仮想通貨技術を支える「ブロックチェーン」について

一時期もてはやされた「ビットコイン」。
これ以外にも様々な仮想通貨が登場したり、投機的な価格の変動や、「ワンコイン」の不正事件、「コインチェック」の流出事件など、衆目を集めるニュースが多発しているため注目度が非常に高くなっています。

この仮想通貨、従来からあってよく利用されている、一般的な「電子マネー」とは概念的にも技術的にも大きく違ったものを持っています。というより、本質的には「通貨」に限らない広い概念をもつ技術なのです。

その技術の核となるのが「ブロックチェーン」という概念です。

私はこの技術の専門家ではありませんが、同じく専門外の方でも分かりやすいよう、簡単な説明を書いてみました。
なおこの記事は、以前作成したものに一部加筆修正しています。

1.データの保存形態の変遷
コンピュータの創生期から、どんどん増え続けるデータの処理や保存方法については様々な努力がなされてきました。
一台一台のパソコンに保存されていたものが、サーバと呼ばれる集中機に保存されるようになり、これがインターネットの普及に伴って「クラウド」という形態まで進歩してきましたが、「データがどこかで一元管理される」という形には変化がありませんでした。

この形だと、一元管理されている箇所を攻撃(ハッキングなど)したり、その通路(ネットワーク経路)を支配してしまえば改ざんや遮断が容易にできます。
実際、一部の国で行われているインターネット検閲などは、この点を利用している訳です。

2.ブロックチェーンの衝撃
ブロックチェーン技術は、このような常識に衝撃を与えました。
この技術は、元々「ビットコイン」のような、ネットワーク上を流通させる暗号通貨を実現するために作り出されたものです。

ブロックチェーンは、簡単にいうと「利用者が使う全ての端末に、分散して全てのデータが保存されている」という点がポイントです。

この「分散」についても、単にデータをバラバラに保存しているだけではありません。それぞれが冗長性(無駄な部分)を持ち、一部が壊されたり改ざんされたりしても、生き残った他の部分から全体像が再構成できるように考えられているのです。

例えば、誰かが自分の資金残高を10倍にするようデータを改ざんしたとします。その場合でも、他のデータを合わせるとその改ざんは即座に見破られ、不正が行われたことが分かる訳です。

新しい取引が発生すると、そのデータが一定の規則によって次々と追加され、あたかもデータの塊(ブロック)が鎖(チェーン)のようにつながっていくことから、このような名前で呼ばれるようになったのです。

3.ブロックチェーンの用途とメリット
ブロックチェーン技術は、言ってみれば進化したデータ保存方法ですから、データを扱う全ての用途に活用できます。特に、「取引とその履歴を記録し、改ざんや盗難リスクが大きい」用途にはうってつけです。

例えば、以下のような用途です。

  • 電子マネー…改ざんや盗難リスクがあり、また災害等でデータが失われることを防ぎやすい。また数多くの端末で分散処理され、遅れはあるもののシステムダウンの恐れが極めて低い。
  • 電子商取引…電子マネーと同じ理由で適しています。
  • 証券取引、銀行の勘定系、資金送金…上記と同じ理由ですが、システムダウンへの耐性が高い点は他より重視されます。
  • 不動産等の登記…不動産の登記簿(登記情報)は、権利(所有権や担保)情報やその履歴で構成されています。またその内容に改ざんがあれば、不動産取引に悪影響を与えます。

 

4.ブロックチェーンのデメリット
逆に、ブロックチェーンは以下のようなデメリットも持ちます。
意外と重大な欠点もあるのですが、今後メリットの大きさと技術の進歩で改善が図られると思います。

  • 低いパフォーマンス…参加者全員で全てのデータを分散して所持し、お互いを確認しながら取引を進めるため、データが巨大化し処理が遅くなります。
  • オンラインでしか動かない…単独の機器でももちろん動かすことは理論的に可能ですが、ブロックチェーンの意味がありませんね。取引が実行されたことを全ての参加者に通知、取引内容を含んだブロックの生成、チェーンに追加といった一連処理はオンラインでしか動きません。
  • データの巨大化によるストレージの圧迫…今誰が何をどれだけ持っているかというデータだけではなく、今までどんな取引がされてきたのかという履歴を全て保存するため、管理するデータ量が膨大となってしまいます。
  • 機密性に欠ける…全ての参加者が全てのデータを分散して持っていますので、身分等に応じて一部を隠すことが難しくなります。
  • 不正取引が簡単…システムの欠陥を突けば、簡単に大きな金額を送金する取引を記録することができ、その経緯や作業者を隠すことも比較的容易です。