どんな会計ソフトでもOK(汎用データコンバータ)

1.財務会計データの非互換性
会計ソフトに代表される財務会計用ソフトウェアは、それぞれの開発会社が独自に定めた方法でデータを保存しており、当然ながらそれぞれの間に互換性(相互に利用できること)がありません。
このため、例えばある会計ソフトを長年利用してきた会社が、別のより使いやすい、廉価な会計ソフトに移行したいと考えたとしても、旧ソフトから新ソフトへのデータ移行は容易ではありませんでした。
また、同じ開発会社の会計ソフトと販売管理ソフトは連携の取れる場合が多いのですが、違う開発会社間の連携はごく稀なケースを除いては不可能でした。
そんな訳で、これまで財務会計用ソフトの世界は、データの非互換性が一種の「移動障壁」であったと言えます。

2.汎用データコンバータ
このような状況に対応するため、税理士法人耕夢は「汎用データコンバータ」を開発しました。

汎用データコンバータを利用した業務の例

このコンバータは、①ある会計ソフトウェアや販売管理ソフトウェアなど、決まった様式で多数の取引などの情報を持つデータ(ソースデータ)から、別のソフトウェアにおいて取扱が可能な様式へ、一度の簡単な設定後は自動的に変換を行うことができる、一種の「フィルタ」と呼ばれるアプリケーションです。

このコンバータを利用することで、お客様がどの会計ソフト(仕訳をCSVなどテキストデータの形で出力が出来るものに限ります)をご利用の場合でも、簡単な基礎データ収集と初期設定によって私どもの事務所で使用する会計ソフトの形式へのデータ変換が可能です。

3.汎用データコンバータでできること
では、この汎用データコンバータでどのような作業ができるでしょうか。 現在実際に行われている作業の一部をご紹介します。

1)会計ソフト移行
このコンバータが最も力を発揮するのがこの作業です。
新しく顧問先になって頂いた会社が現在会計事務所で使用しているものと異なる会計ソフトを使用して経理業務を行っておられる場合、いわゆる「自計化(顧問先にて基本的な記帳を行い、会計事務所が内容の確認を行う方式)」状態を続けるためには、従来は

  1. 顧問先においてBをAに変更してもらう
  2. 会計事務所でBを新たに購入し、受け入れをする

など、共通の会計ソフトをどちらかで購入する必要がありました。
しかし、汎用データコンバータを用いることで、顧問先は従来通りの会計ソフトで記帳し、そのデータを会計事務所の会計ソフトに変換して受入れ、チェックや決算、申告書作成を行うという業務の流れが可能になります。

2)販売管理などサブシステムとの連携
同じメーカーのソフトを使っている場合、販売管理ソフトなどサブシステムと会計ソフトは通常連携が取れるようになっています。
しかし、会計ソフトとサブシステムのメーカーが違うというケースは以外と多くあります。その理由はいくつかありますが、例えば次のようなものです。

  1. 会計ソフトと同メーカーの販売管理ソフトが営業形態に合わない
  2. 会計ソフトは経理部、販売管理ソフトは営業部と別々に導入が行われた

このような場合も、汎用データコンバータは違うメーカー製ソフトウェア間の連携を取ることができます。例えば販売管理ソフトから販売データ、入金データなどをデータ出力し、これを会計ソフトの仕訳データに変換後会計ソフトで取り込むといった処理が可能となります。

3)財務会計データの総合チェック
汎用データコンバータの機能を用いて会計データをチェック用に加工し、勘定科目や摘要記載、消費税処理、仕訳検索、ベンフォード法(※)判定データなどの機能を付加することで、会計データの適正性や税務調査対策、ひいては不正調査に至るまでの業務を行うツールが作成できます。
弊所はこのツールを用いて不正調査や新規顧問先の予備調査などを行っています。

※自然に発生する数字の集合においては、その最初のn桁の発生度合いは一定の対数関数カーブに従うという法則。このカーブから外れるものは何らかの人為的な行為が含まれている可能性が高い。

4.汎用データコンバータの今後
今後会計はPCソフトウェアからクラウド環境へ急速に移行するものと予想されます。
また、資料をAIなどで画像処理することで自動会計仕訳が作成されたり、電子商取引の情報がそのまま財務会計データとなるなど大きく変革していきます。
しかし、会計という考え方が完全に変わってしまわない限り、「日付、摘要、勘定科目、金額」という基本的なデータ構造は不動となります。
恐らく将来的にはブロックチェーン技術(参考記事はこちら→仮想通貨技術を支える「ブロックチェーン」について)を活用し、プラットフォームを横断した財務会計情報がクラウド上で取り扱われるような形になっていくと思いますが、それまでは様々な形で偏在するデータを使わざるを得ません。その間の「つなぎ」として、しばらくは活用することになるのではないかと思います。

以上