温暖化の危機は藻が救う

長年問題になっている「地球温暖化」は、主に二酸化炭素やメタン、フロンなどによって起きるとされている問題です。
この温暖化を止める方法は様々に議論されてきたのですが、日本の学者さんが起点になって、非常に画期的な技術が出てきました。

それは「藻」を使うという方法です。

この方法、環境問題だけではなく日本のエネルギー問題も一気に解決できる可能性を秘めています。

1.温暖化とカーボンサイクル
長年問題になっている「地球温暖化」は、主に二酸化炭素やメタン、フロンなど、炭素化合物からなる気体が増えることによって起きるとされている問題です。
これらの気体は総称して「温室効果ガス」と呼ばれ、温室のビニールカバーに似た機能を果たしています。

太陽から地球に降り注いだ光のうち、温度上昇に最も効果のある赤外線は、大気がなければ地表で反射してもう一度宇宙空間に出てしまいます。しかしこれらのガスは赤外線を吸収してしまう特性を持っているので、太陽光からくる熱が大気中に留め置かれることになるのです。

ニュースを見ると温暖化が悪いように言われていますが、これがなければ地球に多様な生命が存在できる環境にはなりません。昼側はまだしも、夜側は温室効果ガスによる保温が効かず、少なくともマイナス何十度という寒さとなり、温暖化より悲惨な環境になってしまうと言われています。

温暖化の問題は、この効果が行き過ぎるために発生します。元々地球は大気中の二酸化炭素等の濃度をある程度一定に保つサイクルを続けていました。例えば、生物の活動により発生する二酸化炭素を植物が吸収し、この植物を生物が食する、というサイクルです。このサイクルは様々なものがありますが、基本的に全て炭素化合物であることから、総称して「カーボンサイクル」と呼ばれています。カーボンバランス

2.化石燃料はカーボンサイクルを壊す
ガソリンなどの燃料や化学製品等の原料となる「原油」や「石炭」、「天然ガス」は、元々太古に枯れて堆積した植物が、長い年月をかけて地価の圧力や熱を受けて変化したものから出来ています。その生成過程は化石と似ているため、原油は「化石燃料」とも呼ばれています。

この化石燃料、何億年も前の植物がその時代の二酸化炭素を吸収してできたものですから、今これを燃やせば、過去の二酸化炭素が現代に放出されることになります。

冒頭で書いた自然なカーボンサイクルがその時代の二酸化炭素の量を大きく変えることはありませんが、化石燃料を使うと「ため込んだ時点」と「使う時点」がずれていることから、そのサイクルを大きく変えてしまう可能性があるのです。

そうなると、バランスを崩したカーボンサイクルは温暖化を加速し、その温暖化が、様々な場所に固定されている二酸化炭素を放出させたり、吸収してくれる森林を滅ぼしたりすることで、人間がコントロール不能なほどの暴走を起こしてしまう可能性もあります。

一時期原油はもう採掘できなくなると言われていましたが、シェール革命などによりまだまだ採掘・使用は続いています。温暖化が行き過ぎるリスクはまだまだ残っている訳です。

3.藻の利用
このような問題を防ぐには、カーボンサイクルを安定して回せればよいと誰でも気づくと思います。要するに、「使った分と同じだけ吸収・固定」すれば、バランスが壊れないのです。

ということで、深海に二酸化炭素を送り込んで固定する方法や、地中に保存するなど様々な方法が試みられては来たものの、いずれも決定打ではなく、しかも化石燃料の使用継続が前提となっている点で問題でした。

ところが、渡邉信教授という日本の学者が、非常に面白い「藻」を発見したことから、この問題はちょっと違った様相を呈してきました。この藻(オーランチオキトリウム)は、なんと太陽光と有機物から化石燃料とよく似た油を生成することが出来るのです。

元々藻の一部は油を作り出す力を持っているのですが、このオーランチオキトリウムは非常に高い能力を持っています。また成長スピードも非常に高いため、限られた場所でたくさんの油を作ることが出来るのです。

例えば、下水等の有機排水にこの藻を投入し、水を浄化するとともに藻は有機物から油を作る、また油を精製した後の藻は加工して飼料にするなどの有効活用が可能になります。

藻の利用例
筑波大学 渡邉信教授の研究スライド(藻類バイオマス利用の研究開発)より

まだ実験段階ではあるものの、一定の設備や休耕田の活用など環境が整えられれば、なんと日本国内だけで必要な原油に相当する油を作り出すことが出来るほどのポテンシャルがあるそうです。

そうなると、「今ある二酸化炭素を使って作った油」は、今燃やしても二酸化炭素を大きく増やすことはなく、カーボンサイクルをバランスよく保つことが可能になるのです。

なおこの油は基本的に原油の成分と同じで、燃料だけではなくプラスチックの原料等としても使用が可能だとか。

エネルギー問題と環境問題を一気に解決し、ひいては「常にエネルギー問題に左右される」日本の安全保障の立ち位置をも変えるポテンシャルのある「藻」の技術、一刻も早く実用化されて欲しいものです。

4.原子力との関係
元々、原子力は温暖化問題の救世主といった立ち位置で注目されていたように思います。
しかし、震災による事故を除いても、一つ大きな問題があるのです。

太陽光はもちろん、化石燃料、風力、水力、潮汐力といったエネルギー源は、結局全てが現在または過去の太陽エネルギーを基礎にしています。

ところが、原子力だけは太陽エネルギーが一切関係していないのです。

原子力を扱うことの難しさは、大震災や津波によって技術者でない人たちにも痛みをもって理解されたと思います。
太陽があれほど遠くにあり、しかも大きなエネルギーを地球に送ってくれていることは、それなりに合理的な意味のあることだったのではないかと感じています。