会社における「備品」の会計・税務・管理

大会社でも小規模な個人事業でも、またビジネスの内容を問わず必ず必要になるのが「備品」です。
巨大な製造設備と違って手軽に購入できるものですが、それでも会計や税務においてたくさんの論点があります。
この記事は、その論点の一部(法人税に関するもの)を簡単にご説明いたします。

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1.備品とは
事業のため1年以上の長期にわたって使用又は利用する目的で保有する資産を「固定資産」といい、法人税法では、土地、減価償却資産、電話加入権等と規定されています(法人税法第2条22項)。この中で減価償却資産とは一般的に時の経過等によってその価値が減っていく資産をいい、備品はこれに含まれます。

備品には、机や椅子といった伝統的なものから、テレビ、エアコンといった電化製品、そして最近だとパソコンやプリンタ、タブレットといった最新鋭のものまで、たくさんの種類があります。

似た概念に「消耗品」があって紛らわしいのですが、「道具として使用するもの」が備品、「それ自体を比較的短時間で消費しながら使用するもの」が消耗品、と理解すると分かり易いと思います。

2.会計処理方法
減価償却資産の取得に要した金額は、取得時に資産に計上されますが、減価償却により少しずつ費用となります。減価償却とは、減価償却資産の取得に要した金額を一定の方法によって各年度に配分していく手続です。資産の使用可能期間にわたり減価償却することで、使用に応じた費用を順次認識することができると考えられています。

3.会計処理時点
減価償却資産は購入した日に資産計上します。一方、減価償却を開始するのは、事業の用に供した日からとなります。

「事業の用に供した日」とは、その資産のもつ属性に従って本来の目的のために使用を開始するに至った日をいいます。事業の用に供したか否かは、業種・業態・その資産の構成及び使用の状況を総合的に勘案して判断します。例えば、備品を会社に搬入しただけでは事業の用に供したとはいえず、その備品を据え付け、目的通りの使用が可能なことを確かめたのちに、使用を開始した日が事業の用に供した日となります。

4.取得価額
減価償却資産の取得に要した金額とは、支出内容からとらえた場合、原則として、その資産の購入代価とその資産を事業の用に供するために直接要した費用の合計額となります。また、引取運賃、荷役費、運送保険料、購入手数料、関税などその資産の購入のために要した費用も購入代価に含まれます(法人税法施行令54条第1項)。

一方、その範囲からとらえる場合、一つの資産としての取得単位は、通常1単位として取引されるその単位、「工具、器具及び備品については1個、1組又は1そろいごとに」判定することとされています(法人税法基本通達7-1-11)。例えば、テーブルと机がセットになった応接セットや、パソコンと基幹ソフトウェアなどは1組または1そろいととらえることができます。

5.減価償却
減価償却は先に述べたとおり、使用に応じた費用を認識する意味から、その使用状況に応じた適切な方法と期間を選択する必要があります。

減価償却には定額法や定率法などの償却方法があります。償却方法は任意に選択し、税務署への届出が求められています。期間は、資産の種類ごとに一般に合理的と考えられる使用期間が法定耐用年数として定められています。これらの方法・期間に基づいて償却額を計算することになります。

なお、法定耐用年数は新品の資産を取得した際に用いられるものであり、中古資産を取得した場合には、耐用年数を別の方法で算定することになります。
また、事業年度の途中で取得した資産の減価償却費は、年間金額を月数割りした金額となります。

6.売却または除却
資産を第三者へ売却、または不要になり除却した場合には、入金額と資産の残存価額との差額を損益として計上します。

7.特例
少額の減価償却資産には特例が設けられており、通常の会計処理と比較して早期に費用化が可能となっています。

取得価額 費用として処理 一括償却資産処理 少額減価償却資産 固定資産計上
10万円未満 中小事業者のみ〇
10~20万円未満 × 中小事業者のみ〇
20~30万円未満 × × 中小事業者のみ〇
30万円以上 × × ×

使用可能期間が1年未満のものまたは取得価額が10万円未満のもの
事業の用に供した事業年度において、その取得価額に相当する金額を損金経理した場合には、その損金経理をした金額は、損金の額に算入されます。この場合の「使用可能期間が1年未満のもの」とは、法定耐用年数でみるのではなく、その法人の営む業種において一般的に消耗性のものと認識され、かつ、その法人の平均的な使用状況、補充状況などからみて、その使用可能期間が1年未満であるものをいいます。なお、事業の用に供した事業年度においてその取得価額の全額を損金経理している場合に、損金の額に算入することができます。したがって、いったん資産に計上したものをその後の事業年度で一時に損金経理をしても損金に算入することはできません。

一括償却資産
取得価額が10万円以上20万円未満の減価償却資産については、一定の要件の下でその減価償却資産の全部又は特定の一部を一括し、その一括した減価償却資産の取得価額の合計額の3分の1に相当する金額をその業務の用に供した年以後3年間の各年分において必要経費に算入することができます

中小企業者等の特例
中小企業者等が、取得価額が30万円未満である減価償却資産を事業の用に供した場合には、一定の要件のもとに取得価額の合計額のうち300万円に達するまでの取得価額の合計額を、損金の額に算入することができます。

8. 資産管理
備品は一つ一つが小さいですし、前述の通り費用化してしまって会計上資産として残らないものが多くなります。このため、特に中小企業においては少額のものについて資産管理をしていない場合が多いようです。

ですが、持ち出しなどの不正を防ぐためや、重複購入による無駄な支出、使用限度超過による故障などのトラブルを防ぐため、資産計上していない備品であっても、番号などを付して個別に資産管理をしておくと、健全な経営にはとても役に立ちます。

以上、たかが備品といってもたくさんの論点がある事がお分かり頂けたと思います。是非ご参考になさって下さい。