会社の場合でも個人事業の場合でも、特に順調に売り上げや利益を上げている場合には税金(法人税や所得税)の負担が無視できません。
この記事は、その税金を減らすうえで非常に大きなメリットのある「税額控除」という制度を取り上げてご説明します。
中小企業を中心とした企業経営者や個人事業主の皆様は、是非参考になさってください。
1.事業に関する税金の計算方法
我が国の税制は個人事業と法人の制度を完全に分けているのですが、基本的なところは同じです。簡単に言うと、売上などの収入から費用を差し引いた「利益」に対して税金がかかるということになります。
つまり、売上が大きくなったり、費用が下がったりして利益が増えると、その分税金が増えますし、逆もまたしかりということになります。
実際には税金の計算はもう少し複雑で、法人なら「税金を減らさない費用(損金不算入の費用と言います)」があったり、個人の場合は「費用や支出ではないが税金を減らす項目(所得控除といいます)」があったりと、なかなか大変です。
2.税額控除とは
これに加えて、法人税や個人所得税には「税額控除」という制度が用意されています。
この制度は、政策的な目的、例えば設備投資や雇用の拡大、試験研究の実施といった企業活動がなされると、税金を一部免除するというインセンティブを与えるために税金を控除するという形を採っています。
上記の図をご覧ください。
先に説明した通り、税金はもともと利益に対してかかるものなのですが、その税金から「さらにマイナスができる」という所が税額控除のメリットになります。
3.特別償却との違い
よく似た目的を持った「特別償却」という制度もあります。
この制度も、同じように政策的な目的から設けられているのですが、効果については大きな違いがあります。
設備投資された資産は一度に費用となるのではなく、何年かに渡って分割して費用とされるのですが、その分割年数は法律に基づくルールで定められています。
この特別償却は、そのルールより早く費用とすることで、利益を圧縮し、税金を少なくしようとするものです。
なお政策的な目的が同じですから、特別償却の対象となる資産と、税額控除の対処となるものはほぼ同じとなっています。
税額控除と特別償却の目的は一緒なのですが、効果(税金を減らす)については大きな違いがあります。
特別償却は「費用化を早くする」だけで、トータルの費用額は「買った値段」で変わりません。
しかし税額控除の場合、特別償却よりは遅いものの、費用化額は全体として同じである上に、購入金額に応じた税額控除も受けられることになるのです(ある意味「二重に引ける」ことになります)。
ですから、よほどの理由がない限り、税額控除と特別償却が選択できるなら前者を選ぶべき、ということになります。
4.税額控除の例
税額控除の制度は多く用意されていますが、主なものは下記の通りです。
なお、これらの制度は「個人事業主でも会社でも適用可」となっています。
- 試験研究費…試験研究費を支払ったり、増加した場合
- 生産性向上設備投資促進税制…生産性向上設備等を取得した場合
- 中小企業等投資促進税制…機械等を買った場合
- 雇用促進税制…人数が増加した場合
- 所得拡大税制…雇用者給与支給額が増加した場合
5.税額控除の注意点
税額控除を利用する際には、主に下記の点に注意する必要があります。
- 最初の申告の際、原則「税額控除を利用する」ことを記載した明細を提出しないと、後から適用できることが明らかになっても認めてもらえない(訂正できない)
- 法人税や所得税の一定割合が限度(極端な話赤字だと適用できない)
如何でしょうか?
これらの制度は、実際には非常に複雑ですので申告書を作る際には税理士などの専門家に必ずご依頼ください。
とはいえ、制度が使えるかどうかについて、経営者が知っておくことは経営判断を行う上で大変重要と思います。
是非ご参考になさってください。