令和2年度の路線価とコロナの影響について

7月1日、国税庁より全国の「路線価」が発表されました。
この路線価、相続税の計算をする際には非常に重要な指標となっています。
今回は、この路線価についてご説明します。

1.路線価って?
亡くなった方の相続人などにかかる「相続税」。
この相続税は、相続財産(亡くなった方から受け継がれる財産)の「時価」に、税率や相続人数などに基づいた計算を加味することで計算されます(「相続税の計算は意外と複雑」参照)。
相続財産に占める土地の割合は4~5割と非常に重要ですので、私たち税理士が相続税の計算を行う際、土地の時価を計算するのは非常に大事な仕事です。

しかしこの「土地の時価」を計算するにはどうすればよいでしょう。
上場株式なら株式市場でいつでも売り買いできる時価が公表されていますが、土地の場合はそうはいきません。
確かに、不動産会社を通じて「売りたい」「買いたい」といえばその状況に応じて価格がつきます。しかし、それはその特別な状況で採用される価格であって、税金の計算のように「公平性」が重要な指標として使うことは無理があります。

そこで国は、全国的な調査を定期的に行って、地域ごとに道路(不特定多数が通行するもの)に面する宅地について、1㎡当たりの時価を公表することとしています。これが一般に路線価(相続税路線価。この他、固定資産税課税の為の路線価もある)と呼ばれています。
※なお、特に市街地でない場所によっては路線ごとの時価が適していない場合もありますので、その場合には「倍率方式」と呼ばれる別の方法を時価として採用します。また、納税者が不動産鑑定士による鑑定評価額などを時価として採用することもできます。

2.路線価の例
路線価の例を見てみましょう。

銀座路線価

国税庁の路線価検索サイトから、「全国一路線価が高い」といわれる銀座5丁目周辺の路線価図を呼び出してみました。
ご覧の通り、全ての道路に細かい数字が示されています。
この数字が「路線価」、すなわち「1㎡当たりの土地の価格」になります。
※その他の記号も相続税を計算する上で非常に重要な意味を持つのですが、今回は省略します。

少々見づらいですが、図の左下に注目して下さい。
中央通りの「鳩居堂」と書かれた地点は、「45,920」と記されています。この数字は千円単位なので、1㎡当たりなんと4,592万円の価格となっている訳です。
この価格、いわゆるバブル期の3,600万円程度をはるかに上回っています。

3.大阪の推移
大阪で最も路線価が高いのは「梅田阪急百貨店前」です。
この路線価がどのように変化しているかを説明するため、今年から3年ごとにさかのぼったデータをまとめてみました。

路線価変遷

こちらも平成26年の1㎡あたり756万円が、平成29年には1,176万円となり、なんと今年令和2年には2,160万円にまで上昇しています。

国税庁が発表する地価の高い場所は、下記の通りです。
令和元年分都道府県庁所在都市の最高路線価

4.コロナの影響について
今回は地価が上昇している場所を中心にご説明しました。
これらは、インバウンド需要を中心に価値が暴騰したことが主な理由といわれています。
また、バブル後低迷を続けていた他の地域においても、このような場所に影響を受け、また旺盛なマンション建設需要などを背景に下げ止まっていた所でした。

しかし今回のコロナ禍を経て、地価がどのように変化するかが注目されるところです。
例えば、もしコロナ禍の影響で実際の土地実勢価格が大きく下がっていたとしても、相続税の計算はその前の非常に高い路線価で計算しなければならないのが原則だからです。
国税庁は、今後のこのような影響によって実際の地価が大きく下がる場合、その推移によっては路線価の減額修正を可能にする措置を導入することを検討しています。
この行方にも注意が必要です。