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倒産したら事業年度に注意?

1.「倒産」とは?
「倒産」という言葉を聞かれた場合、皆さんはどのような印象を持ちますか?
一口に「倒産」と言っても、実は様々な種類があるのです。
倒産は大きく分けて「私的整理」と「法的整理」に分けることが出来ますが、この違いは「倒産手続に関して専門の法制度が用意され、裁判所が関与するか」にあります。
法的整理が、細かい手続きに至るまで専用の法令で定められて裁判所が関わるのに対し、私的整理は債権者・債務者間における取り決めを元に手続きを進めます。

またこれらをさらに細かく分けると、私的整理には、自主廃業、清算といった方法が、また法的整理には特別清算、民事再生、会社更生、破産といった方法があります。

上記に加えて、「手形の不渡り」(振り出した手形が資金化できなかった)が発生したことを倒産と呼ぶ場合もあります。実際この不渡りを2回出してしまうと銀行と取引ができなくなるため、事実上倒産と同じ状態になるためです。

さて、普段から企業再生に関わる皆様の場合はこれらの違いを理解されていると思いますが、一般の事業会社の場合、経理部の方でもその区別がついていない場合があります。ですので、「取引先がつぶれました」という表現での連絡を受け、「どんな手続きを使った倒産ですか?」と聞き返すことも多くあります。

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実はこの「倒産手続」、その後手続きを進めるにあたって必要となる「事業年度(会計年度)」の考え方がそれぞれ大きく異なるのです。
今後、ひょっとしたら倒産が増加するかもしれません。
前向きな事業再生を目指す手続きの場合には復活するまで正しく会計手続きも気を付けなければなりませんので、経営や会計、金融に携わる方は是非「倒産と事業年度」の考え方を知っておいて下さい。

2.法人税と事業年度
①基本
さて、「事業年度」とは何でしょうか。
簿記を勉強した方なら「会社などの会計をまとめる期間」で「通常1年間」であるということをご存知と思います。
このため、会社について多くを定めている「会社法」には「事業年度」という用語が多用されています。
しかし驚くべきことに、「会社法」には「事業年度」に関する定義が存在しないのです。

では事業年度とは一体何をよりどころにすればよいのか?
実は「事業年度」に関する定義は「法人税法」に定められているのです。

法人税法第十三条
この法律において「事業年度」とは、法人の財産及び損益の計算の単位となる期間(以下この章において「会計期間」という。)で、法令で定めるもの又は法人の定款、寄附行為、規則、規約その他これらに準ずるもの(以下この章において「定款等」という。)に定めるもの(略)

このことから、通常の会社はその会社の定款(ていかん。会社を運営していく上での基本的規則を定めたもの)に定めた事業年度が採用されます。

②清算&特別清算
清算とは、会社が本来の活動を停止(解散)した上で、資産や債務の精算・資本の払い戻しなどの為に行われる手続きを言います。この清算が完了(結了と言います)すると、会社は「清算結了」登記を行って消滅します。
この清算は、残余財産がなければ行うことが出来ません。もし債務の方が財産より多い場合、債権者の中には十分な弁済を受けることが出来ない者が出てきます。このため、その弁済手続きの公平を期すため「特別精算」という手続きを地方裁判所に申し立てることになります。

さて、現在会社に適用されている「会社法」は平成18年に定められましたが、その前は「商法」に会社に関する法令が含められていました。
その「商法」には、実は「解散」後の事業年度に関する規定が無かったのです。
このため、実務上は法人税法に規定されている「みなし事業年度(解散の日で一旦事業年度が終わり、その翌日から元の期末日までがもう一つの事業年度となる)」に関する規定が設けられていたのでこちらを適用していたのです。

(みなし事業年度)
法人税法第十四条
次の各号に規定する法人((略))が当該各号に掲げる場合に該当することとなつたときは、前条第一項の規定にかかわらず、当該各号に定める期間をそれぞれ当該法人の事業年度とみなす。
一  内国法人(連結子法人を除く。)が事業年度の中途において解散(合併による解散を除く。)をした場合 その事業年度開始の日から解散の日までの期間及び解散の日の翌日からその事業年度終了の日までの期間(略)

これに対し、平成18年の会社法施行後は、「清算事務年度」という1年にわたる期間が定義され、事業年度として適用されることとなりました(会社法494条)。これが①で説明した「法令で定めるもの」となり、解散の場合も①で説明した法人税法第13条が適用されることとなったのです。
この結果「解散時点で一旦区切り」までは以前と同様ですが、その後の事業年度は「解散の翌日から1年ごと」に変わりました。

(貸借対照表等の作成及び保存)
会社法第四百九十四条
清算株式会社は、法務省令で定めるところにより、各清算事務年度(第四百七十五条各号に掲げる場合に該当することとなった日の翌日又はその後毎年その日に応当する日(応当する日がない場合にあっては、その前日)から始まる各一年の期間をいう。)に係る貸借対照表及び事務報告並びにこれらの附属明細書を作成しなければならない。
(略)

③破産
会社の破産とは、債務超過で弁済ができなくなった会社について、裁判所の破産手続開始決定に従い、裁判所が選任した破産管財人の管理の下、財産を処分、税金や賃金等の優先的債務を返済した後の残余資産を債権者に配当することで、会社を清算する手続を言います。
倒産に関する法制で最も厳しい手続であると言えますが、その分迅速かつ確実・公平に整理を進めることが出来るため、著しく財務状況が悪化した会社にはよく使われる方法です。

さてこの破産に関する手続きを定めた「破産法」には事業年度の定めがありません。
このため、破産の場合には関係する法令を参考に事業年度をどうすべきかについて検討する必要があります。

まず、破産手続の決定により解散すると、その日をもって一旦事業年度を区切ります(法人税法基本通達1-2-9)。
ここまでは前述の「解散」と似ているのですが、「破産手続開始の決定により解散した場合」には、会社法上「清算すべき場合」から除外されているのです(会社法475条1号括弧書)。このため、破産手続の開始決定が会社は「清算株式会社」とはならないのです。
そうなると、会社法が改正される前の事業年度の考え方と同じで、事業年度開始日~破産開始日、及び破産開始日の翌日~事業年度終了日が事業年度となり、その後は破産手続が終結するまで定款に定められた事業年度が続くことになります。

(株式会社等が解散等をした場合における清算中の事業年度)
法人税法基本通達1-2-9 株式会社又は一般社団法人若しくは一般財団法人(以下1-2-9において「株式会社等」という。)が解散等(会社法第475条各号又は一般法人法第206条各号《清算の開始原因》に掲げる場合をいう。)をした場合における清算中の事業年度は、当該株式会社等が定款で定めた事業年度にかかわらず、会社法第494条第1項又は一般法人法第227条第1項《貸借対照表等の作成及び保存》に規定する清算事務年度になるのであるから留意する。(平19年課法2-3「三」により追加、平20年課法2-5「三」により改正)

(清算の開始原因)
会社法第四百七十五条
株式会社は、次に掲げる場合には、この章の定めるところにより、清算をしなければならない。
一  解散した場合(第四百七十一条第四号に掲げる事由[合併]によって解散した場合及び破産手続開始の決定により解散した場合であって当該破産手続が終了していない場合を除く。)(略) 

④会社更生法
会社更生法第1条には、「窮境にある株式会社について、更生計画の策定及びその遂行に関する手続を定めること等により、債権者、株主その他の利害関係人の利害を適切に調整し、もって当該株式会社の事業の維持更生を図ることを目的とする」と定義されています。
この会社更生法、破産のように会社を壊してしまうことはないのですが、それに近い強力な手段をもって債権債務の調整(減額など)を行います。

この会社更生法に基づく更生計画開始の決定がなされた時には、前述の清算と同様、その時点から更生計画認可の時までを1事業年度とします。
但しそれが1年を超える時は1年ごとに区切ることになります。

(法人税法等の特例)
会社更生法第二百三十二条
(略)
2  更生手続開始の決定があったときは、更生会社の事業年度は、その開始の時に終了し、これに続く事業年度は、更生計画認可の時(その時までに更生手続が終了したときは、その終了の日)に終了するものとする。ただし、法人税法第十三条第一項ただし書及び地方税法第七十二条の十三第四項の規定の適用を妨げない。

⑤民事再生法
民事再生法第1条には、「経済的に窮境にある債務者について、その債権者の多数の同意を得、かつ、裁判所の認可を受けた再生計画を定めること等により、当該債務者とその債権者との間の民事上の権利関係を適切に調整し、もって当該債務者の事業又は経済生活の再生を図ることを目的とする。」との記載があります。

なんとなく会社更生法と似ていますが、実際の手続は大きく異なります。
破産手続に近く、様々な手続きが厳格な印象のある会社更生法に比べ、民事再生は少しばかり柔軟んで、私的整理に近い印象です。
両社の違いを人間に例えると、会社更生法はICU入院(意識なしで生死をさまようレベル)、民事再生は通常の入院(治るまで通常の生活は出来ないが、意識もあり治療が可能な状態)、と言えるともいます。

さてこの民事再生手続ですが、認可決定されたとしても「会社法上解散していない(あくまで会社としては引き続き機能している)」状態になります。また民事再生法には事業年度の取り扱いがないため、事業年度が変化しないのです。

3.消費税と基準期間
①基本的な考え方
通常、会社の消費税は事業年度に合わせて計算されます。ところが、消費税の計算においてはその計算期間だけではなく「基準期間」という考え方が非常に重要となります。
この基準期間、一般的には事業年度の2期前のことを言いますが、この基準期間における課税売上高の多寡によって、今計算している年度の消費税の取り扱いが大きく変わってきます。

どのように変わるか、については、現在の制度が大変複雑なので別の機会に譲りますが、とりあえず「2期前の数字も大事」とご理解下さい。

また消費税法には事業年度の単独定義は存在せず、法人税法の定義を参照しています。

消費税法第2条
十三 事業年度 法人税法 (昭和四十年法律第三十四号)第十三条 及び第十四条 (事業年度)に規定する事業年度(国、地方公共団体その他これらの条の規定の適用を受けない法人については、政令で定める一定の期間)をいう。
十四 基準期間 個人事業者についてはその年の前々年をいい、法人についてはその事業年度の前々事業年((略))をいう

②1年に満たない事業年度がある場合(破産など)
さて、通常通り1年の事業年度が続いている場合には特に難しいことはないのですが、解散や破産などで「1年未満の事業年度」が発生した場合、基準期間の計算は少しややこしくなります。条文の規定は下記の通りです。

消費税法第2条
十四 基準期間 (略)法人についてはその事業年度の前々事業年度(当該前々事業年度が一年未満である法人については、その事業年度開始の日の二年前の日の前日から同日以後一年を経過する日までの間に開始した各事業年度を合わせた期間)をいう。

要するに、基準期間が1年以上になるよう、前の期間も合わせなさい、ということになる訳です。

3月決算の会社が2020年9月末に破産を申し立てた場合の例を書いてみます。

  • 当事業年度 :2021年4月1日~2022年3月31日(A)
  • 前事業年度 :2020年10月1日~2021年3月31日(B)
  • 前々事業年度:2020年4月1日~2020年9月30日(C)←1年未満
  • 前々々事業年度:2019年4月1日~2020年3月31日(D)
  • 当事業年度の2年前の日の前日:2019年3月31日
  • 上記以後1年を経過する日:2020年4月1日

→当事業年度の基準期間は、(C)+(D)、すなわち2019年4月1日~2020年9月30日となります。

以上

相続放棄って何?

相続や相続税と同様、皆さんが割と耳にすることのある「相続放棄」。
実はこの言葉、結構誤解されていることが多いのです。
この記事は、相続放棄の意義とその効果、そしてどんなシチュエーションで使うか、また注意が必要な点などについてご説明したいと思います。

1.「相続放棄したい/させたい」
私たちの事務所は、これまでたくさんの相続税申告をご依頼頂いてきました。
ということもあり、普段から相続税に関するご相談を受けることが多くあります。
その中で良く出てくるのが「相続放棄」に関するご相談です。

例えば「私はもう親から十分にして貰ったから、相続を放棄したいのだが」といったご本人の意思もあれば、「兄の○○は素行も悪く財産を渡してもすぐ使ってしまうから、弟のために相続放棄させたい」といった、親御さんや兄弟からのご依頼もあります。

しかしこの「相続放棄」、実際にはそういう意図で使われるべきものではないのです。

2.相続放棄とは
本来の「相続放棄」は、民法第939条において次の通り定められています。

「相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす」

文言の通り「初めから相続人とならなかったもの」と「みなされる」ため、相続放棄した相続人の直系の子供たちに通常発生する代襲相続権(亡くなった親の代わりに相続する権利。民法第887条)は発生しません。また、相続放棄の効果には絶対効(直接の関係者でない誰にでも効果)があるため、その効果を第三者にも対抗することが可能です。

しかし、この相続の放棄をしようとする者は、その旨を被相続人の最後の住所を受け持つ家庭裁判所に申述しなければなりません(938条、家事事件手続法、非訟事件手続法)。またこの申述は、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内にしなければならないと定められています(民法第915条)。

相続には順位(子供→親→兄弟)がありますが、もし同順位の相続人が全員相続放棄した場合、後順位の者が相続人となります。たとえば子全員が相続放棄をすると、直近の直系尊属(父母等)が相続人となる訳です。さらに直系尊属が居ないか相続放棄する場合、兄弟姉妹が相続人となります。
このため、前順位者が全員放棄した結果自分が相続人になった時は、それを知った時から3か月以内に手続をすることができます。

手続としては「相続の放棄の申述書」(こちらからダウンロード可能:20歳以上 | 20歳未満)を家庭裁判所に提出します。実際には、上記ページにもある通り事情を聴かれたりする場合もありますので、弁護士や司法書士など専門家に依頼したほうが良いと思います。
裁判所が提供している記載例を示しておきます。

相続放棄申述書

3.どんな時に使う?
ではこの相続放棄、どんな時に使うのでしょうか。
一番大事なのは、「相続で引き継ぐべき債務が多すぎて、相続した財産(及び自分が元々持っている財産)で支払うことが到底無理な場合」です。
相続放棄すると、財産だけではなく債務も引き継がれなくなるからです。

例えば親が不動産投資に失敗し、所有財産やその将来の収益だけで多額の債務を払いきれず、破綻の恐れがある場合には相続放棄を検討する必要があると思います。
しかし、2.の通り相続放棄をしても同順位の相続人→次順位の相続人と順次相続人となっていきますので、もし完全に債務を免れたい場合には、配偶者を含め相続人となる可能性のある者すべてが順次、又は同時に相続放棄をする必要があります。

もし全ての相続人が放棄して、その後順位の相続人もいない場合には、相続財産は「法人」とされ、相続財産管理人(特に資格は必要ありませんが、通常弁護士や司法書士が選任されます)の管理下で財産等が処分されます(民法第951条)。

ただ、先に例示した不動産投資の失敗の場合、相続人となるもの(配偶者や子供)が連帯保証人となっているケースが多いため、相続放棄をしても連帯保証人としての地位から債務を引き継がざるを得ないことも良くあります。

なお、相続人が一部であっても相続財産を処分(売買や譲渡などだけでなく、家屋の取壊し等も含みます)したときは、単純承認(財産債務とも全て相続)したとみなされ、以後、相続放棄や限定承認をすることができなくなります。
令和元(2019)年7月1日以降の相続については「預金の遺産分割前仮払制度」がスタートしており、以前より預金の払い戻しが容易になっていますので、この点は注意が必要です。

4.相続放棄したら相続税はどうなるか
相続放棄をしても、他の相続人らが納付すべき相続税の総額は原則として変化しません。
相続税の計算方法は「相続税の計算は意外と複雑」で説明していますが、税金の総額をを計算する場合の「法定相続人の数」は、相続放棄したものが「しなかったもの」として計算するように定められているからです。
この理由はいくつかありますが、最も重要なのは相続放棄をすることで相続税の総額を変動させることができるとすると、租税回避の原因となってしまうからであると言われています。

如何でしょうか?
相続放棄について、おおよその論点を簡単にご説明しました。
残念ながら相続放棄を検討しなければならない場合は時間が限られていますので、早めに相続を多く取り扱っている税理士にご相談されることをお勧めします。
また、冒頭で説明しました「私はもう親から十分にして貰ったから、相続を放棄したいのだが」といったケースも、相続放棄を使わず、円満に良い結論を出すことが可能です。
お気軽にご相談頂ければと思います。

コラム「公認会計士が解説する民事再生手続」第4回(最終回)

塩尻公認会計士事務所の塩尻明夫です。

「公認会計士が解説する民事再生手続」コラムは、今回が最終回となります。

5.その他の論点

1)税務の観点

民事再生業務の本質は「再生計画案」の策定や決議、履行にありますが、実はその中枢には税務、特に法人税の税務に関する論点がたくさん含まれています。メジャーなものは以下の通りです。

  • 債務免除益課税とタックスプランニング
  • 期限切れ欠損金控除(民事再生の特例)→期限切れ欠損金を青色欠損金等に優先して控除可能(平成17年からは一定の私的整理でも可能となった)
  • 資産の評価損計上(民事再生の特例)→財産評定結果の損失を損金化可能
  • 青色欠損金の繰戻控除(民事再生の特例)→申立前2期間まで可能

2)破産への移行について

再生手続開始の申立の棄却、再生手続廃止、再生計画不認可または再生計画取消の決定が確定した場合において、裁判所は、当該再生債務者に破産手続開始の原因となる事実があると認める時は、職権で、破産法に従い、破産手続開始の決定をすることが出来ます。

また一旦否決されたあと期日が続行できない場合、また続行してもなお否決された場合には、再生手続が廃止される場合があります。手続が廃止されると、原則として裁判所によって破産手続に移行されることになり、やはり破産宣告を受けます。

3)詐欺再生罪について

民事再生法における罰則はいくつかありますが、今回は詐欺再生罪のみ取り上げます。

再生手続開始の前後を問わず、債権者を害する目的で次の行為をなした場合、再生手続開始の決定が確定した場合には、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金に処し、またはこれが併科されます。

  1. 債務者の財産を隠匿し、または損壊する行為
  2. 債務者の財産の譲渡または債務の負担を仮装する行為
  3. 債務者の財産の現状を改変して、その価格を減損する行為
  4. 債務者の財産を債権者の不利益に処分し、または債権者に不利益な債務を債務者が負担する行為(事情を知りながらその行為の相手方となった者も同様に処罰される)

4)不正への対応

民事再生に限らず、破綻状態にある企業やその経営者は追い込まれていますので、どうしても不正に手を染める可能性が高くなります。取込詐欺的な行為はもちろん論外ですが、通常は経営者が個人保証によって自己破産を余儀なくさせられるケースがほとんどであるため、資産隠しを図る場合があります。

自分自身が関与した業務にも幾つか事例があるのですが、守秘義務あるのでこのコラム上は和光電気の例を挙げます。

和光電気と鎌田社長は4月28日、民事再生法適用を大阪地裁に申請し、財産保全命令を受けた。調べでは、鎌田社長は申請前の4月中旬、同法適用申請が避けられないことを認識しながら、個人所有の6種類の株券約3万株(二千数百万円相当)を証券会社から引きだして自宅に隠した疑い。

和光電気は58年設立。近畿地方を中心にチェーン店を展開し、2000年3月期には1262億円の売り上げがあった。しかし、個人消費の低迷や関東系大型店の進出による競争激化などで経営が悪化し、民事再生法の申請に追い込まれた。

鎌田社長は同社の負債総額約300億円のうち約220億円について個人で債務保証していた。 (2003/06/30 17:16 朝日新聞)

以上

こちらのページからご質問などが可能です(連載終了)。

コラム「公認会計士が解説する民事再生手続」第3回

皆さん、あけましておめでとうございます。

塩尻公認会計士事務所の塩尻明夫です。
今年もよろしくお願い申し上げます。

前回は民事再生申立側の手続についてご説明しましたが、今回はこの手続をチェックする、監督委員側の実務について解説します。

4.監督委員側の実務

1)監督委員

民事再生法の特徴の一つが、この監督委員の制度だと思います。民事再生手続において監督委員は通常必ず選任され、再生手続が適正に行われているかどうかについて検討、意見書を作成します。

具体的には、下記のような業務を行います。

  1. 再生手続開始の申立について、そもそも手続を開始して良いのかどうかについての意見を述べる
  2. 開始後の申立企業の財産処分や業務遂行の監督
  3. 業務状況及び財産状況の調査
  4. 不公正な弁済や財産処分があった場合の否認権の行使
  5. 申立企業が作成した再生計画案についての意見書の作成
  6. 再生計画案が承認されたときに申立企業が計画通り履行しているかどうかの監督

監督委員の業務については上記以外にも広範囲に渡る論点があるのですが、私は弁護士ではなくあまり詳細にご説明することが出来ませんので、この項目はこれくらいにしておきます。

2)監督委員補助者

この監督委員に依頼され、会計や税務面についてその業務を補助するのが補助者です。この補助者には公認会計士や税理士が就任します。監督委員を務める弁護士は会計の専門家ではないため、会計や税務の専門家としての側面から補助的に意見を述べる必要があるからです。

「補助者」という名称から見て、文字通り補助的な業務だけを行う役割かと思うと、実は正しくありません。再生計画の大半を会計、税務に関する論点が占めますので、これらについて詳細な意見が求められますし、その意見は通常監督委員の意見書において引用され、意見形成にも大きな影響を与えます。

監督委員補助者の業務において、特に難しいのが、財産評定の検討と、再生計画の履行可能性に関する意見です。

財産評定における評価結果は、開始決定時の清算配当率計算を通じて再生計画が予定する弁済率の妥当性につながりますので、特に重要です。補助者の検討結果によって再生債務者が弁済率を上げざるを得ない場合もあります。

また、再生計画履行可能性に関する意見も重要です。再生債務者は将来の企業努力や需要増大なども見越して再生計画を策定しますが、このような将来の事象を前提とした項目の検討は、本来占い師でも無い限りは言えるわけがありません。そういった意味で極めて困難な業務であると言えます。実際には、過去や直近の実績、現在の営業状況、市況の調査など広範囲な情報を総合的に判断して、「再生計画案の履行が明らかに不可能ではない」点が存在するかどうかについて意見を述べることが多くなります。

経験上から私見を述べますが、私は監督委員補助者としての独立性は十分に保ちながらも、再生に向かって努力する会社(再生債務者)の経営者や従業員たちの強い気持ちを出来るだけ汲み取るように意識しています。もし再生がうまく行けば、再生債務者だけではなく、債権者や従業員、取引先、地域など多くの利害関係者に良い影響がもたらされるからです。

反面、民事再生を不正に利用しようとするケースも少なからずありますので、後述する不正への対応については十分に注意しています。

3)監督委員意見書の効果

さて監督委員やその補助者の意見書がどのように記載されたとしても、最終的にその再生計画案の適否について結論を出すのは再生債権者です。このためもあってか、今まで「監督委員や補助者の意見書が原因で否定された」案件はないとの事です。

しかしこれは、どのような再生計画案でも認める甘い判断を行うというのではありません。実際にそのような再生計画案を当初提出してきた再生債務者もありましたが、そういう場合には監督委員と共に、再生債務者やその代理人弁護士と相当厳しいやりとりを通じて、債権者のためになる計画案に修正させていくべく努力することになります。

監督委員やその補助者は、申立側とはまた違った意味で、民事再生の達成そのものに大きな役割を持つといえるかも知れません。

こちらのページからご質問などが可能です。

次回は、税務、破産に移行する場合、不正などについてご説明します。

コラム「公認会計士が解説する民事再生手続」第2回

皆さんこんにちは。

塩尻公認会計士事務所の塩尻明夫です。

前回は民事再生手続のあらましについてご説明しましたが、今回は実際の申立手続について解説します。

3.申立側の実務

1)手続の流れ

民事再生法に基づく手続の流れを図示すると、下記の通りとなります(クリックで拡大します)。

申立フロー

民事再生手続申立フロー

以下、上記の図に基づいて各手続を説明します。

民事再生業務は裁判所の管理の下行われますが、やはり主役は申立法人・申立代理人たる弁護士と、監督委員たる弁護士やその補助者たる会計士や税理士です。このため、これ以降は申立側と監督委員側に分けて実務をご説明します。

2)申立から手続開始まで

民事再生法の場合、破産の恐れがある、事業上重要な資産を手放さなければ債務が弁済出来ない恐れがあるなどの申立原因が存在すれば、債務者は支払不能、債務超過、支払停止になる前に申立てが出来ます。債務者に破産の恐れがある場合には、債権者も申立てすることができます。

申立がなされると、速やかに裁判所は保全処分を下します。この保全処分には、全ての債権者に対し、再生債務者、すなわち申立法人の財産への強制執行などを禁止する「包括的禁止命令」や担保権者に対する「競売手続中止命令」などがあります。この保全処分により再生債務者の財産を守らなければ、後に配当されるべき資金や資産などが流出、離散してしまうからです。

この後、2週間程度の間に裁判所は民事再生手続の開始決定を下します。

ところで、書籍やネット上の説明には、申立から説明をスタートしている場合が多くあります。しかし、実は申立の相当前段階で既に民事再生の実務は始まっているのです。例えば、裁判所への事前面談がその一つです。大阪地裁の場合、裁判所の第6民事部が担当となりますが、この民事再生係には申立予定日の2週間程度前に内々の相談に行くことが多いようです。その中で、例えばスポンサーの有無や、事業譲渡などの方向性も内定した、いわゆる「プレパッケージ型」の再生計画案について打合せがなされることも多くあります。

3)手続開始から再生計画案作成まで

保全処分が下され、手続の開始決定がなされると、申立直前の資金繰り難によって差し迫った状況はいったん落ち着きます。しかし、ここでゆっくりしている訳には行きません。

再生債務者は、一定期間(通常毎月)の報告書提出義務の他、開始決定時点における財産を時価評価した「財産評定書」や、再生計画の草案を作成していく必要があります。

財産評定というのは、単なる資産の時価評価ではなく、開始決定時点で再生債務者をハードランディング、すなわち破産させた場合、どれくらいの破産配当が得られるかという一種のシミュレーションです。この結果は、後で説明します弁済計画に基づく弁済率と比較されます。つまり、仮に弁済計画に基づく弁済率が財産評定に基づく破産配当率を下回る場合、民事再生手続が行えない事になるわけです。このため、この財産評定結果を、違法性無くいかに低く算定するかは担当する会計士や税理士の腕の見せ所と言えます。

次に大変なのが、再生計画の策定です。再生計画案とは、借金をいくら減額し、どのように返済していくのかなど、弁済の計画を示したものです。具体的には以下のような事項を記載します。

  •  再生計画の基本方針
  •  再生債権者の免除額や残額の弁済方法
  •  担保などの権利者について
  •  事業計画

弁済方法等に関してはある程度形式的に作成が可能と思いますが、民事再生に係る事業計画については困難が伴います。申立までの間、よほど突発的な事情でも無い限りは相当な経営危機に直面していた再生債務者ですから、申立時点において、資金的にはもちろん、人的にも営業基盤としても、お世辞にも健全とは言えない状況にあるはずです。例えば、重要な部材を仕入れている取引先は、民事再生を申し立てたことで支払いがストップした上に、大半の債権を貸倒損失として計上しなければならない訳ですから、「民事再生しましたので、これからも部材の調達をよろしくお願いします」なんて簡単に言えたものではありません。幸いに取引を続けてもらえたとしても、現金取引や前渡金取引などを前提とされることが多いようです。

このような状況を前提として事業再生を考える訳ですから、相当な困難を伴う計画になると思います。この時点においては、やはり事業に精通し、再生の強い決意を持った経営者と、能力の高い代理人弁護士の組み合わせが必須だと思います。

4)再生計画案の決議と認可まで

一般的には、再生計画案は正式なものをいきなり提出しません。まずドラフトを何バージョンか作り、裁判所に提出します。そのドラフトを叩き台に、後述する監督委員とのすりあわせや、大口債権者に対する説明を行います。

債権者集会で再生計画案が認められるためには、議決権を行使できる再生債権者の過半数で、かつその議決権の総額の2分の1以上の議決権をもつ人が再生計画案に同意する必要があります。

債権者集会で再生計画案が可決されなかった場合は、債権者集会の続行を申し立てます。この続行については、再生決議で必要となる決議要件のいずれか、または債権者集会に出席した債権者の過半数で、かつ出席した者の議決権総額の2分の1以上の議決権を有する債権者が、同意する必要があります。期日の続行回数に制限はありませんが、最初の債権者集会から原則として2ヶ月以内が限度となります。

なお、可決されてからは、官報への公告と即時抗告期間が必要となりますので、1か月程度かかりますが、その後再生計画が認可決定され、再生計画の履行がスタートすることになります。

こちらのページからご質問などが可能です。

次回は、「監督委員側の実務」からご説明します。

コラム「公認会計士が解説する民事再生手続」第1回

皆さんこんにちは。

塩尻公認会計士事務所の塩尻明夫です。

先日「相続の基礎」コラムの連載を終えましたが、今度は少し分野を変えて「民事再生手続」の解説をして行きたいと思います。
この再生手続、批判もあるものの再生型の倒産手続としては非常に柔軟かつ便利で、機動的な活用が可能な制度になっています。
出来れば自分が経営していたり勤めていたりする会社には起こって欲しくない事態ですが、いざというときのために読んで頂けると幸いです。

0.はじめに

一時期は非常に多くの申請があった民事再生法ですが、返済猶予などが行われる中小企業金融円滑化法の影響もあってか、破産と同様ここ1年は申請数が大幅に減少しているようです。

この傾向、見方によっては倒産する会社が減少して良いようにも感じるのですが、本来破綻しているべき会社の本質的な問題が解決されず、単に破綻時期が先延ばしされただけなのであれば、本当に破綻が訪れた場合の影響がさらに大きくなることが懸念されます。特にこの円滑化法が終わる平成25年3月以降、これらの企業がどのようになるか、予断を許さないところです。

今のところは、このまま景気が少しでも持ち直し、先延ばしされた破綻が二度と訪れないことを祈るばかりです。

さて、私は平成15年から幾つかの民事再生業務に関与しています。関与するまでは別の世界の話だった民事再生法もある程度理解するようになり、この手続の重要性も少しずつ分かるようになってきました。そこでこのコラムにおいては、私が理解している制度の説明だけではなく、この業務を通じて得た経験なども織り込めればと思います。

当連載は、今回以降4回を予定しています。

1.倒産とは?

「倒産」という言葉を聞かれた場合、皆さんはどのような印象を持ちますでしょうか?一口に「倒産」と言っても、実は自主廃業、清算、特別清算、私的整理、民事再生、会社更生、破産などなど多数の形態があります。また、手形の不渡りが発生したことを倒産と呼ぶ人もおられます。

企業再生に関与される皆様の場合はこれらの区分はされていると思いますが、一般の事業会社の場合、経理部の方でもその区別がついていない場合があります。ですので、よく「先生、取引先がつぶれました」という表現での連絡を受ける事があります。

民事再生は、これら多数ある会社の倒産形態のうち、事業の再生を最も強力に推し進めることのできる法制度です。

2.民事再生法のあらまし

1)倒産法制と民事再生法の歴史

かつて、戦前に制定された和議法という法律がありました。この法律は、当時としては最も強く事業の再生を考慮した倒産法制でした。しかし、和議が成立した後、再生対象の会社が管財人の管理下から離れ、また債務弁済を遅滞させるような事態が発生しても何ら強制力がありませんでした。このためきちんと完結した事案がほとんど無いことから「ザル法」との批判を強く受けていました。とはいっても、十分な強制力のある会社更生法が定める更生手続は非常に厳格で使いづらいものでした。

これらに対し、民事再生法は、和議法に代わる形で平成12年4月1日に施行されました。この後現在まで10年が経過し、新破産法とともに、既に倒産法制の中心と言っても過言ではないほど浸透しています。

2)民事再生法のイメージ

民事再生法だけではありませんが、同様に複雑な法律制度を説明する際、個別の制度ばかりを説明しているとなかなか全体像がつかめません。そこで、私は普段民事再生法をはじめとする倒産法制を説明する際、人間の病気や怪我とその治療方法に当てはめて説明しています。それは次の通りです。

    手法・法律     人間の治療に当てはめた場合
私的整理・中小企業再生支援協議会 自宅での治療や通院治療
民事再生法 入院による管理治療、時に生死には影響しない手術有
会社更生法 集中治療室(意識なし)、時に内臓摘出などの処置有
破産法 死亡、または死刑宣告

 

3)民事再生法の実績データ

帝国データバンクによると、民事再生法の申請は平成22年まで施行10年間の累計で7754件に達しているそうです。単年度の件数を見ると、平成20年度(平成20年4月~平成21年3月)は前年度比31.3%増の935件で、平成14年度(948件)以来6年ぶりの高水準となっています。これに対し、平成21年度には29.8%減の656件と大幅な減少を見せています。これは、景気動向だけではなく中小企業金融円滑化法の影響も大きいものと考えられます。

また手続の経過をみると、これまで申請のあった7754件のうち5394件が認可決定を受け、3365件、全体の実に43.4%がすでに終結決定を受けています。一方、申請後に取り下げ・棄却・廃止となった企業も1747件と、全体の22.5%が再生手続きを途中で断念しています。

また、平成20年度中に認可決定を受けた555社のうち、再生計画が判明した163社の平均弁済率は12.4%と、平成13年4月調査時の24.2%を大きく下回っています。平均弁済期間としては、1年以内(一括弁済)の比率が39.2%と、前回調査時の8.1%を大きく上回っています。これは、不動産デベロッパーを中心に、「即死」的破綻案件が多かったことや、低い弁済率でも短期の弁済完了を望む債権者側の意向、“清算型”民事再生の定着などが影響したと見られています。

こちらのページからご質問などが可能です。

次回は、申立の実務手続からご説明します。