コラム「相続の基礎」⑤相続と戸籍

3.相続と戸籍
1)戸籍の基本
戸籍制度の発足は明治時代の初期まで遡ります。実はこの戸籍は日本独特の制度であり、海外には日本のような戸籍制度のない国もたくさんあります。ただ戸籍の歴史や制度については私も専門ではありませんので、ここでは戸籍が何のためにあるかだけご説明しておきます。

戸籍は、以下の通りの目的をもっています

  • 本人の存在証明
    本人が日本人として存在していることを証することができます。ただ、最近はいろいろな制度の隙間の影響で「無戸籍の日本人」が問題になっています。
  • 親族関係が確認、証明できます。
    戸籍を見れば、親子関係や婚姻関係などが分かるようになっています。戸籍の筆頭者を中心に、配偶者や子などその家族関係が示されています。
    なお非嫡出子を認知した場合、父親の戸籍には身分欄にそのことが記載され、母親の戸籍には子として入籍することになります。

戸籍をみれば出身が分かるという方もいますが、実は現在の戸籍において本籍地は位置情報としての意味をあまり持ちません。転籍することは自由ですし、子も成人すれば自由に分籍をすることができます。

現在の本籍地のイメージとしては「各人を戸籍に登録する」場合のID番号的な位置付けでしかないようですので、山の頂上や遊園地など、住所を識別可能な場所であればどこでも設定ができるようです。

戦前など旧民法時代の戸籍は、家制度を非常に強く反映したものでしたが、現在はもう少し緩く、個人(結婚している場合には夫婦)を中心としたものとなっています。

2)人が亡くなったときはどのような流れで戸籍に記載されるか
人が亡くなった時は、その親族や同居人、大家さんなどがその死を知ったときから7日以内に死亡届を出さなければいけません。この死亡届は亡くなった人の本籍地に出す必要がありますが、死亡地でもこれをすることができます。

この死亡届が受理されると、その人は戸籍から除かれる事になります。これを「除籍」といいます。

但し死亡した人が戸籍の筆頭者の場合、除籍されてもその戸籍の筆頭者はそのままです。これは、本籍地と同様、筆頭者がデータベースで言うインデックスのような役割を担っているからです。

3)相続人を特定するために必要な戸籍とは
法定相続分は親族関係によって決まりますから、その特定は非常に大切です。例えば、子や親がいないと思って兄弟が相続しようとしたのに、実は婚外の子供を認知していたなどという事があれば、相続関係が完全にひっくり返ってしまいます。このような関係をきちんと調査するには、戸籍を調べる以外の方法はありません。

現在は戸籍が電子化(コンピュータ化)され、昔からの戸籍とコンピュータ化された戸籍が混在している状況にあります。新しい戸籍には古い戸籍から必要な情報のみが転記され、引き継がれていますが、全てが記載されている訳でもありません。このコンピュータに転記された元になる戸籍を、「改製原戸籍(かいせいはらこせき)」と言います。通常手書の古い書類をスキャンして作成されているため、かなり判読の難しいものが多いです。

戸籍謄本の収集はこれ以外にも注意点があり非常に難しいので、通常は市町村の戸籍係と十分に議論をした上で入手することにしています。

(第5回 完)
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