コラム「相続の基礎」①相続・相続税とは?

1.相続とは
1)相続はいつ起こるか
そもそも、「相続」とはなんでしょうか?この事を説明する前に、皆さんに相続というもののイメージを問うて見たいと思います。例えば、以下のようなところでしょうか。

  • 相続はなんだか恐いものだ
  • 相続は人が死ななくても起こる場合がある
  • 相続があると必ず税金がかかる
  • 相続があるとマルサが入る
  • 財産がなければ相続のことは考えなくても良い

相続とは、「人間の財産や負債、権利、義務の一切を他の人間が受け継ぐこと」を言います。この場合の「人間」は、当たり前ですが私たちのような自然人に限られ、会社などの法人は含まれません。

また、よく言われるように「相続イコール財産分け」でもありません。プラス財産だけではなく、マイナスの財産(債務)も対象に含まれます。
簡単に言えば、「誰かの一切合財をそのまま受け継ぐこと」と表現してもよいかもしれません。

では、相続はどんなときに起こるのでしょうか。先ほど、「民法」が相続の基本的な事項を規定しているとお話しました。民法882条には、「相続がいつ起こるか」についてこんな規定があります。

「相続は、死亡によって開始する。」(民法882条)

これ以外にも、失踪宣告といって、行方不明者の生死が7年間明らかでないときなどの場合、家庭裁判所への申立てによって行う「失踪宣告」によっても相続は発生します。失踪宣告とは、生死不明の者に対して、法律上死亡したものとみなす効果を生じさせる制度です。また、日本国憲法が施行される前の旧民法においては、「家督相続」における「隠居」のように、死亡を原因としない場合もありました。

さてここで、亡くなった人や相続する人などという一般的な言葉の代わりに、相続や相続税で使われる専門用語を定義しておきます。このコラムにおいては多用しますので、ぜひ認識しておいて下さい。

  • 被相続人(ひそうぞくにん) … 亡くなった人など
  • 相続人(そうぞくにん) … 被相続人から財産などを相続する人
  • 一般承継(いっぱんしょうけい) … 相続によって財産等を受け継ぐこと
  • 特定承継(とくていしょうけい) … 譲渡などによって財産等を受け継ぐこと

2)相続で何が起こるか
①相続は財産だけの移転ではない
では、相続が起こるとどんなことになるのでしょうか。これについても、民法に規定があります。

(相続の一般的効力)
第八百九十六条 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

「一切の権利義務」とあります。つまり、財産だけが移転するわけではなく負債(義務)も移転するのです。もっと言うと、単なる資産や負債でも足りず、権利や義務全てを受け継ぐことになるのです。この「一切合切を受け継ぐ」という点については、次の項目にも関係しますので、そこでも詳しくお話します。

なお、「被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。」とありますが、これは何でしょうか。これは「被相続人だから」存在した権利義務のことを言います。例えば、雇用契約などがこれにあたります。こういう権利義務は、被相続人が生存しているからこそ有効になるものだからです。

②一般承継と特定承継
先ほど、用語の定義で「一般承継」と「特定承継」という言葉を簡単にご説明しました。
売買のような「特定承継」は、単に所有権だけが移動するイメージですが、相続などの一般承継は、たとえば「被相続人がその財産いつどこで幾らで買ったか」などの一切合切を受け継ぐことになります。

例えば税金の世界においては、何らかの資産を譲渡した場合の所得は

譲渡代金 - その資産を取得した際の支出(*)

として計算されますが、対象の資産が相続されたものである場合は、(*)については被相続人(被相続人も相続した場合はそのまた被相続人、と延々続く)が取得した時の支出となります。また、いつ買ったか等が重要となる税務上の特例などの場合も、被相続人が購入した際のものが相続人に引き継がれます。

3)相続と相続税の違いとは?
これらの言葉は非常によく似ていますが、概念も基づく法律も全く異なります。簡単にその違いを定義すると、以下の通りになると思います。

  • 相続
    人間が死んだとき財産や負債、権利や義務を相続人に受け継がせる手続。民法に規定あり。
  • 相続税
    相続があったとき、財産の状況によって発生する可能性のある税金と、その計算などを行う手続。相続税法に規定あり。

(第1回 完)
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