まだ記憶に新しい「頂き女子りりちゃん」事件。
様々なメディアで取り上げられ、その後の話題にも事欠かないこの事件は、表面上は「単なる恋愛詐欺事件」に見えるかもしれません。
しかしその実態は驚くほど緻密かつ完成度の高い、新種の不正としての特性を完全に備えています。

風俗嬢として働いていた「りりちゃん」は、男性顧客の心を掴み、弱者を演じることで信頼を得た上で、「闇金に追われている」「死にたい」などと精神的危機を訴え、金銭を引き出す技術を体系化。それを「魔法マニュアル」と称し、他の女性にも販売していました。そのマニュアルを使い、名古屋市の女子大生が複数の男性から計1000万円以上を詐取したことが発覚し、「りりちゃん」自身も詐欺幇助と詐欺の罪で逮捕。最終的には懲役8年6ヶ月、罰金800万円の有罪判決が確定しました。
このマニュアルにおいて驚くべきポイントはいくつかあります。
①高度に完成された「心理操作技術」
構成は大きく三段階――信頼関係の構築、金銭引出しの会話術、そしてアフターケア――に分かれており、ターゲットの感情を計算し尽くして制御する内容になっています。
②フィルタリングの巧みさ
彼女は“おぢ”と呼ばれるターゲットを「ギバー型(与える人)」「マッチャー型(見返りを求める人)」「テイカー型(搾取する人)」に分類。最も効率良く金銭が得られる“良おぢ”に的を絞り、LINEの返信間隔や言動から心理状態を把握し、段階的に情報を小出しにして感情を高めていきます。いきなり金銭を要求するのではなく、「自分から出させる」よう誘導するこの手法は、従来の詐欺とは一線を画す点です。
③リスクの回避手法
さらに驚くべきは、彼女が法的リスクやターゲットからの報復リスクまで防ぐ方法までも理論化していた点です。
金銭提供を「頼んでいない」「むしろ一度断っている」という構図を作ることで、法的責任の回避を図ったり、結婚詐欺の追及を防ぐ言い訳、また強い報復の恐れのあるターゲットに手を出さないための方法などが明記されています。
④「防ぎにくい」「裁きにくい」
最も厄介なのは、こうした一連の行為が「防ぎにくい」「裁きにくい」点にあります。
ターゲットされた男性は、その資金が尽きるまで自分の意思でお金を差し出し、満足すら感じています。このような場合、その行為を他者によって止められるか、また詐欺として裁けるどうかは微妙な所です。
そしてこの手法は、彼女のマニュアルを完ぺきに実践すれば、どんな女性でも実行できてしまうのです。
このように彼女が確立した「頂き女子」手法は、これまで見出されていなかった「パンドラの箱」であると言えます。
このマニュアル分析はあまりに危険(理解して使われると必ず被害が出る)なため、詳しい紹介や防止手法については公認不正検査士の勉強会でのみ公表しています。