相続税は、税理士にとっても非常に難しい分野の一つです。
今回は、相続税における土地の評価方法と、大きな土地を所有する方にとって特に影響が大きい「広大な土地」の評価方法及びその改正についてご説明します。
1.相続税と土地
相続税を計算する際、土地がある場合には原則として「路線価方式」や「倍率方式」で相続税のかかる時価を計算します。
路線価方式は、路線価(その道路に面している標準的な宅地の㎡単価)に、土地の状態に応じた調整を施した価格に面積を掛けたもので、いわゆる「土地の相続税評価額」としては最も一般的なものです。
また倍率方式は、山間部など路線価が設定されていない地域の土地に関して、その固定資産税評価額に地域の状況を踏まえた倍率を乗じて計算する時価です。
これらの路線価や倍率は現在インターネット上に公開されており、誰でも確認することができます。
2.広大地
ところが、このような評価が当てはまらない土地が時々あります。これが「広大地」と呼ばれる種類の土地です。
例えば1000㎡を超えるような土地の場合、昨今は大きなお屋敷などを建てたりはしませんので、一般的な大きさの住宅として分譲する場合がほとんどです。
しかしそのような場合には、どうしても道路(公衆用になるので、その部分の販売価値がなくなる)を作らなければ開発許可が下りないことになります。
そこで、従来からこのような広大地については、一般的な路線価方式や倍率方式よりも大幅に評価が低くなる方式(比例的な一律減額方式)が定められていました。
この結果、広大地に該当することとなれば、どんな土地でも大幅に相続税のかかる時価が低くなる結果が出る状態となっていました。
3.改正
このような問題に対処するため、平成29年に改正が行われました。
まず「広大地」という用語は「地積規模の大きな宅地」と変更され、地積(面積)や所在地域の容積率(※)に応じた判断が明確になりました。具体的な適用要件は下記の通りです。
※ 建物の延床面積を敷地面積で割った割合。建築基準法に基づき、地域や構造に応じて容積率の限度、すなわち敷地に応じてどれだけの大きさの建物を建築できるかを決めています
①地積が500平方メートル(三大都市圏以外は1000平方メートル)以上の宅地
②普通商業・併用住宅地区及び普通住宅地区として定められた地域に所在
③次のA~Cのいずれにも該当しない
A.市街化調整区域(都市計画法に規定する開発行為を行うことができる区域を除く)に所在
B.都市計画法に規定する工業専用地域に所在
C.容積率が400%(東京都の特別区においては300%)以上の地域に所在
また、評価方法は下記の通りとなりました。
路線価×地積×補正率(計上・奥行による)×規模格差補正率(面積による)
この改正によって、改正前の広大地評価よりも評価減割合が通常縮小することになります。また上記の改正は、平成30年1月1日以後の相続等により取得した財産の評価に適用されます。
4.注意点
「広大地」や「地積規模の大きな宅地」の改正は上記の通りなのですが、実はこれらの難しさは計算そのものではなく、判定の為の条件(地積の測定や地域の判断、容積率のチェックなど)にあります。私たちは多くの相続税申告をこれまで手掛けており、その中には土地の相続税評価額(時価)計算が含まれるものも多いのですが、一般的に土地の評価はこれらの基礎調査が難しく、その内容によってはかなり大きな金額で相続税が変わる(損になる)場合もあり得ます。この「広大地」や「地積規模の大きな宅地」は、面積が大きい分その影響も大きくなります。
このため、私たちはこのような評価が必要な場合には不動産鑑定士などの専門家を活用するだけではなく、信頼のおける不動産業者や役所などとも綿密に連携し、場合によってはこれらの分野を専門とする事務所とも連携することで適切な相続税が計算できるよう十分に配慮しています。