3)税務調査
①税務調査はいつ、どんな時に来るか
相続税の税務調査は、相続税の申告書を提出した後、1年~2年程度の間にあることが多いようです。これは、税務署が事前に申告書の内容を分析したり、被相続人や相続人について収集した資料と付き合わせたりといった、「事前調査」の時間がかかるためです。
また、相続税の申告書を提出したからと言って、必ず税務調査を受けるわけではありません。税務調査の対象となるのは、事前調査の結果以下のような兆候がある場合です。
- 被相続人の所得や、被相続人がかつて相続した財産などからみて、申告された相続財産が少ないとみられる場合
- 所得税の高額納税者
- 生前に不動産や株式に関係する情報があったにも関わらず、これらに関する相続財産の申告がない場合
- 死亡前に預貯金の大きな動きがある場合
- 財産に比べて債務がアンバランスに多い場合
②税務調査手法
犯罪レベルの脱税が疑われる場合の「査察」ではありませんので、通常の税務調査の場合は事前の日程調整から訪問まで、あくまで紳士的に行われます。
担当した税理士がきちんとした手続きを採っていれば、納税者の方に直接電話がかかることもありません。また、都合の悪い日や体調などもきちんと配慮してくれます。
ただ、穏やかだからといって油断するわけには行きません。前述の通り、調査官は既に事前調査である程度のあたりをつけているわけですから、もし明らかな問題があれば既に逃げ場はなくなっている場合すらあります。
調査が始まると、通常ベテラン調査官はまず雑談から始めます。そして話を進めながら、いろいろな書類や資料の提出を求めてくることになります。よく確認するものは、例えば以下のようなものです。
- 生前の仕事や趣味
- 亡くなった時の様子など(時系列で)
- 香典帳
- 手帳、メモの類
- 電話帳
- 金庫の中身
- 印鑑(家族などの三文判も含む)
- 銀行や証券会社のカレンダー、手帳、その他ノベルティ
印鑑は、単に印影を集めるだけではなく、どの印鑑をどれくらい使っていたかも調べます。よくいわれるのは、朱肉を何もつけずに紙に押し、そのあと朱肉をつけてもう一度押す、という方法です。頻繁に使われていた印鑑であれば、朱肉の残っていることがよくあるからです。このため、私たちは普段から、重要な印鑑を使った後には徹底的に清掃して置くことをお勧めしています。
③税務調査が来ないようにする方法
- 申告前には財産調べをしっかりと
調べられる前に、申告漏れがないかどうかしっかりと調べましょう。そのうえで何か漏れていたとしても、よほどのことがなければ修正申告するだけで、罰にあたる重加算税までは課せられません。 - 生前から準備
亡くなられてから財産調べをするのは難しいものです。特に、夫が妻や子に財産の詳細を教えていないことも多く、相続発生後に右往左往することもよくあります。財産の特定に時間がとられると、税務対策を検討する時間も少なくなってしまいます。 - 前回の相続に注意
前回の相続、例えば被相続人の親や、配偶者からいったん相続があった場合、その財産がどのように増減して次の相続に至ったかについては必ず調べられます。不自然に減少している場合には、なぜ減少しているかをきちんと説明できなければなりません。 - 相続税に強く、調査経験も多い税理士に依頼
冒頭でも説明しましたが、税理士の全員が相続に強いという訳ではありません。残念ながら、強いとは言えない方が業務を受けた場合、申告書の内容も調査での対応についても、十分な効果が出せない場合もあります。また、調査のポイントをよく把握し、対応に長けていたり、調査のポイントを事前に説明、提出することで調査を行いにくくする書面を提出できる税理士も非常に有効です。
④金融機関に対する相続税税務調査
相続税の場合、申告漏れが発生する財産で最も多いのは現金、預貯金です。
屋根裏や床下に現金を隠しているなら別ですが、普通の方の場合は金融機関に預金を持っておられると思います。この預金については、忘れていたケースも含めて、意外と申告漏れがよく起きるのです。
さて、税務署も、さすがに生前から全ての取引銀行を把握しているわけではありませんので、事前調査の際には様々な方法で情報収集を行います。
例えば、被相続人の住所、勤務先周辺にある金融機関に対して、取引があるかどうかやその内容の照会文書を送り、申告された内容に漏れがないか、死亡直前に大きな資金が流出していないかなどを確認します。
#最近はGoogleの地図サービスなどが活用しやすくなっていますので、これを用いて「被相続人が関係していた場所周囲〇キロメートル以内の金融機関」などといったリストを作成して調査しているとの話も聞きます。
また、調査の途中には直接金融機関に出向き、貸金庫の存在や、親族の名義を借りた口座などがないかも調べます。
ところで、昔から「郵便貯金には調査がされにくい」という噂がありました。単なるうわさのようにも聞こえるのですが、実は根も葉もない話ではなかったようです。以前には国税局対郵政省という縦割り行政の関係で、確かに調査するのが通常の金融機関より手続的に難しかったようでこのような噂が発生したようです。ただ、ある時点においてこの点にはメスが入り、現在は税務署からの問い合わせには迅速かつ正確に答えるという取り決めができていますので、郵便貯金が調査から逃れやすいということはなくなりました。
(第8回 完)
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