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献血と骨髄バンク(新型コロナワクチンとの関係)

皆さん、献血をしたことがありますか?
ときどき、赤十字や若者たちが街で「献血をお願いします」と呼びかけているのを見たことがあると思います。また、ひょっとしたら大きな怪我や手術で、輸血を受けられたことがあるかもしれません。この献血について、また水泳選手が急性白血病を発症したことで注目を浴びている「骨髄バンク」について、またそれらに関連した活動、問題点について少し説明したいと思います。
※新型コロナウイルス用ワクチン接種の場合の注意点を追加しました。


厚生労働省の献血キャラクター「けんけつちゃん」

1.献血とは?
献血とは、病気や怪我で輸血を必要としている人のために、「自発的」に「無償」で血液を提供することを言います。日本での献血の受入れは、国(厚生労働省)から唯一、採血事業者として許可を受けている日本赤十字社が行っています。
この「自発的に」「無償で」という点、実は国際的な定義があります。
1991年の国際赤十字・赤新月社決議によると、「自発的な無償供血とは、供血者が血液、血しょう、その他の血液成分を自らの意思で提供し、かつそれに対して、金銭又は金銭の代替とみなされる物の支払いを受けないことをいう」と決められています。
かつては「売血」「血液銀行」といって、有償で人々から仕入れた血液を輸血用に売る商売がありました。このような事業者に血液を売る人々の多くはいわゆる低所得者で、生活の糧を得るために血液を売らざるを得ない人々でした。そうなると、本来間隔を置かなければならない売血が頻繁になり、健康を害するようになってしまいました。このような人からの血液は、輸血に適さない上に肝炎などの副作用を起こすリスクも増大します。
このような問題を受け、政府は昭和39年8月21日、献血に関する体制整備(日本赤十字社または地方公共団体によるもの)を閣議決定しました。その後売血はほぼなくなり、現在のような体制が続いています。

2.献血を受けるには
会場を探す
まず、各所に設けられている献血ルームや、イベント会場などにやってくる献血バスを探しましょう。日本赤十字のWEBページから、各地での献血会場を検索することができます。どの会場でも、後述の献血カードがあれば献血者の情報は記録されていますし、安全・衛生面において全く問題がありません。便利な場所、時間で気軽に行ける場所を選んでください。

申し込む
献血カードをお持ちでない方は、会場の窓口で作ってもらいましょう。献血は前回との間隔や年齢等さまざまな制約があり、個人ごと個別に管理する必要があるので、このカードがなければ献血できません。この申請の際には氏名、生年月日、原則として写真付きの身分証明の提示が必要です。
なお残念ながら、年齢制限や特定の薬の服用、予防接種を受けた場合、海外から帰国後4週間以内の場合や特定期間内に特定国(イギリスなど)に滞在していた場合など、「献血ができない」一定の制約があります。献血カードを提示後いくつか質問を受けますので、これらには正直に答えましょう。

献血する
カードが作成できたら、献血ルームに入ります。しかし、ここでいきなり献血するのではなく、医師の問診、血圧、血液検査、シーフテスト(肩・腕・手の状態が悪くないか自己検査)などの簡単なチェックを受ける必要があります。
これらの検査が終わった後は、ようやく献血開始です。
少し背中を起こしたようなベッドにリラックスして横になり、献血用の針を腕に刺して血液を提供します。
血管の太さや体の大きさなどによって異なりますが、400mlの献血で10~15分程度、成分献血と呼ばれる、血液から必要な成分だけを抽出して元に戻す献血の場合には40~1時間半程度かかります。私の場合は適しているのか、10分かからないことが多いです。
その間、担当するスタッフや看護師さんからは、しつこいくらい「大丈夫ですか」「水分採って下さい」と言われます。これは、血液の減少による体調不良を防止するためです。実際、献血後くらくらして倒れる方もおられるようです。これに対し、献血を始める前から何本かの飲料を持っておき(会場には大量に飲料が置いてあるのでいくらでももらえます)、献血中から少し多い目なくらい飲んでおくと、このような体調不良をほとんどなくすことが可能です。

④新型コロナなど、ワクチンを接種した場合
ワクチンは、人間が持つ「免疫」の仕組みを人為的に利用し、ウイルスや細菌などの病原体に対する抵抗力を作り出します(ワクチンの仕組みや種類については、「コロナワクチンとリスクマネジメント」を参照)。
この過程で、弱らせた病原体やウイルス、mRNAと呼ばれる遺伝子を体、すなわち血液に注入するので、これがそのまま献血で取り出されてしまっては、献血血液にそういった物質が紛れ込むことになりリスクがあります。

このため、日本赤十字は元々、以下のワクチンに応じて献血が不可となる時間を決めていました。

  • インフルエンザ、日本脳炎、コレラ、A型肝炎、肺炎球菌、百日ぜき、破傷風等の不活化ワクチンおよびトキソイドの接種を受けた場合…接種後24時間
  • B型肝炎ワクチンの接種を受けた場合…接種後2週間
  • 抗HBs人免疫グロブリンを単独または併用した場合…投与後6カ月間
  • 狂犬病ワクチン(動物にかまれた後)を接種した場合…接種後1年間
  • おたふくかぜ、風疹、BCG等の弱毒生ワクチンの接種を受けた場合…接種後4週間
  • 天然痘ワクチンの接種を受けた場合…2カ月間
  • 破傷風、蛇毒、ガスえそ、ボツリヌスの抗血清の投与を受けた場合…投与後3カ月

これに加えて、新型コロナウイルスのRNAワクチン(mRNAワクチンを含む)を接種した場合には、1回目、2回目いずれの場合も、接種後48時間を経過するまで献血が不可となりました。
なお、現在公費接種の対象となっているRNAワクチンは、ファイザー社と武田/モデルナ社となります(2021/8/21現在)。 また、その他の種類のワクチンを接種された方は、現時点では献血不可とのことです。
加えて言うと、予防接種「前」の献血については基本的に制限していないとのことです。

【令和3年5月14日から適用開始】 新型コロナウイルスワクチンを接種された方の献血受入れについて(日本赤十字)

2.骨髄バンクについて
骨髄バンクとは
人間の血液は、白血球や赤血球、血小板などの血液細胞から構成されていますが、これらの細胞は全てが「骨髄」(骨の中心部にある組織)の「造血幹細胞」という一種類の細胞から作り出されています。この骨髄において異常な造血細胞が無秩序に増加し、正常な血液細胞の増加を妨げる状態が白血病です。白血病になると、赤血球の減少による貧血や、白血球の減少による抵抗力減、そして血小板減少によって出血しやすいなどの症状が現れます。

この白血病は血液のがんと言われていますが、今のところ抗がん剤・放射線と骨髄移植によるものが代表的な治療法です。
骨髄移植とは、抗がん剤や放射線によって白血病幹細胞などの病原を死滅させ、その後正常な骨髄を移植することで、正常な造血力を再生させる治療法です。
この骨髄移植は、患者のみならず移植細胞の提供者にも大きな負担がかかることや、拒否反応が発生しないよう「型」の合う提供者を探さなければならないことから、効果は大きいものの容易な方法ではありません。
骨髄バンクは、このような患者さんを救うため、善意による骨髄提供の仲介を行うために設立されました。提供者となるドナーを多く集め、移植を必要とする患者さんとのマッチングを迅速かつ公平に行うことをその使命としています。
ドナー登録については様々な場所で受け付けが行われており、もちろん献血会場にも受付窓口があります。

骨髄バンクの抱える問題
トップ水泳選手の急性白血病が取り上げられた関係で、ドナー登録を希望する人々が急に増えたそうです。ドナーとなれるのは20歳以上55歳以下(登録自体は18歳以上54歳以下)の方だけで、しかも多様な型が必要だったり、献血以上に様々な制約がありますので、慢性的に不足している状態が多少改善されるかもしれません。
しかし、実際には「キャンセル」という深刻な問題も起きているそうです。
実際にあった話として看護師さんから伺ったのは、こんな話です。
小さなお子さんが白血病となり、せっかく待ちに待った「型」の合うドナーが見つかったのに、移植直前になって「キャンセル」された(制度上キャンセルを制限することはできず、理由も聞けない)ことがあったそうです。ご両親のお気持ちを思うと胸が痛みます。
実際登録はしたものの、提供する場合には数日入院しなければならないこと、提供側にも副作用の出る可能性があることなどから、このようにキャンセルする場合が出てくるそうです。

3.ロータリークラブ・ローターアクトクラブの活動
私が所属するロータリークラブ(世界200以上の国と地域、120万人を超えるメンバーで構成された奉仕団体)においては、献血や骨髄バンクの活動を長きにわたり支援しています。
ロータリークラブとともに活動する、30歳までの若者で構成された「ローターアクトクラブ」とともに、各地の献血会場でPRや誘導、骨髄バンク説明員などのボランティア活動に汗を流しています。
会場で見かけたら、是非激励してあげて下さい。

4.宗教と輸血
時折、宗教上の理由から、本人や家族により「輸血を拒否」した場合がニュースになります。
我が国は信教の自由(憲法20条)、自己決定権・幸福追求権(同13条)が認められていますが、他方医療機関としては治療上、献血しなければ患者の生命が危険な状況を放置するわけにはいきません。実際、宗教上輸血を拒否する患者に同意なく輸血した医療機関が賠償請求された場合もありました。
このため、現在はほとんどの医療機関が「宗教上の理由により輸血を拒否する患者さんへの基本方針」といったポリシーを定めて公開し、そのような患者さんの理解を得るようにしています。
基本的には「相対的無輸血(患者さんの意思を尊重して可能な限り無輸血治療に努力するが、輸血以外に救命手段がない場合には輸血する)」の立場を採り、「絶対的無輸血(いかなる事態になっても輸血をしない)」は否定する、という内容となっています。

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宗教上の理由により輸血を拒否する患者さんへの基本方針の例(神戸赤十字病院)

コロナワクチンとリスクマネジメント

先日、新型コロナワクチンの2回目接種を終えました。
想定された通り若干の発熱など副反応は起こりましたが、大事に至ることなく終わりました。
変異種である「デルタ株」には効かないとか、ワクチン接種は危険だとかいう意見を散見しますが、今回はワクチンの説明とともになぜ私が受けたかを書いておきます。

1.感染症と統計学
世の中にはたくさんの病気がありますが、その中でも細菌やウイルスによって引き起こされる「感染症」は厄介です。これらは宿主の体の中で増えて病気を引き起こすだけではなく、さらに別のターゲットを目指して感染を広げようとするからです。
細菌やウイルスの病原性が強いほど危険かというと、生物的にはそうも言いきれません。
感染を広げるには、「生かさず殺さず」宿主に活動してもらって、どんどん広げてもらう方が良いからです。

感染の広がりやすさは、病原性の強さよりも感染力、潜伏期間(感染してからどれくらいで発症するか)によって変わります。極めて強い病原性と高い死亡率の「エボラウイルス」がそれほど広範囲に広がらないのに対し、人によっては無症状で終わる新型コロナウイルスが今回のような世界的な流行になった理由の一つはここにあります。

このような特徴を持つため、感染症の広がりを予想したり対策を採る際には、統計学をベースにした様々な「モデル」が採用されます。このことと、我々が採るべき「リスクマネジメント」が重要な関係を持つことは後述します。

2.ワクチンの働き
人の体はよくできていて、細菌やウイルスのような病原体が体の中に入ると、それらを異物として戦いながらそれらの特徴を覚えて体中に伝達し、次の機会に戦いやすくします。このような「免疫」という仕組みがあるので、一度感染症にかかった場合でも次はかかり難かったり、かかっても重症化しにくくなります。

ワクチンはこの「免疫」の仕組みを人為的に利用します。
後で説明する様々なしくみを使い、ワクチンはウイルスや細菌などの病原体に対する免疫を作り出します。この時重要なのは、自然に病気にかかった時と違い、病気の発症なく比較的安全に免疫を作り出す点です。人間世界に当てはめると、災害などの訓練を行うようなものと言えます。

3.ワクチンの種類

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厚生労働省「新型コロナワクチンQ&A」より

①生ワクチン
最も初期に開発されたワクチンです。
19世紀初頭、天然痘を予防するため、イギリスの医師ジェンナーが牛の天然痘である「牛痘」が乳しぼりをする人に感染した際の水疱液を人に注射したのが始まりです。
生ワクチンは病原性を弱めた病原体から作られており、接種することで実際にその病気にかからせ、退治することで強い免疫力を付けることを狙っています。しかし、病原体そのものであるためリスクは比較的高く、取り扱いには気を付ける必要があります。

②不活化ワクチン、組換えタンパクワクチン
病原体に感染力をなくす処理をしたり、病原体と同じ構成のたんぱく質を使う方法です。
これらは生ワクチンと違って「ホンモノ」ではなく1回接種しただけで十分で持続性ある免疫を得ることが出来ないため、安全性とのトレードオフとして通常は複数回の接種が必要となります。

③mRNA(メッセンジャーRNA)ワクチン、DNAワクチン、ウイルスベクターワクチン
さらに進んだものがこれらのワクチンです。
これらのワクチンは、ウイルスを構成するたんぱく質の遺伝情報を取り出し、これを人の細胞に伝えてウイルスと同じ特徴(但し病原性なし)を持ったたんぱく質を生成させる方法です。
mRNA、DNA、ウイルスベクターの違いは、この遺伝情報を伝える方法をそれぞれRNA(リボ核酸)、DNA(デオキシリボ核酸)、ウイルスとしていることによるものです。
mRNAは非常に壊れやすいため、温度管理が重要となります。mRNA方式の新型コロナワクチンが輸送や保存に冷凍庫を必要とするのはこれが原因です。

4.リスクマネジメント
前述の通り、感染症の広がりを理解する際には統計学的な考え方が大変重要です。
となると、これを予防する、抑え込むにも統計学的に考えなければなりません。

ここにリスクマネジメントの考え方が生きてきます。
リスクマネジメントは、「リスクをゼロにする」ことを目的としていません。
リスク(一般的には危険な事象)に対し、様々な対策を採ることで、それが具現化する可能性を減じて行き、最終的には許容できる範囲にまで弱めることを意味します。

新型コロナウイルスについては、いわゆる三密(密集、密接、密閉)を避ければ感染しにくいことがわかっていますし、マスク、手洗い、うがい、消毒など対策が感染リスクを下げることも明らかとなっていますが、感染の広がりを見ていると許容できる範囲までリスクを低減しているとはいいがたい所があります。

これに対し、ワクチンについては上記の対策に加えてさらに感染や重症化のリスクを下げる効果が認められています。ワクチンを接種することについては、新しく、急いで開発されたことなどに起因する様々な懸念や変異種への効果など懸念もありますが、当面は自身や周囲の感染リスクをさらに下げるため、必要ではないかと思って接種した次第です。

専門家でない私の目から見ても明らかに「デマ」と言える情報がSNSなどで流布されていますが、できるだけ冷静に判断し、何よりも自身や周囲の大切な人たちを守る行動をしたいと思います。

新規事業を探すには(天才ではないあなたの為に)

1.ポストコロナ・ウィズコロナと事業再構築補助金
現在、業種業態の転換や新しい事業に取り組む企業が増えています。
これは、コロナ禍の中、またポストコロナ・ウィズコロナを見据えた場合、戦後から連綿と続く昭和的な価値観や経済社会が大きく変化し、それにビジネスを適応させる必要があるからです。

そういった状況に合わせ、国は「中小企業等事業再構築促進事業」という制度を創設しました。
この制度は、下記①~③に該当する中小企業等に対し、最大1億円の補助金を出して新事業や事業再構築を支援するというものです。

①直近6か月間のうち任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前の同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少
②事業計画を認定経営革新等支援機関や金融機関と策定し、一体となって事業再構築に取り組む
③3~5年で付加価値額の年率平均3.0%(一部5.0%)以上増加又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0%(一部5.0%)以上増加の達成

事業再構築補助金については、弊所岐阜事務所(しのだ会計)のブログにてご紹介しており、今後新しい情報が出たら随時お知らせ致します。

2.新規事業の探し方
この制度の適用を受けるためには、新しい事業について事業計画を策定し、そして付加価値の増加につなげる必要があります。

では、新規事業を探すにはどうしたら良いのでしょうか。
安藤百福さん(日清)のチキンラーメン、またスティーブジョブス(アップル)のiPhoneといった、革新的というより世界を変えるほどの革命的新事業が思い浮かんだら素晴らしいですよね。
しかし、普通の皆さんがそんな発想を得るのは至難の業です。
(実際、上の両製品とも、一つ間違えば大失敗になっていたかもしれません)
では、そういった「天才ではない」普通のあなたが新事業を思いつくためにはどうしたら良いでしょうか。
それにはちゃんと定石があります。
今回は、私たち税理士が普段お客様にお話ししている内容を、少しだけご紹介したいと思います。

①基本的な考え方
どんな事業でも、収益をあげなければ意味がありません。
正確に言うと、世の中に付加価値を生むような事業でなければ、そこから収益は取れませんし、持続しないのです。
100円で仕入れたものを80円で売るのは事業でしょうか?
ひょっとしたら安いものだけを好む人には大人気かもしれませんが、すぐ資金が立ち行かなくなるでしょう。
これは単に損をしているだけではなく、折角100円という価値のついているものを80円に落とすことで、経済的観点からは付加価値を下げる(世の中の価値を下げている)「悪」なのです。
また、いくら収益を上げても他の参入などによって継続できなければ意味がありません。
継続して安定した収益を継続するには、何らかの参入障壁が必要なのです。
では、安定した収益を継続するために必要な要素は何でしょうか。
要約すると以下の3つになります。
・ゼロから始めない
・2つ以上を組み合わせる
・嫌なことから探す
これを以下説明していきます。

②ゼロから始めない
「新規事業」というと全く新しい何かを見つけるものと思われていますが、実際には(そして普通であるあなたにとっては)そうではありません。
必ず、自身がもともと持っている人、モノといった資源を活用することから考えるべきです。
人としては従業員だけではなく、友人・取引先だけではなく、ひょっとしたらライバルのような自分を取り囲む全ての者が含まれます。
また、モノについても同じで、所有する資産だけではなく、使えるものすべてを見逃さずに使うべきです。
あなたが既に活用している資源を使うのですから、他の人たちよりも一歩も二歩も先んじていることになります。これが大きな参入障壁になりうるのです。

例:ホンダオデッセイ
1990年代、車の需要がミニバンやSUVに移る中、ブームに乗り遅れたホンダは売上が低迷していました。
ここで、起死回生の企画として作り出されたのが「オデッセイ(初代)」です。
実は、それまでのホンダは「車高が低くてカッコいい車こそ善」というスタンスで、ミニバンやSUVのような背の高い車を作る設備が無かったのです。しかし、業績も悪化している会社に全くの新工場を作る余裕はありません。
なんと、ここでホンダがとった判断は「背の低いセダン用工場で作れる限度の車高で設計する」という「あるものを使う」方針でした。
この意外な戦略が大ヒットを生みます。
背が低い代わりに、様々な設計上の工夫をして車内を広くしたことで、「使い勝手はいいけど見た目や走行性能は悪い」というミニバンの常識を覆す、スタイリッシュなデザインと高い走行性能を得たのです。
この結果、一時は目標の30倍を超える販売実績を達成するに至りました。

オデッセイ
(写真:ホンダ オデッセイ)

③2つ以上を組み合わせる
何かとネガティブな印象を持たれることもある「ホリエモン(堀江貴文氏)」ですが、非常に良いこともたくさん述べています。
その中の一つが「100万分の1の人材になる方法」です。
100万分の1とはオリンピックで金メダルを取るような確率で、とても普通の人が目指せる水準ではない、と思われがちですが、彼は書籍の中で下記のように述べています。

「まず、対象や分野は何でもいいということを念頭に置いてください。そこで『100人の中で1番になる』ことを考えるとどうでしょう。頑張れば何とかなれるものが見つかるのではないでしょうか。その『100分の1』の要素を自分の中で3つ見つければいいんです。そして、3つを掛け合わせれば『100万分の1』になれます。

希少なほど付加価値は上がり、参入障壁が大きくなるのは当然ですが、このような考え方は「普通の人」を勇気づけてくれます。
彼が言うように100万分の1でなくても、100分の1を2つだけでも1万分の1になります。
企業経営としては十分な水準です。

例:機能性チョコレート
元々チョコレートは完全な嗜好品で、甘くておいしいといった魅力以外は、虫歯や肥満などネガティブなイメージが付きまとう食品でした。
しかし、最近は機能性表示食品制度開始が追い風となり、「ポリフェノールの強化」や「脂肪や糖の吸収を抑える」「乳酸菌入り」などといった健康への配慮を組み合わせたチョコレートがヒットしています。

チョコレート効果
(写真:明治 チョコレート効果)

④嫌なことから探す
昔から「好きなことで仕事はできない」と言われますが、別に「自分が」好きなことを仕事にするのは悪いことではないと思います。
しかし新規事業を探す場合、「好きなこと」を追っても何も出てきません。
そこには「満足」しかないからです。
世の中のビジネスのほとんどは、「嫌なこと」「困ること」を解決するために生み出されたと言っても過言ではありません。そういう人間の困ったことを解決するから付加価値を高く出来るのです。
自身が嫌なことや困ることを探すのも良いですが、やはりいろいろな人にそれを聞き出すことは大変有効です。普段のビジネスや人付き合い、インターネットやその他メディアなどにおいて、「人が何を嫌がり、困っているか」という観点のアンテナを張っておくことはとても重要です。

3.情報収集する・相談する
ここまで読んで「なんだそんなことか」と思った方もおられるかもしれません。
そういう方は既に事業で成功している方だと思います。
しかしこれから新しい事業で成功を目指す人は、この3条件を中心に据えてひたすら考えてみて下さい。
とはいうものの、一人で単に考えているだけではなかなか良いものは生まれません。
また、いくら良い事業アイデアがあっても、資金の手当てが無ければ実現できませんし、法律や税金をはじめとした我が国の制度も知らなければなりません。
公的な機関や団体としては中小機構、商工会議所などが起業や新事業のサポートをしていますし、法律の面では弁護士、お金や税金の面は公認会計士や税理士が、また社会保険労務士(雇用など)、中小企業診断士(経営)、司法書士(登記)、弁理士(特許など知財)といった様々な専門家の中にもこのような新事業をサポートしてくれる方たちが多くいます。また、冒頭に説明しました補助金などのサポートには「認定支援機関」という存在も役に立ちます。

様々に整備された制度やサポーターを活用して、新しい時代の新しい事業を創り上げる方が一人でも多く生まれるよう、我々も頑張りたいと思います。

医療行為は特許が取れない

iPS細胞等再生医療や遺伝子治療、AIの活用など、最近は特に画期的な治療・診断方法や手術手法がいくつも開発されています。また、新型コロナウイルスに対する治療法やワクチンの開発が全世界で急速に進められています。

これらは難病に苦しめられているたくさんの患者さんを救うことができる反面、医療業界における大きなビジネスチャンスであるともいえます。そのため、大手企業も小規模ベンチャーも、こぞって医療に関する分野のビジネス化を進めています。

どのようなテクノロジーでも、ビジネス化を進めるうえで特許は避けて通れない権利保護の方法ですが、今の日本において「医療行為」は特許をとることができません。この点についてご説明したいと思います。

1.医療行為と特許
現在のところ、医療行為(治療方法、診断方法、手術方法など)については、特許が取れないこととされています。その理由は以下の通りです。

①医療行為の研究開発は、純粋な医学の研究としてなされ、特許制度によるインセンティブ
付与のニーズが高くない
②医学研究はそもそも営利目的にそぐわない
③医療行為は医薬品、医療機器等に比較して緊急の対応が求められる場合が多く、特許権者
の承諾がなければ実施できない場合危険である

ただ、医療行為に対する特許は法律で禁じられている訳ではなく、特許法29条が定める「次に掲げる発明を除き」特許を受けることができるという除外規定を用いて特許審査基準を定め、医療行為に関する特許出願がなされても「拒絶査定」を下すことにしているだけなのです。

2.特許の取れない医療行為とは
その審査基準(特許・実用新案審査基準)には、特許の取れない医療行為として下記のようなものが定められています。

①手術方法…外科的手術方法、採血方法、美容・整形のための手術方法、手術のための予備的処置など
②治療方法…投薬・注射・物理療法等の手段を施す方法、人工臓器・義手等の取り付け方法、風邪・虫歯の予防方法、治療のための予備的処置方法、健康状態を維持するためにするマッサージ方法、指圧方法など
③診断方法…病気の発見等、医療目的で身体・器官の状態・構造など計測等する方法(X線測定法等)、診断のための予備的方法(心電図電極配置法)など

3.諸外国の制度
では、これらの点は外国においてはどのようになっているでしょうか。欧州と米国の例を挙げます。

欧州
従来は日本と同様、産業上の利用に当たらないことを理由に医療行為に関する特許申請は拒絶されていました。これに対し、TRIPS協定(知的財産に関する国際条約)との整合性を高めるため2000年にこの制度を改め、医業は産業としつつも医療行為は不特許事由に該当することを明記しました。

米国
不特許事由に関する規定は存在せず、医療行為にも特許を付与し、医師の行為にも特許権は原則として及ぶような規定とされています。しかし、近視手術の方法に関する特許権に基づいて1993年に提起された特許権侵害訴訟を契機として1996年に法改正が行われ、医師等による医療行為は「差止・損害賠償の請求の対象から除外される」ことを明文化しました。
一方、その除外の例外として、バイオテクノロジー特許の侵害となる方法の実施などについては、医師の医療行為としての実施であっても特許権者の差止・損害賠償の請求権が及ぶこととしました。

4.今後について
iPS細胞等再生医療や遺伝子治療、AIの活用など、最近は特に画期的な治療・診断方法や手術手法がいくつも開発されています。これらは難病に苦しめられているたくさんの患者さんを救うことができる反面、医療業界における大きなビジネスチャンスであるともいえます。そのため、大手企業も小規模ベンチャーも、こぞって医療に関する分野のビジネス化を進めています。

このような状況においては、冒頭で述べたように「医療行為は特許不可」という一律の対応であると不十分であり、産業の発展にも良い影響はありません。

そのため、産学両方からこの取扱いを見直すよう意見が出され、実際に特許庁でも医療行為に特許権を付与することや、特許権を付与した場合、実際の医療現場における医師の医療行為に権利行使すること等の是非について検討がなされています。

 

 

微小ながんも発見する「PET検査」

皆様、PET(ペット)検査という言葉を聞かれたことがあるでしょうか?
このPET検査、「Positron Emission Tomography」の略で、日本語に訳すと「陽電子(ポジトロン)放射(エミッション)断層撮影(トモグラフィ)」となります。
このPET検査は、特殊な手法で非常に小さく、まだ悪影響の少ない形で除去できる「がん」の発見に役立ちます。
私はこのPET検査を毎年受診しておりますので、検査の説明と関係する制度についてご説明したいと思います。

1.がん細胞の特性
がんは「悪性腫瘍」と呼ばれ、自分の体の細胞が変異して病理性のある腫瘍(できもの)になることを言います。このがん、最初は1ミリ程度の大きさ(発生期)なのですが、育成期には数年かけて1cm~数cmと育ち、その後は急激に増殖、転移などを引き起こします。
ただ、育成期においてもがん細胞は普通の細胞とはちょっと違った特性を持っています。
それは、毛細血管の生成です。
がんは自分が育つために栄養を必要としますので、自分の周囲に勝手に毛細血管を張り巡らして少しでも多くの血液を得ようとするのです。

2.PET検査
PET検査はこの特性を利用します。
毛細血管で集めた血液は、正常な細胞に比べて数倍のブドウ糖を取り込むことになります。
そこで、FDG(フルデオキシグルコース)と呼ばれるブドウ糖に近い成分を体内に送り込んでおくと、このFDGもがん細胞に多く集まります。
実はこのFDG、正確には18F-FDGといい、グルコース(単純な構造をした糖)の-OH(ヒドロキシ基)を18F(弱い放射性を持つフッ素原子)で置き換えてあるので、それ自体から陽子線を発するのです。
これを特殊な機器で撮影すると、がん細胞は正常な細胞より「光って見える」のです。

3.被ばくについて
放射性物質を体内に取り込むのでちょっと怖いのですが、実際の被ばく量は「CT検査程度」と言われています。検査を担当する病院の皆さんはやはりかなり気を付けておられますが、年1回程度の受診のみだとほとんど影響はないようです。
なお18F-FDGの半減期(放射性が半分になる時間)は約110分です。
原発事故で注目された放射性物質(下記)と比較すると非常に短くなっています。
・ヨウ素131…8日
・セシウム134…2年
・セシウム137…30年

4.検査の流れ
問診、準備
病院につくと検査着に着替え、問診を受けます。その際、身長や体重も測りますが、この体重は検査溶液(FDG)の量を決めるのに大事なデータとなります。
採血と溶液注入
次に採血室に移動し、少しだけ採血します。
この採血も、血糖値があまり高いと検査が難しくなるので、必ず行われます。
そして採血針を刺したままアタッチメントを切り替え、数分程度かけてFDGを体内に注入します。
安静室
その後FDGが体にいきわたるまで、安静室にて45分~1時間程度安静にします。
その際、原則として雑誌や新聞、スマホなど、凝視するようなものは使用禁止です。目に血液が集まってしまい、検査に不都合が出るからです。皆さん普段忙しい方々だと思いますので、一瞬世間から隔絶される休憩時間と思って休みましょう。
検査
CTやMRIといった機器に似た装置に横たわり、15分ほど撮影を受けます。
動くと画像がぶれてしまうため、体を動かさないようにしなければならずちょっと辛いかもしれません。
pet_01
<私が受診している中之島クリニックのPET装置>

排出と終了
弱いものとはいえ放射性物質を体内に入れていますので、完全になくなるまでは病院にいる必要があります。注射から2時間程度経過するまでもう一度隔離された安静室で待機、全てが尿として排出されるのを待ちます。
結果の通知
1~2週間したら、自宅に検査結果が届きます。
ここで小さなものが発見されても、慌てず専門の病院を受診、治療を検討しましょう。
検査結果にはこのような写真が入っています。
IMG_4753

上左から順番に体の断面を撮影しています。
この中で、様々な内蔵部分に「光る」部分があればそこが微小であってもがんの可能性がある、ということになります。
但し、脳や膀胱など、元々血液や尿の集まりやすい所は必ず光ってしまうため、別の検査を組み合わせる必要があるようです。

5.医療保険の適用
原則としてPETには医療保険の適用はありません。
安くても10万円程度かかる検査なので、支出としてはちょっと痛いかもしれませんね。
但し、がんが疑われるときなど、医師による指示があった場合には保険適用の対象となり自己負担だけで受診できます。
また、最近の健康保険は「人間ドック助成」のような制度を使い、PET検査についても補助する場合が多いようです。また会社によっては健康保険の補助を超える自己負担部分も会社が負担することがあります。この会社による負担については、従業員への給与(課税)とせず、福利厚生費など税務上の経費とすることが可能です(弊所も同様の制度を導入しています)。

6.生命保険(特約等)との関係
生命保険にはがん等に対応する特約がありますが、これらの中にはがんが発見された場合に一時金を支給したり、その後の保険料を無料にするものがあります。
PETによる発見は治療の容易な非常に初期のがんも発見可能であるにもかかわらず、これらの制度が使える場合が多くあります。

少し費用が掛かりますが、早期発見・治療や医療保険の対応などメリットも多いので、皆様ぜひ受診を検討なさって下さい。

 

病院の不正防止・調査

1.病院の不正について
資金を扱うあらゆる組織において不正リスクは存在しますが、一般の営利企業と収益構造や法令、管理体制の異なる病院においては、一般的な営利企業とは不正リスクの質や頻度が異なると考えられています。しかしながら、不正リスクに関する理論、管理手法の本質的な所には共通点があります。

2.不正のトライアングル
不正リスクを考える際には、「不正のトライアングル」という概念が非常に役に立ちます。
「不正のトライアングル」とは、アメリカのドナルド・R・クレッシー教授が提唱した不正の仕組みに関する理論です。具体的には、不正に手を染めるファクターは以下の3点であるとされています。
(1)不正を行うための「動機・プレッシャー」
(2)不正を行うことができる「機会」
(3)不正を行うことが本人にとって「正当化」
これらの条件が一つでも増加すれば、それだけ不正の発生する可能性が高くなっていることを意味します。

3.内部統制について
内部統制とは、(1)業務の効率性・有効性 (2)財務報告の信頼性 (3)法令の遵守 (4)資産の保全を目的として法人内で構築される管理体制を指し、「全社的な内部統制」と「業務プロセスに関する内部統制」に区分されます。
昨今、内部統制は上場企業が財務報告の適正性を保証するための開示対象として注目されていますが、本来内部統制は「組織がその目的に従って適切かつ効率的に活動し」「法令を順守し」「資産を保全する」と同時に「適切な情報開示を実施する」ことを可能とするための組織管理であるとされています。
この内部統制は適切な情報開示にはもちろん役立ちますが、不正リスクの低減や、事務部門、医療現場における事故、誤りの低減にも有効です。

4.病院における不正の例

①横領

  • 窓口収入、保管現金、機器、消耗品、互助会資金等の管理を長年同一のベテラン職員に任せていることによる横領とその発覚遅れ
  • 自動販売機等売上金の横領
  • 医薬品の横流し

②キックバック

  • 医薬品、医療消耗品の購買担当者が、仕入業者からキックバック等の利益供与を受ける

③不正経理

  • 横領等を発覚させないため、帳簿や証拠書類を偽装する
  • 架空人件費

5.防止対策

  • 不正のトライアングルの把握
    職員における不正のトライアングルがどのような状態にあるかを把握し、不正リスクの発生を未然に抑えます。
  • 病院向け内部統制の整備
    病院には病院向きの内部統制があります。病院の特色を理解しつつ、不正が起こりにくい組織体制を整備、維持します。
  • 内偵調査、尋問
    残念ながら不正の発生が疑われる場合、疑いのある部署、者に対して内偵調査を行い、必要に応じて不正調査手法を用いて尋問します。
  • 税務調査の利用
    税務調査を不正調査に利用します(参考コラムはこちら

6.お問い合わせ、ご相談、料金
個人診療所レベルなら、院長が末端の職員にまで気を配ることが可能ですから、院長の管理レベル次第でこのようなリスクは防止することが比較的楽です。しかし、病院においては一般的に組織規模が大きく、院長や事務長がいくら気を配っていても末端まで注意を行き届かせることは不可能です。この為、不正リスクを低減する組織的な管理体制は必要です。

私どもは、企業の公認会計士監査や内部統制構築、不正防止・調査の実績、また認定登録医業経営コンサルタントの実務経験を生かし、これらの不正リスクを低減する体制構築のお手伝い、また不正調査を行うことが可能です。
病院における不正防止にご興味のある方、また、残念ながら不正が疑われる事実や情報が現時点で顕在化している医療機関におかれましては、是非お気軽にご相談下さい(ご相談は無料)。

以上

間質膀胱炎国際会議(ICICJ)への支援

営利活動を行っている事業者は、税金とは別にその身の丈に応じた社会貢献をする必要があると私は思っています。

それは単に社会に対する責任というだけではなく、適切な社会貢献活動は、企業の規模を問わず長い時間を通じて自らにも還ってくると思うからです。

私も非常にささやかですが、毎年いくつかの社会貢献を行うように心がけています。
その一環として、今年は第3回 ICICJ(International Consultation on Interstitial Cystitis, Japan/間質性膀胱炎国際会議)学会誌への広告掲載を通じて資金拠出を行うこととしました。

http://www.hainyo-net.org/study/icicj/

この学会は、「間質性膀胱炎」という非常に厄介な病気の研究のため開催される国際会議です。
「間質性膀胱炎」は人知れず苦しむ方の多い「隠れた難病」とでも言うべきものですから、派手さはないものの、世界中に苦しむ患者さんが相当数存在します。
この学会やその出席者は、そのような患者さんたちに、適度なコストで有効な治療が行きわたるよう、日々努力している方たちばかりです。

ただ非常に珍しいことに、この学会を主催しているのは開業医でありながら泌尿器科の世界的権威でもある上田朋宏先生個人なのです。それにも拘わらず、学会には世界中から有力な研究者や医師・看護師、そして患者さんたちが出席され、毎回盛会となっています。

とはいえ。
やはり個人でこういう活動を行うには資金集めに最大の困難があります。
上田先生を中心に毎回相当な努力なさっているのですが、いまだ十分とは言えない状況です。

ということで、私の広告がその一助となればと考えております。
もちろん、広告掲載ですから事務所のPRにもなると思いますし、冒頭で書いた通りいずれ何かで還ってくる(利益だけではなく)と思っています。

あなたは必ず騙される ~ ポンツィ・スキーム研究(5/5)

今回は「ポンツィ・スキームを見抜き、騙されることを防止する」方法について考えてみます。

なお、ポンツィ・スキームの歴史や事例は以下の通りです。
その1:歴史や特徴 その2:マドフ事件 その3:AIJ事件(1) その4:AIJ事件(2)

4.ポンツィ・スキームの分析

ポンツィ・スキームは、通常の詐欺のように「騙す側と騙される側」という単純な構図だけで成功するわけではありません。この悪事が上手く回るためには、騙す側に一定の特徴を持った①首謀者、②協力者、そして③紹介者という登場人物が揃っている必要があります。

また、騙される側にも①プレッシャー・機会、②ガバナンスの弱さ、③情報・知識の欠如といった、一見「不正のトライアングル※」にも似た要因が備わっていなければなりません。

 ponzischeme
ポンツィ・スキームの構造

※米国のドナルド・R・クレッシー教授が提唱した不正の仕組みに関する理論で、(1)不正を行うための「動機・プレッシャー」、(2)不正を行うことができる「機会」、(3)不正を行うことが本人にとって「正当化」といった条件が一つでも増加すれば、それだけ不正の発生する可能性が高くなる、とされています。

この項目においては、これらの登場人物や、騙される側の要因について説明し、これらを踏まえて「見抜く」ための方策について説明します。

 

①首謀者

様々な(成功した)ポンツィ・スキームを分析すると、首謀者となる人物像については、以下のようなプロファイルが浮かんできます。

  • AIJの場合:浅川和彦社長
  • マドフ事件の場合:マドフ受刑囚
  • 首謀者のキーワード:雄弁、大胆不敵、カリスマ、名声、人脈、社会貢献(しかしその裏には虚栄心、狡猾、金銭欲、虚飾などの裏がある)
  • 投資話を全面に出す以上、「この相手で大丈夫か?」と思われては上手くいかない。
  • きちんとしたビジネススーツ、靴や時計、カバンや名刺入れなど、これ見よがしの高級ブランドではないが、決して安物ではない、一般人にも分かりやすいブランド
  • 一等地の事務所、居宅と現代的な調度品、高級ホテルなどの利用
  • 本当の悪人は「悪人面」をしていない
  • 華麗な経歴と実績(但し虚偽や誇張が含まれることの方が多い)
  • 顧客へ提供する投資に対する絶大なる自信と実績(但しこちらも虚偽が含まれることの方が多い)
  • 断定的で力強い説明、ビジュアルに優れた資料(但しきちんと分析すると内容は薄く、虚偽も多い)
  • 大物政治家、官僚OBなど、政財界キーパーソンとの親密な関係(但し金や接待に基づくものや、一方的なものが多い)→最近はSNSなどで写真を誇示することも多い

 

②協力者

ポンツィ・スキームは首謀者だけで上手く回る訳ではありません。首謀者のカリスマ性を支え、実務の分野を確実に進める「協力者」は必須です。

  • AIJの場合:高橋成子(しげこ)取締役
  • マドフ事件の場合:不明(マドフ以外あまり表に出てこないが、幹部社員の中にはこれに当たる者がいたと推定される)
  • 首謀者の右腕となり、忠実に詐欺行為やその管理行為を実行
  • 実務を行っているため、首謀者よりも実情を理解している。違法性も認識している場合が多い
  • 口は堅く、信頼できる。堅実な仕事ぶり
  • 首謀者に対しては服従に近い関係(悪いこととはわかっていても絶対に裏切らない)
  • 首謀者とは最も長い付き合い

 

③紹介者

  • AIJの場合:社会保険庁OBや投資基金担当者自身
  • マドフ事件の場合:ファンド・マネジャーや投資家など

ポンツィ・スキームに限らず、投資詐欺被害拡大の原因として「紹介者」による部分は少なからず存在します。

詐欺の被害に気付いた人間が、その詐欺師を友人や知人、親族に紹介することはまずあり得ません。しかし投資詐欺の場合は「騙されている」ことに気づかされないまま、拠出した資金が高利で運用されていると思い込まされていることがほとんどです。そうなると、その良いパフォーマンスを身近な人たちにも教えてあげたいという親切心(または「自分がこれだけ儲けている」ことを示したい、若干の自己顕示欲かも知れません)から、詐欺被害を拡大させる手助けをしてしまうのです。また、先に述べたカリスマ性などから首謀者に心酔してしまい、宗教的に他人を勧誘してしまうケースも多くあります。

例えば「こんな良い話はない。私も多額の配当を受け取っており、経営者も信頼できる素晴らしい人だ」などと初対面の人間に言われても警戒心ばかりが募ってしまいますが、もし同じことを信頼している知人から言われた場合、人間の心理として警戒心の水準が大きく下がってしまう傾向があります。つまり、「この投資話は大丈夫かどうか」を自分で判断するのではなく「この人が持ってきた話なら大丈夫だろう」と、投資話の内容より普段から付き合いのある、信用できる紹介者の人間性で信じてしまうのです。

余談ですが、Facebookやtwitterをマーケティングに活用する場合も同じ考え方に基づいています。詐欺とは違いますが、「友達」や「フォローしている人」など、自分が信頼している者からの情報というものが無防備に受け入れられがちな点は全く同じであると言って良いと思います。

 

2)騙される側の特徴

残念ながら、騙される側にも一定の特徴を持つ人的、組織的、環境的要因があります。もちろん細かい原因まであげつらうとたくさんあるのですが、大きく分けると①プレッシャー・機会、②ガバナンスの弱さ、そして③情報・知識の欠如という要因が大きな影響を与えていると考えます。

この3要素、一見すると前述した「不正のトライアングル」に似ています。が、これはあくまで騙される側の要因であり、不正のトライアングルのように「どれかの要因が大きければ他が小さくても不正が発生する」というわけではありません。

では、これらの要因を以下順に説明していきます。

 

①プレッシャー・機会

  • 金のない人間がギャンブルにのめり込むのと似た状況
  • 困窮→金銭欲、あせり、射幸心
  • 長期的には絶対的に資金が足りないが、短期的には借り入れや資産売却などで少し使える資金がある、もしくは調達できる状態にある(この資金を狙われる)
  • AIJ事件の場合、厚生年金基金の抱える財政的な問題がこれに当てはまる

 

②ガバナンスの弱さ

  • 個人の場合…意思決定の弱さ、相談者・指導者の不在
  • 法人の場合…健全なガバナンスの欠如、専門家の不採用、事務の集中
  • AIJ事件の場合、厚生年金基金のガバナンス不在がこれに当てはまる

 

③情報・知識の欠如

  • 権威者やその華麗な人脈、虚偽データに対する無駄な信頼
  • 業界誌(雑誌や新聞)の記事などに十分な注意を払っておらず、最新情報に疎い。前任者まで連綿と受け継がれた古い情報や前例にのみ基づいて意思決定し、前例のない動きは極力しない→いわゆる天下り人材に多くみられる特徴
  • AIJ事件の場合、厚生年金基金における専門知識を持った運用担当者の欠如がこれに当てはまる

 

3)ポンツィ・スキームを見抜く

①大原則:「うまい話はない!」

これまで説明した通り、騙す側と騙される側にはそれぞれ特徴があり、これらをきちんと認識できれば見抜くことはそれほど難しくありません。

しかし、最も重要なのは「理由もなくうまくいく話は絶対にない」という事実を認識することです。当たり前かもしれませんが、結局はこの常識的な認識が詐欺の被害から自らや組織を救うのです。

ただ、個人の場合はともかく、組織、特に大規模法人になると、誰かひとりがこのセンスを研ぎ澄ましたところで被害は防げません。なぜなら、例えばその上司が騙されれば、そのセンスを持った者の努力は水泡と化してしまうからです。

このような場合に組織として対応力を持たせることができる手法が、内部統制の整備による方法です。

内部統制というと、昨今のいわゆるJ-SOXブームやその終焉によって「財務報告に限られたもの」や「もう流行らない論点」であるような認識がありますが、実はこのような不正に対応するためのマネジメントには強力な効果を発揮するのです。

この方法の詳細については別の機会に譲りますが、一般に組織内における不正を防止するための「不正リスクマネジメント」を若干拡張し、騙す側、騙される側の特徴をリスクとして認識することで、不正リスクマネジメントによるポンツィ・スキームへの対応が可能となります。

 

②騙される側の特徴を排除

前述した「内部統制の整備によるリスクマネジメント」は確かに有効な方法ですが、これを的確に行うためには内部統制の整備・運用に関する十分な知識と経験が必要となり、おそらく公認会計士や不正リスクマネジメントを専門に行っている者でなければ十分な運用ができない可能性が高いと思います。

また、「騙される側の特徴」の一つである「プレッシャー」や「機会」が強く顕在化した状況、すなわち財政的に逼迫した状況などが起こってからそのような体制を整備することは大変難しいものです。

しかしながら、「騙される側の特徴を排除」することで、このようなスキームをもっと簡単に見抜くことを容易にする方法があります。

 

a)信頼できる専門家の活用

AIJ事件の場合、被害を受けた厚生年金基金の運用担当者のかなりの割合が、専門的な運用の知識を持っていなかったと言われています。このような担当者が十分な知識を持っていることが最も重要ではありますが、人的リソースの問題から、そのような担当者を専任で置くことが難しい場合も多いと思います。

また同事件の場合、AIJや営業を担当するアイティーエム証券の担当者は「同じ業種の基金も運用に使っている」と勧誘したり、同県内の基金の実名を出して「こちらは増額すると言っているが、おたくも増額しないか」と勧誘したりといった手法を採っていました。実際にはこのような営業スタンスを全面に出した時点でAIJは破たん状態にあったとみられ、業界誌などにも疑念が呈されたり解約が相次いだりしていたと言われています。とすれば、このような情報がきちんと入手できれば、他の業種などを挙げて安心感や焦りを誘う手法の効果を著しく下げることが可能となります。

そのためには、勧誘者から独立した第三者であるアドバイザーを置くことや、そのようなアドバイザーを必要に応じて依頼することができる体制を準備しておくことが望ましいと考えます。

往々にしてこのような詐欺の首謀者は、先に述べたように「他の者はこれで稼いでいる」、「今決めなければ十分なゲインが取れない」などと急かすことがありますが、「専門家に意見をもらわなければ意思決定ができない」という判断を貫くことが肝要です。

また、信頼できる専門家から、正しい知識に基づいてこのようなスキームの首謀者に対して監査報告書などを要求する場合、本人の名声を利用してその提出を回避したり(○○さんなんだから信用してくださいよ、といった言い方)、改ざんされた報告書を提出することなどが比較的難しくなります。

 

b)正当な期待(収益など)の醸成

AIJ事件の場合もマドフ事件の場合も、大きなポンツィ・スキームには必ず小さな声ながら異論を唱える者が現れます。それは、異論を唱える者、すなわち一定の知識を持った者にとっては、特に革命的な運用スタンスを採っている訳でもないのに、状況から見てあり得ない運用収益率を継続したり、他が壊滅的な打撃を受けている際に無傷だったりという事実自体が異常なものに映るからです。

先に「うまい話はない」が大原則であると述べましたが、一定額の投資に対しては、様々な投資手法において通常どのようなリスクとリターンが見込めるか、という認識、言ってみれば「正常な期待(収益)」の認識を醸成することが非常に重要です。

これに加えて会社など法人や組織の場合、この認識は単に運用担当者だけが持つのではなく、組織におけるトップから末端の構成員に至るまで、それぞれの階層に応じた正しい認識を持っておく必要があります。

 

c)ガバナンスの保持

報道を見ていると、AIJ事件の原因の一つとして、先ほど説明した「厚生年金基金におけるガバナンスの欠如」があると明確に断じている記事は少ないように思えます。

しかしながら、多くの厚生年金基金が「騙される側」に回った理由の、最も根本的な原因はここにあるのではないかと私は考えます。

すなわち、株式会社であれば出資者である株主が株主総会などを通じて最低限会社のガバナンスを保持しますが、厚生年金基金の場合、資金の拠出者である加入者はそのような力を持っていません。このため、加入者から預かった掛け金を慎重に運用するためのガバナンスが欠如していると言えるのです。

 

③「焦り」への対処

ただ、そのようなキレイごとを言ったとしても、経済的に困窮している者は「藁をも掴む」ことがあり得ます。個人の場合は自分の判断が自分の損失につながるためやむを得ないとも言えますが、組織、例えば法人の運用担当者の場合、自らの意思決定と法人のゲインが完全に連結していない点が問題となります。

すなわち、仮に担当者個人が怪しいと認識したとしても、「もしこのスキームが不正でなければ利益をみすみす取り逃がしてしまう」という焦りを本人やその上司などが持った場合、「その機会損失が本当に発生したら自ら(もしくはその上司)の責任となってしまいかねない」という迷いが発生する可能性があるのです。

そのような状況に加えて、他の「紹介者(特に多少なりとも権威のある者)」が「あの人なら大丈夫、私(の組織)も十分な収益を上げている」などという意見を述べようものなら、せっかく掴んでいた兆候が無駄な結果になりかねません。

こういったシチュエーションは非常に悩ましいため、ここでは対策として一例を述べるにとどめたいと思います。

まずは前述の特徴(騙す側、騙される側)の特徴を分析し、複数が当てはまる場合には如何に良いパフォーマンスを提示されても扱わないと定め、これを組織のリスクマネジメント基準の一つとして規定しておきます。この結果、騙されないという効果とともに、客観的な指標によって判断するだけで、担当者が機会損失を発生させるのではないかという懸念により判断を鈍らせることを防止できます。

 

5.おわりに-ポンツィ・スキームはなくならない

不況色が強くなるとポンツィ・スキームが増えるきらいがあります。これは、以下のような理由によるものであると考えます。

  • 騙される側が増える:一般的な詐欺と違って多数の者を巻き込む必要があるため、不況色が強くなる→良い運用先を必要とするものが増える→騙される側の者が増える
  • 発覚が増える:騙される側が増えると、確率的に注意深いものやスキームの粗を目にするものも増え、発覚する可能性が高くなる

いずれにしても、元祖ともいえるポンツィから現代に至るまで、投資詐欺の王ともいえるポンツィ・スキームは途切れることなく発生していますし、また今後も根絶されることはないと思います。

日本公認会計士協会がこの問題を受けて提言を出していますが、監査義務の増加だけで不正が防げるものではありません。最近ようやく不正への対応に踏み出した監査が、100年の歴史を持ち、人間の心理に深く浸透する不正スキームに十分対応できる訳がないと思います。

我々は公認不正検査士の知識や経験を生かし、少しでも多くの人がこのような詐欺の被害に遭わないよう、また被害を防ぐよう努力を続けたいと思います。

 

税理士法人耕夢のWEBページはこちら

NPO快適な排尿をめざす全国ネットの会

私が関与させて頂いている「NPO快適な排尿をめざす全国ネットの会」についてご紹介します。

 

1.NPOについて

「NPO」とは非営利活動(団体構成員へ利益分配をしない活動)により公益を増進することを目的とする団体を言います。例えば株式会社は営利を目的とする法人ですので、獲得した収益は株主などに分配しなければなりません。しかし、NPOの場合はそれができません。

このNPOに、団体としての活動や契約がしやすくなるよう「法人格(法律により人と似た権利が行使できるようにしたもの)」を与えた法律が「特定非営利活動促進法」です。 法人格の有無にかかわらず、NPOは様々な分野(福祉、教育・文化、まちづくり、環境、国際協力など)で公的機関や営利企業ができない活動を、比較的自由に行うことが期待されています。

 

2.NPO法人の特徴

NPO法人は、他の法人制度と異なり、様々な所轄官庁による規制が極力抑制されています。また、前述の通り利益の配分も認められていません。 これは、所轄官庁による規制をあまり強くしたり、利益の配分を認めてしまうと、NPO法人の趣旨が意味を持たなくなってしまうからです。

その反面、会計処理や収支決算の開示、ガバナンスについては、見方によっては上場企業的な(もちろん上場企業ほど複雑ではありませんが)厳格さが要求されています。

NPO法人をとらえる場合には、単にボランティア団体という見方をするのではなく、上場企業と同様、「小型の公的組織(社会の公器)」と見た方が理解がしやすいと思います。

 

3.快適な排尿をめざす全国ネットの会

1)間質性膀胱炎
「間質性膀胱炎」という病気をご存じでしょうか? 女性によくみられる病気で、頻尿や残尿感、排尿後の痛みや不快感などが発生し、正常な排尿が難しくなってしまいます。この症状は細菌性の膀胱炎とよく似ているのですが、これらとは異なり、尿検査でも細菌など原因が発見されず、また抗生物質や抗菌剤の処方でも改善できません。このため、以前から「怠けているのではないか」などと誤解され、つらい経験をする女性が多くおられたようです。

2)事業活動(WEBページより)
医師、医療関係者や排尿障害の患者さん、さらに患者さんのご家族に対して、排尿疾患に関する情報を公開し、排尿障害の患者さんへの支援

主な活動予定 ・介護・健康・生活環境セミナーの開催 ・排尿管理研究会の企画・運営 ・間質性膀胱炎国際会議をはじめとする、国際会議の開催・出展 ・ホームページや会報による情報提供・情報交換 ・書籍・雑誌・DVD等の出版

※ 排尿管理研究会: 2001年に発足。 排尿障害の基礎、臨床、疫学に関する幅広い研究を行うことを目的として開催。

※ 間質性膀胱炎国際会議 (ICICJ):2003年3月、日本で初めての間質性膀胱炎国際会議を京都で開催。

3)特徴
間質性膀胱炎の世界的権威である医学博士上田朋宏先生(泌尿器科上田クリニック)を中心として、「チーム上田」と呼ばれる様々な専門家が組織的に活動しています。

間質性膀胱炎は、以前から原因がわからず、そのつらさもあっていろいろな「治療法」が世に溢れています。
しかしそのメカニズムの研究や最新の機器による検査、手術手法にとどまらず、世界的な研究者とのネットワーク、患者さんのQOL(生活の質)向上、そして行政への働きかけまで含めて総合的に活動している点については、まさに「社会の公器」となる資格を有していると思います。

私は会計の面で関与させて頂いておりますが、少しでも公益に寄与できていると考えると非常に光栄に思います。

以上

日経広告と寄付について

今朝、新聞を見ていて、毎年もやもやしていた問題にようやく答えが出ました。

日経新聞の正月と夏(「公認会計士の日」7月6日あたり)には、公認会計士の事務所(監査法人、合同事務所、コンサルティング会社、個人事務所など)が1ページを割いた広告を出しています。 私も毎年出稿しているこの広告、以前2段目だった位置が、昨年あたりから「フロントロー」に位置するようになりました。つまり出稿者が減っている訳です。

以前からこの広告効果については「生きてるかどうかの発信価値しかないな」と疑問を持っていたのですが、忙しかったこともありなかなか変えようとする気が起きませんでした。

今回、ようやくこの惰性を見直す気持ちになりました。つまりこの夏の広告から出稿を打ち切りとします。 その代わりにと言っては何ですが、広告費2回分に対応する金銭などを、必要としている先へ寄付することに決めました。

上記のような事情ですので、もし次の夏私の名前が日経の広告に掲載されていなくても、事務所をたたんだわけではありませんのでご注意ください(笑