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シロアリ恐るべし!(1)

第1部 体験談「シロアリ襲来!」

1.それは突然現れた

弊所は、和歌山の別荘地に「ラボ」と呼ぶ実験施設を所有しています。不動産の管理やリフォーム、運営といった研究のほか、ワーケーションの実験やお客様の招待にも使う施設です。

さて、久しぶりにラボへ出てくると、窓際に見慣れない汚れがありました。3~4センチ四方ほど、土のようなものが盛り上がっています。その近くの壁には小さな穴が開き、羽虫が数匹見え隠れしています。

ラボのお陰で少しは知識があったため、「あー、これはシロアリだ」とすぐに気づきました。

急ぎ管理会社さんに連絡すると、1時間とあけず防蟻業者さんを連れてきてくれました。ラボは急斜面に建っており、玄関やメインリビングが2階という変わった間取りです。業者さんは2階窓際を見るや否や、すぐ1階へ下り、和室の琉球畳を上げ始めました。

すると、まぁいるわいるわ……。

ちょっと写真には出せないほど「うぞうぞ」と蠢く虫たちが、床板から畳まで蝕んでいました。床下には、シロアリが土などで作る通路「蟻道」もあります。とても1、2週間でできたものには見えません。

リフォームしてからまだ1年少々なのになんで?と愕然とする私をよそに、業者さんはてきぱきと状況を確認し、応急処置をして帰られました。

2.防蟻(ぼうぎ)対策

本格対策まで1、2週間はかかるかなと覚悟していたところ、状況を見た業者さんが2日後に予定を組んでくれました。発見からわずか2日で、床下、基礎、柱、壁内など重要部分の処理が完了。この迅速な対応にはほんとに感謝です。防蟻代は8万円程度でした。

とは言え、その後が大変です。薬品で追いやられたシロアリは、何とか生き延びようと窓際や隙間に集まり、そこで命を落としていました。しばらくは、大量にたまる死骸や羽の掃除に追われました。

3.修復工事

改めて現場を見ると、発見時に目にしたのはわずか数匹で、それまで羽アリすら見ていなかったにもかかわらず、1階畳下の床板は広い範囲で食害を受けていました。特に被害が目立ったのは、リフォーム時に傷みが少ないため残した古い木材です。

(被害状況の写真)

どうやってこれを修復するんだ……と立ち尽くすばかりでしたが、リフォームを担当した工務店さんもすぐ現場を確認し、工事予定と見積りを出してくれました。そして発見から1か月半で工事も完了。元通りきれいになりました。

決して安い工事代金ではなく、リフォームから1年での出費は痛くないと言えばウソになります。しかし、得難い経験の勉強代として納得はしています。

私は大変幸運でした。構造が致命的な損傷を受ける前に発見でき、管理会社さん、防蟻業者さん、工務店さんがありえないほど迅速に動いてくださった。そのお陰で被害を最小限に抑えられたことは間違いありません。

この経験で得た知識を、中古住宅や別荘を買おうとする方にも役立つ形で残したい。そう思い、この長編コラムを書くことにしました。

第2部 シロアリってなんだ?

1.シロアリは「アリ」ではない

名前には「アリ」と付きますが、分類上はゴキブリに近い昆虫です。クロアリは腰がくびれ、触角が「く」の字、羽アリの前後の翅は大きさが違います。これに対してシロアリは寸胴で、触角は数珠状、4枚の翅がほぼ同じ大きさです。

女王・王、働きアリ、兵アリなどが役割を分担して集団生活をしています。地中性の種類は、光や乾燥を避けるため、土や排出物で「蟻道」を作り、地中から基礎、配管の貫通部、木材との接触部などを通って建物へ入ります。

厄介なのは、木材の表面を残したまま内部を食べ進むことです。室内で数匹を見つけた時には、見えない場所で被害が広がっていることがあります。羽アリも、単なる迷い虫とは限りません。建物やその近くからまとまって現れたなら、周辺に成熟した集団がある可能性を考える必要があります。

2.住宅で問題となる主なシロアリ

日本の建物で中心となるのは、ヤマトシロアリとイエシロアリです。ヤマトシロアリは北海道北部を除くほぼ全国に分布し、湿った木材や建物下部を加害する傾向があります。イエシロアリは主に温暖な沿岸部に分布し、大きな巣を作り、蟻道の中で水を運びながら乾いた木材にも被害を広げるため、加害範囲が大きくなりやすい種類です。

もう一つ注意したいのが、外来種のアメリカカンザイシロアリです。こちらは土中から蟻道を伸ばすのではなく、乾燥した木材の中に小集団で住み、砂粒状の糞を外へ出します。発見方法も対策も、地中性のシロアリとは同じではありません。

3.どのような家が狙われやすいか

特に注意したいのは、雨漏り、漏水、結露がある家、浴室・洗面・台所・トイレ周辺、床下が低く点検しにくい家、基礎のひび割れや配管貫通部がある家です。
増築部、ウッドデッキ、濡れ縁、建物際の木材や段ボール、切り株なども侵入の手掛かりになります。長く使われていない別荘や空き家、山林や海辺の温暖多湿な場所は、異変に気づく人がいないこともリスクを大きくします。

今回の物件は、購入前まで10年以上雨漏りのある状態で使われ、屋根や壁の材料が大きく傷んでいました。湿気も多く、一部の壁紙にはびっしりとカビが生えていたほどです。被害の大きい部分は除去・交換しましたが、健全に見える部材はコストとの兼ね合いで残しました。結果として、シロアリはその古い部材を中心に食害していました。

ただし、「新しい木材なら食べない」「古い木材なら必ず危険」と単純には言えません。樹種や部位、防蟻処理の有無、含水状態、侵入経路などが重なって被害になります。本物件では、長年の雨漏りや湿気、残した旧材、点検しにくい構造が複合した、と考えるのが正確でしょう。

4.新築なら安心とは限らない

新築時に防蟻処理をしていても、その効果は永続しません。建築後の漏水や結露、植栽や外構工事、配管工事などで環境や侵入経路が変わることもあります。また構造によっては、基礎や土台が見えにくく、侵入しても発見しにくい場合があります。

結局、シロアリ被害は「古くて汚い家だけの問題」ではありません。水分、侵入経路、そして点検の難しさ。この三つが重なって起こる建物リスクです。逆に言えば、この三つを購入前から意識すれば、発見の可能性を高め、被害を小さくすることもできます。

次回は、「第3部 物件探しから契約まで ~ 買う前にどこを見るか」をご紹介する予定です。