会計事務所管理システム「耕夢」について

1.会計事務所経営の問題点
会計事務所はよく「残業が多い」業界と言われています。繁忙期(確定申告や3月決算のある3~5月)には夜中まで仕事しているといった話が語られることも良くあります。逆に、閑散期には全く残業がないと言われることもあります。

また、「人的依存の度合いが高い」業界であるともいわれます。これは、一人の担当職員が決まったお客様を固定的に担当し、他の担当者や、場合によっては所長すら詳細を知ることがないという状況の事を言います。そのような状況で担当が定年や転職で退職してしまうと、後任者の採用や引継ぎが大変になるのです。

最後に、品質管理の問題があります。これまでのブログで「税務調査」について何度かご説明しましたが、近年の税務行政において、税務調査対応で最も重要なのは「税務署職員OB」や「交渉」、ましてや「お土産」などではなく、「申告業務の品質管理とその開示」です。
上記の人的依存性や、申告書作成過程の管理が不十分なことから、残念ながらこの品質管理が十分に行えない場合が懸念されます。

2.耕夢システムの開発
これらの課題を解決するため、弊所はまず「効率化」「人的依存排除」「品質管理」といった基本的な目標を置き、会計事務所において行われる業務の全てを、直接業務・間接業務含めて本質から見直し、これらを促進するにはどのような仕組みが必要となるかを追求しました。

この結果開発された耕夢システムは、お客様・職員間のコミュニケーションや会計・税務・コンサルティングなどの業務の進捗・生産性管理、そして必要な各種専門情報の学習・更新・共有化・業務へのフィードバックなどの機能を高度に統合することによって、業務品質や生産性、お客様の満足度、そして職員の働き方を飛躍的に高めることができるシステムとなりました。

また、このシステムはSalesforceを基盤としたクラウドシステム上に構築されているため、事務所内に限らず在宅やサテライトオフィス、移動中や出張中でも、またパソコンのみならずタブレットやスマートフォンを使った場合でも事務所内と全く変わらないコミュニケーションや業務の実施、管理、研修等が可能となります。

これは、上記の目標だけではなく、弊所が特に重視する「女性が働きやすい環境」の持続的実現にも非常に有効な機能であると考えております。

3.具体的な機能
チェックリスト機能
会計・税務や事業承継、コンサルティング等の業務を行う際、必ず実施しなければならない項目がチェックリストとして登録されており、プロジェクトごとに「いつ・何を実施すべきか」担当者に促すようになっています。これらの結果は記録され、税務調査やその前段階の「意見聴取」において実施内容を担当官に提示することで、税務調査リスクを大幅に減殺することが可能です。

このチェックリストは、「会計・税務」「相続・贈与」「コンサルティング」「総務・管理」の4カテゴリごとに用意されています。また、共通のチェックリストとは別に、顧客ごとに特有のチェック項目も設定できるようになっています。
このようなチェックリストを活用し、必要資料の整理や副担当といった制度と組み合わせることで、会計事務所での勤務経験がない方でも、必要な業務を漏れなく行うことが可能になります。

チェックリストは専門職(公認会計士や税理士又は同等)の知識を持った者であればだれでも作成・更新できるようになっており、「単独知(人的依存)」から「集団知(全員での共有)」への脱却を可能とします。また、チェックリストそれ自体を専門の部署や外部専門家にレビューしてもらうことで、さらに高い品質を備えることも可能となります。

工数管理機能
職員は少なくとも2週間程度先までの業務を、上記のチェックリストなどから抽出、予定として把握し、自分の業務スケジュールとして設定します。また、実際にスケジュール通り業務を行った場合、最小限(チェックボックス)の設定だけで実績として登録されます。
会計事務所のみならず、業務スケジュールや日報を作成することによって発生する職員の手間を極力省き、使いやすくなるように工夫しています。

これらの実績は高度なレポート機能により集計・分析を行うことが可能で、限られた業務時間を効率的に配分することにつながります。また職員間の業務分担量の把握やその調整にもつながるため、不公平感につながる業務の偏りを防止することも可能です。もちろん、詳細な分析は納得感のある職員評価や、顧客に対する報酬見直しの説明にも活用できます。

コミュニケーション機能
chatterというコミュニケーション機能を活用し、事務所内やお客様との間のコミュニケーションを的確かつセキュアに記録することが出来ます。一般的なメールのやり取りで発生するような、機密書類の漏洩や議論の散逸を防ぐことが可能です。また、税理士法41条で義務付けられている「業務処理簿」と同等の記録を残すことも可能となっています。

また、時短や在宅勤務などで薄れがちな質問や会議、情報共有といった最低限の業務コミュニケーションもこのシステム上で行うことが出来ます。

ログ・レビュー機能、その他
チェックリストの実施や職員間、お客様とのやり取り、また予定工数・実績などが、作業をトリガーにしてchatterに自動的に転送されるので、所長などの管理者はこれを一覧することでリアルタイムに業務の進捗状況をつかむことが可能です。

他にも、受信したFAX、送信・送付した書類の送付状や事務所WEBページへの問い合わせ、有給休暇の申請・消化実績などもchatter上に表示され、まさに事務所全体の動きを把握できる情報となっています。

下記は、耕夢システムの「ホーム」画面です。
各担当職員の業務割り振りや、チェックリスト更新状況、最新のメッセージ等が一覧できます。

SFHomeConsole

この「耕夢」システムはおかげさまで非常に完成度の高いシステムとなりました。
このシステムの概要については、プラットフォームの提供元である株式会社セールスフォース・ドットコム様のページにおいても、下記の通り事例としてご紹介を頂いています。

社員全員が自分らしい働き方を実現 信頼できるサービスを Salesforceと共に

弊所はこのシステムを活用し、人的依存の排除や業務品質の向上を、限られた経験者の採用に頼ることなく実現します。
また従来から進めている「女性が働きやすい職場の構築」をさらに推し進め、子育て中や要介護者を扶養する方、障害を持った方など全ての方がそれぞれの力を十分に発揮できる職場やしくみを引き続き構築していきます。