。

後で認められた費用が減らすべき法人税はそこになく、繰延税金資産として計上されていた法人税は「前払」としての意味を無くしてしまうのです。となると、前払という意味で計上された繰延税金資産は資産として扱うことは出来ず、利益を押し上げる効果もなくなってしまうのです。

この考え方を「繰延税金資産の回収可能性」判断と言います。この判断にも「将来の収益の見積り」という、非常に恣意性の入りやすい考え方が含まれています。

④退職給付会計
退職給付会計は、税効果会計よりさらに複雑な理論を抱えています。ですが、これもシンプルに説明するなら下記の通りになります。

  • 現在雇用している人たちの退職金(規定や年金の状態で決まります)が将来どれくらい必要かを見積り
  • それをきちんと払うには「現在」どれくらいの財産が必要かを見積もる
  • これらの見積りに基づいて、現在足りない部分については費用を計上しておく

ご覧の通り、退職給付会計には「将来の退職金」と「それを払うための必要財産」という2つの見積りが必要です。

前者については退職金支給方法や昇給率、退職率、死亡率などを使用して計算するため非常に理論的に難しく、絶対の正しさとは言えないものの、年金数理士(アクチュアリー)など専門家に依頼することで、ある程度恣意性を排除した計算が可能となっているようです。

後者において問題となるのが「割引率」と言われる論点です。

現時点で計算すると、退職金を支払うための財源が10億円足りないと計算された場合でも、必ずしも今すぐ10億円準備しておかなければならない訳ではありません。投資利回りや期間を考えると、今これだけ準備すれば将来10億円になっている、という金額(現在価値)が計算できます。

この現在価値を計算する際に必要となるのが「割引率」です。この割引率の決め方にも一定の基準があるのですが、少しの操作で極めて大きな影響を与えることができるため、要注意の要素と言えます。

⑤減損
企業が持っている資産は、基本的に「稼ぐため」にあります。株主や銀行などから得た資金は、期待される以上の割合(投資利回り)で稼がなければ、営利を目的とする企業が存在する意義の一つが大きく失われるからです。

しかし、投資した資産(工場や有価証券など)が期待した収益を上げる事が出来なくなってしまうと、その時点で資産の価値は大きく下がってしまいます。現在の会計は、そのような兆候がある場合には、予想される収益の低下に応じて、資産自体の金額を引き下げてしまい、その引き下げた金額を損失として計上するように求めています。

これが、減損と言われるものです。

この「減損の兆候」を判断する際や、「予想される収益の低下に応じた資産の減額」を計算する際にも、会計上の見積りが大きく影響します。収益の低下を小さく見積もることができれば、大きな減損損失計上を回避できる場合があるからです。

その他、会計上の見積りが影響する分野は、減価償却計算、担保等で受け入れた資産の帳簿価額、各種引当金、リース資産の現在価値、市場価額のない有価証券の時価や国際会計基準における公正価値などたくさんあります。

4.監査役等の役割と対応
①監査役等と会計上の見積りの監査
会計上の見積りの計算には、経営者の意思決定や将来の見通しに基づく判断部分が大きく影響するので、場合によっては以下のような問題が発生します。

  • 会社の業績に与える影響が重要な場合、経営者の恣意性によって見積りがゆがめられやすい
  • 経営者は内部統制を無効化できるため、従業員を対象とした領域における内部統制システムの整備は、会計上の見積りを利用した会計不正には意味をもたない場合が多い

となると、会計上の見積りを悪用した会計不正に立ち向かうためには、経営者と直接対峙する権限や姿勢が必要となるのです。

このことから、たとえば監査法人等の会計監査人は、単に会計上の見積りの合理性を監査するだけではなく、「経営者が会計上の見積りを行う際に使用した重要な仮定が合理的であると判断しているかどうか」を「経営者確認書」という文書によって確認し、一定の牽制を掛けることにしています。

しかし、会計監査人は常に会社の内部と接触している訳ではありませんし、基本的には資料調査や従業員等へのインタビューのみに基づいて行われる会計監査で、経営者の意思が強く働く会計上の見積りを悪用した会計不正に100%対応など出来るものではありません。

また会計上の見積りに会計監査人が疑義を持ったとしても、経営者からある程度の外見的合理性をもって説明されたら、それを明らかに否定するだけの強い反証を用意することは極めて難しいのです。

また残念ながら、公認会計士たちも「不正」に真正面から対峙するようになってまだ日が浅く、対応が発展途上なのです。(「不正事例の研修を会計士に義務化 公認会計士協会 関根新会長」日経新聞記事)。

ここで私は、監査役等の役割がさらに重要になってくると考えています。

監査役等は、取締役会を筆頭に社内の重要会議に出席していますし、また通常は経営トップ層とも密なコミュニケーションを取っています。

このような立場に居る監査役等は、会計上の見積りを悪用しようとする兆候を最も早く感じ取ることができると言えます。

逆に、「対応しなければならない」という考え方もあります。

私のように会計が専門(公認会計士)である監査役等は言うに及びませんが、会計の専門家ではない方であっても、会社法における責任は専門家である者と変わらないと言われています。「私は会計の専門家ではないから分からない」と言っていてはいけないのです。

②監査役等の対処法
とは言ったものの、会計の知識なく会計の、しかも最も難しい分野の一つである「会計上の見積り」について、その合理性に関する判断を下すのはとても困難であるのも確かです。

そこで、そのような監査役でも対応が可能な方法をいくつかご紹介、ご提案してみます。もちろん方法はこれだけではありませんが、是非ご自身の能力をフルに発揮して対応してみて下さい。

a)トリガーを探る

会計上の見積りが必要となるシチュエーションには、往々にして「将来の損失発生可能性」がついて回ります。例えば、リストラ、投資の損失、退職金、貸し倒れなどがそれに当たります。

このような損失の発生可能性は、経営者をして会計上の見積りをゆがめさせる、悪いモチベーションとなり得ます。
そこで、監査役等は「近い将来損失になりそうな事象の発生可能性」について常にアンテナを立てておく必要があります。

もちろん、その事象がどれだけ損失を生むかという定量的な影響については、会計の知見を持つ監査役等、監査法人と協議することが必要です。

最も強力な情報源は「取締役会」や「重要会議」におけるやりとりですが、これ以外にも業界や競争相手の動向、場合によっては取締役以外の現場職員からの情報なども有用となる場合があります。

b)「質問力」を磨く
良い質問が出来る人は、良い情報を引き出せるだけではなくその場の状況をコントロールできます。会計上の見積りに対処するためにもこの力が非常に重要です。

例えば、「この債権の回収可能性は甘過ぎるじゃないか!」と断定的に指摘したとしても、先に書いた監査法人への対応と同様、専門的で一見合理性のある説明がなされたら、それを覆すだけの反証を用意することは素人にとって簡単ではありません。

これに対して、「この債務者の財務状況はどうやって調べましたか」「担保価値はどのように評価しましたか」「返済に回せるキャッシュフローはどうやって計算しましたか」「その確実性はどうですか」など、回収可能性を検討するに至った過程やその判断根拠について質問し、質問それぞれや他の状況との矛盾を探る方法は、相手に問題を自らさらけ出させる方法として有効です。

また、これらの質問と回答を正しく記録しておけば、万が一会計不正が発生した場合、自らが善管注意義務を果たしたことを立証できる証拠となり得ます(逃げを打つようですが、取締役や監査役等となる場合非常に大事な姿勢です)。

このような質問は会計的な知識がいると思われがちですが、一般的な経営者としての常識、リスク認識があれば十分に可能です。また、監査法人や会計の知見ある他の監査役等にアドバイスを受けても良いでしょう。

c)気兼ねしない
ここが一番大事な所です。
法律や会計の知見ある監査役等がそれぞれ法律、会計に関する質問、指摘をする場合はともかく、専門外の方が会計上の見積りに関係する質問をした場合、経営者や担当者から往々にしてあるのが下記のような反応です。

  • 「この業界は普通こうですよ」
  • 「○○と比較しても妥当だと思います」
  • 「専門外なんだから黙ってろ」

専門外で分からないことも多い場合には、こういう切り返しをされるとそれ以上の突込みを躊躇してしまいがちですが、そこで引いてしまってはいけません。

上記のような対応があること、それ自体が問題の所在を認識していることの表れとなっている可能性もあるのです。

もし問題がないのならば、専門外の監査役等にもわかる客観的・合理的な説明を行うべきですし、それをせず押し通そうとする場合には、妥協せずにわかりやすい説明を求めるべきです。

d)監査法人との連携
会計監査を担当する監査法人は会計のエキスパート中のエキスパートですが、上記の通り経営者から「ある程度幅を持った」合理性を説明されたら、それを完全に否定する反証を出すことは困難です。

このような点を補完し、監査上のリスクを減殺できるのが監査役等の存在であるとも言えます。

通常、監査役等の監査は原則として「相当性」監査(会計監査人の監査結果を相当と認める)ではありますが、それ以前に不正発生リスクを見出し、あらかじめ減殺しておく機能は監査役等にしか期待できないのです。

5.終わりに
会計監査人の監査も監査等委員の監査も同じなのですが、監査の本質的目的は「監査意見を出すこと」ではありませんし、「不適正、不適法意見」といったダメ出しをすることでもありません。

監査を進めていく上で、その監査の目的に応じて適切な経営、情報開示を行っていく体制が整備されていくようリードしていくことが一番の目的なのです。その結果として出されるものが監査報告であると私は考えています。

このために、監査役等は普段からアンテナを十分に張って適切な質問力により情報収集し、目立たず静かに平時のガバナンスを支える役割を果たすべきであると思います。

会計上の見積りが急激にそのリスクを増すのは、会社が業績落ち込みの階段を一段でも降りはじめた時、経営者がそれと気づかずに追い込まれ始めた時です。

如何に初動で止めるか、平時にその芽を摘み取っておくかが非常に重要です。

偉そうなことを書いてしまいましたが、このコラムが「ガバナンス強化」の時代を生きる監査役等の皆さんの参考になれば幸いです。

 

「実地棚卸」かんたんマニュアル(経理部門、管理部門向け)

ほとんどの方が「棚卸(たなおろし)」という言葉を聞かれたことがあると思います。
手持ちの商品について、数を数えることを言い、実際に数を数えることを「実地棚卸」と言います。
この「実地棚卸」、商品を販売していたり、また製品を製造したりする事業の場合には、少なくとも期末(出来れば中間や月次)で行う必要があるのです。
仕入や販売・移動などの払出が100%正確に記録で、品質や流行り廃りなどの変化がないモノを取り扱っている場合は帳簿記録だけで十分かもしれませんが、実際には記録間違いや現場での劣化、陳腐化などで記録残高を修正しなければならないケースも多くあります。
また、実地棚卸には大事な品物が盗難などの被害に遭わないよう、常に正確性をチェックしているという牽制としての役割もあります。
しかしこの実地棚卸、実際のカウント作業が大変なだけではなく、たくさんの注意点がある難しい手続なのです。
今回は、この実地棚卸について、簡単なマニュアルをまとめてみました。
このマニュアル通りに進めれば、誰でも正しい実地棚卸が行えます。
年末や3月決算に向け、ご利用頂ければ幸いです。

なおこの記事に関するお問い合わせは、このメールへのお返事か、弊所メールフォームをご利用ください。

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1.棚卸の手順
1)事前準備
①倉庫・工場等在庫配置場所ごとに見取図を準備、置き場に棚番等を付す
②タイムスケジュール見積、担当者配置、当日の生産・入出庫停止予定等決定と全社への通知
③商品および倉庫の整理整頓予定決定
④棚卸票の準備、検査
⑤商品受払台帳の整備(プレ棚卸)

2)棚卸の実施
①担当者の点呼、スケジュール最終確認、現場の整備状況確認
②緊急入出庫申請有無の確認
③棚卸開始宣言

3)棚卸票回収・集計
①棚卸票の回収
②商品受払台帳への記載
③在庫継続記録との差異把握
④差異分析と継続記録の修正

2.各段階での注意点
1)事前準備
①実地棚卸の目的(経営管理、資産保全、税務)や、生産・入出庫を止めなければならないことの重要性を十分に説明し、正確かつ迅速に終わらせることが担当者の責務であることを全員が認識する
②見取図や記号等に不備があると当日混乱の原因となるため、リハーサル等で慎重に確認を行っておく
2)整理整頓
実棚商品
・検数が行いやすいようなレイアウトで配置する
・同一品種・同一品名のものは、できる限り同一場所にまとめておく
・商品の品名、価格等を記載した紙を商品に添付しておく
・不良品、不動品等は正常品と区分し、整理しておくこと
(事前に処分や仕入先への返品・交換等行っておくことが望ましい)
預け品(社外在庫)
・原則として受け戻しておく
・受け戻しができない場合は、先方より預り証を受領しておくこと
預り品
・原則として返品しておく
・見本品、委託品、修理預り品等は通常品と区分し、整理しておくこと(返却しておくことが望ましい)
・返却できなかった預り品は、預り品であること、また預り先やその理由を明記した伝票を作成し、預り品置き場のよく見える場所に貼付しておくこと

3)棚卸票
リスト方式
・実棚在庫を記載しないこと(数えず書いてしまうため)
・残高のある商品名をリストしておくことは問題ないが、ないものもリストするか、加えて記載できる空欄を用意しておくこと
・実棚が終了したら、よく見える付箋等でカウントが終了したことを明示できるようにしておくこと
・その他記載内容以降は伝票方式と同様のため、この後は伝票方式を中心に説明する

伝票方式
・連番を付しておく
・できれば複写式が望ましい

4)商品継続記録の整備
・商品継続記録は棚卸前に締め切り、帳簿残高を確定させておくこと

5)売上、仕入、生産の締め切り
・売上、仕入については計上基準(検収基準、出荷基準等)を理解し、締め切りを厳格に守ること
・生産については原則停止する
・仕掛品等の評価を正確に行うため、原価管理上把握できるポイント(工程終了時点)等まで全て完了させてから生産を停止すること

6)緊急入出庫申請
・できるだけ断ること
・棚卸中やむを得ず入庫を行う場合、当該入庫を必要とする部門の長に理由と品名、数量等を記載した緊急入庫申請を提出させ、棚卸完了後当該申請分を除外する
・棚卸中やむを得ず出庫を行う場合、当該出庫を必要とする部門の長に理由と品名、数量等を記載した緊急出庫申請を提出させ、棚卸完了後当該申請分を追加する
・緊急入出庫分を加減算する場合には、申請書と入出荷伝票等を必ず照合すること

7)実地棚卸
棚卸責任者
・棚卸票を各在庫場所の棚卸担当者に割り当てる
・担当者への割当番号を記録しておく
棚卸担当者
・棚卸担当者は、区域ごとに2名一組(計数者、記録者)とする
・計数者が商品名・品番等と数量を読み上げ、記録者が商品名や数量等を棚卸票に記入
・棚番号が終わるごとに棚卸票を貼付する
・書き損じの棚卸票は、破り捨てずに×を付して回収する
検査担当者(経理部門や内部監査部門が実施監査法人等が行う場合も)
・棚卸実施場所を偏りないよう巡回し、実施状況を検査、指導する
・棚卸票の貼付漏れがないかを確認する
・サンプルを選んでテストカウントし、集計後の棚卸票と照合する
・可能であれば、現場の固定資産等の実地確認も行うと効率的

8)集計/整理
棚卸票の回収
・すべての棚の棚卸しが終了したことをレイアウト図で確認し、棚卸票を順次回収する
・回収終了後、配付枚数と使用、未使用、書き損じの枚数を照合し、紛失がないかを確認する
・棚卸責任者が、棚卸票の記載内容をチェックし、不備がある場合は現地を確認する
・訂正のある場合は、棚卸責任者が内容を確認し訂正印を押印する

商品受払台帳への記載
・実施棚卸数と帳簿残高とに差異がある場合には、もう一度現品と帳簿を調査し原因を追求する。
・過不足の理由が不明の場合は、棚卸責任者の承認を得て過不足数を商品受払台帳に記載
し、実際数量に一致させる

 

帳簿を甘く見ると「消費税」で痛い目に~消費税の帳簿要件

私たち税理士は、税務業務の一環としてお客様の様々な取引を記録した「帳簿」を作成することがあります。
よく「記帳代行」などと呼ばれている仕事ですね。
この「記帳する仕事」が税理士の仕事だと思っておられる方も多いのですが、違います。
実は「税金の仕事をするために必須となる帳簿を作っている」という考え方が正しいのです。
今回はこの帳簿について、その重要性と、帳簿の作成や保管をおろそかにした場合の恐ろしいリスクについて説明します。
※一番恐ろしい所は3.4.ですので、お急ぎの方はそちらからお読み下さい。

1.帳簿とは?(簿記の定義)
会計業務に携わる上で基本となる「簿記」の世界においては、基本的な帳簿は以下のようなものがあります。

  • 主要な帳簿:仕訳帳、総勘定元帳
  • 補助的な帳簿:現金出納帳、預金出納帳、売上・仕入帳、在庫表、受取手形・支払支払手形帳、売掛・買掛帳

今回の趣旨とは異なるため細かい説明は省略しますが、主要な帳簿には営業に関する取引の全てが記載されており、補助的な帳簿は、主要な帳簿を補足する形で特定の取引の詳細が記載されています。

またこれらの帳簿を正しく作成するためには、「複式簿記」(一つの取引を借方、貸方と2つの概念に分け、資産や負債、資本と損益を正確に把握できる帳簿記載の方法)を使わなければなりません。

総勘定元帳

2.法律に基づく帳簿
①会社法
株式会社などの会社が作成すべき帳簿は、1.で説明した簿記の世界の概念を基本としつつ、会社法の第432条に下記の通り定められています。

「株式会社は、法務省令で定めるところにより、適時に、正確な会計帳簿を作成しなければならない。株式会社は、会計帳簿の閉鎖の時から十年間、その会計帳簿及びその事業に関する重要な資料を保存しなければならない。」

個人の場合には会社法のような制度がありませんので、原則として簿記の定義がそのまま使われており、保存義務についても後述の所得税法や民法に従うこととなります。

②法人税法・所得税法
税理士が携わる帳簿作成の大半を占めるのが、会社に関する法人税法、個人事業に関する所得税法に基づく業務です。

これらの帳簿については、会社法と同様に簿記の世界を基本として、法人税法、所得税法それぞれで帳簿の作成義務や保存義務が定められています。

また、「青色申告」(①で説明した複式簿記を使い、正しく作成した帳簿を適切に保存することを前提とした制度)を届け出た場合には、税制優遇などを受けることができます。

3.消費税の「帳簿保存義務」
実は、最も注意すべきなのは「消費税」の世界における帳簿の取り扱いなのです。

前述の通り個人事業でも法人であっても、帳簿の作成義務はありますので、申告書をきちんと作成するためには帳簿を作成していることが当然の前提となっています。

納税すべき消費税は、この作成された帳簿の記載に基づき、原則として「売上などの課税収入に課された消費税」から「仕入や経費などの課税支払に課された消費税」を差し引くことで計算されます。条文は下記の通りになっています。

消費税法第30条第1項(抜粋)
事業者が、国内において行う課税仕入については、課税標準額(売上など)に対する消費税額から、国内において行った課税仕入に課された消費税額を控除する。

しかしこの「帳簿記載」について、消費税法は他の法律にない厳しい規定を置いています。下記の通りです。

消費税法第30条第7項(抜粋)
第1項の規定は、事業者が当該課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿及び請求書等を保存しない場合には、当該保存がない課税仕入れ、特定課税仕入れ又は課税貨物に係る課税仕入れ等の税額については、適用しない

要するに、「帳簿や請求書を保存していない場合」には「売上などの消費税」はそのまま計算し、「仕入などの消費税」を「差し引きさせない」ことを定めているのです。

帳簿は当然作っているのだから、保存するのは簡単だろう、と軽く考えてはいけません。
法律上「保存する」は、「取引を行った年月日、内容、金額、相手方の氏名又は名称などの必要事項を整然とはっきり記載する」ことを求めているのです。

このため、厳密にいうとこれらが一部でも欠けていると、本来より大幅に多額の消費税を納めなければならないことになります。

4.事例
税務調査においてまだそれほどこの論点が厳しく問われるケースが多くないようです。
このため皆さん軽く考えがちなのですが、数で言えば事例はたくさん出ています。また、税務署や大阪国税局の調査官からも、消費税率が上がり重要性が増えているので、今後この分野は重点として取り扱っていくとの情報を頂いています。

(事例)国税不服審判所の裁決例(平成6年12月12日裁決)から
帳簿等には、仕入先としてその氏名の氏に相当する部分が記載されているのみであり、また、請求人は、本件調査の際に本件仕入先を明らかにして記載不備を補完しようとしなかったことから、帳簿又は請求書等の保存がない場合に該当するとして、仕入税額控除の適用は認められないとした事例

請求人は、[1]本件帳簿等は、消費税法第30条第8項及び第9項に規定する記載要件を充足し、かつ、それを保存しているのであるから、同条第7項に規定する仕入税額控除に係る帳簿又は請求書等を保存しない場合には該当しない、また、[2]請求人は、本件取引の際に、仕入先に消費税を支払ったのであるから、仕入税額控除を認めるべきである旨主張する。

審判所の判断は、次のとおりである。

本件帳簿等には、仕入先としてその氏名の氏に相当する部分が記載されているのみで、住所、電話番号等の記載もないため、本件帳簿等から仕入先を特定することはできない。消費税法第30条第8項第1号のイは、明確に「課税仕入れの相手方の氏名又は名称」を記載することと規定しているのであるから、当該記載が同項の帳簿としては不備なものであることは明らかである。

原処分に係る調査(「本件調査」)の際に、調査担当職員が、請求人に仕入先を特定できない場合には仕入税額控除が適用できない旨説明し、本件取引の仕入先を特定するよう求めたにもかかわらず、請求人が本件仕入先を明らかにして記載不備を補完しようとしなかったことが認められるから、その時点において保存されている帳簿等は、記載不備な状態における本件帳簿等のみであることになる。

請求人は、当審判所に対して、仕入先が特定できるものがあっても、仕入先を明らかにすると取引ができなくなるおそれがあるため明らかにすることはできない旨答述しているが、これをもって請求人が適法な帳簿又は請求書等を保存しないことにつき災害その他やむを得ない事情がある旨主張していると解しても、そのような主張は仕入先の相手方の氏名又は名称を記載した帳簿等の保存を求める消費税法第30条第7項ないし第9項の規定の趣旨とまったくあいいれないところであるから、このような理由をもってしては、同条第7項の「その他やむを得ない事情」に該当するとはいえない。

本件帳簿等に記載された氏の真偽について検討するまでもなく、本件取引については、消費税法第30条第7項に規定する仕入税額控除に係る帳簿又は請求書等の保存がない場合に該当し、同条第1項の規定による仕入税額控除を適用することはできない。

本件取引については、消費税法第30条第7項の規定により、同条第1項の仕入税額控除の規定は適用することができないのであるから、本件取引に係る仕入れの存否、その支払対価の額、消費税相当額の仕入先への支払の有無について検討するまでもなく、仕入税額控除をすることはできない。

今年の年末調整は大変!(改正とその他のお話)

今年も年末調整の季節がやってきました。
ここ数年「新元号」「配偶者控除の改正」やそれに伴う用紙の変更などがあり毎年注意点が多かったのですが、今年はさらに永年大きく変わらなかった論点(基礎控除や給与所得控除)にまで改正がある大変な年になります。
改正論点を中心にわかりやすく解説しますので、経営者や給与担当の方は是非早めに手続きのスタートを、また働く皆さんはできるだけ早めに資料の提出をしましょう。

1.年末調整とは
年末調整とは、年末に在籍している役員・社員を対象として、毎月の給与や賞与から「天引き」(源泉する、といいます)されている所得税を、年末に精算する手続きのことを言います。
この精算が必要な理由は、主に以下の通りです。

  • 所得税の計算は年末時点を基準にしているものがほとんどで、年末にならないと状況が確定しない
  • そもそも、毎月の給与や賞与から計算されている税額は「仮計算」でしかなく、年末までの支給額を確定しないと正確には税金が計算できない

年末調整2020
年末調整の流れ(国税庁「年末調整のしかた」より)

実はこの年末調整、上のフローチャートをご覧頂くとわかる通り、皆さんが記載される面倒な用紙(扶養控除等申告書、基礎控除申告書、配偶者控除等申告書、所得金額調整控除申告書、保険料控除申告書、住宅ローン控除申告書)の作成はプロセスのほんの入り口なのです。そして実はその後の手数が非常に面倒なため、会社側(特に人事部や経理部)には結構負担がかかっています。

このため、遅れたり督促されたりした場合に担当の方が不満な顔をしていても、ただでさえ面倒な手続きをさらに遅らせているわけですからわからないでもありません。
その入り口となる書類についてはできるだけ誤りや抜けのないよう、期限までに必ず出すよう協力してあげましょう。

2.令和2年から適用される改正一覧
今年(令和2年)から適用される改正は、以下の通りとなっています。

  • 給与所得控除の引き下げ
  • 基礎控除の引き上げ
  • 所得金額調整控除の創設
  • 配偶者控除、扶養控除などの合計所得金額要件の見直し
  • 未婚のひとり親に対する税制上の措置及び寡婦(寡夫)控除の見直し
  • 電子手続

3.給与所得控除の引き下げ
給与については、支払いを受けた給与額から、給与額に応じて変動する一定額を差し引いた金額に税金をかけることになっています。この「差し引く一定額」を給与所得控除と言います。
この給与所得控除の計算表が、下記の通り改正されています。

給与所得控除改正
給与所得控除の改正

 この表は慣れないとわかりにくいのですが、給与収入が増えるに従って、少しずつ給与所得控除額が増えるように作られています。
改正前後を比べてみると、給与収入が850万円までは給与所得控除が10万円減少し、その後は25万円まで減少幅が広がるように改正されています。
その分所得税が増えることとなりますが、後で説明する基礎控除の改正、所得調整控除の創設により一部増税の影響を打ち消すこととしています。

4. 基礎控除の改正
所得には全て税金がかかるわけではなく、「基礎控除」と呼ばれる最低ラインが設けられています。この基礎控除については、長い間どんなに所得の高い人であっても適用がなされてきたのですが、下記の通り合計所得金額2,500万円を超える方についてはとうとう適用がなくなってしまいました。
他方、2,400万円以下の所得者については10万円増額されています。

基礎控除改正
基礎控除の改正

この金額を計算するため、従来の年末調整書類に加え「給与所得者の基礎控除申告書」という用紙に記入の上提出する必要があります。

 5.所得金額調整控除の創設
その年の給与の収入金額が850万円を超える所得者で、
①特別障害者に該当する人
②年齢23歳未満の扶養親族を有する人
③特別障害者である同一生計配偶者を有する人
④扶養親族を有する人
の総所得金額を計算する場合には、給与の収入金額(但し1,000万円が限度)から850万円を控除した金額の10%に相当する金額を、給与所得の金額から控除することとされました。

この金額を計算するため、従来の年末調整書類に加え「所得金額調整控除申告書」という用紙に記入の上提出する必要があります。

6.配偶者控除、扶養控除などの合計所得金額要件の見直し
いわゆる「扶養の対象」である、同一生計配偶者、扶養親族、源泉控除対象配偶者、配偶者特別控除の対象となる配偶者及び勤労学生の合計所得金額要件がそれぞれ10万円引き上げられ、次の表のとおり改正されました。これは、基礎控除の最低限度が4.の通り引き上げられたことに関係したものです。

扶養所得条件改正
配偶者控除・扶養控除合計所得金額改正

 7.未婚のひとり親に対する税制上の措置及び寡婦(寡夫)控除の見直し
配偶者と死別したり離婚して未婚のままであったり、扶養家族や子供がいる人、所得が一定の額以下の人を所得税法上「寡婦」や「寡夫」(両方とも「かふ」)と呼び、その条件に応じて課税所得が控除されることになっています。この制度、従来は女性の要件が少し広くなっていたり、全ての要件を満たす女性は控除額の割り増しがあったりと、男女差のある制度となっていました。
また、この制度の適用があるのは「民法上の婚姻関係にある者」に限られ、未婚のひとり親については対象となっていませんでした。
令和2年の改正においてはこの点が見直され、「ひとり親控除」と新しい「寡婦控除」制度に再編されました。
この改正については、別のページ ひとり親控除(令和2年 税制改正) において詳しく解説しています。

8.年末調整の電子手続
元々、「保険料控除申告書」や「住宅ローン控除申告書」を従来は書面(ハガキ等)で添付していた保険料控除証明書等は、保険会社等から送られる控除証明書等の電子データで提出することができることになりました。この手続を可能にするため、年末調整手続において、これらの電子発行された控除証明書等データ提出するための「年末調整控除申告書作成用ソフトウェア」(以下「年調ソフト」が無償提供されています。
年末町営の電子申告イメージは下記の通りです。

年調電子化

 

なお、従業員から年末調整申告書に記載すべき事項を電子データにより提供を受けるためには、勤務先があらかじめ所轄税務署長に、「源泉徴収に関する申告書に記載すべき事項の電磁的方法による提供の承認申請書」を提出し、その承認を受ける必要があります。この申請書を提出した月の翌月末日までに税務署長から承認又は承認しないことの決定の通知がなければ、この申請書を提出した月の翌月末日に承認があったものとされていますので、例えば12月から年末調整手続の電子化を行う場合には、念のためこの10月末までには申請書を提出しておく必要があります(10月提出→決定通知がない場合には翌月、すなわち11月末日に承認があったものとみなされる→12月から利用可能)。

 

9.その他以前からの年末調整注意点 (改正で説明した書類を除く)
①扶養控除(異動)等申告書

年末調整においては最も一般的な様式で、要するに「年末時点での扶養家族について書く」書類です。しかしこの様式は意外と重要で「(仮に記載すべき扶養家族がなかったとしても)提出しなければあなたの毎月の源泉所得税額を非常に大きな率で計算しなければならなくなります。
なお年末時点の扶養家族状況はすなわち年明けの状況なので、それを考えて来年用(今年なら「令和3年用」)の用紙に記載してもらいます。

②配偶者控除等申告書の書き方
年末までの「本人と配偶者の所得見積額」を記載します。
配偶者控除、配偶者特別控除が前回の改正で廃止され「103万円」の制限がなくなったため、より複雑になっています。なお、年末までに実績が見積額と変わった場合は、翌年1月(源泉税の納付や源泉徴収票の提出)までは会社が訂正するか、または自分で確定申告が可能です。

③保険料控除申告書
保険料控除申告書は、生命保険料、地震保険料、社会保険料(国民年金や健康保険料)、小規模企業共済などを自分で支払っている時に記載します。また受取人が配偶者や親族となっている生命保険料や、生計を一にする親族の家屋を対象にした地震保険料が含まれます。
この控除証明書を提出する際には、証明書の添付、特に生計を一にする親族の国民年金支払証明書を忘れないようにしましょう。また、控除証明書に記載してある区分(生命保険の一般、個人年金、介護や地震保険の地震、旧長期など)についても十分注意して記載しましょう。

④住宅ローン控除申告書
正式には「住宅借入金等特別控除申告書」と言います。
ご存知の通り、この制度は住宅ローンを借りて家を購入した場合、数年に渡って住宅ローン残高の一定割合を所得税から控除してくれる制度です。しかし、1年目は必ず確定申告で手続きしなければなりませんので注意して下さい。

自己株式取引における「時価」の考え方(弁護士・会計士・税理士向け)

株式会社が自己の発行する株式を株主から買い取ることがあります。
上場会社の場合株価対策や株主への還元を目的とすることが多いですし、非上場会社の場合は筆頭株主支配の強化、相続人からの買取による株式分散の防止、組織再編などの目的が多いようです。
今回は、この株式を買い取る際の「時価」の考え方について説明します。
この記事は専門性が高いため、内容は会計士や税理士といった会計専門家、また弁護士などの法律専門家に向けて記載しました。

株式をそれぞれの発行会社が買い取る(自己株買取)際には、その取引価格をどのように決定するかが問題となります。特に、当該取引は同族関係者間での取引ですから経済合理性に基づかない価格が設定されると課税上の問題が発生する恐れがあります。
これに加え、完全支配関係下(100%支配グループ内)における取引の場合には、グループ法人税制の適用が想定されますので、この論点にも注意する必要があります。
以下、上記を踏まえて自己株式を取引する場合(非上場会社)の時価の考え方について説明します。

1)法人間における非上場株式取引
法人対法人で非上場株式を譲渡する(自己株式ではない)場合、一般的には相続税の申告において株式の時価評価に使用する「財産評価基本通達」の178から189-7にある方式を「課税上弊害が無い限り」一部修正して計算するのが原則です。この場合の時価を「法人税法上の時価」と呼びます。この場合、譲渡後の議決権割合を基として計算方法が決定されます。議決権を基礎とするのは、株式会社においては議決権割合こそが会社を支配する力を表すからです。

2)グループ法人税制適用外における自己株式取引
ところが、自己株式の取引に関して上記1)を厳密に適用すると、議決権の数は0として規定されている(財産評価基本通達188-3)自己株式を取得した場合、最も評価の低い「配当還元方式」で評価されるべきという考え方となってしまいます。
しかし、通常の取引において十分な価値を持つ株式の場合、自己株だからといって非常に評価の低い金額で取引しても問題がないと言い切ってしまうのも問題があるため、「譲渡前の議決権数」を基礎として1)を適用する考え方が(理論的には完全ではないものの)実務的には多く使われているようです。
なお、自己株式取引において低額譲渡(時価とされる金額より低い価格で取引)の問題が発生した場合、譲渡側の法人には寄附金課税が見込まれるものの、譲受法人にとっては資本取引の為、受贈益課税が発生しないと考えられています。

3)グループ法人税制適用下の取り扱い
さらに、グループ法人税制適用下においては、自己株式の譲渡損益が資本金等の額に加減算され、課税所得に算入されないことになりました(平成22年改正税法)。また、グループ法人税制適用下においては、自己株式取得に伴って発生するみなし配当(株式を買い取る場合、資本にあたる部分以外を配当支払とみなす)も全額が益金不算入となります。
また、グループ法人税制適用下の寄附については、税務上なかったものとみなされ、支出法人側で損金不算入、受取法人側で益金不算入とされます。但し、この取扱いが適用される寄附金と受贈益は、一方の法人において寄附金となり、他方の法人において受贈益となるものに限られます(法法25の2①括弧書き、37②括弧書き)。このため、一方の法人においてのみ寄附金の額が発生し、他方の法人においては受贈益の額が発生しないというようなもの(前述)で発生する譲渡法人の寄附金課税)に関しては、この取扱いは適用されず、一般的な寄附金課税となると考えます。

合併手続の留意点~合併無効とならないために

近年組織再編に関する法整備が進み、合併、分割、株式交換・移転といった組織再編手法が大変使いやすくなりました。
その中でも、昔からよく使われている「合併」については、基本的なM&A手法として大変便利な手法であると言えます。
しかしながら、合併については会社法に規定された手続を正しく進めなければ、それ自体が無効となってしまうリスクがあります。もし無効となった場合、単に手続自体が無駄になるだけではなく、合併を前提に進められている様々な契約や事業活動が全て合併前の状態に戻されるため、甚大な悪影響があります。

今回は、このようなことがないよう、満たされるべき最低限の手続について記載してみました。
※税理士の分野である税法やその他の分野に関してはまた別の機会があれば記載します。

①合併のスケジュール
合併手続はおおよそ下記の通りの手順で行われます。

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これらの合併手続は会社法に規定されており、これらの手続に従わなければ合併を行うことはできません。この手続や登記申請書の添付書類に瑕疵がある場合、合併自体が中断する場合や、のちに合併無効の訴えにより遡って無効となる場合があります。

合併手続が中断、中止する場合はもちろん問題ですが、遡って無効となる場合には、合併を前提に進められている様々な契約や事業活動が全て合併前の状態に戻されるため、甚大な悪影響があります。このため、合併手続が登記まで適切に行われているかどうかについて、下記の手続を中心に十分注意する必要があります。

②合併契約の締結
合併契約には、消滅会社の株主に交付する対価や効力発生日など、法律で定められた事項を漏れなく決定しなければなりません。合併契約には法定の必須事項があり、この必要事項を欠くと合併の無効原因になります。また合併契約書は合併登記申請における添付書類となります。

③合併に関する書類の事前備置
存続会社および消滅会社は、株主や債権者が合併の適否や合併無効の訴え提起を判断できるよう、合併契約や当事会社の計算書類など一定の書類を本店に備え置かなければなりません。備え置く期間は合併の効力発生日後6ヵ月を経過するまでです。

④債権者保護手続
存続会社および消滅会社は、債権者に対して合併に異議があれば一定期間内に申し出る旨を官報(一定の場合は日刊新聞紙、電子公告)で公告しなければなりません。異議申出の期間は1ヵ月以上必要です。

⑤株主の株式買取請求
存続会社および消滅会社は、合併の効力発生日の20日前までに株主に対して合併する旨の通知(一定の場合は公告)をしなければなりません。

⑥株主総会による合併契約の承認
合併契約は、合併の効力発生日の前日までに存続会社および消滅会社の株主総会で特別決議による承認を受ける必要があります(但し簡易合併、略式合併の場合は、原則として株主総会による決議を省略できます)。

⑦登記・財産等の名義変更手続
存続会社の代表者は、合併の効力発生日から2週間以内に、存続会社の変更登記と消滅会社の解散登記をする必要があります。また、消滅会社の権利義務はすべて存続会社に移転するため、預金、土地および建物など、消滅会社の名義になっている財産等については存続会社への名義変更が必要です。

⑧合併に関する書類の事後備置
存続会社は消滅会社より承継した権利義務や合併手続の経過等を記載した書類を作成し、効力発生日から6ヵ月間本店に備え置かなければなりません。

⑨手続瑕疵の影響
上記の手続に瑕疵(かし 欠陥のこと)があった場合には手続の無効原因となり得ますが、その瑕疵が重大でない場合でも必ず合併が無効となるわけではありません。瑕疵が発見された場合には、合併手続に詳しい弁護士、司法書士などの専門家から無効性について意見を聴取した上で対処を判断する必要があります。

 

役員のお給料、そのやり方で大丈夫?結構危ない3つの注意点

役員のお給料は、従業員のそれと違って、法人税法上非常に重要な制限があります。
一つ間違えば、せっかく払った給料が会社の経費にならず多額の税金がかかる!なんてことが簡単に起こります。この制限を知って、無駄な法人税の発生を押えましょう!

※このコラムは一般向けのため、例外や詳細な条件などを省略してある部分がありますのでご注意ください。詳細についてのご質問は、事務所までお問い合わせ下さい。

1.役員の給料と従業員の給料の違い
会社のために仕事をしたら、お給料は当然もらえるものです。
ですが、一般の従業員さんと役員さんでその意味が違う、という点は御存じですか?
一般の従業員さんのお給料やボーナスは、原則として会社の費用(法人税法上は「損金」と言います)になるので法人税を減らせるのですが、役員さんはそうはいかないのです。
役員さんのお給料については大きく3つの注意点があるので、是非ご注意ください。

2.(注意点その1)役員のお給料は「原則経費ではない」
意外なことに、法人税法には「役員のお給料は『原則として』損金(税金の引ける経費)にならない」という驚きの定めがあります。
でも、おかしいですよね。
会社のために働いて、その分がお給料として支払われているので、会社の経費にならないのはどう考えても変です。
実は、会社の経費にするためには、次の3、4についての条件を満たす必要があるのです。

3.(注意点その2)役員のお給料は「定時」「同額」でなければ経費にならない
「原則経費にならない」とされる役員のお給料は、「定時(毎月決まった日など)」に、「同額(金額が変化しない)」支払の場合に限って経費になります。
例えば、毎月25日に100万円のお給料を支払っている方の場合、ある月だけ120万円にしてしまったら、増えた20万円部分が経費にならないのです。
このお給料を全額損金のまま変更できるのは、なんと決算日後3カ月までの間だけ。

役員給与1
増額変更がOKのケース(3月決算の場合)

これ以外の場合は、上で書いたように変化した部分が経費にならないという問題が起こってしまいます。例えば、下記のようなケースの場合、8月以後増やした部分(点線より上)が全部損金にならないのです。

役員給与2
増額
変更がNOのケース(3月決算の場合)

4.(注意点その3)役員のボーナスは、「あらかじめ届け出た金額」から1円でも違えば経費にならない

定時・同額という事ですから、ボーナスはもってのほかです。
出した金額が全て経費にならない、という大変痛い状態となってしまうのです。
但し、決算期末から4カ月以内に「いつ、幾らのボーナスを出す」ことを書いた「事前確定届出」を税務署に出し、その届出通りの支払日、支払金額のボーナスを出した場合に「限り」そのボーナス金額が経費になります。
如何でしたか?
以上の通り、役員さんのお給料については、一般の従業員と非常に大きな違いと注意点があります。
この他にもたくさんの論点がありますので、十分にご注意ください。

 

汎用データコンバータについて

1.財務会計データの非互換性

会計ソフトに代表される財務会計用ソフトウェアは、それぞれの開発会社が独自に定めた方法でデータを保存しており、当然ながらそれぞれの間に互換性(相互に利用できること)がありません。

このため、例えばある会計ソフトを長年利用してきた会社が、別のより使いやすい、廉価な会計ソフトに移行したいと考えたとしても、旧ソフトから新ソフトへのデータ移行は容易ではありませんでした。

また、同じ開発会社の会計ソフトと販売管理ソフトは連携の取れる場合が多いのですが、違う開発会社間の連携はごく稀なケースを除いては不可能でした。

そんな訳で、これまで財務会計用ソフトの世界は、データの非互換性が一種の「移動障壁」であったと言えます。

2.汎用データコンバータ

さて、平成17年8月、私どもの事務所は「汎用データコンバータ」を開発しました。
このコンバータは、ある会計ソフトウェアや販売管理ソフトウェアなど、決まった様式で多数の取引などの情報を持つデータ(ソースデータ)から、別のソフトウェアにおいて取扱が可能な様式へ、一度の簡単な設定後は自動的に変換を行うことができる、一種の「フィルタ」と呼ばれるアプリケーションです。

このコンバータを利用することで、お客様がどの会計ソフト(仕訳をCSVなどテキストデータの形で出力が出来るものに限ります)をご利用の場合でも、簡単な基礎データ収集と初期設定によって私どもの事務所で使用する会計ソフトの形式へのデータ変換が可能です。

3.汎用データコンバータでできること

では、この汎用データコンバータでどのような作業ができるでしょうか。 現在実際に行われている作業の一部をご紹介します。

1)会計ソフト移行

このコンバータが最も力を発揮するのがこの作業です。
ある会計事務所がAという会計ソフトを使っている場合、新規顧問先となった会社の経理部においてBという会計ソフトを採用している場合、いわゆる「自計化(顧問先にて基本的な記帳を行い、会計事務所が内容の確認を行う方式)」状態を続けるためには、従来は
①顧問先においてBをAに変更してもらう
②会計事務所でBを新たに購入し、受け入れをする
など、共通の会計ソフトをどちらかで購入する必要がありました。

しかし、汎用データコンバータを用いることで、顧問先は従来通りBで記帳し、そのデータを会計事務所のAに受入れ、チェックや決算、申告書作成を行うという業務の流れが可能になります。

2)販売管理などサブシステムとの連携

同じメーカーのソフトを使っている場合、販売管理ソフトなどサブシステムと会計ソフトは通常連携が取れるようになっています。

しかし、会計ソフトとサブシステムのメーカーが違うというケースは以外と多くあります。
その理由はいくつかありますが、例えば次のようなものです。
①会計ソフトと同メーカーの販売管理ソフトが営業形態に合わない
②会計ソフトは経理部、販売管理ソフトは営業部と別々に導入が行われた
このような場合も、汎用データコンバータは違うメーカー製のソフトウェア間の連携を取ることができます。例えば販売管理ソフトから販売データ、入金データなどをアプトプットし、これを会計ソフトの仕訳データに変換後会計ソフトで取り込むといった処理が可能となります。

4.会計事務所向け外販、及びコンバータ作成受託

上記の汎用データコンバータを改良し、外販、及びコンバータの作成を受託することが可能です。
具体的には、以下の通りとなります。

1)外販
当事務所にて5~7時間(会計知識、エクセル、VBAスキルに応じて異なります)の研修(コンポーザー研修)を受けた方を対象にコンバータシステムを販売します。
研修受講者(コンポーザー:コンバータを利用し、変換マトリックスを作成できるユーザー)が使用する限り、対象とする会計ソフト、使用回数に制限はありません。
また、研修受講者(コンポーザー)が作成したコンバータは、利用者(パフォーマー)によっても利用が可能です。なおこの形態における販売対象は原則として会計事務所に限定します。

2)コンバータ作成受託
お客様からコンバータに必要な情報を頂き、当事務所にてコンバータを作成します。 会計ソフトの種類にもよりますが、一般的なコンバータソフトより低価格にて作成が可能と考えています。

5.お問い合わせ

ご質問やお見積もりについては、メールフォームにてお気軽にお問い合わせください。

以上