合併手続の留意点~合併無効とならないために

近年組織再編に関する法整備が進み、合併、分割、株式交換・移転といった組織再編手法が大変使いやすくなりました。
その中でも、昔からよく使われている「合併」については、基本的なM&A手法として大変便利な手法であると言えます。
しかしながら、合併については会社法に規定された手続を正しく進めなければ、それ自体が無効となってしまうリスクがあります。もし無効となった場合、単に手続自体が無駄になるだけではなく、合併を前提に進められている様々な契約や事業活動が全て合併前の状態に戻されるため、甚大な悪影響があります。

今回は、このようなことがないよう、満たされるべき最低限の手続について記載してみました。
※税理士の分野である税法やその他の分野に関してはまた別の機会があれば記載します。

①合併のスケジュール
合併手続はおおよそ下記の通りの手順で行われます。

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これらの合併手続は会社法に規定されており、これらの手続に従わなければ合併を行うことはできません。この手続や登記申請書の添付書類に瑕疵がある場合、合併自体が中断する場合や、のちに合併無効の訴えにより遡って無効となる場合があります。

合併手続が中断、中止する場合はもちろん問題ですが、遡って無効となる場合には、合併を前提に進められている様々な契約や事業活動が全て合併前の状態に戻されるため、甚大な悪影響があります。このため、合併手続が登記まで適切に行われているかどうかについて、下記の手続を中心に十分注意する必要があります。

②合併契約の締結
合併契約には、消滅会社の株主に交付する対価や効力発生日など、法律で定められた事項を漏れなく決定しなければなりません。合併契約には法定の必須事項があり、この必要事項を欠くと合併の無効原因になります。また合併契約書は合併登記申請における添付書類となります。

③合併に関する書類の事前備置
存続会社および消滅会社は、株主や債権者が合併の適否や合併無効の訴え提起を判断できるよう、合併契約や当事会社の計算書類など一定の書類を本店に備え置かなければなりません。備え置く期間は合併の効力発生日後6ヵ月を経過するまでです。

④債権者保護手続
存続会社および消滅会社は、債権者に対して合併に異議があれば一定期間内に申し出る旨を官報(一定の場合は日刊新聞紙、電子公告)で公告しなければなりません。異議申出の期間は1ヵ月以上必要です。

⑤株主の株式買取請求
存続会社および消滅会社は、合併の効力発生日の20日前までに株主に対して合併する旨の通知(一定の場合は公告)をしなければなりません。

⑥株主総会による合併契約の承認
合併契約は、合併の効力発生日の前日までに存続会社および消滅会社の株主総会で特別決議による承認を受ける必要があります(但し簡易合併、略式合併の場合は、原則として株主総会による決議を省略できます)。

⑦登記・財産等の名義変更手続
存続会社の代表者は、合併の効力発生日から2週間以内に、存続会社の変更登記と消滅会社の解散登記をする必要があります。また、消滅会社の権利義務はすべて存続会社に移転するため、預金、土地および建物など、消滅会社の名義になっている財産等については存続会社への名義変更が必要です。

⑧合併に関する書類の事後備置
存続会社は消滅会社より承継した権利義務や合併手続の経過等を記載した書類を作成し、効力発生日から6ヵ月間本店に備え置かなければなりません。

⑨手続瑕疵の影響
上記の手続に瑕疵(かし 欠陥のこと)があった場合には手続の無効原因となり得ますが、その瑕疵が重大でない場合でも必ず合併が無効となるわけではありません。瑕疵が発見された場合には、合併手続に詳しい弁護士、司法書士などの専門家から無効性について意見を聴取した上で対処を判断する必要があります。