「印紙」や「収入印紙」という言葉は皆さんご存知と思います。
この印紙、一般の方がよく目にするのは、高額な領収書を受け取る時くらいでしょうか。
この印紙、正式には印紙税と呼ばれる税金の一種です。
様々なビジネスで登場する印紙税とその歴史や今後について説明します。
1.印紙税とは
印紙については「印紙税法」という法律が定められています。
この印紙税法によると、印紙は次の通りの税金であるとされています。
印紙税法第二条 別表第一の課税物件の欄に掲げる文書には、この法律により、印紙税を課する。
要するに、印紙税法が定める「文書」に課税されるのが印紙税、という訳です。
それにしても、お金や不動産、お酒などに税金をかけるならともかく、「文書」すなわち単なる紙に税金をかけるとはどういった発想なのでしょうか。
2.印紙税の歴史と意義
この理由を紐解くには、歴史を知る必要があります。
元々印紙税は、1600年代にオランダで戦争によって発生した財政危機に対応するため制度化されたものが起源となっています。契約書や領収書、手形・証券・通帳、定款といった「取引やお金に関する文書」はその背後に資金の動きや利益の発生が見込まれることが多く、また経済活動が活発であればたくさんの文書が発生することから、そこから少しずつ徴収する印紙税は、他の税金と比べると、国民に重税感を与えにくいという特徴があり、各国に普及することになりました。
3.印紙税の現在
我が国における現在の印紙税収は、どのような規模なのでしょうか。
国の統計を見ると、平成9年には約1.7兆円の税収だったものが令和元年度で約1兆円と減少しています。しかしこの収入、未だに関税や酒税と同等、また相続税の半分程度ということからまだまだ重要な水準であると言えます。
とはいえ、もともと「お金の動く取引を証明する紙」に課税したものなので、今後証明書類の電子化によってどんどん減っていくはずです。コロナ禍の影響がこれを加速することになるでしょう。
4.税理士と印紙税
さて、私たち税理士は「この文書は印紙税が課税されますか?」というご質問をよく頂きます。
その場合は大体法令に定められた一覧表(国税庁提供のPDF資料が開きます)やその解説を見ながらお答えするのですが、実は「税理士の業務対象として印紙税は含められていない」ことを皆さんはご存知でしょうか。
税理士法には、下記のような条文があり、印紙税は対応業務から明確に外されているのです。
税理士法第二条 税理士は、他人の求めに応じ、租税(印紙税、(略)を除く(略))に関し、次に掲げる事務を行うことを業とする。(略)
5.印紙税あれこれ
①以前は3万円以上の領収書には印紙税を貼る必要がありましたが、現在はこれが「5万円以上」と改正されています。また、カード払いの場合にはその旨が領収書上明記してあれば印紙は必要ありません。
②金銭消費貸借契約書などの契約書は通常2通作って当事者が両方保有しますが、親子会社間など十分な信頼関係や実質的一体性がある当事者間の場合は、1通の原本を作って片方が原本、もう一方がコピーを持つようにすれば原本だけの印紙で済みます。
③印紙を貼り間違えて、印紙税が過大となった場合(不要な文書に貼った場合や金額を過大とした場合)には、「印紙税過誤納確認申請書」に必要事項を記入のうえ、納税地の税務署長に提出することで還付を受けることができます。