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「役員退職金」は税務署に3度おいしい

従業員と同じく、役員も退職すると「役員退職金」がもらえる場合があります。
しかしこの役員退職金、様々な注意点があり、しかも税務署にとっては舌なめずりしたくなるほど「おいしい」論点なのです。
今回はその恐ろしい論点と、どうすればリスクを下げられるかについてご説明します。

1.中小企業の後継者不足
中小企業庁によると、2025年までに、70歳(平均引退年齢)を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人となり、うち約半数の127万(日本企業全体の1/3)が後継者未定であるとのことです。そしてこの現状を放置すると、中小企業・小規模事業者廃業の急増により、2025年までの累計で約650万人の雇用、約22兆円のGDPが失われる可能性があると言われています。

2025年中小企業
中小企業庁「中小企業・小規模事業者における M&Aの現状と課題」より抜粋

2.役員退職金と会社法
さてこのような中、引退する経営者が必要としているのが「役員退職金」です。役員退職金は、文字通り「役員が退職する際に会社が支払う退職金」であり、法律上様々な定めが置かれています。

まず会社法上、役員退職金は定款か株主総会の決議で定める必要があります(会社法361条)。
この規定は退職金に限らず役員が受ける利益全般について定められているものですが、通常は毎月の役員給与などと退職金は別に定めます。
また実際には定款で退職金を定めることは少なく、株主総会で「退任取締役に役員退職慰労金として〇〇円を支払う旨」の決議をするか、上限などの制約を定めて取締役会に詳細を委任することが多いようです。
とはいうものの、役員退職金はあくまで会社が支払う費用であり、利益処分ではありません。

3.税法上、役員給与は「原則として費用ではない」
税法上は、役員退職金は通常の役員給与とまとめて「役員給与」として取り扱われます。
そして驚くべきことに、現在の法人税法上、役員給与は「原則として損金の額に算入しない(費用として取り扱わない)」とされています(法人税法34条②)。
条文で定める要件を満たさない限り、費用としては認められないのです。

では、役員退職金についてその「要件」は、どんなものなのでしょうか。それは以下の通りとされています(法人税法施行令70条)。

「業務に従事した期間、その退職の事情、その内国法人と同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するものの役員に対する退職給与の支給の状況等に照らし、その退職した役員に対する退職給与として相当であると認められる」

要するに、「横並びで決めろ」という「ザ・昭和」な考え方にまだ縛られており、いくら卓越した業績を残した社長が退任する場合でも、業種業界規模的に突出した金額の場合には損金にできない、という理不尽な定めとされているのです。

この是非はさておき、比較すべき同種事業や類似規模の法人の事例を探してくることはなかなか容易ではありません。
このため、実務上は「功績倍率方式」といって、最終月額給与額に在任日数を乗じ、さらに役職の重要性に応じて「功績倍率」という掛け目を適用した金額で計算する方法が多く用いられています。

4.役員退職金の「第2の狙い」
役員退職金に見込まれる隠れた効果が「株価下げ」です。
株式の移転、特に親族間など特殊関係者の間での譲渡や相続、贈与といった取引の場合、税法は「時価」の採用を求めており、それを外れるとペナルティともいえる大きな税金を課すことがあります。
その「時価」は、原則として国税庁が発表する一定のルール(財産評価基本通達)に従って計算することになっているのですが、実はこの時価の計算において「会社の利益(正確には課税所得)」が大きなパラメータとして効いてくるのです。

詳しい仕組みは今回省きますが(※)、要するに利益が低いほど株価が低くなるのです。
第三者との取引なら高く売れた方が良いですが、例えば先代社長から後継者へ株式を譲渡したり贈与する場合、また亡くなった方から相続する場合は、時価が低い方が確実にあらゆる税金(譲渡所得税や贈与税、相続税)が下がります。
※株価の時価評価の仕組みは、弊所ブログ『粉飾したら相続税が下がる?-「比準要素1」の会社』に説明があります。

普通に頑張って経営されてきた場合、役員退職金は一般的な従業員の退職金よりそれなりに高い金額になると思います。これが全て費用として認められれば会社の利益を一時的に下げることができ、時価を抑える効果が期待できるのです。

5.「狙われる」カリスマ社長の退職金
では、3.で説明した「費用になる最大限の範囲」で役員退職金を出し、株価を目いっぱい下げて後継者に株式を移転するのがベストか?というと、そこに落とし穴があります。
実はこの役員退職金、「出したら必ず税務調査が来る」と言われるくらい、税務署側としても「おいしい」論点なのです。

一代で会社を立ち上げ、繁栄させた社長は、退任しようとしてもなかなか出来るものではありません。自分しか把握していない事情も多いですし、社内の多くは皆その社長を尊敬し、恐れ、頼っています。
そうなると、「退職した」といってもなかなか完全に会社を離れる訳にはいかず、会議に出席したり幹部からの相談を受けたりといったことが退職後も頻繁に発生します。

そう、ここが税務署のねらい目となるのです。
調査に来ると、調査官は「退任した前社長の退任後の活動」を調べます。
上記のように、退任前と変わらない役割を果たしている場合、「これは役員を退任したとは実質的に言えませんね」と主張してくるはずです。

それがどうした、と軽く見てはいけません。
実質的に役員を退任していないということは、「先日支払った役員退職金は『退職金』ではない」という認定につながるのです。

それが生むのは恐ろしい結果です。
まず、退職金でないなら、「役員賞与ですね」となります。
この役員賞与、法人税法上は原則費用にできません。ここで1発目の課税です。
また、日本の所得税法は退職金の課税割合を給与などより低くしていますので、賞与と言われてしまうと結構大きな所得税の増加につながります。これが2発目。
最後に賞与とした場合、会社はその「源泉所得税」を差し引いて翌月10日に納付する義務があります。これをやっていないので「不納付加算税」というペナルティをとることができます。
こうやって、一つの論点で調査官は3つ以上の課税処分を獲得できるのです。
これがタイトルの「3度おいしい」が意味するところなのです。

※さらに、役員退職金を前提に計算した株式の時価を贈与などに使っていると、賞与と言われたことで利益(法人の課税所得)が大きく増加→株価が増加して贈与税などが追徴される、という副次的な影響も発生します。

6.どんな対策があるか
このように大変リスクの大きい役員退職金ですが、やはり会社の発展に大きな貢献のあった役員にはきちんと報いる必要がりますし、また株式の時価評価に与える効果が大きいですから後継者の株式移転など事業承継対策には極めて有効です。

では、5.のようなリスクを抑えるにはどのようにすればよいでしょうか。

実務的にはたくさんの論点がありますが、簡単なものを書いておきます。
・退任後は、暫く完全に経営にタッチしない
・そしてそれが立証できるようにする(議事録やメール等には特に注意)
・株主総会、取締役会など会社法上の手続きを完璧に行い、記録を残す
・役員退職金の法人税法上の限度額計算を厳密に検討する
・行った対策について、税理士から税理士法33条の2添付書面(※)に記載してもらう
※この書面の仕組みは「税務調査を受けない方法 -税理士法33条の2の添付書面-」に詳しく説明しています。

リスクもリターンも大きい「役員退職金」ですが、きちんとした対策をとれば恐れることはありません。十分に理解して是非活用しましょう。
我々税理士法人耕夢には、税務調査対策まで含めて確実で豊富な実績がありますので、もしこのような対策を検討されている場合にはお気軽にご相談下さい。

大法人の電子申告義務化について

1.電子申告とその義務化について
米国などに比べ遅れていた行政の電子手続化を進めるため、2004年に施行された「行政手続オンライン法」(正式名称は「行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律」)に基づき我が国でも国税の電子申告システム整備されました。
このシステムはe-Tax(イータックス)と呼ばれ、パソコン等からインターネット経由で確定申告や申請書の提出などを行うことができます。
主要な国税の、過去10年余りの利用件数は下記の通りとなっています。

電子申告推移
各年度・主要税目の電子申告利用件数(国税局資料より抜粋)

しかしながら、旧来の「紙で提出する」実務が大企業などにも深く浸透していたことから十分な普及が進まず、元々の目的であった行政の効率化が果たせない状態となっていました。

そこで、経済社会のICT化等が進展する中、税務手続においても、ICTの活用を推進し、データの円滑な利用を進めることにより、社会全体のコスト削減及び企業の生産性向上を図ることが重要であることから、平成30年度税制改正により、「電子情報処理組織による申告の特例」が創設され、一定の法人が行う法人税等の申告は、電子情報処理組織(以下「e-Tax」といいます。)により提出しなければならないこととされました。(e-Taxページより)

義務化後最初の申告(令和3年3月期)が待ったなしとなりましたので、義務化とその対応方針についてご説明します。

2.電子申告の義務化の概要

  • 法人税及び地方法人税並びに消費税及び地方消費税
  • 資本金の額又は出資金の額が1億円超の内国法人、相互会社等…法人税・地方法人税、消費税・地方消費税


電子申告義務化対象法人
e-Tax義務化法人一覧(e-Taxホームページより)

  • 国及び地方公共団体…消費税・地方消費税
  • 確定申告書、中間(予定)申告書、仮決算の中間申告書、修正申告書及び還付申告書が対象で、これらに添付すべきものとされている書類の全てを含む
  • (例外)電気通信回線の故障、災害その他の理由によりe-Taxを使用することが困難であると認められる場合、納税地の所轄税務署長の事前の承認を要件として、法人税等の申告書及び添付書類を書面によって提出可

なお、電子申告義務化対象法人は、納税地の所轄税務署長に対し、適用開始事業年度等を記載した届出書(「 e-Taxによる申告の特例に係る届出書」を下記の期限までに提出する必要があります。

  1. 令和2年3月31日以前に設立された法人で令和2年4月1日以後最初に開始する事業年度(課税期間)において義務化対象法人となる場合…当該事業年度(課税期間)開始の日から1か月以内
  2. 令和2年4月1日以後に増資、設立等により義務化対象法人となる場合
    イ 増資により義務化対象法人となる場合…資本金の額等が1億円超となった日から1か月以内
    ロ 新たに設立された法人で設立後の最初の事業年度から義務化対象法人となる場合…設立の日から2か月以内
  3. 令和2年4月1日以後に義務化対象法人であって消費税の免税事業者から課税事業者となる場合…課税事業者となる課税期間開始の日から1か月以内
  • 令和2年4月1日以後に開始する事業年度(課税期間)から適用(地方税の法人住民税及び法人事業税についても電子申告が義務化)
  • 電子申告の義務化法人は、書面による申告書の提出は認められません。このため、電子申告の義務化の対象となる法人が、e-Taxにより法定申告期限までに申告書を提出せず、書面(添付書面含む)により提出した場合、その申告書は無効なものとして取り扱われることとなり、無申告加算税の対象となります。
  • 但し、やむを得ない理由で一部が紙で申告された場合、「申告書の主要な部分(どの部分が主要であるかは公表しない)」が電子申告されていれば、必ずしも無申告として取り扱う訳ではないとの見解(国税庁)

3.CSV形式で提出可能となるもの
(国税庁HPにCSV形式を簡易に作成できる標準フォームが掲載されています)
①別表の明細書のうち内訳の記載を要する別表6など
②財務諸表(勘定科目に国税庁から公表される勘定科目コード(令和元年に公表予定)を付ける必要あり
③勘定科目内訳明細書

4.PDFで提出可能となる添付書類
①一部のリリース前別表
②出資関係図
③経営力向上計画に係る認定書の写し
④申告に添付が必要な証明書など

5.添付すべき書類が大量にありe-Taxによる提出が出来ない場合は、光ディスクによる提出も可能

6.別表16(減価償却に関する明細書の添付)
元々、この別表16は「固定資産の科目別の合計を記載して提出し、明細の記載は省略できる※」とする取り扱いがありました。この取り扱いは電子申告義務化でも踏襲されています。
※法人税法施行令第63条第2項 その区分ごとの合計額を記載した書類を当該事業年度の確定申告書に添付したときは、同項の明細書を保存している場合に限り、同項の明細書の添付を要しないものとする

7.相続税の電子申告について
相続税法に基づく申告には「贈与税」と「相続税」がありますが、これまでは「贈与税」のみが電子申告の対象となっていました。
これが今回改められ、本年(2019年)10月から「相続税」でも電子申告が可能となることが決まっています。
遺産分割協議書など、電子化が難しい書面の提出をどのように行うかが問題となりますが、最後に残されたこの税目が電子申告の対象と納税者の利便性は大きく向上することになります。

8.対応方法について
これまで電子申告を利用していなかった法人や、一部を紙提出していた法人の場合、上記(義務化)の対応は少し面倒なものになるかもしれません。しかし、電子申告を上手に導入すると、結果として手続が非常にシンプルで効率的になり、誤りや税務調査リスクを低減することにもつながります。
またこのメリットは、今回義務化の対象となる大規模会社だけではなく、中小企業でも同様に受けることが可能です。

弊所はe-Tax登場とほぼ同時に、対応するほぼ全ての税目において電子申告での提出を実現しています。
また、上場会社を含む大規模法人や金融機関に関しても、電子申告を含む法人・消費税申告手続に関与しており、実務に精通しています。
特に電子申告の義務化に対応するためにはもちろん電子申告に対応したシステムが必要になりますが、システムの導入だけに終わるとせっかくの効率性が失われたり、システム投資の肥大化を招いてしまう可能性もありますので、実際に資料の準備からシステムの選定、決算書作成や税額計算、申告書の提出までの電子申告実務を十分に理解している専門家の関与が必須となります。

電子申告を新たに導入する場合、また現在導入しているがより効率化を図りたい、税務調査リスクを低減する申告を行いたいなどのご希望がありましたら是非お問合せ下さい。

資本金・資本準備金・資本剰余金って何?

最近、最大手旅行会社のJTBが、資本金を23億400万円から1億円に減資することが明るみに出ました。
この資本金、一般的には会社の大きさを示すようなイメージでとらえられていることが多いですが、さて実際にはどのような意味を持つ存在なのでしょうか。
また、似た言葉で「資本準備金」や「資本剰余金」という概念との違いは何でしょうか。
今回は、これらの意味やその役割について、幅広くご説明します。

決算短信純資産の部
例:ある会社の純資産の部

1.会社には「カネ」が必要
言い古された言葉ですが、事業に必要なのは、「ヒト・モノ・カネ」です。
しかし、ヒトもモノも、カネ(資金)がなければ手に入れることは出来ませんね。

あなたには良い友達がいて、個人事業を起こす際には道具を貸してくれたり、またしばらくは無償で手伝ってもらえたり、というありがたい協力を得る事も出来るかもしれません。しかし出来たばかりの「会社」の場合そういうことは普通望めませんので、やはり「ヒト」や「モノ」を得るには資金が必要なのです。

このように、事業を始めるに当たって必要な資金のことを、経済学用語で「資本」と呼びます。別の言葉で言うと「元手(もとで)」ですね。この資本(元手)を手始めとして、会社は事業を拡げていくことになります。

2.「資本」は「資産」ではない
では、要するに資本とは「資産」のことじゃないか?と思ってしまいますが、そうではありません。会社の資産というのは、「会社が所有する財産」のことを言います。

資本(元手)を原資として資産を買い、人を雇い、そして事業に精を出して利益を上げたら、「資産」は少しずつ増えていきます。
つまり、資本は会社がその所有者(株主)から預かった元手の額すなわち「過去の金額」であり、資産は事業活動の結果会社が持つことになった財産の「今の金額」なのです。

3.「資産」「負債」「純資産」
以上の通り、資本は会社が株主から預かった元手であり、資産は会社が持つ財産の今の金額であると言えます。

ところで、会社がお金を調達する方法にはもう一つあります。それは「借入」です。
銀行等金融機関や、それ以外の個人や会社からの借入金は、資本と同じく会社にお金をもたらしますが、そのお金の「返し方」が資本と違います。

資本は、原則として会社が無くなるまで返してもらえませんが、借入金は、一定の期限や金利を定めて返済しなければなりません。
その他、仕入代金や税金の支払義務など、会社が負う債務をすべて合わせて「負債」と呼びます。

ここで、会社の良し悪しを示す、もっともシンプルな数字である「純資産」が出てきます。
純資産とは、「資産」から「負債」を差し引いた金額です。

言い換えれば、「返さなければならない負債を全て返した後、会社にどれくらいのお金が残るか」を示すのが「純資産」なのです。
この純資産は、会社に出資した株主がもともと出したお金から出来たものですから、原則として株主のものです。このため、純資産は「広義の株主資本」とも呼ばれます。

4.会社法
このように、「資本」とは、株主が出資したお金や資産、負債から定義されます。
ところが、どのような会社であるかを判断するため大変重要な数字である資本について、分かりやすい決まりを定めておかなければ、決算書を作る際や株主、銀行などが見る際に混乱が生じてしまいます。

このため、会社に関する様々な決まりを定めた「会社法」においては、資本について細かい規定が設けられています。

次の項目から、会社法における「資本金」「資本準備金」及び「資本剰余金」についてご説明します。会社の種類によってこれらの定義や制度は少しずつ異なりますので、このコラムにおいては全て「株式会社」を前提としています。

5.「資本金」は自分で決める
会社法において、株式会社の資本金は以下のように定義されています。

会社法第445条 株式会社の資本金の額は、この法律に別段の定めがある場合を除き、設立又は株式の発行に際して株主となる者が当該株式会社に対して払込み又は給付をした財産の額とする。2 前項の払込み又は給付に係る額の二分の一を超えない額は、資本金として計上しないことができる。

つまり資本金の額は、株式会社の設立や株式の発行をした際に、株主が払い込んだお金のうち、1/2以上、ということになります。

会社法が出来る前は、会社の財産が多い方が債権者を保護できるという考え方のもと、株式会社が1000万円、有限会社が300万円という「最低資本金」制度が設けられていました。

しかし、前の項目で説明した通り、「資本金」と「資産」すなわち会社の財産額は異なります。
このため、新規開業を促進することを目的として、最低資本金制度が廃止されることになり、「資本金1円」の会社を設立し、維持することも可能となりました。

現在も依然として資本金の額(会社の登記簿で確認できます)によって会社の規模を判断される場合もありますが、最近はこのこともあってあまり気にされなくなってきたようです。

6.「資本準備金」は自動的に決まる
次に、資本準備金は以下のように定められています。

会社法445条2 前項の払込み又は給付に係る額の二分の一を超えない額は、資本金として計上しないことができる。

3 前項の規定により資本金として計上しないこととした額は、資本準備金として計上しなければならない。

例えば、株主の払い込んだお金が100万円だったとすれば、そのうち50万円までは「資本金としない」ことができ、その「資本金としなかった」金額が資本準備金になる訳です。

会社法で定める準備金(法定準備金)は、会社法が出来る前(商法の時代)からありましたが、これは「会社の債権者を保護するため、一定額を溜めておきなさい」という意味合いの制度と言われており、資本準備金の他には利益準備金が定められています。

この法定準備金、減らすことができる目的には①資本金への組み入れ ②剰余金への組み入れ の2つがありますが、②の際には「債権者保護手続」が必要になります。この債権者保護手続は、資本金を減少する「減資」の際にも求められています。この点から見ると、法定準備金は、資本金に近い性格を持つと言えるかもしれません。

7.「資本剰余金」にはいろいろある
会社法上、資本剰余金は、資本準備金及び資本準備金以外の資本剰余金(その他資本剰余金)に区分されます。ここで説明する資本剰余金はその他資本剰余金を対象とします。

その他資本剰余金は、「資本としての性格を持った剰余金」として位置付けられます。

つまり、利益から発生する「利益剰余金」とは異なり、株主からの払込など、資本取引から発生する剰余金であるという意味です。

その他資本剰余金には、以下のようなものが含まれます。

  • 資本準備金の取り崩し額
  • 自己株式処分差額(自己株式を譲渡した際の差損益)
  • 組織再編における増加資本のうち、資本金や資本準備金に組み入れなかった金額

会社が配当する際、純資産のうち資本金や資本準備金は配当の原資にはできませんが、その他資本剰余金は配当原資とすることが認められています。この点が、資本準備金とその他資本剰余金の大きな違いです。

8.大会社
資本金が5億円以上になると、会社法上は「大会社」として取り扱われます。この場合、中小企業と違って以下のような義務が課されることになります。それぞれ大きな論点ですので、内容の詳しい説明は省略します。

  • 会計監査人の設置義務(公認会計士による監査)
  • 監査役会設置義務(委員会設置会社を除く)
  • 内部統制システムの決定義務
  • 損益計算書についての公告義務(基本は貸借対照表のみ)
  • 連結計算書類作成義務(有価証券報告書提出会社のみ)

9.その他の違い
ここまで資本金、資本準備金、及び資本剰余金について、会社法の定義を説明しました。

これらは、「利益」ではなく「株主の支出した資本」から生み出される点については共通しているのですが、法律の定めでそれぞれ違った取り扱いとなっています。

ところで、資本金、資本準備金、及び資本剰余金の違いはこれら以外にもありますので、以下簡単に説明します。

①その他の違い-法人税法(中小企業税制)
法人税法には中小企業に対する税率軽減の制度があります。この制度、「資本金」が1億円以下(大会社の子会社などは除かれます)の会社を中小企業と定め、このような会社に限っては年間800万円の所得まで、通常の税率より低い法人税率を適用するというものです。また、この他にも中小企業に関しては法人税法上の特典を受けることが出来る制度があります。
※ニュースとなったJTBは、主にここを狙っていたと考えられます。

さらに、中小企業の中でも資本金が3000万円以下の場合、中小企業支援の観点から多くの特典が用意されています。

②その他の違い-法人税法(資本と利益の違い)
現在の会社法は「資本」と「利益」については概念上区分しているだけで、実際には資本剰余金からの配当(本来利益から行われるもの)が認められているなど、相互の違いが事実上なくなっています。

ところが、法人税法上「資本」はあくまで「株主から払い込まれたもの」で、「利益」は「会社が獲得したもの」として、未だ明確に区分しています。このため、自己株式を売買した場合や、資本剰余金から配当を行った場合など、会社法に基づく会計と法人税法上の処理に違いの発生する場合があります。

③その他の違い-消費税法
新しく会社を設立する場合、「資本金」を1000万円未満にしておくと、設立以後2年間(売上高などが非常に多くなる場合は1年7か月程度が限度)は消費税の納税が原則として免除されます。

④その他の違い-地方税法(均等割)
地方税(都道府県民税や市町村民税)には、利益が出ていなくても一定の税金を会社に課す「均等割」という制度があります。この均等割の金額は、会社の規模が大きくなると高くなるよう定められています。

法人税の場合、会社の規模は前述の通り「資本金」で判断するのに対し、均等割の場合は「資本金等」で判断します。

この「資本金等」には、資本金と資本準備金が含まれるのですが、さらに「無償減資による減資差益」という金額も加えなければなりません。この減資差益は、資本金を減額して、株主にお金を払い戻さなかった時に発生するものです。つまり、税金を下げようとして資本金を減額したとしても、均等割は減らしてもらえない訳です(平成27年度の税制改正によってこの点は一部緩和されています)。

その他の違い-地方税法(外形標準課税)
外形標準課税は、規模の大きな企業に対して、均等割よりさらに積極的な課税を行う、地方税の一つです。具体的には、資本、所得、付加価値の3要素に課税をする制度となっています。

この制度の「資本」への課税は、前項で説明した「資本金等」が対象になるのですが、何故か大企業かどうかという判定は、「資本金が1億円を超えているかどうか」となっています。ですから、資本金と資本準備金を合わせた金額が1億円を超えていても、資本金が1億円以下であれば外形標準課税の対象にはなりません。このため、制度の導入時は、資本金を1億円以下に減らす減資手続が相次ぎました。

の他の違い-中小企業基本法(中小企業法)
中小企業基本法(中小企業法)は、我が国における企業の多数を占める中小企業を支援し、国民経済の健全な発展及び国民生活の向上を図ることを目的として制定されています。そのため、中小企業法には、中小企業施策に関する国及び地方公共団体の責務等が多数定められてきます。

この中小企業法における「中小企業」、会社法や税法とは少し異なり、業種や資本金、従業員などの多寡によって、個人も含めて判定することとなっています。

例えば、製造業で、資本金の額が3億円以下、又は常勤従業員が300人以下の会社の場合、中小企業法上の中小企業として扱われることになります。

10.まとめ
資本金、資本準備金、資本剰余金の違いについて、会社法を中心に、その他の制度も含めて説明しました。

最低資本金制度がなくなったことで、中小企業を起業や経営する場合「資本金の大小」を意識する場面は少なくなったように思います。ただ、後にIPO(上場)の準備を開始したり、他社をM&Aしたりといった場合には、この論点を意識して物事を進めなければならない場合が出てきます。

ただ、中小企業にとって一番大事なのは「資金繰り」です。確かに1円の資本金で会社の設立は可能ですが、開業当初の会社には1円しかない訳ですから、起業時の準備費用すら支出出来ないことになります。

起業時の資金調達は誰もが苦労するところですが、自己資金、借入金などをバランスよく組み合わせつつ、資金繰りに工夫をしながら、あなたのビジネスを成長させていきましょう。

以上

令和3年税制改正の大綱~所得拡大促進税制見直し

続いて「令和3年税制改正の大綱」についてご説明します。
今回は「所得拡大促進税制」の見直しについてです。
コロナ禍の前、第二次安倍政権の時代から、中小企業を中心に「雇用者数の増加や給与増加」を実現した事業主や法人に対して、法人税や所得税)の税額控除の適用が受けられる制度を広げてきました。年度によって変遷はありますが、この制度を総称して「雇用促進税制」や「所得拡大促進税制」と呼びます。
また、大企業についても同様に「給与等の引上げ及び設備投資を行った場合の税額控除制度」と呼ばれる、設備投資拡大をセットとした制度が設けられていました。
令和3年の税制改正大綱においては、この所得拡大促進税制について、対象の拡大など緩和が行われます。

所得拡大

1.中小企業における所得拡大促進税制の見直し
中小企業(法人・個人事業主)における所得拡大促進税制について、次の見直しを行った上、その適用期限を2年延長されます。また地方税についても同様の改正が行われます。

①適用要件

継続雇用者給与等支給額(前年度から継続して雇用している者への支給額)の増加割合」要件が、雇用者給与等支給額の比較雇用者給与等支給額に対する増加割合に見直されます(計算が煩雑な継続雇用者の要件が無くなります)。

②税額控除率要件(法人税や所得税の一定割合を控除限度とする計算)
継続雇用者給与等支給額の増加割合要件が、雇用者給与等支給額の比較雇用者給与等支給額に対する増加割合に見直されます。

2.給与等の支給額から控除する項目見直し
元々、「所得拡大促進税制」や「給与等の引上げ及び設備投資を行った場合の税額控除制度」の金額を計算する際には、給与等の金額から「給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額」を差し引くこととされていました。計算上給与等の額が多い方が有利ですから、助成金など「給与等の為にもらった金額」は差し引かないと不合理、という考え方でした。

しかし現在のコロナ禍で「雇用調整助成金」の対象や助成割合が拡大され、利用が増加したこと、またこの利用で一定の雇用維持効果が出ていることから、要件を判定する場合には、雇用調整助成金及びこれに類するものの額を控除しないこととされました(税額控除率計算に関しては引き続き控除した金額を上限とします)。

令和3年税制改正の大綱~産業競争力強化に係る措置

今回から、令和3年税制改正の大綱に記載された改正項目をご紹介していきます。
なお、ご紹介はこちらのブログと、耕夢グループ しのだ会計事務所のブログ にて分担して執筆します。

1.産業競争力強化に係る措置(全体像)
ポストコロナに向けた経済構造の転換・好循環の実現を図るため、企業のDX(デジタル技術を背景にした企業経営やビジネスの変革。デジタルトランスフォーメーション)及びカーボンニュートラル(温室効果ガスの吸収・排出バランスを目指す)に向けた投資を促進する措置を創設するとともに、こうした投資等を行う企業に対する繰越欠損金の控除上限の特例を設けることとされました。
これらの税制は「産業競争力強化法」(日本経済の再興のための産業競争力の強化を目的として、平成26年1月20日に施行された法律)の改正を前提としており(施行予定は2021年6~7月頃)、適用には同法の計画認定が必要となる予定です。

2.DX投資促進税制の創設
「つながる」デジタル環境の構築(クラウド化等)による事業変革を行う場合に、税額控除(5%又は3%)又は特別償却(30%)ができる措置を創設されます。
この制度は、従来型のソフトウェア(無形固定資産)だけではなく、クラウドシステムへの移行に係る初期費用(繰延資産)も対象となります。
DX投資促進税制の適用については、事業適応計画の認定要件を満たした上で、デジタル(D)要件と企業変革(X)要件について主務大臣から確認を受ける必要があります。
税額控除については、原則取得価額の3%、親子会社(会社法に基づくもの)間グループ「外」の事業者とデータ連携する場合は5%となります。
また、3.カーボンニュートラル投資促進税制の税額控除額と合わせ法人税額の20%が限度となります。

3.カーボンニュートラルに向けた投資促進税制の創設
カーボンニュートラルに向け、生産プロセスの脱炭素化に寄与する設備、又は脱炭素化を加速する製品を早期に市場投入することでわが国事業者による新たな需要の開拓に寄与することが見込まれる製品を生産する設備に対する投資について、税額控除(10%・5%)又は特別償却(50%)ができる措置た創設されます。
税額控除については、原則取得価額の5%、温室効果ガスの削減に著しく資するものは10%となります。また、2.DX投資促進税制の税額控除額と合わせ法人税額の20%が限度となります。

カーボンニュートラル

4.活発な研究開発を維持するための研究開発税制の見直し
売上高が減少するなど厳しい経営環境にあっても研究開発投資を増加させる企業について、従来からある税額控除の上限を引き上げます(現行:25%→30%)
同時に、インセンティブを高めるための控除率カーブの見直し(適用される計算式が変更されます)及び控除率の下限の引下げ(現行:6%→2%)を行います。

5.コロナ禍を踏まえた賃上げ及び投資の促進に係る税制の見直し
雇用環境の悪化に対応するため、新規雇用拡大に着目した形に見直しが行われます。
具体的には、従来の「継続雇用者への賃上げ」を前提とした計算方式から、「新規雇用者」を対象とする方式に変更されます。
この結果、この税制の適用を受けるためには、既に雇用している従業員の給与等を増加させるだけではなく、新たに雇用する従業員の給与等を増加させることが必要となります。
この「給与等」の計算については、元々「雇用調整助成金等」は控除することとされていましたが、今回の改正で「控除しない(対象額が増える)」ことが明らかとされました。

6.繰越欠損金の控除上限の特例
コロナ禍の厳しい経営環境の中、赤字であっても果敢に前向きな投資(カーボンニュートラル、DX、事業再構築・再編等に関するもの)を行う企業に対し、その投資額の範囲内で、最大5年間、繰越欠損金の控除限度額を最大 100%(現行:所得の金額の 50%)とする特例が創設されます。

 

令和3年税制改正の大綱について(概要)

1.税制改正の大綱とは
令和2年12月21日、「令和3年度税制改正の大綱」が閣議決定されました。この税制改正の大綱は、政府が今後の税制改正のあり方について明確に方針を示すもので、毎年12月に公表されます。今回から数回にわたり、この税制改正の大綱について簡単に説明します。

税制改正の大綱は、政府が税制のあり方についての方針を示すもので、その後の税制改正はこの大綱に基づいて行われることとなります。

これに対し、与党自民党と公明党が発表する「税制改正大綱」と呼ばれるものも、政府の「税制改正の大綱」の直前に発表されます。これらはほぼ同じものなのですが、前者が「与党の方針を示すもの」であり、後者が「政府の方針を示すもの」であることから、場合によっては異なる場合もあり得ます。ただ現在のように政権与党がある程度安定している場合には「ほぼ同じ」と思っておいて良いようです。

税制改正大綱R3

2.税制改正の大綱の概要
今回発表された税制改正の大綱の概要は、以下の通りです。
これらのうち、私たちのお客様に大きく関係する項目については、これから数回にわたってメルマガ等で順次細かく解説いたします。

<個人所得課税>

  • 住宅ローン控除の特例の延長等(適用期限延長、面積要件緩和)
  • セルフメディケーション税制の見直し(範囲の重点化と手続簡素化、延長)
  • 国や地方自治体の実施する子育てに係る助成等の非課税措置(国や自治体からの子育て助成を非課税に)
  • 退職所得課税の適正化(年数が短い法人役員の退職金課税を強化)​

<資産課税>

  • 住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置の拡充(非課税枠を据え置き、面積要件緩和)
  • 教育資金、結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置の見直し(節税的利用防止、延長)
  • 土地に係る固定資産税等の負担調整措置(コロナ対策で負担調整据え置き)
  • 国際金融都市に向けた税制上の措置(外国人家族が相続する国外財産の課税対象外)

<法人課税>

  • 産業競争力強化に係る措置(DX促進、カーボンニュートラル、研究開発、コロナ禍対応賃上・投資促進、繰越欠損金控除上限引き上げ)
  • 中小企業支援(投資促進税制延長、所得拡大促進税制見直し、中小企業の経営資源の集約化)
  • 株式対価M&Aを促進するための措置の創設(M&A対象会社株主の譲渡損益課税を繰り延べ)
  • 国際金融都市に向けた税制上の措置(投資運用業役の員業績連動給与を損金算入可)

<消費課税>

  • 車体課税(エコカー減税及び自動車税・軽自動車税の環境性能割見直し等)
  • 金密輸に対応するための消費税の仕入税額控除制度の見直し

<納税環境整備>

  • 税務関係書類における押印義務の見直し(地方税関係書類についても同様)
  • 電子帳簿等保存制度の見直し等
  • 地方税共通納税システムの対象税目の拡大
  • 個人住民税の特別徴収税額通知の電子化
  • 国際的徴収回避行為への対応

<関税>

  • 暫定税率等の適用期限の延長等
  • 個別品目の関税率の見直し(ポリ塩化ビニル製使い捨て手袋の暫定税率無税)

個人事業主の年間「税金スケジュール」

インターネットの普及はユーチューバーや転売ヤーなど、新しい個人ビジネスを生みました。
また、クラウドワークスに代表される、フリーランスに対して仕事をマッチングするサービスも盛んであり、個人事業主として活躍する方が増えているようです。

そこで今回は個人事業主の一年間の税金に関するスケジュールを簡単に説明したいと思います。

個人事業主が納める主な税金は、所得税・消費税・住民税・個人事業税の4つです。これらは同時に納付するのではなく、税金によって納付する時期が異なります。

1.所得税の確定申告
まず、個人事業主の方が納める所得税は、いわゆる暦年課税とされ、事業年度が暦年、つまり1月1日から12月31日と決められています(納税義務の成立及びその納付すべき税額の確定 国税通則法15条2項1号)。この期間にかかわる所得を計算し、報告する手続が確定申告です。この手続は、事業年度の次の年の2月16日~3月15日に行うこととされています。この確定申告期限日までに申告とともに所得税を納税しなければなりません。

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2.消費税の確定申告
消費税も所得税と同様に、個人事業主の課税期間は1月1日から12月31日とされ、この期間にかかわる確定申告書を提出し、税金を納付します。ただ所得税と異なり、確定申告と納税の期限は、3月31日です。

3.住民税
確定申告した所得税の内容は、国税局から各地方自治体に伝達され、住民税が計算されます。
これに基づいて税額の計算がおこなわれ、住民税の通知書が6月ごろに地方自治体から届きます。住民税は4回(6月、8月、10月、翌年1月の各末日)に分けて納付する分割納付か一括納付かを選択することができます。

次に8月ごろに、都道府県税事務所から個人事業税の通知書がきます。8月、11月の末日が納付日ですが、一括納付に変更も可能です。

4.予定納税・中間納付
前年の所得税や消費税の納税額が一定金額を超える方は、当年度の税金を先に納税する、つまり前払いする義務が生じます。

所得税は予定納税と言われ、前年分の所得金額や税額などを基に計算した金額(予定納税基準額)が15万円以上である場合、予定納税基準額の3分の1の金額を、第1期分として7月1日から7月31日までに、第2期分として11月1日から11月30日までに納めることになっています。

消費税は中間納付と言われ、前年度の確定消費税額(地方消費税額は含みません)が48万円を超える方が対象となります。納税額は前年度の納税額を基準として算定され、中間納付税額によって、支払回数が異なります。1回、3回、11回の3パターンあり、一回当たりの負担を軽減するために、納税額が大きいほど回数が多くなり、分割して支払う仕組みとなっています。前年度の確定消費税額が48万円を超え、400万円以下の場合で、年1回とされ、前年度の納税額の2分の1を8月31日までに支払います。

5.源泉所得税
源泉徴収義務者(従業員を雇っている方など)で、納期の特例の承認を受けている方は、1月から6月までの分を7月10日までに、また7月から12月までの分を1月20日までに納付しなければいけません。この源泉所得税は事業主自らが金額を集計して納税する必要がありますので、忘れないように気を付けたいところです。

まとめると以下のようになります。期限を超えるとペナルティが生じることもありますので、期限には注意してください。

1月 ・1/20 源泉所得税納付期限(納期限特例の場合、7~12月分)
3月 ・3/15  所得税確定申告及び納付期限
・3/31 消費税確定申告及び納付期限
6月 ・6/30 住民税第1期
7月 ・7/10 源泉所得税納付期限(納期限特例の場合、1~6月分)
・7/31 所得税予定納付(第1期)
8月 ・8/31 消費税中間納付(年1回の場合)
・8/31 住民税第2期
・8/31 事業税第1期
10月 ・10/31 住民税第3期
11月 ・11/30 所得税予定納付(第2期)
・11/30 事業税第2期

 

自己株式取引における「時価」の考え方(弁護士・会計士・税理士向け)

株式会社が自己の発行する株式を株主から買い取ることがあります。
上場会社の場合株価対策や株主への還元を目的とすることが多いですし、非上場会社の場合は筆頭株主支配の強化、相続人からの買取による株式分散の防止、組織再編などの目的が多いようです。
今回は、この株式を買い取る際の「時価」の考え方について説明します。
この記事は専門性が高いため、内容は会計士や税理士といった会計専門家、また弁護士などの法律専門家に向けて記載しました。

株式をそれぞれの発行会社が買い取る(自己株買取)際には、その取引価格をどのように決定するかが問題となります。特に、当該取引は同族関係者間での取引ですから経済合理性に基づかない価格が設定されると課税上の問題が発生する恐れがあります。
これに加え、完全支配関係下(100%支配グループ内)における取引の場合には、グループ法人税制の適用が想定されますので、この論点にも注意する必要があります。
以下、上記を踏まえて自己株式を取引する場合(非上場会社)の時価の考え方について説明します。

1)法人間における非上場株式取引
法人対法人で非上場株式を譲渡する(自己株式ではない)場合、一般的には相続税の申告において株式の時価評価に使用する「財産評価基本通達」の178から189-7にある方式を「課税上弊害が無い限り」一部修正して計算するのが原則です。この場合の時価を「法人税法上の時価」と呼びます。この場合、譲渡後の議決権割合を基として計算方法が決定されます。議決権を基礎とするのは、株式会社においては議決権割合こそが会社を支配する力を表すからです。

2)グループ法人税制適用外における自己株式取引
ところが、自己株式の取引に関して上記1)を厳密に適用すると、議決権の数は0として規定されている(財産評価基本通達188-3)自己株式を取得した場合、最も評価の低い「配当還元方式」で評価されるべきという考え方となってしまいます。
しかし、通常の取引において十分な価値を持つ株式の場合、自己株だからといって非常に評価の低い金額で取引しても問題がないと言い切ってしまうのも問題があるため、「譲渡前の議決権数」を基礎として1)を適用する考え方が(理論的には完全ではないものの)実務的には多く使われているようです。
なお、自己株式取引において低額譲渡(時価とされる金額より低い価格で取引)の問題が発生した場合、譲渡側の法人には寄附金課税が見込まれるものの、譲受法人にとっては資本取引の為、受贈益課税が発生しないと考えられています。

3)グループ法人税制適用下の取り扱い
さらに、グループ法人税制適用下においては、自己株式の譲渡損益が資本金等の額に加減算され、課税所得に算入されないことになりました(平成22年改正税法)。また、グループ法人税制適用下においては、自己株式取得に伴って発生するみなし配当(株式を買い取る場合、資本にあたる部分以外を配当支払とみなす)も全額が益金不算入となります。
また、グループ法人税制適用下の寄附については、税務上なかったものとみなされ、支出法人側で損金不算入、受取法人側で益金不算入とされます。但し、この取扱いが適用される寄附金と受贈益は、一方の法人において寄附金となり、他方の法人において受贈益となるものに限られます(法法25の2①括弧書き、37②括弧書き)。このため、一方の法人においてのみ寄附金の額が発生し、他方の法人においては受贈益の額が発生しないというようなもの(前述)で発生する譲渡法人の寄附金課税)に関しては、この取扱いは適用されず、一般的な寄附金課税となると考えます。

オンライン忘年会の費用を会社が払ったら?

新型コロナウイルス感染症は、ビジネスや観光、日常生活といったあらゆる分野に大きな影響を与えています。
中でも著しい影響を受けているのが、「人が集まる機会」です。
飲み会やパーティ、ライブ、スポーツなどのイベントにはたくさんの人が密な空間に集まりますので、どうしても感染可能性が高まってしまいます。
このため、多人数での飲食を禁止している会社も多いと思います。

1.オンライン飲み会
そんな中注目を浴びているのが「オンライン飲み会」です。
オンラインミーティングの機能を使って皆がバーチャルに顔を見ながら、それぞれが自宅などに用意した食事や飲料とともに会話を楽しむという、まさに新しい常識(ニューノーマル)を象徴するような機会です。

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2.イベント費用の会社負担
新型コロナウイルスが問題となるまでは、会社は従業員間の親睦をはかって一体感を高めるために、リアルな飲み会、食事会といったイベントを普通に開催してきました。特に年末になるとほとんどの会社が「忘年会」を開催し、皆で一年間の頑張りを慰労する機会を設けていました。
この忘年会、会費制の場合もありますが多くの会社は一部又は全部を会社が「福利厚生費」として負担しています。これは、前述の通りこのようなイベントが会社の円滑な運営の為必要ということがその理由です。
そのため、税法も

  • 専ら従業員の慰安のために行われるイベントのため通常要する費用
  • それらが社会通念上一般的に行われていると認められるイベントであること

であれば、「課税(※)しない」スタンスを採っています。
但し、そのイベントに参加しなかった役員又は使用人(業務のため参加できなかった者を除く)に対しその参加に代えて金銭を支給する場合や、役員だけを対象としてイベントの費用を負担する場合には課税されることとなっています。

※今回のブログに言う「課税」には、法人税や所得税における課税が含まれますが、その内容については説明を簡単にするため省略します。

 3.オンライン飲み会の費用補助
では、オンライン飲み会でそれぞれの参加者が必要とする食事や飲料に充てる費用を会社が負担した場合にはどうなるでしょうか。
まず、元からある「イベント費用を会社が負担した場合」に課税されないための条件は満たしている必要があると思います。
すなわち、①専ら従業員の慰安のために行われるイベント、であり、②そのために通常要する費用(高すぎないこと)、そして③そのイベントが社会通念上普通のものであること、という条件になります。

オンライン飲み会は、コロナ禍前には一般的ではなかったかもしれませんが、現在の「新しい社会通念」においてはもう既に普通になっていると思います。
また、飲み会で通常会社が負担している一人当たりの費用より少ない金額であれば、「そのために通常要する費用」として考えても間違っていないと思います。
問題になるのは、それぞれの社員に金銭(金券や電子マネー等金銭同等物を含む)を支給することそれ自体です。
課税されない条件として最も確実なのは、上の条件に加え「実際に参加して係った費用のレシート等を収集し、これについて会社から補助を行うこと」です。このことで、法人税、所得税は課税されません。またついでながら消費税も控除の対象になると思います。

ただ、たくさんの社員からいちいち細かいレシートを取得し、精算するというのも面倒なので、社員全員へ一律に一定額を支給するというケースもあり得るでしょう。このような場合、参加しなかった者への参加に代えて支給する金銭や、実際に要した金額を大きく超える場合については、その支給する金銭は課税されることになると思います。

この論点はまだ非常に新しく事例も少ないので、法令や現在の取り扱いに照らしながら考えてみました。参加した者に対する実費を精算することが一番安全ですのでまずはその方法をお勧めしますが、その他の方法の場合は、顧問税理士などに十分ご相談の上実施されるのが良いと思います。

合併手続の留意点~合併無効とならないために

近年組織再編に関する法整備が進み、合併、分割、株式交換・移転といった組織再編手法が大変使いやすくなりました。
その中でも、昔からよく使われている「合併」については、基本的なM&A手法として大変便利な手法であると言えます。
しかしながら、合併については会社法に規定された手続を正しく進めなければ、それ自体が無効となってしまうリスクがあります。もし無効となった場合、単に手続自体が無駄になるだけではなく、合併を前提に進められている様々な契約や事業活動が全て合併前の状態に戻されるため、甚大な悪影響があります。

今回は、このようなことがないよう、満たされるべき最低限の手続について記載してみました。
※税理士の分野である税法やその他の分野に関してはまた別の機会があれば記載します。

①合併のスケジュール
合併手続はおおよそ下記の通りの手順で行われます。

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これらの合併手続は会社法に規定されており、これらの手続に従わなければ合併を行うことはできません。この手続や登記申請書の添付書類に瑕疵がある場合、合併自体が中断する場合や、のちに合併無効の訴えにより遡って無効となる場合があります。

合併手続が中断、中止する場合はもちろん問題ですが、遡って無効となる場合には、合併を前提に進められている様々な契約や事業活動が全て合併前の状態に戻されるため、甚大な悪影響があります。このため、合併手続が登記まで適切に行われているかどうかについて、下記の手続を中心に十分注意する必要があります。

②合併契約の締結
合併契約には、消滅会社の株主に交付する対価や効力発生日など、法律で定められた事項を漏れなく決定しなければなりません。合併契約には法定の必須事項があり、この必要事項を欠くと合併の無効原因になります。また合併契約書は合併登記申請における添付書類となります。

③合併に関する書類の事前備置
存続会社および消滅会社は、株主や債権者が合併の適否や合併無効の訴え提起を判断できるよう、合併契約や当事会社の計算書類など一定の書類を本店に備え置かなければなりません。備え置く期間は合併の効力発生日後6ヵ月を経過するまでです。

④債権者保護手続
存続会社および消滅会社は、債権者に対して合併に異議があれば一定期間内に申し出る旨を官報(一定の場合は日刊新聞紙、電子公告)で公告しなければなりません。異議申出の期間は1ヵ月以上必要です。

⑤株主の株式買取請求
存続会社および消滅会社は、合併の効力発生日の20日前までに株主に対して合併する旨の通知(一定の場合は公告)をしなければなりません。

⑥株主総会による合併契約の承認
合併契約は、合併の効力発生日の前日までに存続会社および消滅会社の株主総会で特別決議による承認を受ける必要があります(但し簡易合併、略式合併の場合は、原則として株主総会による決議を省略できます)。

⑦登記・財産等の名義変更手続
存続会社の代表者は、合併の効力発生日から2週間以内に、存続会社の変更登記と消滅会社の解散登記をする必要があります。また、消滅会社の権利義務はすべて存続会社に移転するため、預金、土地および建物など、消滅会社の名義になっている財産等については存続会社への名義変更が必要です。

⑧合併に関する書類の事後備置
存続会社は消滅会社より承継した権利義務や合併手続の経過等を記載した書類を作成し、効力発生日から6ヵ月間本店に備え置かなければなりません。

⑨手続瑕疵の影響
上記の手続に瑕疵(かし 欠陥のこと)があった場合には手続の無効原因となり得ますが、その瑕疵が重大でない場合でも必ず合併が無効となるわけではありません。瑕疵が発見された場合には、合併手続に詳しい弁護士、司法書士などの専門家から無効性について意見を聴取した上で対処を判断する必要があります。